第55話 導き手、ふたり
「それで師匠……二人の指導には誰を呼ぶのですか?」
師匠に赤くなった顔を軽く揶揄われた後、赤くなった顔をどうにかした俺は改めて師匠に二人の指導役について問いかけていた。
「シュンさん、あなたも知っている人ですよ? ハルアキとドルグに頼む予定です。 あの二人ならユキホとユウゴの指導にぴったりですからね」
「先生にドルグ、ですか……?」
あの二人ならあまり気兼ねせずに済みそうだが……
「先生……はともかくドルグは大剣使いでは?」
先生に関しては召喚術士としてのことはともかく他の技能に関しては詳しくないが話した感じからすると、恐らく何らかの術士タイプでユキホと同じ狐(先生は獣人だが……)だからわかる。
だがドルグは戦闘を見たことは無いが大剣しか持っているところを見たことがない。
大剣はともかく大盾の扱いを教えることなどできるのだろうか?
「普段は大剣のみ背負っているので仕方がありませんが、ドルグは大盾の扱いも一流ですよ? 何かの流派などに属しているわけではないですが、長年冒険者として活動しその間大盾と大剣を駆使して味方を……仲間を護り続けて来た猛者です。 ……あれの大盾と大剣の扱いは私から見ても天才的ですから」
俺は師匠のその言葉に俺は目を丸くする。まさか師匠がそこまでの評価を下すほどだとは思わなかった。
師匠と繋がりがあることもあり、元々かなりの使い手だとは思っていたがまさかそこまでとは思わなかった。
「ですので安心して二人を預けて下さい。 私もしっかりと見ていますから」
俺はその言葉にサクヤ達も含め頭を下げる。本当に頭が上がらない。
「それでは今から二人を呼びましょうか。 少し待っていてください」
そういうと師匠は懐から何やら薄い紙のようなものを取り出してそこに筆のようなものを使って手紙を書き綴り始めた。
「師匠、それは一体?」
俺は師匠が取り出した物について尋ねる。俺は最近ミイロ達のこともあり、魔力視のスキルを常時発動するようにしている。
そのため俺には師匠の取り出した紙に魔力が宿っているのが良く分かった。
「これは『伝達の繋鳥』という連絡用アイテムです。 これに伝えたいことを書いて魔力を流すと……」
自身の持つ道具のことを解説しながら、書き終えた紙に師匠は魔力を流す。
師匠から流された魔力が紙に伝わったところで紙に変化が起きる。
紙がひとりでに折り紙を折るように折れ曲がっていく。瞬く間に紙は鶴の形になった。
鶴か……小学生くらいの時に一度作ったことがあった気がするなぁ。
確か担任の先生が少し古風な人であの時は怪我をしたクラスメイトの為に千羽鶴を折ろうとか言う話になったんだったよな……。
鶴の姿に変わった紙を俺は懐かしいものを見たような気分で見つめる。
すると折り鶴は翼をパタパタとさせるように動き始め浮かび上がった。
そしてそのまま折り鶴はものすごい速さで縁側から飛び立ち空の彼方へと消えて行った。
俺はその余りの速さにポカンとする。
「これがこの道具の効果です。 届けたい相手のことを頭に思い浮かべながら魔力を流すと鳥の形に姿を変えて飛んでいきます。 この町周辺なら恐らく1分もかからず相手に届くでしょう」
呆然と空の彼方を見上げていると、師匠は何のこともないかのように道具の事を説明し、そのまま2枚目の紙に文字を書き綴り始めた。
……師匠たちの連絡手段がわかったのは良いが、ファンタジーな見た目に反して動きと速度がおかしい。
このゲーム基本ファンタジーをしているのに時々変な所でファンタジー(笑)みたいなことをしてくるな。
「……便利そうな道具ですね?」
俺は微妙な顔になりながらもとりあえず誉め言葉を口にする。……思わず疑問形になってしまったところは察して欲しい。
「そうですね。 これはハルアキから貰ったものです。 使い捨てですがかなり重宝しています」
実際この道具……恐らく魔道具はかなり便利だ。プレイヤー同士ならメールで済むがプレイヤーがこの世界の住人と連絡を取る方法は今のところ見つかっていない。
これがあれば仲良くなった住人と連絡が取れるようになるからかなり便利になるだろう。
それにもしかしたらこれから先メールみたいな連絡手段を封じるギミックなんてものが出ないとも限らない。
「シュンさんにも幾つかこの道具を渡して置きます。 何かあったら連絡をください」
「ありがとうございます」
おお!これは嬉しい。緊急事態が起こった時に師匠に連絡が取れるのはかなりありがたいからな。
だけど出来れば自分たちでこの道具を作れるようになっておきたいが……。
「あとこれの作り方もハルアキからユキホに教えさせておきましょう」
……俺ってそんなに考えていることわかりやすいのかな?それとも物欲しそうな顔にでもなっているとか?
「ふふっ! シュンさんは戦っているときはともかく普段は表情に考えていることがよく出ますね」
……気を付けよう。
「……本当に何かあればすぐに連絡してください。 シュンさんは色々と巻き込まれ易い性質のようですから」
「や、やめてくださいよ……」
いや、本当に。師匠が言うと現実になりそうだからな!
■《連絡用魔道具(使い捨て)》伝達の繋鳥 ■
・効果:飛伝(魔力を込めることで思い浮かべた人物の元へと鳥の形となり高速で飛んでいく)
うん、説明された内容そのままだ。
「さて連絡はしました。 二人ともしばらくすればやってくるでしょう」
俺が師匠から貰った魔道具をしまっていると手紙を出し終わった師匠は一息つくようにお茶を飲み始めた。
それなら二人が来るまで暫く待っていようかな?
「ああ、二人が来るのを待つ必要はありませんよ? いつ来るかはわかりませんし、あの二人に礼など不要です」
師匠の言葉に思わず苦笑する。師匠、あの二人には全く遠慮がないな。
「そういうわけには……先生とドルグには二人が世話になるわけですし、お土産も買ってきてますから」
「そういうのであれば仕方ありませんね……」
そんなわけで暫くは師匠と雑談をしながら時間を潰すことにした。
とはいえ、それほど待つこともなく二人はやってきた。
手紙を出してから時間にして30分程だろうか?
「よお、シズカにシュン!数日ぶりだな!」
まず入って来たのはドルグ。
「直接会うのは久しぶりだね、シズカ君!元気だったかい? シュン君達も数日ぶりだね!」
その次は先生。二人とも知り合いなだけあって実に気さくな挨拶をして入ってきた。
「よく来てくれましたね二人とも。 用件については手紙に書きましたが、きちんと把握していますか?」
「おう! 俺にそこのシュンの仲間の指導をしろってんだろ?」
そう言ってドルグはユウゴの方を見る。そのドルグの視線を受けてユウゴは緊張した様子でドルグの前に出て頭を下げた。
「よろしくお願いします!」
暫しドルグは鋭い目つきでユウゴを睨みつける。顔を上げたユウゴもその視線に一瞬たじろぐもすぐにその視線を真っ向から見つめ返した。
時間にして数十秒ほどの沈黙。
「……まあいいだろう。 シュンの仲間だし、なかなか見どころもありそうだ」
ふっと空気が和らいだところでそういうドルグ。その言葉に俺とユウゴは安心したように思わず息を吐いた。
「悪いな、ドルグ。 ユウゴの事よろしく頼む」
「任せておけ」
ユウゴの方はこれでよし。次は……
「僕はユキホちゃんだね? 任せておきたまえ! 彼女を一人前の魔法使いにしてあげよう!」
俺が先生の方へ視線を向けるとドルグと違い、実に軽い調子でユキホのことを請け負う先生。
その様子は実に俺の不安を誘い、本当にユキホを預けていいのか思わず俺の方が不安になってしまった。
「……シュンさん、大丈夫ですよ? 私の方できちんと監督しますからね?」
俺の不安な様子に気が付いたのだろう。師匠が安心させるようにそう言ってくれる。
「……ありがとうございます、師匠。 先生、ユキホをよろしくお願いします」
師匠のその言葉に押されて俺は頭を下げる。ユキホの方は俺と違って特に不安を覚えることもなかったようでなんの躊躇いもなく俺の隣で頭を下げていた。
「何故シズカ君の監督がいるのかはわからないが……任せておきたまえ!」
これで二人とも大丈夫そうだな。
「それじゃあ早速修行に入ろうか! シズカ君、道場を借りても?」
「構いませんよ。 ドルグも道場を使いますか?」
「おう! あそこは広いから丁度いい!」
話が纏ったところで二人が早速とばかりに行動し始めた為、俺もその修行を見守ろうと思い、着いていこうとした。
ところで師匠からストップがかかる。
「シュンさん。 サクヤさん達のことは私たちに任せて、あなたはあなたでやるべきことをしなさい」
「ですが……」
俺は師匠の言葉に思わず、どうするか悩む。流石にこのまま放置は気が引けるし、心配だ。特にユキホは……。
「主様、私たちは大丈夫ですのでどうかご自分のなさりたいことをしてください」
俺がどうするか悩んでいるとそう言って俺に向かって力強く頷いて見せるサクヤ、ユキホとユウゴの三人。
「……わかった。 三人とも頑張れよ?」
三人のその力強い頷きに押されて俺は大人しく三人を預けることにした。
かわいい子には旅をさせろなんて言葉もあるしな。
「それでは師匠、先生、ドルグ……よろしくお願いします」
そうして俺は二人にもお土産を渡した後師匠たちに改めてサクヤ達のことをお願いして屋敷を後にすることにした。
感想でも頂いていました、ユウゴ達の修行です^ ^
一応ゲームである以上修行無しでも強くなるだけであれば他にも幾らでも道はあるのですが、今回はやはりこの2人に頑張って貰う事にしました!
師弟協力プレイとか燃えますよね?作者はそういうの好きです!
それでは次回もお楽しみに!




