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INFINITY STORY'S ONLINE  作者: 藤花 藤花
第2章 夏のキャンプイベント!聖なる島と太古の遺跡
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第69話 イベント開始直前です!

 サクヤとユキホの見事な舞を鑑賞し、サクヤ達のことを放って置きすぎたことを師匠に平謝りした日から現実で数日。夏休みに突入してから早一週間が経ち、遂にキャンプイベント当日がやってきた。

 いや今日まで実に長かった。

 あの後……師匠にサクヤ達のことを任せっきりに(いやこの場合は押し付けてか?)していたことを平謝りし、その後少々の説教を貰ってから俺は放っておいた間の埋め合わせにできる限りサクヤ達の希望に沿って共に過ごした。

 ユウゴにサクヤも混ぜて模擬戦をしたり(大人げないと言われようともちろん全勝した)、皆で一緒に買い物に行ったり(一緒にイベントで使うテントや回復薬も買った)、師匠の家に帰ってからはサクヤ達が満足するまでお世話をされたり(主にサクヤとユキホの二人から)して楽しく過ごした。

 ……模擬戦はともかく買い物中はサクヤとユキホで俺の左右の腕にそれぞれ抱きついたまま練り歩き、屋敷では食事を全て二人から食べさせられ、ログアウト時はサクヤとユキホの間で添い寝という、いつ通報されるかと冷や汗を流しながらだとしても実に楽しい時間だった(筈?)……!



 閑話休題


 まあそれはともかくとしてそんなこんなでイベント当日である。

 朝起きてから家事や夏休みの宿題をこなし最近あまり読んで進んでなかった読みかけの小説を久しぶり(数週間くらい)に読んだりして現在時刻は17時。

 イベント開始時刻は19時なのであと二時間でイベント開始だ。

 既に港町マルフルーアには移動しているので後は開始を待ってログインするだけである。


 ……ぱらっ ぱらっという本をめくる音とクーラーの風の音、そして外から聞こえるセミの鳴き声だけが静かな部屋の中に響き渡る。

 今読んでいるのはどこにでもありそうな英雄の物語だ。

 孤児だったどこにでもいる少年が様々な出会いを経て力をつけ最後は仲間と共に強大な敵を討つ。

 ありきたりで平凡などこにでも転がっていそうな物語。だけど俺はこういうどこにでもありそうな話が好きだ。

 ちっぽけな力しか持たない人間が自分の為、仲間の為、見も知らない誰かの為に壮絶な覚悟と思いを胸に巨悪に立ち向かっていく。

 様々な運命に翻弄されながらもそんな運命を切り裂いて進む姿は確かに英雄だと思える。


「……」


 俺はこれまでのISOでの自分の軌跡を振り返る。

 俺を英雄だと称する彼らの言葉を思い返す。

 久しぶりにこういった本を読んでつい自身と物語の英雄を比べてしまう。

 読めば読む程……なんというか違和感がある。

 まあ物語とリアルよりとはいえゲームの違いと言ってしまえばそうなのかもしれないけど、やっぱり俺はそんなかっこいいものじゃないと感じる。


「……そろそろ時間か」


 時計を見るとイベント開始まであと一時間。

 師匠達がいろいろとフラグを立ててくれていたからつい長々と考え込んでしまった。

 まあ今回はアーサーやにゃん娘さん達トップクランに陸や葵もいる。

 なにかあっても俺が矢面に立つ事は無いだろう。

 そう思いながら俺はISOの世界にログインした。


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 ログインし、港町の宿屋の一室で目を覚ました俺は早速サクヤ達と共にイベント開始位置である港へと移動した。

 港に入ると既にそこには大勢のプレイヤーが集まっている。


「凄いプレイヤーの数だな」

 

 そのあまりの数に思わず圧倒されながら周囲を見渡し、知り合いを探す。

 少なくともアースとマーレはログインしているから恐らくこの中のどこかにいるはずだ。


 しばらくきょろきょろと周囲を見渡しながら適当に移動しているとふいに周囲の空気が変わったことに気がついた。


「なんだ?」

 

 思わず立ち止まって周囲のプレイヤーを見るとチラチラこちらを伺いながらひそひそと何かを話しているプレイヤーの姿が……。

 そんなプレイヤー達の様子に首を傾げながら、嫌な予感がしてサクヤ達に声を掛け、少しだけプレイヤーから距離を取る。

 幸いにもプレイヤー集団の外側に居たため特に問題なく距離を取れる。

 そしてそんな俺たちの警戒している様子を見て、何故か俺たちの方を見ていたプレイヤー達が慌て始めた。

 そのせいで先ほどまで潜めていた声が大きくなり距離があっても聞こえるようになる。


「お、おい! なんか警戒されちゃってるぞ!」

「そりゃこんなコソコソしながらジロジロ見てたら警戒するって!」

「ど、どうする?」

「どうするもなにも……」

「行く? 行っちゃう?」

「行くならお前行けよ!」


 そう言い合いながらお互いに肘を突き合わせている何十人ものプレイヤーの集団。異様である。

 そんな異様なプレイヤー達の様子に逃げる算段を始めたところで遂に意を決したようにプレイヤー集団の中で最も俺たちの近くにいたプレイヤー達が俺達に向かって近づいてきた。


「あ、あの「よう、シュン! ちゃんと時間通りに来たな!」」


 そうして見も知らぬプレイヤーが俺たちに声を掛けようとしたところでその声に被せる様に幼い頃から聞き馴染んだ声が俺達の背後から発せられた。


「アース!」

「おう! 探したぜ、シュン!」


 その聞き馴染んだ声に後ろを向けば、思った通りそこに居たのは俺の幼馴染であるアースだった。

 

「それはこっちのセリフだ! お前どこにいたんだよ!」

「ん~……まあそれはいいだろ? 迎えに来たからとにかくここ移動しようぜ!」


 そう言ってアースは有無を言わさず俺の腕を掴み、どこかへと引っ張って行こうとする。

 俺はその強引なアースの行動に驚き、たたらを踏みながらもアースの後ろについて歩き出す。そんな俺達の後ろに慌てたようにサクヤ達も続いた。


「お、おい! アース!?」

「いいから来いって。迎えに来たって言ったろ? あっちにマーレやにゃん娘さん達もいるからさ!」


 そのアースの言葉に俺は口から出掛かっていた文句を押し込み、大人しく付いていくことにする。


「わかった。まあ一応迎えありがとな?」

「いいってことよ!」


 お礼の言葉にニカッと笑って気のいい返事をするアース。

 そんな彼の様子に俺はいつの間にか入っていた肩の力を抜いて安堵の溜息を零した。

 そこでふと後ろを確認する。そこには先ほどのプレイヤーが俺達に向かって虚空に手を伸ばし、残念そうな表情で固まっている姿があって……


「なあ、あのプレイヤーって……」

「あ~……まああんまり気にしなくてもいいぞ?」

「気にするなって言われてもなぁ」

「だよなぁ……。まあ簡単に言えばシュンのファン?」

「ファン?」


 アースのその言葉に目が点になる。なんか今までの人生で最も縁遠い言葉が出てきたような……?


「そ! まあ詳しくは皆と合流してから説明してやる」


 その言葉を最後に更に速度を上げて移動する。

 やっぱり気になるからな。

 とはいえそれほど離れた場所に居たわけではなく速度を上げたこともあり、直ぐにマーレ達のいる集団を見つけることが出来た。

 アースに引っ張られながらその集団に近づく。

 そこには俺達に向かって笑顔で手を振っているマーレの姿があった。


「おーい! シュン連れてきたぞ!」


 アースと共にマーレに手を振り返しながらその集団に近づく。

 よく見るとその集団はにゃん娘さんやアースにヒルド、ガンテツといった見覚えのある面々で構成されている。その他の見覚えのないプレイヤーは恐らくクランメンバーだろう。

 とはいえ見覚えのある面々の多いこともあり、俺は何となく安堵の溜息を零す。


「シュン数日振り! 無事に合流できてよかった!」

「マーレ、数日振りだ。俺も無事合流できてよかったよ」


 そう言ってお互いハイタッチをして喜び合う。

 ちなみになぜ数日振りなのかと言えばイベントが近づいてきたことと夏休みに入ったことで二人の廃人プレーに拍車がかかったからだ。特にここ数日は顕著で正直いつ寝ているのかも定かではない。

 そうして俺達が合流を喜んでいるといつの間にかにゃん娘さん達フレンド登録をしたトップクランの面々も挨拶をしに近寄ってきていた。


「シュン君、久しぶりにゃ!」

「にゃん娘さん、お久しぶりです!」

「久しぶりだね、シュン」

「アーサーも久しぶり!」

「お久しぶりね」

「ヒルドさん。お久しぶりです!」

「久しぶりじゃな、シュン」

「ガンテツさんも久しぶりです!」


 そうして4人と挨拶を交わし、軽く雑談したところで俺は先ほどはぐらかされたことをアースに聞いてみることにした。

 

「それでアース、さっきのことなんだけど……」

「ああ、それなぁ……」


 アースの話は実に単純で簡潔だった。

 簡単に言えば以前俺のミスで世に出てしまった例の動画に触発されたプレイヤーにサクヤ達召喚モンスターの可愛さにやられたプレイヤーが新規で入ってきたプレイヤーも含め多数いる、というただそれだけのことだった。


「まじか……」

「ああマジだ。特にお前の召喚モンスターのファンはかなり多いからな?」


 アースの言葉に俺はマーレやヒルド達、女性プレイヤーに可愛がられているサクヤ達を見る。

 確かにまだ幼くて可愛らしい。特にユキホは精神年齢も低めなので特に可愛がられている。

 因みにユキホのことを紹介した時にまたひと騒動あったのだがそれについては割愛する。

 一言だけ言うならば情報熱と可愛い熱が入り混じって非常にカオスなことになったとだけ言っておく。


「つまりアイドルかなんかに出会ってしまった一般人みたいな感じだったわけか……」

「そういうことだ。正直あのままだとかなりの騒ぎになりそうだったから無事に確保できてほっとしてるよ」

「確保って……」


 俺は野生動物か何かか?


「でもシュン君、掲示板では既にかなり騒がしくなっているにゃよ?」


 そう言って唯一サクヤ達を愛でる方に行かなかったにゃん娘さんが掲示板を見せてくる。

 そこには広がっているのはもはや肉眼では負えないレベルで高速で掲示板が流れて行っている光景。

 

「……ありがとな、アース?」

「? なんだかわからないがどういたしましてだ!」


 その光景に俺は改めてアースにお礼を言わずにはいられなかった。

次回投稿は2月25日(金)です!


はてさてようやくイベント当日です!

ここでちらっと周囲からみた主人公の立ち位置を出してみました!

トップクランの他メンバーについては何人かだけですがいずれまた改めて出します。

ここで変に出すとメンバー紹介だけで時間を食いすぎることになるのでw


それでは次回もお楽しみに!

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