第8話 今後の方針と宿探し
「それなら俺の当面の目標は幼竜人と召喚術士が一体どんな存在なのかを探求しつつ、戦闘技術を鍛えることだな!」
アースとマーレの顔を見て今決めた目標を告げる。
正直今かなりわくわくしてる。
他のプレイヤーと比べたらきっと亀の歩みになるだろう。
だけど誰も知らない未知を手探りで開拓していくのは誰も歩いたことがない道を行くものの特権だろうから!
でもその前に2人には聞いとかなくちゃいけないことがあるな。
「っと、俺の方針はこんな感じなんだけど、そもそも2人はこの先どうする予定だったんだ? 俺と一緒にこのゲームをやりたがっていたのはアースから聞いてたけどそれだけだからな!」
そもそも俺は2人にこのゲームで遊びたいからって理由で誘われたんだよな。小説執筆のネタなんてのは、2人と比べれば二の次、三の次だ。はっきり言って天秤にすら乗らない。
まあ俺がいろいろとやらかしているっぽいからすぐに一緒にプレイするのは難しくなっちゃったかもしれないが……。
それでも2人の方針は聞いておきたい。
「俺とマーレは基本的にそれぞれβ時代に入ってたクランの奴らとやるつもりだったぞ?」
「そうなのか?」
アースのその発言に俺は目を丸くする。てっきり三人でパーティを組んでプレイしたいのかと思っていた。
「ああ。俺達の目的はシュンと何か共通のことをやりたいってだけだったからな。だからシュンをこのゲームに誘えた時点で目的は達成出来てるんだよ」
「そうそう! 普段お互いにあまり趣味の話とか深くできなかったけど、これでこのゲームに関していろいろ話せるじゃない? 私たちとしてはそれで十分なの! あとは時々一緒にパーティ組んで遊んだり、イベントに参加したり出来れば十二分よ!」
「そうなのか?」
「それにシュンは私達になんでもかんでも教わりながらプレイしたりするより自分で一からあれこれ考えて探求する方が好きでしょう?」
……確かにそうだな。ミステリーものの小説とか読んでいても最後の答え合わせの前にできるだけ自分で謎を解いておきたいタイプだ。
「私達と一緒だと余り言わないようにしてもどうしても伝わっちゃうだろうしね?」
それについても確かに。2人のことなら特に口にしなくてもある程度はわかってしまうだろうからな……。
それじゃあお互いに気を使ってしまうだろう。
それでも少し申し訳ないな……。
「一応俺達みたいに固定観念のあるやつじゃ見つけられないものをシュンが見つけてくれるかも……なんてゲーマー的な打算もあるけどな! (実際既にとんでもない情報が出てきてるしな……)」
俺が少し申し訳なさそうな顔をしたからかそんなことを口にするアース。
顔に出ていたのか2人だからわかったのか……少し照れくさいな。
かなり気を使わせてしまっている気はするが、その分俺はこのゲームを存分に楽しんでその話を2人に聞かせよう。きっとそれが一番のお礼になる!
そんな風に2人の言葉に感動し決意していると……
「それに私たちのペースに付き合わせるのは少し申し訳ないから……」
少し目を逸らしながらマーレがぽそっと一言付け足す。
……なるほど。おそらくこれが最大の理由だな。確かに初心者の俺じゃ2人には付いていけないだろう。
2人にとってのというかゲーマーにとっての普通は一般人の普通ではないこともあると聞く。
特にプレイ時間なんかはわかりやすいだろう。
俺がこの2人のプレイ時間に合わせたら寝不足で死んでしまう。
とはいえもし2人が俺とプレイしたなら、2人はその辺を気遣って俺に合わせてくれるだろう。
が、そうすれば今度は2人の普段を知っている俺が気にする。
それではお互いに楽しめないと考えてくれているのだろうと思う。
それに俺としても2人から必要以上のネタバレを貰うのは避けたい所だからこの提案は渡りに船といった感じではあるんだ。
まだ読んだ事がない本の内容を先に知ってしまう事程つまらないものはない。
だから俺としても2人とは時々一緒に遊んだりしながら、リアルでこのゲームの話をして楽しむのが一番だとは思っていた。
2人ともなんだかんだと言ってもそんな俺の考えを読んで提案してくれたんだろうと思う。
正直そこまで考えてくれていたとは思わなかったからかなり嬉しい。
嬉しいが最後のマーレの一言は2人が如何にゲーマーとしての沼に嵌り込んでいるかを証明しているようで感謝しながらも少し呆れてしまった。
少し複雑な気持ちになりながらも、2人にたくさんの感謝にほんの少し呆れたを乗せた視線を向けているとその様子に気づいたアースが慌てたように話を進め始めた。
「と、ともかくだ! そういうわけだからシュンとのレベル上げが終わったら俺達はクランのパーティメンバーと合流する予定だったんだよ」
「だったら町に戻るか? 結局話し込んじゃってレベル上げなんてできてないけどもう結構時間経ってるだろ?」
「そうだな、そうするか」
フィールドに出て1時間と30分くらいだろうか? 待ち合わせがあるならあまり2人を拘束するのも申し訳ないからな。
そう思い提案すると2人とも同じ考えだったのか素直に頷き、ズボンについた草を払いながら立ち上がり待ちに向かって移動する。
「あっそうだ。シュン!」
そうして3人揃って町に向かって雑談をしながら移動していると、唐突にアースがなにかを思い出したかのように声を上げた。
「なんだ?」
「いやな? もしシュンがよかったらなんだけどゲームプレイ中動画を撮っておかないか?」
「動画?」
「そうそう。シュンのゲームプレイ動画!」
そのアースの提案に何故かマーレが目を輝かせ始めた。
「それいいわね! 私もシュンがこれからどんなプレイをするのか興味あるわ! アース、あなた珍しくいいこと言うわね!」
「だろ? それに動画があれば後から俺達が確認してアドバイスもできるだろうしな。(それに面白そうだし)どうだ?」
その提案を聞いて少し考えてみるが、別に問題ないな?
特に内緒にしとかないといけないことなんてないし、それどころか後からでもアドバイスを貰えるならメリットしかないし!
それに小説を執筆するときにちょうどいいかもしれない。
そう考え了承を返す。
すると2人は一気にテンションを上げて「さすがシュン!」「わかってる!」と俺のことを持ち上げ始めた。
「はいはい。わかったからやり方を教えてくれ」
「まかせろ! まずはステータス画面の設定の項目を……」
早速とばかりにやり方を説明し始めるアースとマーレ。
意外と多い設定項目に四苦八苦しているとマーレがついでとばかりに俺にお願いしたいことがあると言い始めた。
「お願い?」
「そう! さっきシュンが教えてくれた情報を検証班と情報屋に売ってもいいかしら? お金は全部シュンに渡すから」
「別に構わないけど……。売れるか?」
「売れるわよ! この情報、多分誰も気づいていないことだと思うもの」
「そうか? これくらいなら気づいているやつくらいそれなりに居そうだけど……。そもそもこれってそんな重要な情報か?」
「重要よ! この情報でいくつかのスキルが地雷から抜け出すかもしれないんだから! それと多分だけどこの情報はゲーム慣れしている人間ほど気づかないと思うわ。実際私とアースは気づかなかったし」
言われてみるとそうかも? まあ仮に売れなくても困らないしマーレがそうしたいなら好きにしてもらうか。
「マーレがそういうなら自由にしてくれて構わないぞ。それともし売れたら手間賃として料金の半分はマーレがもらってくれ」
「いいの?」
「ああ。マーレには手間をかけることになるからな!」
「わかった。シュン、ありがと!」
それにそれほど高値が付くこともないだろうしな……。
まあ仮に高値がついてもマーレに半分渡すのを変えるつもりはないが。
さて……マーレとそんなことを話しているうちに無事設定完了だ。ついでに前方には先ほど通った大きな北門が見えてきていた。2人も気づいたようで俺に顔を向ける。
「よし! それじゃここで解散にするか! またなシュン! 何か困ったことがあったらフレンド通信かクラン:ラウンドテーブルに来てくれ! もちろん何もなくても大歓迎だ!」
「私の方でもいいわよ? クラン名はワルキューレ! 女の人しかいないクランだけど私の名前を出せば面通ししてくれるはずだから!」
「了解。なにか困ったことがあったら頼らせてもらうよ!」
「待ってるぜ! ああそれと一度冒険者ギルドに行ってみるといいかもな? クエストを受けたり、初心者のためのチュートリアルをやってくれたりするからな! ……本当は俺たちが教えるつもりだったけど、シュンに関しては俺達じゃ無理そうだからなぁ」
まあ2人はアシスト付きだからな。アシストがない俺相手じゃ勝手が違うか。
「わかった。一度行ってみるよ。教えてくれてありがとな!」
「気にするな! それじゃあまたな!」
「シュン! またね!」
「ああ、2人もまたな!」
そういって2人はこちらに手を振りながら門をくぐって人ごみに紛れていった。
「さて! それじゃあ俺も行くか!」
まずはアースおすすめの冒険者ギルドに行ってみようかな? いや先に契約したモンスターに名付けをするか? MPも大分回復してるし。
そうなると街中で召喚するのはまずいか……。
……確かNPCも現実の人と変わらないって話だったよな? ならファンタジーの定番、門番さんに話を聞いたら教えてくれたりしないか? よし行ってみよう。
「あの! お仕事中すみません!」
「ん? どうした?」
おお! 全く違和感がない! 現代技術半端ないな!
「あの私は召喚術士なのですが街中でモンスターを召喚したりしても大丈夫なのでしょうか?」
「おお! 君は召喚術士なのか! それはまた珍しい。それだったら極端に大きなものでなければ問題ない! それこそこの草原にいるウルフ程度なら全く気にする必要はないぞ!」
「そうなんですね! わかりました。すみませんもう一つ。冒険者ギルドの場所とおすすめの宿を教えてくれませんか?」
ちなみに何故宿について聞いたかというと、このゲームでは街中でログアウトするためには宿を使う必要があるからだ。
フィールドであれば普通にログアウトできるが、街中では宿などの休める場所以外ではログアウト自体ができないのだ。
フィールドに関しても、体がこちらに残ってしまうため見張りがいないとモンスターにやられてしまうらしい。
ちなみにモンスターの攻撃以外は触れることができないためセクハラ行為などはできないようになっている。
そして宿を取る場合は宿のランクによって掛かる金額が違う。最低ランクの宿であればお金は取られないが、次にログインした際に一定時間のデバフかアイテムの紛失がランダムで発生するため最低限の宿には泊まるようにする必要があるのだ。
「いいぞ。まず冒険者ギルドだが、この大通りをまっすぐ進んだ先にある噴水広場にある。剣と狼の看板が目印だ! 次に宿だが、同じ噴水広場にある≪猫の木漏れ日亭≫が金額も程ほどで部屋もきれいだからおすすめだぞ!」
……なんかホントに異世界に来た気分になるな。
挙動も表情も人のそれと変わらない。
まあそれはともかく……
「情報ありがとうございます。俺はシュンって言います。良ければ名前をお聞きしてもいいですか?」
「どういたしまして! 私の名前はトレスだ。よろしくな! シュン!」
「トレスさん。こちらこそよろしくお願いします」
「ああ! それはそうとシュン。君は来訪者かな?」
来訪者ってプレイヤーのことだよな?
「? そうですけど?」
「そうか。いやなに来訪者が我々に話しかけてくることなどなかったものでな」
「そうなんですか?」
「ああ。皆忙しなくフィールドと町を行き来していて我々のことなど眼中にないようでなぁ」
あ~。確かになにかクエストでもなければわざわざ門番に話しかけたりはしないかもしれない。
「それは……すみません」
「いやいや。こうして我々と接してくれる来訪者もいると知れたからな。よければまた話を聞かせてくれると嬉しい!」
「俺でよければ喜んで!」
「ありがとう! ああそうだ。ギルドに行く前に宿をとることをお勧めする。比較的大きな宿ではあるが限界はあるからな!」
「わかりました! アドバイス感謝します! それじゃあ俺はこれで!」
「うむ。またな!」
よしっ。それじゃあ一度宿に行って、その後冒険者ギルドだな。
トレスさんおすすめの宿……どんなところか楽しみだな!




