第67話 物真似 気功術?
「なんというかまるで人間戦車だな」
これがユウゴのステータスを見た俺の正直な感想だった。
「だろ? やはり今時は盾役でもこれくらいの攻撃能力はなきゃやって行けないからなぁ」
そう言って得意げな顔をしているのはドルグだ。
俺は今、ドルグによるユウゴ下剋上教育プランらしきものを堂々と目の前で練っているのをげんなりと諦めの境地と共に眺めた後、満を持してユウゴのステータスを識別していた。
そのユウゴの努力の結晶がこちら。
■《魔物》名前:ユウゴ ♂ Rank:2■
種族:小護鬼 Lv.15↑
職業:護剣士
ステータス
HP:628/260→650 MP:7/10→40 KP:87/90→120 EP:60/100
STR:65→155 VIT:65→155 INT:10→20 MND:10→20 DEX:15→30 AGI:30→75
▼Skill:≪大剣術Lv.25↑≫ ≪大盾術Lv.25↑≫ ≪身体強化Lv.15↑≫ ≪剛力Lv.15↑≫ ≪剛体Lv.15↑≫ ≪念動Lv.10≫≪NEW≫
圧倒的である。Rank:2の面目躍如と言わんばかりの伸び率。
物理に特化したステータス。
レベル的には俺よりも10は低いというのに俺の唯一まともなステータス数値であるMNDを上回る能力が2つもある。
ランクの差かユキホよりはレベルの上りが悪いがそれでも確実に他のメンバーを上回るステータスだ。
……そして何より恐ろしいのはスキルだ。レベルは上がっているが新しく覚えたのはたった一つ。
だというのにあの戦いっぷり。末恐ろしいとはこのことだろう。
≪AS:念動≫
・MPを消費して、無機物を動かす。動かす物体の重さ、同時操作数により消費魔力は変動する。効果は解除するまで継続する。
レベルが上がることで同時操作数が増える。(現在同時操作数:2)
消費魔力=重さ×数×1.5
【SW:包んで浮かす。この私に動かせないものは無し】
大剣の重さが10、大楯が12。ユウゴの残りMPが7だから消費はMPの消費はそれぞれ15と18で合計33MP。
圧倒的な筋力ステータスと念動による重さ軽減のダブルコンボ。
これがあのタンクらしからぬ移動速度の正体といったところか。
にしてもHPがたったの22しか減っていないのはショックだ。倍近くSTRとVITで差があるとここまでダメージが出ないんだな……。
これを見るとよくもオラグランデを倒せたものだと思う。
「どうでしょうか、主?」
俺がユウゴのステータスに驚愕していると、ユウゴがどこか自信なさげな感じで自身の成長振りに関して聞いてくる。
「本当に物凄く成長したと思うぞ? 正直俺の想像を超えてたと思う。自信を持っていい」
実際もし俺がユウゴを正面から倒し切ろうと思ったら、今の俺のステータスだとかなり時間が掛かる。
オラグランデの時と同じく一撃食らえば敗北必須な上、自己回復はせずとも特に鎧を装備しているわけでもないのにこの防御力だ。
心底味方で良かったと思う。
「そういえばお前いつの間にあんな技を覚えたんだ?」
俺がユウゴのステータスを見てほっと息を吐いていると確認は終わった思ったのか唐突に話題を変えるドルグ。
「あんな技……って、発頚のことか?」
「それだ! 確かこいつらの修行前は使ってなかったよな?」
「まあそうだな」
「確か気功術とか言ってたと思うが、俺の知る【気功術】というスキルは誰にも師事することなく、一朝一夕で身に付けられるものじゃない筈だ」
頭の上に疑問符を浮かべながら俺にそう問いかけてくるドルグ。
……なるほど。この世界にも実際に【気功術】というスキルがあるのか……。そしてそのスキルは自力で覚えるのが難しい、と。
だからこそそんなスキルをなぜ俺が使えるのかわからない訳か。
「それについては私も聞きたいですね」
そんな風に俺がドルグの疑問に納得していると、背後から恐らくこの世界で最も聞きなれた声が後ろから投げ掛けられる。
声の方に顔を向けると、そこにはいつの間にか道場の壁際から近くまで移動して来ていた師匠達の姿があった。
「やっぱりシズカが教えたわけじゃないんだな?」
「当然です。私は刀士ではあっても格闘家ではありません」
「……」
俺はその師匠の発言に思わず黙り込む。だってこの人ならそれくらいできそうだし? これくらい嗜みですとか言いそうだ。
「それはともかく……シュンさん、どうなのです?」
なんというか師匠、怒ってますか?
「えっと、そのオルソを見て覚えました……」
どことなく怒気のようなものを発している師匠に冷や汗を掻きながら正直に暴露する。
ちらりと師匠の後ろを見るとサクヤとユキホも同じように固まっているのでこの怒気は俺の勘違いではないはずだ。
……正直何故怒っているのかはわからないけど、俺に怒れるこの人に逆らう気概はない!
「オルソ?」
「はいそうです」
「オルソ……確かシュンの報告にあった格闘術を使う熊のことだな?」
俺の出した名称に首を傾げる師匠を尻目になにかを思い出すように宙を見上げながら俺の言葉を補足するドルグ。
そのドルグの言葉を聞き、思い出したように手を合わせる師匠。
「ああ! 少し前にシュンさんが言っていた仲良くなったと言う熊ですね?」
「はい。彼が使っていたのを見よう見まねで真似て覚えました」
あれは俺がオルソと共に邪素の森で魔物狩りをしている時のことだ。
あまりにもオルソが簡単にモンスターを倒すのでなにか倒すのに秘密があるのかもと思い、魔力視スキルまで駆使して彼を観察した。
「その中で使っていたのがあの技なんです」
「ほほう」
ドルグが面白そうに俺の言葉に頷く。
「俺と戦っているときに使っていた地面を揺らす技を見たときに気づくべきだったんでしょうが……今俺が使った発頚も奴の使っていた地面を揺らす技、震脚(仮)も気力を体の外に放出することで実現していました」
今思えばそれがドルグの言う気功術なんだろう。
「それはわかります。でもシュンさんは気功術を習得していませんよね? それなのにどうやってそれを使えるようになったのです?」
「俺は別に気功術を覚えたわけではありません。あれはただの気力操作です」
「気力操作? ……なるほどそういうことですか」
師匠が納得したように頷く。
そう俺はオルソが気力を体外に放出しているのを観察し、それと同じように気力操作で気力を体外に排出することであれを実現したのである。 つまり発頚に関しても発頚(仮)なのである。
ちなみに発頚(仮)の他に震脚(仮)も習得している。
この2つの技。気力操作で上手く使えば衝撃の方向性を割と自由に調整できるので中々に使い勝手が良いのだ。
「そういうことでしたか……」
ここまで説明をして、ようやく師匠は納得したように怒気を収めた。
「あの、師匠? なにか問題がありましたか?」
怒気がなくなり、ほっと胸を撫で下ろしたところで今度は俺から師匠に尋ねる。
「いえ、あなたが私から既に刀術を習っているというのに他の流派の武術にも手を出したのかと思ったので……」
「それは……なにかまずいのですか?」
師匠の語った理由に今度は俺が首を傾げる。
「二兎を追うものは一兎をも得ず……ですよ? 片手間で神通流を極められるとは思わないことです」
……もしかして複数の流派を同時に習おうとするとなにかデメリットでもあるのか?
レベルの上がる速度が落ちるとかそもそも技を覚えられなくなるとか?
「ともかく神通流を極めるまでは他に目移りなどしないことです」
そう言ってこの話題を終わらせる師匠。これは高確率でなにかあるな……。
「では最後にサクヤさんのお披露目と行きましょう」
次回投稿は2月11日(金)の建国記念日です!
てなわけでユウゴのステータスでした。目指すは人間戦車!(人間じゃないけどw)
ついでにシュンが使った技能の種明かしです。
64話で書かれたシュンのステータスを見て、ん? と思った読者様これが種ですw蓋を開ければ実に単純w
それにしても……結局サクヤの成長まで届かなかったでござる!
書いていたら思ったよりも長くなってしまった!
次こそは……!
それでは次回もお楽しみに!




