第64話 あれから……修行の成果?
俺が北の森で異変を発見し、ドルグに報告してから現実時間で1週間が経った。
その間ISOでは多くの学生が夏休みに入ったことと、来訪者の第2陣が参入したことでISOリリース時のようなお祭り騒ぎになっていた。
大手クランの有望そうなプレイヤーへの勧誘合戦や新クランの乱立。
更に新規参入者の中で精霊契約を希望するものをクラン:知識の泉がミイロ達のいる湖に誘導するなど。
それに伴って様々なトラブルも発生したらしくそれはもう混沌としていたらしい。
さて……なぜ俺が「らしい」なんて他人事のように語れるのかと言えば、俺はこのお祭り騒ぎに全くこれっぽっちも関わらなかったからだ。
一週間前……ドルグに北の森のことについて報告した後、俺は直ぐにオルソの元へと取って返した。
やはりオルソのことが心配だったからな。修行を放り出して付いてこようとするサクヤ達を説得し、師匠からポーションと野営で使えそうな道具なんかの物資を貰ってオルソと共に邪素の霧が広がるのを抑えるのをレベル上げと調査も兼ねて手伝っていた。
その間一度も町に戻らず、北の森に居た為、町で起こっていた出来事については全てリアルで幼馴染二人に聞いた話だ。
ただ二人から話を聞いた限りそうして正解だったと思う。
なぜなら俺は動画のおかげで非常に有名になってしまっているからだ。
その為もし町に居たらどんなトラブルに巻き込まれるかわかったものじゃなく、アースとマーレどころかアーサーやヒルドさん、にゃん娘さんにガンテツさんとフレンド登録している全員から警告メールが届いたくらいである。
曰く、落ち着くまで身を隠せ……と。
そんなこともあり俺は町に戻らず、北の森でオルソと共に延々と邪素の霧の中にいるモンスターを狩っていたわけだ。
まあ完全にオルソにおんぶにだっこの状態での狩りではあったが……。
邪素の霧の中で出現するモンスターは最初に遭遇した猪に鶏、猿と北の森に出現するモンスターと同種のモンスターの強化個体。
どのモンスターも俺の刀では全く歯が立たないほど固く、一撃で死に戻りしかねないほどの攻撃力を持ったモンスターばかりだった。
そのため攻撃は完全にオルソに依存。
俺はオルソが攻撃に集中できるように創糸のブレスでの高速移動で囮や流水での防御を担当。
俺としては正直あまり役には立っていなかった気がしているが、オルソが言うにはこれでも効率は上がったらしい。
何体か倒したら霧の外、街道近くまで後退の繰り返し。
そんな風におんぶにだっこで鍛えられた俺の今のステータスがこちらである。
名前:シュン 所持金:390万 G
種族:幼竜人 Lv.25↑
職業:召喚術士 Lv.4↑
ステータス
HP:249/156→249↑ MP:300/160→300↑ KP:180/98→180↑ EP:100/100
STR:47→75↑ VIT:52→83↑ INT:10→20↑ MND:80→150↑ DEX:20→30↑ AGI:35→55↑
●AP(AbilityPoint):50
JobSkill:召喚術 Lv.5↑
≪所持アーツ≫
【召喚】 熟練度:95↑(現在の同時召喚可能数:3/4↑)
【魔石召喚】 熟練度:10
【契約】 熟練度:30↑(現在の同時契約可能数:3/4↑)
【強化】 熟練度:30↑
●JSP(JobSkillPoint):10↑
▼Skill:≪神通流派刀術Lv.25↑≫ ≪魔力操作Lv.10↑≫ ≪危機察知Lv.20↑≫ ≪識別Lv.8↑≫ ≪感応Lv.20↑≫ ≪料理Lv.3↑≫ ≪身体強化Lv.15↑≫ ≪気配察知Lv.13↑≫ ≪隠密Lv.7↑≫ ≪気配操作Lv.10↑≫ ≪気力操作Lv.15↑≫ ≪生命力操作Lv.7↑≫ ≪足運びLv.20↑≫ ≪呼吸Lv.20↑≫ ≪集中Lv.25↑≫ ≪見切りLv.20↑≫ ≪身軽Lv.15↑≫ ≪剛力Lv.10↑≫ ≪剛体Lv.10↑≫ ≪身体制御Lv.15↑≫ ≪精神制御Lv.15↑≫ ≪魔力視Lv.5↑≫ ≪暗視Lv.10↑≫ ≪マナ操作Lv.2↑≫ ≪操糸Lv.10≫≪NEW≫ ≪獣会話(熊)Lv.5≫≪NEW≫
●SP(SkillPoint):309↑
≪AS:操糸≫
・糸を操ることができ、レベルが上がるほど精密な動きができるようになる。
【SW:糸、巻き巻き。私は操り、君は人形? くっつけ、縛り、歩く道】
≪PS:獣会話(熊)≫
・一定以上の知能を持つ熊系モンスターと会話ができるようになる。
【SW:皆、友達。皆、家族。会話は仲良くなるための第一歩】
全体的にスキル、レベル共に上昇。
注目は新たに増えた二つのスキル。操糸はともかく獣会話(熊)は正直予想外だった。
道理でオルソの言葉がわかるはずだ。俺はてっきり感応スキルかオルソの何かしらのスキルが影響しているのだと思っていた。
まあおかげでオルソと仲良くなれたので結果オーライというものだろう。
それにしても(熊)って……ほかにも犬とか猫とかあるんだろうか?
この感じだと種族の数だけありそうだな……。
閑話休題
まあそれはともかくそんな状態の俺だが今日は師匠からサクヤ達の修行が終わったと連絡があった為、久しぶりに町へと、師匠の家へと帰ってきていた。
そしてお披露目のために俺は今、師匠の家の道場に通され一人寂しくサクヤ達が来るのを今か今かと待っているのである。
「みんなどれくらい成長したかな?」
暇つぶしに溜め込んだAPやSPなんかの使い道を考えながらサクヤ達がどれくらい成長したかを思い浮かべる。
特にサクヤは舞の修錬だったからな。実は今のところ一度も俺はサクヤの舞をしっかりと見たことがない。
この機会に彼女の舞を見ることが出来たら嬉しいんだけど……。
ボーっとそんなことを考えていると道場の入り口に6つの気配が近づいてくるのが気配察知でわかる。
「ん?」
だけど6つの気配のうち1つだけ誰かわからない気配が混ざっている。
「師匠、先生、ドルグ、サクヤ、ユウゴ……もう一人は誰だ?」
そしてユキホはどこに行ったんだ?
少しづつ近づいてくる気配に疑問を持たずにはいられない。
俺が頭上に?を浮かべて困惑していると、そんなことを気にも留めないとでもいうように謎の気配の主によって道場の扉が開かれた。
「?」
そこにいたのは巫女服らしきものを纏った、全体的に白い彩色の幼い女の子だった。
狐の耳が生えた白髪。そこに一筋の赤と青のメッシュが鮮やかに入り、その白いキャンバスに一筋のアクセントを入れている。
肌の色も白く、その容姿は幼いながらも神秘的なものを感じられずにはいられない。
そんな全く見覚えのない少女が師匠やサクヤ達と共に道場に入ってくる。
そしてその少女とパチッと視線が合った。そして……
「にいさま!」
「にいさま!?」
その発言に思わず……いや当たり前のように驚愕する。
なぜ俺はいきなり見たこともない幼女に「にいさま」扱いを受けているのか?
驚愕で思わず体が固まってしまっていた俺に勢いよく抱き着く狐耳の女の子。
そしてなぜ俺はその女の子に抱き着かれているのか? これがわからない。
「にいさま、にいさま~! お久しぶりです!」
あまりの事態に俺が完全に固まっていると俺の胸に顔を擦り付けていた少女の白いふかふかのしっぽが俺の頬を撫でる。
その感触に俺ははっと我を取り戻した。
「えっと君は……」
俺が誰何しようと彼女の体を少し離す、すると彼女の顔が悲しみに染まった。
「もしかして私がわからないのですか?」
「えっ、と?」
その表情に思わず焦る。えっとえ~っと。
ふと、泳いだ視線の中に彼女のしっぽが映る。
二尾のしっぽが生え、尻尾の先は赤と青い色にそれぞれ染まっている。
白い狐獣人でこの色彩……瞳を覗くと瞳の色も赤と青のオッドアイ。
「……もしかしてユキホか?」
「はい! にいさま!」
ピンときた現実離れした事実に思わず自信なさげになりながらもたどり着いた答えを口にする。
その答えに悲しげだった表情をパーっと輝かせて頷くユキホだと思われる女の子。
俺がユキホ?とそんなやり取りをしていると道場の入り口側からクスクスと、この事態について把握しているだろう元凶の忍び笑いが俺の耳に届いた。
「で、説明してくれるんですよね? ……先生」
というか説明してくれなきゃ許さん!
「もちろんだとも!」
俺の苛立ちの籠った視線を全く意に介さず頷く、元凶。
いったい何がどうなってこうなっているのか?
次回投稿は1月21日です。
なかなかイベントに入れません(泣)
当初の予定でははもっと早くイベントに入り、次章に行くつもりだったのですが、展開を考えた結果なんだかんだ物語的に必要な要素を追加したら長くなってしまいました。
あと少し!あと少し!
それと活動報告で感想返しさせていただきました! 気になる方は是非見てください!
それでは次回もお楽しみに!




