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INFINITY STORY'S ONLINE  作者: 藤花 藤花
第2章 夏のキャンプイベント!聖なる島と太古の遺跡
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第66話 ユウゴの成長

 ユキホのことについて説明を求めてから10分程。

 ようやく先生の話が結論まで到達し、ユキホの異常について把握できた俺は……


「はぁ~……」


 まだまだ先があるというのについ深く安堵の溜め息を漏らしていた。……主に疲労が原因で……。

 全く……この人(先生)真面目にやれば凄い人なのにどうしてこう変なところで遊び心を出すのだろうか?

 初めはおどけていてもなんだかんだきっちりと召喚術について解説してくれたりしたのに……。

 ユキホを召喚した時くらいからはっちゃけ始めて今ではこれである。

 正直最初の風格のあるあのかっこいい先生のイメージを返してほしい。

 ……まあある意味では狐のイメージに近いのかもしれないけど正直こういった説明の時は面倒臭い。

 

「ともかくこれでユキホ君に関する疑問は解けたかい?」


 とはいえ俺の痛烈な発言にようやく真面目スイッチが入ったらしい。

 反り返った背筋を戻し、表情を改めた先生は確認をするように俺に問いかけてくる。


「はい、先生。疑ってすみませんでした」


 先生が真面目な顔になったため、俺もまた真面目な顔を作って先生の問いかけに答え、一応謝罪と共に軽く頭を下げて置く。

 今までの先生の行動や発言が原因とはいえ、きちんとした理由もあったし、必要性にも納得できたからな。


「気にしなくていいさ! 君の反応を見て楽しんでいた『おい!』のも事実だからね! ……それにしても君は本当に……随分と契約した子を大事にしているんだね?」


 謝罪したことを後悔したくなる発言と共に真面目な表情で突然変なことを聞いてくる先生。

 俺は先生の真面目な表情に色々と突っ込みたい気持ちを飲み込んで答える。


「……おかしいですか?」

「いいや? おかしくなんかないさ! ただ聞きたくなっただけだよ!」 

 

 真面目な表情でおどけたようにそんなことを言う先生。

 ? よくわからないけど……


「俺にとって、そうすることが当然だからです」


 特に悩むこともなくそう返答する。

 一応色々理由を考えて見たけどこれが一番しっくりくる返答だと思う。

 既に俺にとってサクヤ達はかわいい妹分や弟分みたいな存在だ。

 リアルでは一人っ子な俺だがアースやマーレという幼馴染兼兄妹みたいな相手がいることもあって自分のことを深く慕ってくれて自分も好意を持っている相手というのはなんというか……もはや“家族”って感じなんだよな。

 家族を大事にするのは当然だろう?


「そうか、当然だから……か。 ならこれからもそう在り続けるといいよ! 仲良くすれば契約した子はきちんと応えてくれるからね!」


 そんな俺の返答になっているのかいないのかよくわからない返答に嬉しそうな表情で頷いている先生。

 そんな先生のよくわからない発言に俺は違和感を覚える。  

 本当に一体なんだ? 

 

「また話がズレたね! それじゃあユキホ君についてはもう特に聞きたい事は無いかな?」

「……まあ一応は」


 感じた違和感を解消しようと口を開こうとしたところで、まるでこれ以上俺に質問させまいとするかのように先生は話を戻しに掛かった。

 俺はそんな先生の様子に更に疑念を募らせるが見る限り聞かれたくないことのようにも感じた為、先生の話に乗ることにする。

 ……というかこの人、隠し事が下手すぎるだろう!

 俺も人のことは言えないが……。

 

 ともかく他に聞きたいこととしては、なんで師匠に舞やら歌を?とか、だろうか?

 が、これはまた後で本人に聞けばいいことだからな。

 だからは今は特にない。


「そんじゃまあ次は俺……というかユウゴかな?」


 先生との話が終わったところで今度はドルグが前に出てくる。

 まあユウゴの方はそんな非常識なことにはなっていないだろう。

 なんせ教えているのは常識人枠だと思われるドルグだからな!


「ユウゴですか? それじゃあまずは識別を……」

「いや、それよりもいい方法がある」


 ドルグのその発言に識別を発動させるのを辞める。

 そしてドルグがそう発言した瞬間、まるで打ち合わせでもしていたかのようにドルグとユウゴを除いたユキホも含む全員が道場の壁際に素早く移動する。


「え?」


 あまりの早技にぽかんと壁際に移動した面々を見る。

 そんな俺を見てドルグは実に楽しそうな顔でこう宣った。


「実力を測るなら実際に戦ってみるのが一番だろう?」


 ドルグのその言葉と共に緊張した面持ちで俺の前に立つユウゴ。


「よろしくお願いします、主!」


 …………えっと、まじで?


「ドルグ……」


 困惑の余り思わずドルグに視線を向ける。


「いいから戦ってやれよ。お前に強くなったところを見せるって楽しみにしてたんだからな?」


 だがドルグはそんな俺の困惑などお構いなしだった。

 

「スキルやらレベルなんて見たってそんなもんで強さなんてわからんだろう。それなら一度戦ってみるのが一番手っ取り早い。違うか?」


 それどころか更に追い打ちを掛けてきた。


「それにお前だってこいつの成長を見てみたいだろう?」

「……まあ」


 確かに見てみたい。それは確かだけど……。

 ちらりとユウゴを見る。不安げな様子で俺とドルグのことを見上げ視線を行き来させている。

 その様子はまるで飼い主にお預けをされた犬のようで…… 


「はぁ~、わかった」

「ありがとうございます、主様!」


 俺はがっくりと了承を口にした。


「やるからには全力でやるからな」

「当然です!」


 というかユウゴのステータスを考えると、下手をしたら俺よりもステータスが高い可能性があるから手加減なんてしたら瞬殺されるかもしれん。


「よし。シュンの覚悟が決まったところで……両者構え!」


 ユウゴとの間に3メートルくらい距離を取って向かい合う。

 ユウゴは背中から大剣と大楯を抜いて構え、俺は腰の刀に手を添え、いつものように意識を切り替える。

 ……そういえばこうして向かい合うのは召喚した時以来か。

 あの時のことを思い出しながら俺に向かって武器を構えるユウゴを見る。

 

「始め!」


 その瞬間ドルグの模擬戦開始の合図がシーンと静まり返った道場の中に大きく響き渡った。

 俺はユウゴの構えを見る。

 左手に持った大楯を前に出し、大剣を持った右手を大楯と体で隠すように構え、重心を落とす。隙の少ない構え。

 恐らくは正面に置いた大楯で正面からの攻撃を防ぎ、大楯を躱す為に回り込んだところにユウゴの左手側なら大楯で右手側なら大剣で迎撃するカウンター戦術。

 俺のように一撃の重さがないタイプの刀使いにはかなり有効的な構え。


「「……」」


 じりっ、とお互いにお互いの出方を伺う。

 そして次の瞬間、ユウゴが弾かれるように俺に向かって突撃してきた!

 

「っ!」


 オルソを思い起こさせるような凄まじい速度。それでもって3メートルの距離を一気に食い潰し、大楯でタックルを仕掛けてくるユウゴ。

 こういうのをシールドバッシュ、とか言うんだっけ?

 まるで殴りつけるような勢いでユウゴの大楯が俺に向かって突っ込んでくる。

 それを俺は何とか左側移動して躱す。ユウゴの構えをカウンター戦術だと思っていたからかなり危なかった。

 だがユウゴの攻撃はここで終わりではなかった。

 左側……つまりユウゴの右手側に回った俺に今度は右手に握られていたユウゴの大剣による横薙ぎが迫る!

 それを走る勢いでスライディングして下を潜り抜ることで躱し、そのまま勢いを利用して体を跳ね上げる。

 

「風抜」


 スライディングで背後に回ったことで見えたユウゴの背に向かって模擬戦が始まってから一度も抜いていなかった刀を抜刀。


 ガキィ!!


 俺の刀がユウゴの背中に決まろうとしたところで再び大楯が俺とユウゴの間を隔て、俺の刀を弾き返す。


「うお!」


 弾かれたことで態勢が崩れたところに再び俺に向かって突き出される大楯。

 俺はそれを態勢を崩しながらバックステップで回避し、態勢を立て直しにかかる。 

 が、もはやそれを許してくれる相手ではなかった。

 気づいた時には大楯の陰に隠れるように動いていた大剣の突きが迫っている。

 だけど……


「視えてるぞ、ユウゴ」


 俺にこういった奇襲は通じない。感応と危機察知のコンボに掛かればその程度の奇襲は意味を成さない。

 そして……


「視えたぞ、ユウゴ」


 彼の戦術についてもこの数度の攻撃で把握する。

 ユウゴの戦い方はつまるところ大楯と大剣の重さを利用し、発生した遠心力を利用した連続攻撃だ。

 最初の構えは防御ではなく攻防一体の構え。仮に俺が最初から攻めてきたら予想したようにカウンターで返してきただろう。

 だが相手が攻めてこなければその構えはそのまま攻めの構えに変わる。

 大楯を構えて突撃することで正面からの攻撃を防ぎながら相手を引き潰しに掛かり、躱されれば右なら急停止したことで発生するエネルギーを利用して左回転し右手の大剣で、逆ならやはり左回転で大楯を相手が動くのに合わせて移動し、迎撃すればいい。

 後ろに回られてもそのまま回転して大楯で迎撃すればいいだけだ。

 そしてその後、距離が近ければそのまま大楯を付き出すだけでそれは立派な攻撃になる。


 刀の上を大きな鉄の塊が滑っていく。理屈がわかれば対処もできる。

 刀を動かして、大剣の流れる方向を()に行くように調整する。

 俺の頭上を流れていく大剣。大剣が上に流れたことで大剣を握った右手が上に持ち上がり、隙間ができる。


「はあ!」


 できた隙間に突きを放つ。これは決まったと思ったところで刀の下からの衝撃。刀が上にかちあがる。

 刀が上がるのに合わせて俺の目の前をユウゴの足の裏が通り過ぎる。

 見ると大楯を支えにサマーソルトキックを敢行しているユウゴの姿が……。

 いやもうこれタンクじゃないよね? 

 

 

 ……だけどいい回避の仕方だ。

 口元を笑みに変えながら上に跳ね上げられた刀の勢いも利用して後ろに背を逸らせ一回転する。いわゆるバク転だ。

 ちなみに身軽スキルのおかげでこんなことが出来たが現実では俺はバク転なんてやったこともない。

 それにより俺はユウゴの攻撃範囲から離脱し、態勢を整える。

 ユウゴも流石にサマーソルトキックを敢行したこともあり、追撃できなかったようだ。

 再び向かい合って睨み合う俺とユウゴ。

 正直今のは危なかった。これだけでもかなりの成長を感じられる。自身の持つ武器と能力をきちんと理解した動き。

 ドルグに預けてよかったと思える。

 ……これは俺も成長したところを見せないとな。


「次は俺から行くぞ」


 俺の宣言に警戒も露わに身構えるユウゴ。

 身体強化で加速して突っ込む。今までとは逆の構図。


「オルソ直伝」


 ユウゴが大楯を構える。


「気功術」


 ユウゴの大楯に左手を添える。


「発頚」


 自身の中の気力が抜ける感覚。

 それと共に大楯を握るユウゴの左手がなにか衝撃を受けたかのように後ろに弾き飛ばされた。


「なっ!」


 自身の理解を超える事態に呆然とするユウゴ。俺はその隙を見逃さず右手に握った刀をユウゴに突き付けた。


「「……」」


 しばらく互いに見つめあう。だが直ぐにユウゴは敗北を認める様に肩の力を抜いた。


「まいりました」


 その言葉に俺も肩の力を抜き、大楯が弾き飛ばされたことで尻もちを着いていたユウゴに手を差し出す。

 暫く俺の手を見つめ、どこか悔しそうに掴み返してきたユウゴを引っ張り立たせてやる。


「修行前と比べたらかなり強くなったな、ユウゴ。正直かなり危なかったぞ」

「……ありがとうございます、主。ですがまだまだです」


 俺の称賛にお礼を言いながらも謙遜するユウゴを見る。

 悔しそうにしながらそれでも褒められたことは嬉しかったのか、悔しさと嬉しさを綯い交ぜにしたような表情をして、瞳の中には次こそはとやる気を漲らせていた。

 

「どうだった?」


 突然後ろから声を掛けられてビクッとする。

 後ろを向くといつの間にかドルグが腕を組んで傍まで来ていた。

 どうやら俺がユウゴを立たせているうちに気配を消して近づいてきたらしい。

 近づくのはいいが気配を消すのは辞めてほしいと切に思う。

 まあそれはともかく……


「かなり腕を上げていたな」

「だろう? 正直俺も驚くほどあっという間に強くなってな? もしかしたらもうお前に勝てるかもしれないとも思ったんだがなぁ。流石にまだ駄目だったか」


 俺に殆ど選択権を与えず模擬戦を強行して置きながら、全く悪びれもせずにそう宣い「次は……」などとぶつぶつ呟いているドルグ。

 それを見て俺は確信した。師匠もドルグも先生も全員なんだかんだ言っても同類だったのだと。……いい性格をしているという意味で……。


「もう俺、疲れたよ」


 この後まだユウゴのスキルとサクヤが残っているのに既に疲れ切っている俺だった。

次回投稿は2月4日(金)です。


というわけで、ユウゴの成長を見せる話でした。ステータスに関しては次の話に書くつもりです。

サクヤの方も次話で成長を見せる予定で考えています。

キャンプイベ突入はサクヤの次かその次かなぁと。上手くサクヤのことが次話で収まれば行ける! 筈!


そんなわけで次回もお楽しみに!

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