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第7話 由里の家へ行く

ヴィトーには、信頼できる人間が二人居た。一人は用務員、もう一人が、幼かった自分を救ってくれた由里ゆりだった。


ボス猫に親を殺され、幼かった自分は、何とか逃げ延びた。ただ、弱肉強食のこの世界で幼い自分が生き延びれる程、甘い世界ではない。あの日、ゴミから食べ物を探そうと漁っていたら、カラスに襲われた。やつらは、空腹だったのか、俺の事を餌と見て、必要に攻撃をしてきた。何とか、民家に入り、カラスを撒く事は出来たが、しばらく食べておらず、身体も傷だらけになり、入った民家の庭で、俺は倒れた。もうすぐ死ぬんだと思っていた。その時、家に居た由里ゆりが、倒れている俺に気が付き、家で保護してくれた。それ以来、由里ゆりの家には、今も時より顔を出している。


今日は、文太ぶんたも一緒に由里ゆりの家へ向かっていた。道中、文太ぶんたは急に立ち止まり、空を眺めた。日が昇り、夜が明けてきた。


「ヴィトー、由里ゆりの家に行くのか?」

「ああ」

文太ぶんたは、由里ゆりの家族と顔なじみであり、俺は由里ゆりの家で文太ぶんたと知り合い、俺を鍛えてくれた。

「腹が減ったからな。あんたも減ってるだろ。」

「まあな。」

身体は痛むが、心は幾分軽くなった様だ。文太ぶんたに心で感謝した。


----------


由里ゆりは目覚めていた。だが、目は開けても、見えない。また、まぶたを閉じると、その当時の事が、フラッシュバックしてくる。

私は、警察官だった。生活は順調、夫にも恵まれて28歳に結婚。子供もすぐ出産出来た。産後、警察にも復帰できた。それなのに、33歳の時、事件は起きた。

自分が非番の日、隣の市へ子供と遊びに行った。デパート前を歩いていたら、蹲っていた男性が居た。私は、様子を確認する為、近くに寄ったら、手に持っていた包丁で、両目を切られた。その後、男は、次々と通行人にナイフをむけ、3人の人間を刺した。大きな事件となり、1名死亡、2名重体。その2名の内、一人が私だった。

その後、両目の見えなくなった私は仕事を続ける事が出来なくなり、夫や娘の世話になる生活になった。こんな身体になってしまったが、夫、娘の支えもあり「強く生きる」と心に誓い、懸命に生きていける様になった。でも、あの日の光景は、急にフラッシュバックし、恐怖で身体が震える。これは一生続くのだろうか。

「大丈夫か。」

隣で寝ていた夫を起こした様だ。

「ごめん。」

「いや。起きる所だったからね。」

夫はそういうと、いつもの様に私の身体を抱きしめてくれた。あの事件の後、私から離婚の話しもしたが、夫は一生、私を支えてくれると言ってくれた。嬉しかった。そして、今も愛してくれる。


「ねぇ、ちょっと外見てくれる?もしかしたら、文太ぶんた信雄のぶおが来たかも。」

「ん、分かった。」


俺は、カーテンを開け、庭の方を見た。

猫が2匹いるのが見えた。

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