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INFINITY STORY'S ONLINE  作者: 藤花 藤花
第2章 夏のキャンプイベント!聖なる島と太古の遺跡
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第61話 黒い靄

 ~~始まりの町 北の森 牙獣の森道~~


 森の主にオルソと名付け友誼を結んだ俺は今、最初にオルソが居た街道から奥へ入っていった場所。丁度俺が森へ入った場所の反対側に当たる方向へ進み、黒い靄というものを確認できる所までやって来ていた。


「なんだ、これは……」


 オルソの話を聞いた時、俺はオラグランデ達が纏っていた邪気を思い浮かべていた。

 暗く、けれど純粋な怒りと憎しみに染まった邪気。

 けれどここにあるのはそんなものではなかった。

 そこにあったのは靄というよりは淀み。人の持つ怒り、憎しみ、嫉妬、恐怖、不安。それ以外にも様々な負の感情を混ぜ合わせ濃縮したような、暗い昏い吐き気を催すような気配を周囲へまき散らす()()()……


「うっ!」


 あまりの気持ち悪さに思わず口元に手を当てる。

 これがなんなのかはわからない。ただこれは……これだけはわかる。これはこの世にあってはいけないものだ。


『これは、多分……邪素と呼ばれ、るものよ』

「知っているのか?」


 はっ、と視線をミイロに向ける。

 視線を向けた先には俺と同じく、いやそれ以上に青い顔をしたミイロと飛ぶこともままならなくなったイブキとサヨがいた。


「おい! 大丈夫か!?」


 急いで三人に駆け寄り、一番近くで蹲っていたサヨ抱き寄せる。

 顔を覗き込むとミイロ以上にぐったりとし、苦し気に息を荒げている。そんなサヨの様子に焦りが募る。


『イブキ、とサヨは一度、帰してあげて。ここから離、れれば大丈夫だ、から』

「ミイロは大丈夫なのか?」


 ミイロも二人程ではないが息が荒い。


『私は、何とかね。でも二人は私よ、りも若いから……』

「わかった」


 俺は素早く二人を送還する。ミイロの言葉を信じるならこれで二人は大丈夫なはず。


「ミイロは本当に大丈夫なんだな?」

『ええ。でもこの靄につ、いて教えたら一度帰し、てほしいわ』

「わかった」


 やはり相当辛いんだな。できればすぐにでも帰してあげたいところだがこの靄の正体だけは教えてもらいたい。

 ひとまず靄から少し距離を取ろう。そうすれば少しは楽になると思う。


『ふう。このくらい離れれば大丈夫よ。この靄はね、恐らく邪素と言われるものよ』

「邪素……」


 また新しい言葉だな。


「邪気とは違うのか?」

『近いものよ。簡単に説明すれば邪気が魔力を負の感情で変質させられたものだとすれば邪素は魔素が変質させられたものなの』


 今度は魔素か。今日はまた次々と新しいことがわかる日だな。


『魔素とは魔力の源。魔素は世界中に満ちていて、人はこの魔素を自身の魂に取り込んで魔力として利用している』

「そうなのか」


 魔素に魔力。この世界はまるでとんでもなく複雑で大きい立体パズルのようだ。一体どれほどのピースが寄り集まってこの世界が構成されているのか皆目見当もつかない。この世界を知れば知るほどにそう思う。


『魔素は様々なものと結びつきやすく影響を受けやすい。人の魂、私達が運ぶマナ、植物や無機物まで。だけど邪素なんて私も私の先輩から話を聞いたことがあるくらいでそれ以上のことは知らないの。私に教えてくれた先輩もそのまた先輩から聞いたってくらいだから少なくとも数百年、もしかしたら千年以上発生していなかったかもしれないわ』


 そんなものがここに発生した、と。先日の邪気といい、これは偶然か?それとも何か……


「……今は考えてもわからないな」


 情報が足りなすぎる。まずはこの邪素を調査しないと何も始まらない。


『私が知っているのはこれくらいよ』

「ああ、助かったよ!ありがとう」

『どういたしまして!』

「それじゃあ一度帰すな」


 ミイロを送還し、俺はオルソに向き直る。


「オルソ、お前はこの中で発生するモンスターを倒すことで拡大を抑えていたんだな?」


 コクリ、と頷くオルソ。

 それを見て俺も覚悟を決める。

 この中がどうなっているか一度突入して確かめる必要がある。

 リスクはあるけど来訪者の俺ならリスクは最小限で済むはずだ。


「スゥ~ハァ~……行くか」


 オルソと共に駆け出し、邪素の中へ突入する。

 

「ぐうっ!」


 邪素の中へ入った瞬間に感じたのは心が……魂が凍りついたのではないかと思うほどの寒気。

 魂の奥底から湧き出してくる吐き気がするほどの負の感情。

 

「あっ、ぐっ!」


 視界がグラつく。体の中が自分がぐちゃぐちゃになっていくような感覚。


「グオッ!」


 そうして俺が意識を飛ばしそうになったところで背中に衝撃が走り、俺は前につんのめりながら意識を取り戻した。


「いってぇ~……! オルソ、助かった!」


 背中に鈍い痛みを感じながらその痛みで何とか自分を保つ。

 なんとか意識は取り戻したが、先ほどまでの湧き出してくるような気持ち悪い感覚は収まっていない。


「スゥ~ハァ~」

 

 再び深く深呼吸して、精神制御スキルをフル活用してこの気持ちの悪い感覚を抑え込む。


「ふぅ~……もう大丈夫だ」


 なんとか持ち直せたな。だけどこれは……


「かなりきついな」


 邪素の中に入っただけでこれだ。これはまずこの邪素からどうにかしないとどうにもならないかもな。


「ともかく今はもう少し奥へ……」

「グルオッ!」


 俺が何とか自分を持ち直して、オルソに先に進むことを提案しようとしたところでそのオルソが警戒の声を上げた。

 その声に反射的に刀に手を伸ばしながら、オルソの視線の先に向かって身構える。


「赤い、光?」


 そこにあったのはゆらゆらと左右に揺らぐ二つの赤い光だった。

 よく目を凝らしてその赤を見つめる。


「黒いストライクボア?」


 そこにいたのはさっきまで俺が乱獲していたストライクボアに似たモンスターだった。

 とはいえ姿形はストライクボアだが、毛皮は茶色から黒に変わり、大きさも一回り程大きくなっている。

 なにより先ほどまで森の中で感じていたイノシシの気配とは似ても似つかないいような気配を発していた。


■《???》???  Rank:?■

種族:??? Lv.??

ステータス

HP:???/???


 識別の結果もこれだ。レベルが足りないのかなんなのか以前の変異ゴブリン以上に情報がわからない。

 

「ブルモー!」


 そして森の中にいたストライクボアよりも遥かに好戦的なようだ。俺たちを認識した瞬間猛烈な勢いで突撃してきた。

 しかも…… 


「速い!?」


 ステータスも遥かにこちらの方が上。恐らく変異ゴブリンたちのようにストライクボアが変異したような存在なのだろう。


「オルソ!」


 俺はオルソと目配せして素早く左右に散開する。


「風抜!」

「グルッ!」


 速さ重視の抜刀。それを俺たちの横を通り抜けようとした変異ストライクボアの首に叩き込む切り裂く。

 それに合わせてオルソも反対側から拳を顔面に叩き込んむ。

 

 ガキィ! ボクッ!


 だが同じように左右から放った攻撃の結果は真逆のものとなった。


「くっ!」


 俺の刀は首に通ることなく弾かれ、オルソの拳は変異ストライクボアの顔面を陥没させる。


 ドウッ!


 その一撃で変異ストライクボアは倒れ、ポリゴンではなく靄がほどけるように消えていった。

 その今まで見たこともない消え方に思わず目を見張る。この消え方……もしかして生物ではなくなっているのか?

 まあそれはともかく……


「すまん、助かったオルソ」

「グルウ」


 変異ストライクボアを倒してくれたオルソにお礼を言う。まさか全く歯が立たないとは思わなかった。

 ……いやまさかではないか。俺の武器は初期から変わっていない。壊れることはなくとも切れ味はお察しだ。

 これはせめて武器だけでもグレードアップしないとこの中では戦えないかもしれない。


「問題だらけだな」


 この中で活動するにも課題があるし、武器にも課題がある。邪素のせいで視界も悪い。

 

「今日はひとまず撤退しよう」


 これは一度師匠たちにも相談しよう。武器に関してはイベントの時にグレードアップできれば何とかなりそうだけど、そもそも邪素をどうにかできないとどうにもならない。

 なんとか対策がわかればいいんだけど。

次回投稿は12月31日(金)16時です!


次で今年の投稿は最後になります!投稿頻度が少なくなかなかお話が進んでいきませんがこれからも頑張りますのでよろしくお願いします1


それでは次回もお楽しみに!

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