第73話 島へ!
遅くなってすみません!
うっかりミスで予約投稿日を一日ずらしてしまっていました!
少し遅くなってしまいましたが今日の分をどうぞ!
俺がわくわくしながら帆船の出港準備を眺めているとアルヒの町の領主・ロイ様がにこやかな表情を浮かべながら俺に話しかけてきた。
「シュン殿、久しぶりだな」
そう言って右手を差し出してくるロイ様。その様子は実に親し気でザワッと、周囲がざわつく。
周囲のプレイヤーの視線が一斉に集まってくるのがわかる。
それはもはや物理的な圧力を伴っているかのような錯覚すら引き起こしており、頬が引き攣るのを止められない。
視線で穴が開くっていうのはこんな感じなのかもしれないなんて馬鹿なことを考えて現実逃避を図るもそれで現実が変わるわけもなく……。
とはいえ領主様相手に答えないわけにもいかない。
その為、俺は若干頬が引き攣っているのを自覚しながらも全力で笑顔を作り領主様の求めに応じることにした。
「……お久しぶりです、ロイ様」
そう言いながらロイ様の右手を握り返す。その間にも背後から注がれる幼馴染ズやにゃん娘さん達の物言いたげな視線に関しても全力で意識の外に置く。
というか俺も何故声を掛けられたのか分かっていないのでそんな目で見ないでほしい。
「本当に久しぶりだ! 君の活躍はよく耳にしているよ!」
活躍?
「北の森のことについても報告を受けているよ。流石は英雄だと側近ともよく話していてね? また何か褒美を与えなければと考えているところだよ!」
そ・れ・か! ドルグに話をしてからその後どこにどう話がいったのか全く聞いていなかったけど、よくよく考えて見ればこんだけ大事なら上に話が言っていて当然か。
「いえ、見つけたのは偶々ですから」
「ふむ……謙虚というかなんというか……もっと誇ってもいいのだよ? まあそういう奥ゆかしいところも君の良いところだけどね!」
「はあ……?」
まあ日本人ですから(偏見)。
というかいったい何なんだ? なにかあるのか?
「では失礼するよ! 挨拶がしたかっただけだからね! 短い時間だが船旅を楽しんで!」
「あっはい」
……えっ? それだけ? それだけのために俺こんなに注目される羽目になっているの?
そうやってあっさりと終わってしまった会話にこれだけのためにまた注目度が上がってしまったと俺が肩を落とした瞬間……
「ああそうそう。島ではあまり気を抜かずいろいろと気を付けてね?」
俺にだけ聞こえるくらいの小さな声音で最後に付け足される言葉。そこには先ほどまでにはなかった真剣みが宿っていて……。
先ほどまでの会話との落差に一瞬思考が停止し、すぐに再稼働させてロイ様を見る。
そんな俺の様子にロイ様はニッ、と口角を上げてそのまま船の奥へと入って行ってしまった。
「……」
思わず呆然とその背を見送ってしまう。
いったいあの島にはなにがあるのか……
「出 港 ~~」
俺が考えを巡らせようとしたところで船員の出港の合図が響き渡る。
そしてその声によりハッとした時には既に遅く。俺は周囲を幼馴染達に囲まれてしまっていた。
「あ、はは、はぁ」
俺の戦いは既に始まっているようだ。
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「疲れた……」
あの後……結果としてそれほど騒ぎには成らずに済んだ。
にゃん娘さんが俺から簡単に事情を聞いて素早くまとめて周囲を抑えてくれたのだ。
流石は情報ギルドのトップというべき手腕で俺から2,3質問したらその内容だけであっという間に状況を把握し、周知して騒動の種を沈下するのだからとんでもない。
まあそれでも穴が開きそうなほどの視線に晒されたことで既に疲労困憊ではあるのだが。
「助かりました、にゃん娘さん。」
「シュン君も大変にゃね……まあ海でも見て癒されるにゃ」
「ありがとうございます」
本当ににゃん娘さん様様である。
そんなわけで俺は今、甲板でのんびりアース達と船の上からの景色を堪能している。
「綺麗ですね、主様!」
「あ! あそこにお魚が泳いでいます!」
サクヤとユキホも先ほどまで周囲の雰囲気に不安そうな表情をしていたのだが今は流れていく大海原を大はしゃぎで眺めては俺に話しかけてくる。
その様子は幼い姿も相まって実に可愛らしい。
そしてそれは周囲のプレイヤーも同じらしく全員がほっこりとその様子を眺めていた。
今日はここまでたくさんの視線に晒されたり、痴漢されそうになったり散々な目に合わせてしまっていたからな。
これで少しでも癒されてほしい。
因みにユウゴは景色なんてそっちのけで同じ大楯使いであるヒルドさんと大楯について熱く語り合っている。
なんというか俺があまり縛ったりしないこともあって皆自由だな……。
「シュンは島に着いたらまずは何からやるの?」
海を眺めながらサクヤとユキホの言葉にうんうんと相槌を打ちのんびりとしていたら自身のクランメンバーとなにやら打ち合わせをしていたマーレが島での予定について確認してきた。
……関係ないけど(いやあるか?)ヒルドは話し合いに参加しなくていいのだろうか?
「あ~正直あまりしっかりとした予定があるわけではないんだけど……初日は折角だしサクヤ達と海で遊ぼうかと思ってるんだ」
とはいえ別に秘密にすることでもないので正直に答える。
ゲーム時間で1ヶ月近く師匠達に預けっぱなしで殆ど連絡もなしに放置してしまったからな。合流してからもイベントのために買い物に行く以外は殆ど模擬戦みたいな修行の延長線みたいなことばかりやっていたし。
その埋め合わせも兼ねて少しくらい遊んでやらないと。
「えっ? シュンは初日は海で遊ぶの? じゃあ私達も一緒してもいい?」
「えっ? マーレ達も海で遊ぶのか?」
正直意外だな……。てっきり1分、1秒もおしいからとか言ってどれかの島に突撃するもんだと思ってた。
「ええ。最初はガンガン突撃するつもりだったんだけどそれだと最後まで持たないかもって話が出たのよ」
俺の考えていることがわかったのか苦笑しながらそう説明するマーレ。
あ~確かに1週間も実質サバイバルをするんだから最初から最後まで全力全開で、というわけにはいかないか。
肉体的には大丈夫でも精神的に参ってくるだろう。なんせここはVR。しかもイベント中は時間加速の関係で疲れたらログアウトして休憩というわけにはいかないのだ。
「そんなわけで息抜きもいるかなってなってね? だから良かったら一緒にどうかなぁって思って」
「そういうことなら一緒に遊ぶか」
にしてもマーレと海で遊ぶなんて子供の時以来だな。
「……シュンと海で遊ぶなんて子供の時以来ね」
心の中で思っていたこととぴったり同じことを言われてマーレに視線を向ける。
「楽しみね、シュン」
そこには考えていることなんてお見通しとでもいうようないたずらっぽい表情をしたマーレがいて……
「ふふっ」
「ははっ」
思わず2人で笑い合う。
そこにはとても穏やかでゆったりとした居心地のいい空気が流れる……
「主様……」
「にいさま……」
マーレとは反対側から袖を引かれそちらに顔を向けるとそこには物言いたげな顔をしたサクヤとユキホが居て……。2人の視線は俺を通り越してマーレの方に向いている?
首を傾げてマーレの方に視線を戻すとなぜか顔を赤くしているマーレが居た。
「えっ、と」
「……」
気、気まずい! なんだ? 今の一瞬の間に何が起こった!?
「島が近づいてきたぞ!」
その瞬間、響き渡る声にマーレと共にハッとする。
なんだかよく分からないが助かった!
何故かまだ少し顔の赤いマーレに目配せをして船首の向こう側を見る。
そこには広く白い砂浜と先を見通せない鬱蒼としたジャングルが生い茂る巨大な島が存在していた。
次回投稿は3月25日(金)16時です!
予約投稿の日付ミス……。痛恨のミスです!
次からは気を付けなくては……!
初日の島での予定は海遊びです! 水着回です! 海ならやっぱりこれは外せない!
それでは次回もお楽しみに!




