閑話21 大罪
「・・・勝手な行動は危ないんだが、エルミナ様はなんでこう、一人でなんでもやろうとしちゃうのか。」
エルミナに置いて行かれたエアセトは一応、命令違反をするわけにもいかないため、闘技場には入らないものの、近くには来ていた。
闘技場から爆発音が聞こえる。
(これ、絶対に、エルミナ様に向かってのの攻撃だ。たぶんエルミナ様は未来予測して回避しまくってるな。)
なんやかんやあって結局はエルミナが勝つであろうことを予想して、エアセトは周りの野次馬たちに紛れ込みながら、状況を観察する。
「少年。一緒にそこのレストランで話でもどうかな?こんなおばあちゃんでよければだけれどもね。」
エアセトは背後から何者かに話しかけられた。と、同時に、首筋にナイフを突き尽きられた。一応、最善の注意はしていたはずである。そのため、背後に人が来るようならば、気が付くはずだった。それが武器を持った人なら、そして、殺気を持つ人ならばなおさら。
「っ!?」
「そんなに驚かれるとおばあちゃんもやりがいがあったというものよ。まだ私の技術は衰えていないらしい。」
背後にいる人はナイフを首筋から遠ざける。
「・・・あなたの夫が今、闘技場内で戦っているはずでは?トランぺさん。」
「おや、最近の子は顔を見なくても声だけで面識のない人を判別できるのかい?驚きだねぇ。」
「何のつもりですか。ギルド上層部の依頼か、ナノ国あたりの刺客か。」
「もし依頼主がギルド上層部なら、自分たちのことだから依頼にはならないね。そして、私たちはどの国の戦力でもないよ。」
「じゃあ、なんですか。だれかの個人的な依頼ですか。」
「半分正解だね。これは個人的な調査だ。依頼じゃないよ。さて、こんなところで長話するのも立っているだけで老体にはこたえる。近くのレストランで話でもどうかな?もちろん。私のおごりだよ。」
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「毒なんか盛ってないから心配せずにお食べ。」
「・・・ナイフ向けてきたのはあなたでは?」
「あの場面では逃げられても能力を使われても困ったからね。圧倒的な実力差で君を潰すしかなかったわけだよ。」
「それはそれでどうなんですかね。まぁ、あのナイフに能力を打ち消す能力がなければ、抵抗していた可能性はありますが。」
「とはいうものの、君の能力なら打ち消せたとして一度だけだね。」
「その一度の隙が大きすぎます。ナイフは・・・おおよそ、ヘイダルあたりに用意させた品でしょう。」
「いろいろと詳しいね。怖いくらいに。」
先ほどトランぺがエアセトエアセトの首元にあてたナイフには能力を打ち消す力が付与されていた。正確にいうならば、能力を吸収することができる素材で作られていた。そのため、エアセトは能力を発動してトランぺを追い払うのをためらったのである。(トランぺに敵意がなかったことも理由ではあるだろうが。)
「それで、早く本題に入っていただきたい。こちらはエルミナ様がいつ帰ってくるかわからないんです。早めにことを済ませていただきたい。」
「わかったわかった。なら、単刀直入に言おうか。私たちは君たちに協力したい。」
「・・・あぁ、単刀直入に言うと何もわからなくなるタイプのやつだったか。」
「じゃあ、具体的に言わせてもらうね。いろいろと言いたいことが出てくるとは思うが、すべて話し終わってから質問は受け付ける。まず、前提として、近い将来エルミナは殺される。原因は戦争を起こして、敗北するため。相手はナノ国だ。そして、エルミナが殺されると同時に君たちも処分される。どんな方法でかはわからないがね。だが、君たちのような貴重な戦力を失っては困るわけだ。そこで、君たちが誰一人欠けないようにすることに協力したいとおもう。細かいところは省いたが、これが大雑把な内容だね。」
「いろいろと聞きたいことはありますが・・・情報源はどこですか。」
「ここだ。」
トランペは自らの頭を指さす。
「あなたの能力が未来予知系統だということですか?」
「いや、違うね。知識と経験と記憶だね。」
「・・・?」
「君にも体験させてあげることは可能だね。だけど、それは世界の一端を担うことと同義だ。それでも知りたいなら教えてあげなくもない。」
「まてまて、どういうことだ?体験って、まさか、今までにその景色を見てきたことがあると?」
「まぁ、そう言っているようなものだね。すべての記憶を取り戻させるんだ。脳には相当な負荷がかかる。」
「わからない、あなたが何を言っているのか。」
「まぁ、そうだろうね。ただ、一つだけ言えることは、そうしないとエルミナは死に、君たちも無事では済まなくなるということだね。すべてを知る覚悟を持って、終わりなき永遠の地獄へと踏み込むというのなら・・・」
「その地獄に、踏み込まなければいけないのでしょう。そうしない限り、エルミナ様は救えない。」
「話が早いね。じゃあ、君の記憶に干渉しても問題ないかな?」
「あぁ、よくわからないが、それしかないなら。どうぞ、好きにしてくれ。」
「じゃあ、始めるとするよ。」
トランペがエアセトの頭に手をあてる。と、同時に、エアセトは自身の記憶の奥底に閉じ込められた何かが解放されるような。不思議な感覚へと陥った。そして、そのあとすぐに、壮絶な頭痛が襲い掛かってくる。原因は記憶が、あってはならないはずの記憶が解放されたからには他ならない。
「あ・・・ぁ、これ・・・は、この・・・記憶は・・・!」
「これで君も覚醒者の仲間入りだね。」
「嘘だ・・・こんなこと・・・馬鹿な・・・!」
「私は君にかなり残酷なことをしたと思う。ただ、それでも、やらなければいけなかったんだよ。」
「・・・・・・いいでしょう。トランペさん。その協力とやら、受け入れましょう。」
「なら、作戦会議を始めようか。」




