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INFINITY STORY'S ONLINE  作者: 藤花 藤花
第2章 夏のキャンプイベント!聖なる島と太古の遺跡
53/78

第52話 森の先へ

 ~~始まりの町 東 小蟲の森 ~~

 

 ガンテツさんの工房を出た俺達は予定通り草原を超えて東の森……にゃん娘さん情報でいうところの小蟲の森の入り口まで来ていた。


「それじゃあこの森を抜けて森の先にある、港町に向かうぞ! 三人とも……特にユキホとユウゴ。 準備は良いか?」


「「はい!」」「キュン!」


 三人とも気合十分といった感じだな。

 とはいえ流石にユキホとユウゴの二人は少し緊張しているみたいだな。一応注意して置こう。

 

 森の中に入った俺達はまずは打ち合わせていた、陣形に並ぶ。

 タンク役のユウゴを先頭に後ろに俺と俺の肩に乗っているユキホ、そして殿にサクヤだ。

 この陣形を決める時、誰が先頭になるかで非常に揉めることになった。

 なんでそんなことで……といえばサクヤとユウゴの二人だ。

 その時の二人の言い合いから判明したのだが、この二人……今日俺がログインした時からなにやら揉めていたのだが、どうもどっちが俺のことをより守れるかということで揉めていたらしいのだ。

 サクヤは今まで俺と共に戦った経験故に、ユウゴは自身の護りに向いた能力故に自分が一番!と主張し合いどっちも譲らず、そのタイミングで俺がログインしてきたしまった、と。

 ……正直俺のログインしたタイミングがかなり悪かったことは否めない。

 にしても道理で師匠が放っておけというわけだ。どっちも得意分野が違うんだからこれはもう不毛な争いというやつだろう。

 とはいえ俺がとやかく言っては拗らせてしまう可能性がある。

 それに俺は二人のいがみ合いを見ていて先日、先生が言っていた精霊の話を思い出したのだ。

 今後二人は恐らく俺の戦闘パーティーの要になる。そんな二人の仲が悪くなってしまったら先生の話の二の舞になりかねない。

 流石にそんな事態は俺としては遠慮したい……。

 そんなわけで今回は俺が今後の為にという名目で二人をなんとか説得し陣形を決めさせてもらった。

 とはいえ俺だってまだ正解なんてわからない。だからこれから少しずつ形にしていくしかないんだけどな。

 俺は()の俺の仲間たちを見る。

 俺一人で始まって、サクヤと契約して二人になって、今は4人になった。

 きっとこれからも少しずつ仲間が増えてその度に新しい俺達が始まる。

 召喚術士って職業はきっとそういう職業だ。


「よしっ! それじゃあ行くぞ!」

 

 改めて気合を入れ直した俺達はユウゴを先頭に森を進む。

 東の森は虫の森だ。生息するのは蜘蛛に蜂、芋虫、蛾そして蟷螂だ。

 これらの虫がそれぞれテリトリーを持っており、そのテリトリーに入るとそれぞれの虫に襲われることになる。


 俺は周囲を確認するために歩きながら森の中を見渡す。

 こちらの森は南の森以上に鬱蒼としていた。

 南の森は昼間なら少しだけとはいえ日差しが入るし、気持ちのいい森だった。

 だが東の森はまだ昼間だというのに殆ど日が入らない。薄暗く視界の殆どが木々に遮られてしまう。


 これはかなり注意して進まないと……


 そんな風に俺が警戒を強めると同時に俺の危機察知と気配察知に反応があった。反応は…上から!


「ユウゴ! 上だ!」


 俺は素早くユウゴを呼ぶ。ユウゴは俺の声に素早く反応した。手に持っていた大盾を上に翳し咄嗟に身を護る。


 ガキィ!


 ユウゴが盾を翳した瞬間、そこに黒い影が落ち、その一撃を防ぐ。その正体は…


「蜘蛛か!」


■《魔蟲》アサシンスパイダー Rank:1■

種族:隠密蜘蛛 Lv.8

ステータス

HP:??/??

【東の森に生息する隠密能力の高い蜘蛛。木々に紛れ二本の前足に付いた小さいが鋭い刃で獲物を切り裂き、吐き出す粘着性のある糸で獲物を捕らえる。】


 前足に付いた刃での一撃をユウゴの大盾に阻まれたアサシンスパイダーは素早く飛び上がり再び木々の間に紛れる。

 かなり素早いな…。


「主! 私が引きつけます!」


 ユウゴが大盾術の挑発アーツを使う。それにより気配察知で感じるアサシンスパイダーの動きが変わった。

 周囲を回るように俺達の様子を伺う動きから、ユウゴに向かって飛び掛かってくるような直線的な動きへ。

 木々の間から現れたアサシンスパイダーは素早い動きで再びユウゴに飛び掛かる!


「シールドバッシュ!」


 それをユウゴは冷静に大盾で弾き飛ばした。体重が軽い為あっさりと吹き飛ばされるアサシンスパイダー。

 だが軽い故にダメージも殆どないようだ。その為なんと空中で体勢を立て直し、口から蜘蛛糸をユウゴに向かって吐き出してきた。

 ユウゴは大剣と大盾に重さがあるため動きが鈍い。

 それが災いしユウゴは蜘蛛糸をモロに喰らってしまった。

 動きが鈍り焦るユウゴにアサシンスパイダーはトドメとばかりに両前足の刃を振りかぶる。

 だがユウゴは一人じゃない。

 

「キュイ!」


 飛び掛かってくるアサシンスパイダーにユキホの氷魔法で生み出された、氷礫が命中する。


 今度こそ完全に吹き飛ばされ、体勢を崩したアサシンスパイダーにサクヤが素早く近寄る。


「烈火!」


 3連撃。それによりアサシンスパイダーは完全に沈黙した。

 アサシンスパイダーがポリゴンとなって消えた。

 入手アイテムは粘着蜘蛛糸。これが恐らく裁縫素材になるんだろう。

 それはともかくユウゴはまだ蜘蛛糸に捕まったままだ。

 

「ユキホ。 火魔法で小さな種火を出してくれ。」

「キュイ!」


 俺はユキホに出して貰った小さな火で蜘蛛糸を慎重に焼き切ることにした。

 しばらく四苦八苦しながら蜘蛛糸からユウゴを開放する。なんとか解放されたユウゴは最初の気合十分な様子から一転して気落ちした表情を浮かべていた。


「すみません……」


 気落ちしたユウゴの表情を見て俺は思わず苦笑する。

 サクヤと張り合っていた事もあって余計に気落ちしてるんだろう。

 ……気にするなと言っても駄目だろうな。

 その為俺はユウゴの頭をガシガシと慰めるように撫でることにした。

 そんな俺の行動にユウゴは目を白黒させる。


「初陣の相手としてはユウゴと少し相性が悪かったな、すまん。」

「そんな…!主のせいでは…」

「事実だ。 でもユウゴが気になるって言うならああいう相手と、どうすれば上手く戦えるか……よく考えていこう。」

「……はい」

「ユウゴは今回が初陣なんだからな。まだまだこれからだ!」

「はい!」


 俺の言葉にユウゴの表情が少しだけ明るくなった。

 そして直ぐに頭を捻って対策を考え出した。

 ユウゴはかなり真面目な性格みたいだな。サクヤもそうだし鬼って契約すると真面目な性格になるのか?サクヤは契約前は臆病な感じだったし、ユウゴは気性が少し荒い感じだったが……。

 まあ今はいいか。ともかく落ち着いたユウゴの頭から俺は手を離す。そして今度はユキホの頭を撫でた。


「ユキホもよく頑張ったな。あの氷魔法はなかなかいいタイミングだったぞ?」

「キュイ~!」


 肩の上で俺の顔に頭を擦りつけてくるユキホ。実際あの魔法攻撃は絶妙だった。

 そして最後にサクヤの頭を撫でて流石だと褒めた後、俺達は先に進むことにした。


 とはいえ一度戦闘を経験したおかげか、ユキホもユウゴもコツを掴めた様でその後は特に苦戦することもなく、俺達は森を進むことができた。 

 流石はRank2とでも言おうか。スキルレベルや種族レベルは低くとも、そのステータスはこの辺のモンスターの比ではないようで対応に慣れさえすればそれ程苦戦することは無い。

 蜘蛛に遭遇した後にも芋虫、蛾、蟷螂と遭遇した。どの虫も俺の腰くらいの大きさがあったのだが……。

 芋虫は突進をユウゴの盾にあっさり止められ、ユキホの氷礫かサクヤの刀で真っ二つに。

 蛾は毒と麻痺、2種類の効果を持つ鱗粉を撒いていたがユキホの魔法に近づくことなく落とされ、うっかり状態異常に罹ってもユキホの光魔法に治癒される。

 蟷螂に至っては鎌での攻撃しかないためサクヤには当たらず、ユウゴの盾は抜けず、ユキホの氷礫に近づけもしないというありさまだった。

 初戦で戦ったアサシンスパイダーにも再度遭遇したのだが、糸にやられたユウゴも頭を捻って対策を考えた甲斐があり、次からは盾で受けるのではなく、大剣で絡めとる戦法に変え、全く問題なく対処するようになった。

 最初、大剣で絡め捕った後、そのままアサシンスパイダーを引き寄せて大盾で叩き潰した時は、思わず感心してしまった。

 まあアサシンスパイダーを倒すたびにユキホの火魔法で大剣に付いた蜘蛛糸を取る必要性が出てしまってはいたが……。

 そんなわけで全く苦戦することがない。

 

 それにしてもサクヤの時は師匠が鍛えてくれたこともあり、あまり実感がなかったけど……ユキホもユウゴもかなり学習能力が高い。

 まだまだ戦闘技術も連携も拙いところはあるが、戦闘を行うたびに動きが良くなっていっている。

 だけどサクヤと比べれば、成長速度は緩やかな感じだ。これはやはり誰かに師事して、相応の修練をしたかどうかだろう。二人も誰かに師事すればもっと早く強くなれるかもしれない。

 

 それはともかく俺がこんな風にのんびりと考えごとができる程度には戦闘は安定していた。

 実際今も蜂の集団に襲われているが、全く危なげなく対処できている。


■《魔蟲》アーミービー Rank:1■

種族:軍隊蜂 Lv.8

ステータス

HP:??/??

【東の森に生息する気性の荒い蜂。その名の通り複数の蜂種からなる集団を形成する。集団の中ではもっとも数が多く弱いが常に集団でコマンダービーに率いられている為、統率されており、弱くとも脅威度は高い。その針には微弱な毒があり、刺されると軽度な毒の状態異常にかかる。】


■《魔蟲》アーミーポイズンビー Rank:1■

種族:軍隊蜂 Lv.8

ステータス

HP:??/??

【東の森に生息する気性の荒い蜂。その名の通り複数の蜂種からなる集団を形成する。集団の中ではもっとも強い毒性を持ち、刺されると強い毒の状態異常にかかる。集団の中では2番目に数が多い。コマンダービーに率いられている為、統率されている。】


■《魔蟲》アーミーストライクビー Rank:1■

種族:軍隊蜂 Lv.8

ステータス

HP:??/??

【東の森に生息する気性の荒い蜂。その名の通り複数の蜂種からなる集団を形成する。集団の中でもっとも荒い気性を持ち、蜂種には珍しく毒性を持たない。代わりに強靭な顎と太く鋭い針を持ち、獲物に特攻する集団の突撃隊長。コマンダービーに率いられている為、統率されている。】

 

■《魔蟲》コマンダービー Rank:1■

種族:軍隊蜂 Lv.10

ステータス

HP:??/??

【東の森に生息する気性の荒い蜂。その名の通り複数の蜂種からなる集団を形成する。集団を統率する指揮官。それ故か突出した攻撃性を持たず、あまり強くない。だがこの蜂に率いられている集団は危険度が遥かに上昇するという。】


 これがこの蜂軍団である。普通はこんなに多様な種類の統率された蜂の集団はかなり厄介だ。

 恐らくこの森で最も手強いモンスターに分類されるだろう。 


 だがそんな蜂に周囲を囲まれながら俺達は安定して戦闘が出来ていた。

 ユウゴはその手に持つ大剣と大盾を上手く使って攻撃を防ぎ、突撃してきた蜂を大剣か大盾で撃ち落として攻撃を後ろに通さず、そんなユウゴの後ろからユキホは氷魔法で支援攻撃をし、時折ユウゴの身体に当たってしまった蜂の攻撃で出来た傷を癒す。

 そして俺とサクヤは時折ユウゴの後ろから出て、蜂を素早く切り裂きながら、駆け回り次々と蜂の数を減らす。

 

 それにより時間は掛かったが苦戦することもなく、蜂軍団は全滅した。手に入ったのは羽と毒液と針。これは錬金や調薬の素材かな?

 出来れば蜂蜜なんかも欲しかったが、レアアイテムなのかな?


 そうして俺達は時折森に棲む蟲モンスターと戦いながら進み、数時間程立ったところでとうとう東の森を抜けたのだった。


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