12話 依頼はしっかり選びましょう。
「はぁ、はぁ・・・ここまでくればもう大丈夫かな?」
森の奥深くにある小屋の中で1人の少女は心配そうな顔で外を見る。まだ8歳くらいに見える。
「いったん寝ないと、未来が変わってるかもしれないし・・・でも寝たら次こそ起きれるかわからないし・・・」
「大丈夫だよ、何かあったら僕が守るから。ね、寝れないなら睡眠薬もあるから。」
少女の隣には20歳くらいに見える少年が一人。
「うん、お兄ちゃんありがとう、睡眠薬入らないかな。もう、走り回って疲れてるから、すぐに眠れると思うよ。」
「そうかい、なら、後は願うだけだね。」
「うん。」
そして、その少年は少女が寝たのを確認してから、念話をつなぐ。
そして、念話が終わった後、彼はつぶやく。
「イレギュラーだと、こんな最初っから?『天改』の策略か?いや、それはない。なら、なんだ?もしかしたら断片的に・・・」
だが少年はその考えを振り切る。
「いや、まさかね。そんな事象、今まで確認されていない。」
そして、少年は少女が起きるまでその少女を見守り続けるのだった。
「「助けてもらおう。」」
「・・・」
「君、私たちより強いよね。」
「ここのギルドの人たち、強い人へのあこがれが強いから、君のステータス見せたらたぶん盛り上がるよ。」
「いや、結構です。間に合ってます。」
「そんなこと言わないでさぁ。早くステータス見せちゃおうよー」
「ちょ、あんまり近づかあ内でくださいよ。」
「ほら、ちょっと証明書貸して。」
「ちょ、うわ、やめてぇ。」
「何してんの?君たち?」
キルトの登場にギルド内は唖然となる。
「「「まだいたんですか!キルトさん!」」」
「あ、やべ、いったん奥に避難しよう。ほら、君たちも」
「あ、じゃあありがたく奥に引っ込ませてもらいましょう。」
で、職員用のところの奥に引っ込んだ。
「「「「・・・」」」」
「大変だねぇ、ここのギルドは。」
「ここは荒っぽい人が多いですからね。」
「あの人だかりの量はまずいだろ。」
「前に来た時よりのギルドの人増えてるわね。あれは、」
この2人Aランク冒険者らしく、このギルド支部を拠点としている人の中では一番強いようでいつもは2人で依頼を受けているらしい。
キルト曰くファンクラブもこっそりとできているとかなんだとか。
それを聞いた2人は絶句していたが。
「あ、そういえば2人は、ギルド本館にも来たことがあったよね。確か、村が魔物によって壊滅状態に陥ったから助けてくれ、とかいう内容だったよね。」
「そうですね。その時にキルトさんにも来ていただいたんですよね。あの時はありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ。」
「そういえば、なぜ今回はなぜ荒廃の聖地なんかに来ているのですか?今回は特に救援要請などしていないはずですが・・・」
「確かに、なんでだろう?」
考え込む俺
「馬鹿野郎、お前の身元引受人を押し付けられたんだろ。」
「そうだった。」
「ん、身元引受ってことは、君、一人?」
「ん?そうだけど。」
「ってことは、誘ってもいいかな?彼のこと?」
「君、名前は?」
「神宮寺 快成ですけど。」
「お前、何してる!いや、言ってなかった俺も悪いけど、苗字はさすがに・・・」
「もしかして君、転生者なの!?」
終わった、一発でばれた。
せっかくならキルトみたいに苗字言わないでおくべきだった。
「ま、ばれちゃったなら仕方ないよね。この人、神宮寺 快成は転生者で、最近この世界に転生してきたばっかなんだよね。」
「あ、俺のセリフ一部とられた気がする。」
「へぇ~、転生者なんて珍しいね。」
「転生者が二人並んでるのもなかなかお目にかかれないという感じだな。」
どういう感じ?それ。
「あ、そういえば前にパーティーメンバー募集してなかったっけ情徒さんたち。」
「ん。そういえばそうだったな。だけど、あれだ、ここのギルドの人たち、正直言うと弱すぎてメンバー増やすのあきらめてたんだよね。」
「それならこの快成君を推薦するけど、どうかな?」
「へ?まじ?」
「うん。まじ。」
「それなら、快成君私たちのパーティーに入りませんか?」
「ほら、快成、お前誘いを受けてるぞ、ここで入っといた方がいいと思うけど。というか、本来は誘う方は快成からなんだけどね。快成の方が強いし。」
「なら、迷うこともない。パーティーに入れさせてもらおう。その方がいろいろと得なんだったっけ?」
「そうそう。ここできっちりパーティーに入っておけば、受けれる依頼の幅も広がるからね。」
「じゃあ、よろしくね。快成君。」
「よろしく頼むよ。快成君。」
「こちらこそよろしくお願いします。えーと、スイアさんと情徒さん!」
こうして俺はパーティに入ることができた。
「じゃあ、快成の初めての依頼は何にしようか。」
「失敗はしたくないからなぁ、かといって簡単すぎるのもなぁ。」
「ここらへんじゃあ強い魔物はいないから、それなりの難易度の依頼があったとしてもずっと同じような魔物を倒すだけの単調な仕事になっちゃうしねぇ。」
依頼掲示板を見て悩む俺たち3人。
「それなら、こんな依頼はどうだい?面白い依頼があってね。ここの冒険者たちには頼めないから、依頼掲示板に貼っていない依頼が一つあってね。」
と言ってキルトが依頼表を見せてくれる。
依頼内容は、小屋の護衛だった。
「は?なにこれ?」
「誰でもできそうな依頼だけど、何がそんな面白いんだこれ?」
「まぁ、はじめてにはよさそう難易度だけど。」
「そんなこと言わずに、ほら、依頼人のところ、よく見てごらん。」
よく見る。そして混乱する。
下記のように書いてあった。
依頼人:冒険者ギルド
「え、なにこれ、あんたが依頼したってこと?」
「間違ってはいなけど、厳密言えば違うね。これは、ギルド全体での依頼だよ。」
「要するに、キルトだけの意見ではない、と?」
「そういうわけだ、で、どうだい、報酬はこんだけあるけど。」
報酬:金貨10枚
あんまりこの世界の物の値段がわからないため、はっきりとは言えないが、たぶん大金である。
「え、何この依頼受けるしかないじゃない。」
「よし、この依頼にしよう。快成もこれでいいよな。」
「俺も文句はない。ただ、キルト、これって何か裏があるよな。」
「もちろんあるとも、君たちは小屋の中に入ってはいけない。とかいう、怪しい条件もあるでしょ。」
「依頼人代表が自分から怪しいとか言ってる時点でもうおかしいじゃん。」
「ちなみに、場合によっては命の危険もあるけど、どうする。」
「護衛なら、まぁ、魔物とかは来るわよね。命の危険は仕方ないと割り切るしかないね。」
「あ、言い忘れてた、護衛するときに敵対する可能性があるのは、『人』だからね。」
「ということは、その小屋の中に宝でもあるということか?」
「さぁ、どうだろうね。ただ、護衛してくれたら金貨10枚払うだけの価値はあるってことだけは確かかな。」
「危険だと判断した場合、そこから抜け出すのはOKかしら?」
「別にいいけど、たぶん君たちはどんなに危険だと判断しても抜け出さない。というか、もし相手に遭遇してしまった場合、相手を全滅させるまで逃げれないと思うよ。」
「それだけ強力な相手、もしくはそれだけ多くの人が小屋を狙っている。その認識であってる?」
「快成君、君の認識は間違ってはいない、が、少しずれているかな。実際にはその両方なのだから。」
強大な敵が大量にいる、ということである。
要するに、いや要しなくても危険というわけである。
「ただ、初仕事で、これを成功させたら、今後はかなりいい待遇を受けれるかもね。あ、もちろん情徒とスイアも今後の待遇はよくなるだろうね。」
「その待遇ってギルド内でってこと?」
「どうだろうねぇ」
「それにしてもキルトさんはどうしてここまでこの依頼についてはぐらかすんです?」
確かに、命の危険があるという割には内容を隠しすぎている気がする。
まぁ、金貨10枚ももらえるのだから、文句はないのだけれども。
「・・・じゃあ、一つだけ情報を教えようか、実はこの依頼人、というか依頼主、冒険者ギルドじゃなくて別の個人の人なんだよね。」
「へ?だとしたら、キルトさん。なぜ依頼人が冒険者ギルドになっているんですか?」
「依頼人は僕と旧知の仲でね、しかも、その人は名前を軽々と出せるような人じゃないから、僕ら冒険者ギルドが代わりに依頼してるってわけだ。」
依頼主は名前を公表できるような人ではない?
ということは、有名人という可能性が高くなるわけか。
もしかしたら、小屋の中の内容も有名なものや貴重なもので、いま小屋にあること隠したいということなのかもしれない。
「とにかく、その小屋を護衛すればいいんだな。」
「そ、それだけで大丈夫。」
「わかった、その依頼、俺たち3人、俺とスイアと快成で請けよう。ただし一つ条件がある。」
「条件?何か要望があると?」
「君たちギルドには説明責任がある。しかし、今回はそれを果たさなかった。その分何か埋め合わせをしていただく。これでどうだ。」
「あぁ、僕も埋め合わせをしようと思ってたところだ。報酬を増やせばいいのかい。それともほかに何か?」
「念話か何かでいい、情報を開示してよくなり次第、情報を俺らに伝えろ、それだけでいい。」
「それだけ?全然埋め合わせになってないと思うわよ。それ。」
「スイアの言うとおりだ、それだけじゃ、ギルドリーダーとしても納得いかない。だからこそ、いや、まぁ言われなくてもあげるつもりだったんだが・・・」
そういって彼はギルドで使われるというアリスが勝手に改造していた例のバッグを取り出す。
もちろんこちらは改造されていないっぽい。
「あ、君にもギルド会員になったんだし一つ支給するね。」
と言ってキルトは通常のバッグも俺に渡す。
そのあと、もう一つのバッグも俺に渡す。
「この中には君たちのピンチを切り抜けるための道具が入っている。いくつか入ってるけど、ピンチになるまで中を見ない方が楽しいんじゃないかな。特に快成は。」
「は?なんで俺が見るとつまんなくなるの?」
「それは中身を見ればわかるよ。ま、使うシーンがことを祈るけどね。それじゃあ、小屋の場所まで案内するから、ついてきて。」
そういうわけで、俺の初めての依頼は始まった。




