第75話 水着選び
感染性胃腸炎により投稿が伸びてしまいました。大変申し訳ありません!
そこはミステリーサークルのように鬱蒼としたジャングルの中になぜかぽっかりとできた広場だった。
広さとしては大体……体育館くらいか? そんな広場が砂浜から数メートル程伸びた小道で繋がれている。
「なんというか……凄く不自然な広場だな?」
「う~ん? 不自然というか人工的な感じじゃない? 地面とか踏み固められた感じだし!」
ほら!っと、マーレが指さす先を見ると確かに薄っすらとだが足跡のようなものが残って居る。
他にプレイヤーの姿もないから多分俺達よりも前に来た人間……NPCの足跡だろう。
この広場は前に来たNPC達が作ったのかもしれない。
「それじゃあ早速拠点を作るにゃ!」
まあそんな考察はさておき、にゃん娘さんの音頭で早速拠点を建てることにした。
それぞれのクランで集まり円形の広場の中心を囲むようにそれぞれ用意していたテントを設置する。
木
木 俺 木
木 ラ ワ 木
木 中 木
木 シ 知 木
木 木
木 道 木
木 道 木
砂 浜
話し合いの結果それぞれの拠点の位置は砂浜に向かう道がある側に道を挟んで知識の泉とシャッフェンが奥側にラウンドテーブルとワルキューレがテントを張りラウンドテーブルとワルキューレの間に俺達がテントを張る位置になった。
俺達のテントがこの位置になった主な理由はラウンドテーブルとワルキューレの緩衝材だ。
ラウンドテーブルとワルキューレはどちらも戦闘系クランで言ってしまえばライバル同士。
それぞれのクランのメンバー数も30人程と同じくらい実力も同じくらい。
ただそれぞれのクランの特色としてラウンドテーブルが攻撃よりワルキューレが防御よりのスキル構成のメンバーが多い。
なにせトップであるアーサーとヒルドがそれぞれ剣メインと大楯メインというプレイスタイルなのだ。
そしてこれが一番の特色かもしれないがラウンドテーブルのクランメンバーは男性のみ、ワルキューレが女性のみで構成されているのだ。
ある意味お互いがライバル視するのも当然と言えるだろう。
そんなわけで緩衝材要因として俺が間に入ることになった。俺のパーティメンバーはちょうど男女半々だしな。
まあ俺としてはそのおかげで隣にアースとマーレがテントを張ることが出来たので非常にありがたいのだが。
「よし! それじゃあ海に行くか!」
「はい、主様!」
「行きましょう、にいさま!」
サクヤとユキホがぐいぐいと俺の手を引っ張る。
「はは! そんなに焦らなくても海は逃げないぞ?」
2人に引っ張られながら海のある方に向かって歩き、途中でマーレにも声を掛ける。一緒に遊ぶ約束をしているからな!
「マーレ! 俺達は海に行くけどもうマーレも行けるか?」
「ええ、大丈夫! 行きましょう!」
マーレを加えて移動する。
「そういえばシュンは水着はどうしたの?」
「あ!」
マーレのその言葉にハッとした。
「そういえば水着を用意するのを忘れていた……」
なんせリアルでも海水浴なんてご無沙汰だ。だからすっかり水着のことが頭から抜け落ちていた。
「主様、水着とはなんなのですか?」
マーレの指摘に俺が頭を悩ませていると、サクヤが不思議そうな顔で質問してくる。
そうか。サクヤは水着も知らないのか。
「水着っていうのは水の中で遊ぶときに使う服みたいなものだ」
「そうなのですね……この服ではだめなのですか?」
「そうするとこの服が濡れてしまうだろう?」
さてどうしたものかな……
「あの……シュンさん?」
「シャーリーさん?」
俺が頭を悩ませているとシャーリーさんが話しかけてきた。
「どうしたんですか?」
「あの今偶々お話が耳に入ったんですが、水着が欲しいんですか?」
「はい」
「でしたらお売りしましょうか? 今回のイベント用にいろいろと作っておいたので!」
そうか。シャーリーさんは服飾系の生産職だもんな。
「いいじゃないシュン! 私も彼女から買ったけど可愛いのがたくさんあったわよ!」
「そうか……。じゃあお願いします」
「ありがとうございます!」
「それじゃサクヤちゃんとユキホちゃんの見立ては私とシャーリーさんでやるからシュンは自分とユウゴ君の分を見立てて!」
「わかった。マーレ、頼むな」
「それじゃあサクヤちゃん、ユキホちゃん行きましょ!」
そう言ってマーレは2人を連れていきシャーリーさんもその後ろに続く。どうやらシャーリーさんのテントに向かっているようだ。俺はあまり美的センスが良くないからありがたい。
4人がテントの中に消えたところで俺はシャーリーさんから渡された男物用の水着が絵付きで描かれているカタログを開く。
まさかゲームの中にカタログがあるとは思わなかった。
ユウゴと共にページをめくる。
トランクスみたいな普通のものからブーメランやそれ以上に際どい水着まで……これ全部シャーリーさんが作ったのだろうか? かなりの種類があるがこれ全部を彼女1人で作ったのであればとんでもないな。
このI字タイプ?の水着とかもはや局部以外隠れていないのだが……。
「俺はトランクスタイプのものでいいかな」
「私もそうします」
とはいえ俺は別にこだわりがあるわけではないので無難にトランクスで行く。そしてユウゴも俺と同じものを選んだ。
俺が青でユウゴが赤だ。
この間10分程。カタログを簡単に目を通すだけでそこそこ時間が掛かった。決めるのにはほぼ時間を使っていない。
ま、男の買い物なんてこんなものだよな。
そして女性陣はまだ戻ってこない。以前、現実でマーレの買い物に付き合ったときは丸一日掛かった。
あいつ基本的にはあまり買い物に時間を使わないのだが俺と服を買いに行くと無茶苦茶時間が掛かるんだよなぁ。
何軒も店を梯子して最後にまた同じ店に戻ってなのに何も買わないこともあったりしてな。
「これも男の甲斐性って言う奴なのかね?」
そんなことを呟きながら待つこと1時間。ユウゴと共に先に砂浜でボーっと海を眺めているとシャーリーさんのテントから女性陣の華やかな声が聞こえてきた。
ようやく来たかな?
後ろから聞こえてくる華やかな声にそちらを向くとそこには既に水着に着替えた女性陣が和気藹々と俺達の元に歩いてきているところだった。
「おまたせ~!」
4人の中で一番に声を掛けてきたのはマーレだ。
白のビキニで薄いレースが重なったようなフリルが胸元を彩り、下も同じく薄いレースが重なったようなフリルがスカートのようになっており彼女の白い肌と腰まで届く長く青い髪にマッチしている。髪の先を大きめのリボンで結んでいるのも大人っぽさがあっていい。
身長が少々低いこともあって子供っぽく見られがちな彼女だが胸はそこそこあるし、腰の位置も高めでしっかりとくびれもある。身長以外はしっかりと大人の女性という感じだから少し大人っぽい印象のこの水着もしっかりとフィットしていた。
「お待たせしました、主様」
次にサクヤ。彼女が着ているのは少しボーイッシュな感じの水着だ。上はスポーティな印象のビキニ。そして下にはビキニの上からショートパンツを履いている。全体的に動きやすそうな感じだ。
見た目は現実でのマーレのように肌が白い長い黒髪と大和撫子な見た目だが普段下ろしている髪をポニーテールにしていることもあって随分と印象が変わっている。
「似合いますか? にいさま!」
3人目はユキホだ。彼女は青系のワンピースタイプの水着を着用しており、見た目や言動に沿った子供らしいデザインの水着だ。普段白い髪に青と赤のオッドアイ更に巫女服を着ていることもあって言動の子供らしさを差し引いても神秘的な印象があるのだが今は見た目相応の可愛らしい幼子といった印象に変わっている。
「ちょっと張り切ってしまいました」
そう言って頭を下げたのはシャーリーさんだ。彼女もまた水着に着替えていた。
ハーフリング特有の小柄な体に黒いビキニにパレオを巻いている。多分リアルでもこんな感じの水着をよく着ているのかある意味で一番着方がこなれている。
「みんなよく似合っているな。凄く綺麗だと思う」
「ありがと!」
「ありがとうございます、主様!」
「うれしいです、にいさま!」
「うふふ。私まで褒めていただけるなんて……でもありがとうございます!」
女性が着飾っているときは褒める。これが一番事を荒立てない。鉄則だ。
「それでシャーリーさん俺とユウゴはこのトランクスタイプのものでお願いします。」
「はい……どうぞ!」
「ありがとうございます! それでお代の方は……?」
「その……全部で 30,000Gになるのですが……」
「わかりました」
俺は30,000Gを取り出し彼女に渡す。すると彼女は驚いたようにそのお金を受け取った。
……なぜ驚くんだ? 貧乏だと思われたんだろうか?
「……何の効果もないただの水着だったので高いと言われるかと思ったのですが……」
ああ、なるほど効果なしのただの服だと普通はそんなに高くならないのか……。
因みに内訳はサクヤとユキホのがそれぞれ14,000Gで俺とユウゴのが1,000Gだ。悲しいくらい金額に差がある。
「サクヤとユキホによく似合っていますしこれくらい何ともありません」
それに女の子に服を買う時にケチるのはカッコ悪いしな。
「男前ですね、シュンさん!」
そう言って貰えるとカッコつけた甲斐があるよ。
次回投稿は4月8日(金)16時です!
何とか感染性胃腸炎を脱しました(´;ω;`)でもまだ少しお腹が緩い感じがします!
胃腸炎って治ってもしばらくは後遺症みたいな感じでそうなりますよね!(俺だけ?)
それでは次回もお楽しみに!




