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INFINITY STORY'S ONLINE  作者: 藤花 藤花
第2章 夏のキャンプイベント!聖なる島と太古の遺跡
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第59話 男の友情 boy meets bear Part2

 戦闘を始めて小一時間程。


「はああぁぁぁ!」

「グルアアァァ!」


 俺と件の熊は未だに戦っていた。


「グルアッ!」


 奴の拳が俺の刀に受け流され顔のすぐ横を通り過ぎる。


「ふっ!」


 俺の刀が奴の装甲に当たり弾かれる。

 奴の攻撃は俺に当たらず、俺の攻撃は当たっても効果がない。

 お互いに決定打がない。完全な千日手。だけど……


「ははっ!」

「グルウ!」


 お互いの顔に思わずと言った感じで笑みが浮かぶ。

 

 ―― 楽しい ――


 互いに互いの無い隙を作り出そうと工夫を凝らす。

 時に正面から時に奇策でもって……。

 それがとても楽しい。スポーツで誰かと競い合うというのはこんな感じなんだろうか?


「サヨ!」


 サヨの魔法で影を操り、ほんの少し自身の身体をぼやけさせる。

 それに合わせて時に早く時に遅く緩急をつけて左右に、前後に身体を揺らし狙いを付け辛くする。

 恐らく奴には重度の乱視持ちの人のように俺が見えていることだろう。

 俺がこの小一時間で生み出した技の一つだ。


「グルアアァァ!」


 そして奴もまた俺を捉えづらくなったと認識した瞬間、即座に行動に出る。

 俺に懐に入られる前に素早く片足を上げ即座に地面に叩きつける。

 叩きつけた足を中心に衝撃波が広がり地面が揺れる。現実では震脚とか言われる技だろうか?

 そうして足元を崩された俺は飛び上がりながら距離を取るしかない。

 距離が開けば魔力を温存したい俺としては一度魔法を解除するしかない。

 距離がある状態でこの魔法を使っていても土魔法で範囲攻撃を受けて近づけず無駄に魔力を消費するだけだからな。

 最初この技を使った時は不意を突けたがすぐにこうして対処された。

 奴が震脚を最初使用した時も同じく俺も不意を突かれたが何とか対処し対策する。

 互いに互いを打ち倒すため新たな戦術や技を生み出しそれをお互いに打ち破る。 

 そんなことの繰り返し。

 それがたまらなく楽しい。俺って意外と戦闘狂な所があるのかもな。

 距離が出来たところでお互いに睨み合う。


「……」

「グルウ……」


 ふっ、と笑みをこぼし構えを解く。俺が構えを解いたのと同じくして奴も同様に構えを解いた。

 互いに歩み寄る。そしてガシッ! と、手を合わせる。

 目の前の熊と友情が成立した瞬間だった。


『……なによこれ?』

『なんだろうね?』

『……男の友情?』


 |

 |

 |


 ミイロ達を完全に置き去りにして、この森の主熊と仲良くなった俺は互いに腹が減っていたこともあり、土鎧を解除した主熊に案内してもらいながら森の中にある川へとやってきていた。

 

「へえ~。じゃあこの川へは良く来るのか?」

「グルオ」

「ああ森のもっと奥の方……川の上流の方に行くのか」

「グルル!」

 

 なんでもこの主熊の好物が魚らしい。それでよく川に獲りに来るのだそうだ。

 熊と雑談をしながら川の中を覗き込む。とてもきれいな川でたくさんの魚が泳いでいるのが見えた。

 

「これなら沢山獲っても良さそうだな!」

「グルウ!」


 同意するように主熊が頷く。その様子を見て俺達は顔を見合わせながら笑いあった。


『……それ以前になんで会話が成立してんのよ?』

『意味わかんないよ……。さっきまで殺気マシマシで殺し合ってたよね?』

『……これが男の友情?』


 ミイロ達が何かコソコソ言っているが……まあいいか。今は目の前の主熊だ。

 視線を川に戻すと主熊が川の中に入っていっているところだった。

 川の真ん中まで進みじっと川を泳ぐ魚を見つめる主熊。そして次の瞬間2本の腕を振り抜いた。

 宙を飛ぶ2匹の魚。それが弧を描いて俺の足元に落下した。元気よく足元でぴちぴちと跳ね回っている。


「お~すごいな!」


 見事魚を獲った主熊に俺は称賛を贈る。いやまさか動画でしか見たことがない熊の魚とりをリアルで見ることができるとは思わなかった!

 俺の称賛に主熊は得意げな顔を俺に向けた後、再び川に視線戻し次々と魚を獲り始める。

 それなら俺は……


「お~い! この魚調理してもいいか?」


 魚を調理することにする。一応魚を獲ってくれている主熊にお伺いを立てて置く。とはいえ特に異存はないようで軽く頷いてくれた。

 なので俺は早速魚を調理するために火を起こすことにした。

 一度森の中に入り枯れ枝や枯れ葉を集める。その際に1センチほどのまっすぐな棒状の枝となにかの拍子で折れたらしいかなり太めの枝を一緒に拾って置く。

 ある程度集まったところで川に戻り、今度は簡易の竈づくりだ。

 まあ竈と言っても川に落ちている適当な石で火元を囲うだけだが。

 俺がそんな風に作業をしているとひそひそと内緒話をしていた精霊組も話を辞めて俺の作業を興味深げに覗き込んできた。

 

『ねえシュン。それはなにをしているの?』

「ああ。これは……」


 説明しようと口を開こうとして実際に見せた方が早いと思い手早く準備を進める。

 まず1センチ程の枝についている小枝をイブキに頼んで風の刃で取って貰う。因みにイブキに頼んだのは、今この場にある刃物が腰にある刀だけだからだ。流石にこれをこんなことに使うのは気が引ける。

 それはともかく次にかなり太めの枝をインベントリから取り出し、再びイブキに頼んで今度は板状に加工して貰う。

 最後に加工して貰った板にくぼみを作りくぼみに向かって三角の切り欠きを入れてこれで道具の準備は完了。

 そう俺がやろうとしているのはきりもみ式火起こしというやつだ。昔、本で読んで一度やってみたいと思っていたんだ。

 石で囲った竈の真ん中に枯れ葉を敷き、その上に切り欠きを入れた板を置く。この板のことを火きりうすというらしい。

 そしてここで枝打ちをした棒を板のくぼみに当てる。ちなみにこの棒は火きりぎねという。

 

「で、後はこの棒を回転させて摩擦で火を付けるんだ」

『へえ~! 以前見た人は魔道具とか石みたいなのを使っていたけどそんな風に火を付ける方法があるのね!』


 俺はミイロのその言葉に思わず苦笑してしまった。なんか自分がかなり古い人みたいな感じがしてしまうな。

 

「ははは……。ま、まあいい。それじゃあやるか」


 勢いよく棒を回転させ摩擦を加える。この時『シュッ!シュッ!』という音がしていれば上手く摩擦を加えられている証拠らしい。

 しばらくそうして回転させていると煙の出ている茶色い削り粉が出て来る。これが火種だ。

 この火種をくぼみに戻し軽く揉む。ゲームの中とはいえ煙が出ている物に触るのは中々怖いな。

 温かくなってきたところで息を吹き込み発火!後はここに枯れ葉を入れて火を大きくし、その上に細い枝から順番に置いて焚火を作る。


「ふぅ~。初めてでも意外とできるものだな」


 見事に火がついた焚火を眺める。なんかこういうのって見てると落ち着くな……。


『本当に付いたわ!』


 隣ではミイロ達精霊3人組が感心したように焚火の周りをまわりながら焚火を矯めつ眇めつ眺めている。

 

「本当にって……信じてなかったのか?」

『だってこんな風に火を付けている人なんて見たことなかったんだもの』

『少なくとも僕たちが見たことがある人の殆どは魔法で火を付けていたし、魔法を使わない人でも道具を使っていたからね……』

『……文明の利器』


 やっぱり古い人扱いされている気がするな……。いやそもそも最初から魔法なんて便利なものがある世界なんだからこんな風に火をつける時代自体が殆どないのかもしれないな。


「しょうがないだろう。俺は火付けに使える魔法も道具も持ってないんだからな!」


 だからこそ本で読んだこのやり方でやってみようと思ったんだがな!


『そうなのね……。じゃあ町に戻ったらまずは火付けの道具を買わないとね!』

「……そうだな」


 確かにこの火付けはかなり手間がかかる上に中々大変だった。

 道具があるならそっちの方がありがたいのは確かだ。一回やって俺も満足したし。

 

「さてと……」


 俺は視線を主熊の方に向ける。そこには俺が火おこしをしている間に主熊が獲った魚で山が発生していた。

 いつの間にあんなに獲っていたんだ……。もう既に30匹くらいいるぞ?

 俺が魚の山に呆れているとまた1匹山に魚が追加される。早いところ処理しないと大変な事になりそうだ。


「とりあえず処理していこうか」


 というわけで調理開始だ。まずは以前ラーナさんから貰った調理セットに入っていた包丁とまな板を取り出す。

 魚を1匹まな板の上に置き、まずは魚のお腹の黒い穴から包丁を入れお腹を縦に切る。

 次に内臓を取り出してミイロに出して貰った水できれいに洗う。

 最後に拾った木の枝をイブキに串状に削ってもらい念のためきれいに洗ってから魚に刺す。後は塩を振りかけて焼く。

 以上、シュンの簡単クッキングでした。


 とまあ冗談はともかくそんな感じで魚を次々処理していく。最終的に魚の数は50匹になった。獲り過ぎだろ……。

 いや主熊のサイズを考えるとこれでも少ないのか?

 主熊に戻って来て体の水を振るい落としている主熊を見る。

 ……あれ?


「そういえばつい全部処理しちゃったけど良かったか?」


 つい自分基準で処理したけど熊って魚は生食だったよな?

 

「グルウ」


 だがそんな心配はいらなかったようだ。


「普段からこんな風に自分で処理して食べているのか?」

 

 クッキング熊? みたいな。


「グル、グルルウ」

「ほう」


 普段はそのままいくけど折角だから人の調理したものを食べてみたいと。


「だったらいいな!」

「グルウ!」


 それじゃあ心配もなくなったところで早速焼いていこうかな。


『ほんとなんで会話出来てんのよ……』

『ほんとシュンって見てて飽きないね!』

『……変人』


 また精霊3人組がひそひそ内緒話をしているがさっきから一体なにを話してるんだろうな?

 まあそんなことは今は良いとして俺は焚火を囲うように魚串を地面に刺していく。

 全てさし終わったところで俺は焚火の前に腰を下ろした。主熊も焚火を挟んで反対側に腰を下ろしじっと焼かれる魚を見つめ始める。

 ミイロ達もそんな俺達の様子に気が付いて俺の横に座り込む。

 暫く静かな時間が流れる。気がつけばすっかり周りは薄暗くなり焚火の明かりだけが唯一の光源になっていた。


「そういえばお前はなんであんな場所にいたんだ?」


 魚の焼き加減を見ながら主熊に街道にいた理由を尋ねる。識別で見た情報によるとこの主熊は普段は森の奥に生息していると出た。しかも人と同じレベルで頭がいいともあった。

 そんな存在がこんな街道に出てきているんだ。

 なんの理由もないとは思えない。

 俺の問いに主熊は焚火の光に照らされながら静かに俺へと視線を向ける。


「……グルウ」


 暫く静かに俺の瞳を見つめていた主熊はやがて静かに事情を語り始めた。


『……だからなんで、』

『ミイロ……もう言ってもしょうがないよ』

『……諦めが肝心』

次回投稿は12月17日(金)16時です!


皆さんはキャンプとか経験ありますか?私はないですw

でもいつか道具を揃えてリアルでも静かな森でキャンプとかやってみたいですね!

執筆がはかどりそうですw


それでは次回もお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] こ 拳で語る友情もあるんです 言語回路大活躍(笑)
[一言] 謎の(0w0)ユユジョウ!
[良い点] まさか友情が成立するルートが存在するとはw そしてなぜ会話できてるw
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