第53話 美しき港町 マルフルーア
森を抜けると目の前には碧く美しいマリンブルーの海が潮の香りと共に広がっていた。
現実では海外にでも行かなければ見ることができない綺麗な景色。
今更だがこの世界は魔法というクリーンな力があるからか、現実のように汚染が進んでいない。
森も湖もそしてこの海も……とても綺麗でこれだけでもこのゲームを始めて良かったと思える程だ。
そうしてしばらく綺麗な海の景色を眺めた俺は今度は視線を眼下に移す。
そこにはラーナさんからの情報通り港町が存在していた。
この港町もこれまた美しい。蒼い屋根に白を基本とした家が立ち並ぶその光景は、ネットで見たどこだかの国の港町によく似ている。
綺麗な海と街並み。この二つが見事に調和した美しい場所だ。サクヤ達も先ほどからこの美しい光景に見惚れているようでポカンとした表情で夢中になって景色を堪能していた。
俺は今度は周囲を見渡す。
俺達は今港町とその先を一望できる高台の上にいる。
どうやら東の森を抜けると街道を挟んで急な傾斜があり、その向こうに港町があるらしい。
俺達が出て来たのはそんな傾斜が一番急になっている上に一番高い場所だったようで、その為に港町と海が一望できたようだ。
「主様、これが海というものですか?」
海から視線を外すことなく俺の服の裾を掴んで、サクヤがそう尋ねてくる。そうか……3人は海を見たことがないのか。
「そうだ。 凄く大きいだろう?」
「はい! こんなにたくさんの水があるなんて思いませんでした! 南の森の湖よりも広いです!」
「ははっ! あれは多分塩水だな。 舐めるとしょっぱいぞ?」
「そうなのですか?」
サクヤが目は輝かせながら、俺に海のことについて尋ねてくる。
俺はそんなサクヤの微笑ましい様子に思わず笑いながら、彼女の質問に一つ一つ答えていく。
そんな俺達の会話をユキホとユウゴも興味深げに聞いているようだ。
そうして雑談をしながら街道を港町に向かって歩き、俺達は町の入り口に到着した。
町の入り口にはモンスター対策らしい門があり、両脇には門番がいる。
とはいえアルヒの町と同じく特に通るのに制限があるわけではないようで、この世界の住民達らしき人達が特に止められることなく町の中に入っていくのが見えた。
とはいえ俺達はアルヒの町の時のように、この町のおすすめの宿なんかを聞くために門番に近づく。
「すみません! 少しお聞きしたいことがあるんですが、今大丈夫でしょうか?」
「構わないよ。 どうしたんだい?」
「少しこの町のことについてお聞きしたくて……」
「おや? 君はこの町は初めてかい?」
「はい。 この町には今日初めて来ました。」
「そうか! 港町マルフルーアにようこそ! 歓迎するよ! それで何を聞きたいんだい?」
笑顔で俺に答えてくれた門番に俺はこの町のおすすめの宿なんかを質問する。
するとこの門番はかなりおしゃべりな性格なのかおすすめの宿だけではなく、おすすめの屋台やらお店なんかについてもあれこれと教えてくれた。
その為俺達が町に入った頃には到着してから、30分程の時間が経ってしまっていた。
「だけど色々いいお店を教えて貰えたな。」
さてまずはどうするかな?今日は残り時間は港町に行くことだけしか予定はなかったんだが、少しだけ時間が余っているな……。
「皆はこの後どうしたい?」
迷った俺は3人に聞くことにした。3人はまさか自分たちに聞かれるとは思わなかったのか、目を丸くして顔を見合わせている。
……そういえば俺から3人にやりたいことについて聞いたことってなかったな。
「何もなければ今日はもう俺は眠ろうと思うんだが……」
俺がそう言いかけると3人は慌てたように相談し始め、しばらくしてサクヤがおずおずと希望を口にした。
「あの、私は先程門番の方に教えて頂いた屋台なんかを色々見て回りたいです。」
確かに少し見渡しただけでもいろいろ面白そうなものが売っているな。
「それじゃあそうするか」
俺がそう答えると三人はホッとしたような顔をした。……なんだろう俺って怖がられているのかな?
これからはもう少し三人に優しくしよう。
俺は心の中でそう考えながら、皆で屋台が立ち並んでいる道を歩く。
並んでいる屋台は流石は港町と言うべきか、魚介類を扱った食べ物屋台が多い。見る限り多いのはスープと塩焼きだな。
そして次に多い屋台は貝殻なんかを利用したアクセサリー屋台。
どれも綺麗に磨かれていて綺麗だが特に特殊な効果があるものなんかは置かれていないみたいだ。
とはいえこういうところは流石ファンタジーというべきか……現実には無い色合いだったり、見た目のものも多数並んでいる。
アクセサリーはともかく食べ物で原色のピンクやら青色の魚とか現実の魚を知っていると食指が動かない。
運営もこういうところはファンタジーにしなくてもいいんですよ?
そんな中、俺は三人にそれぞれ食べたがったものを買い与えながら屋台を回っていく。
三人は俺みたいに他を知らないから、全く気にせず食べている。
まあそんなことを考えながら俺もなんだかんだと食べているんだけどな!
今も興味本位で原色ピンクの魚の塩焼きを食べていたりする。……少し淡白だが脂がのっていて上手いな。
おっ!?ホタテみたいなものもある!
だけどただ焼いているだけなのが惜しい。出来れば醤油とバターが欲しかった!
そんな風に三人で買い食いをしながら歩いていると俺達は港へと辿り着いていた。
結局サクヤも含め、誰一人アクセサリーに興味を示さなかったな……。
特にサクヤはサクヤを見たアクセサリー屋台の人の客引きすらも完全スルーだった。
……女の子なんだから少しくらいアクセサリーに興味を持ってもいいんじゃないかな?
まあそれは今は良いとして、港には大小さまざまな木造の船が止まっていた。
全長は大きめのもので大体60mくらいか?確か前に本で読んだ中世の船がそれくらいの大きさの船だったと思う。ガレオンやらキャラックとか言ったっけ?
その大きな船に船員らしき筋骨隆々な男たちが大量の木箱を船から降ろしたり、逆に船に乗せたりしている。
他にもこっちは漁船なのか、網とかが乗せてある船なんかもある。
そしてその漁船の前は直売所みたいな場所らしく、今日捕れたばかりらしい魚を売っているみたいだ。
「あそこも少し見ていくか?」
俺は三人にそう提案する。すると三人も興味があったのか直ぐに頷きが返ってきた。
三人で店の前に移動する。そこには今日屋台で見た魚や見たこともない不思議な魚が売られていた。
「らっしゃい! 活きの良いのが揃ってるよ!」
俺達が興味深げに魚を見ていると店主らしき日焼けしたおっちゃんが声を掛けてくる。
「お客さん、見ない顔だな! 旅人かなんかか?」
「あっ、はい。 今日この町に着きました」
「そうかそうか! どうだ、この町は? いい所だろ!」
「はい。 まだ屋台くらいしか回れてないですけど、おいしい屋台は多いし景色もきれいで……」
「そうだろうそうだろう! それで屋台で気に入った魚でも買いに来てくれたのか?」
「いえ、屋台を回っていたら偶々見かけて……」
「そうか! じゃあしっかりと見て行ってくれ! この町を褒めてくれた礼に少しおまけするぜ?」
そんなおっちゃんの口車に乗せられて、俺達は並べられている魚介類を見ていくことにする。
屋台でも見たがそれ以上に色彩豊かな魚達。
恐らく屋台では扱わないような魚も売られているのだろう。
「凄い種類ですね?」
「おうよ! 俺の店の品揃えはこの辺じゃ一番だぜ!」
そう言ってガハハハッと笑いながら、その筋骨隆々な見た目通りの凄まじい力で俺の肩を叩く店主。
これ一般人が受けたら怪我するんじゃないか?俺のHPも少し減ってるぞ?
そんな俺達の隣ではサクヤが目を輝かせて品物を物色し始める。先程の屋台で食べて、魚料理を気に入っていたのだろう。その様子はかなり熱心だ。
実はサクヤの奴、俺がログアウトしている間に師匠と良く料理をしているから、最近はかなり旨いものを作るようになってきているんだよな。
最近じゃ師匠の家で出てくる食事の1~2品はサクヤが作ったものだ。
俺もサクヤと一緒に料理を習ってスキルを手に入れたけど、もはや完全に料理の腕に関してはサクヤの足元にも及ばない。
俺は熱心におっちゃんから魚の調理法を聞いているサクヤの姿を見る。
「……俺も師匠と先生へのお土産に良さそうな魚を買っていくかな」
恐らく今後俺が料理をする機会はほとんど来なくなるであろう未来を想像してしまった俺は、その想像をなかったことにして、お土産選びに意識を向けることにした。
「そういえばあの大きな船はどこに行くんですか?」
師匠たちへのお土産の魚を早々に選び終わった俺はサクヤが魚を物色している様子をユキホとユウゴと共に見守りながらふと湧いた疑問を雑談がてら店主のおっちゃんにぶつけていた。
「ん?おお、あの辺の大きな船は東にある島国『日の和の国 天桜』との貿易船だ!」
東?つまりあの辺の船は師匠たちの故郷だと思われる国に行くのか?
「じゃああの船に乗せて貰えればその国に行けるのか?」
「あ~、多分今は無理だと思うぜ? 最近海賊やら大型のモンスターやらが出てかなり行き来が大変になっているらしいんだ。だからそういったやつに対抗するために船にはそれなりの戦闘力を持った信用できる奴しか乗せてないんだよ」
それは残念。まあそう簡単にあちこち行けたりはしないか。
「他に行けるところはないんですか?」
「他なぁ……許可があれば行けるところなら一つあるぞ?」
おっちゃんは人差し指を立てて海の向こう、ある一点を指差した。
そこには遠目にだが島らしきものがある。
「俺達、船乗りは大昔からあそこを聖なる島『フェティル島』と呼んでいる」
本日もINFINITY STORY'S ONLINEを読んで頂きありがとうございます!
それといつも誤字脱字報告をしてくれている読者の方、本当にありがとうございます!いつもお世話になっております。
特に作者に正しい文章の書き方を教えてくれた読者の方!
今までのものはを直す余裕が無い為そのままですが、今執筆しているものは教わったことを意識して執筆しています!
これで少しでも読みやすい作品になっていたら嬉しいです!
あと活動報告にて幾つかの頂いた感想にお返事を返させて頂きました!
気になる方は活動報告をご覧下さい^ ^
それでは次回をお楽しみに!




