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INFINITY STORY'S ONLINE  作者: 藤花 藤花
第2章 夏のキャンプイベント!聖なる島と太古の遺跡
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第51話 理想の一振りは…

 ドーテからこの世界の創世神話や邪気について聞いた俺達は彼にお礼を言って神殿を後にしていた。

 

「悪魔か…。」


 俺は街中を歩きながら思わずつぶやく。邪気を纏っただけのオラグランデがあれ程厄介だったんだ。

 これが悪魔なんてものになったらどれほど面倒なことになるか…


「…今は考えても仕方がないな。」


 とりあえず俺はこの情報をにゃん娘さんにメールで送っておく。するとすぐににゃん娘さんから返信があった。


「にゃん娘さんの方は図書館に行ったのか…」


 正確にはにゃん娘さんのクラメンが、だが。

 まあにゃん娘さん自身は精霊関係で忙しくしている為、クラメンを何人か図書館に向かわせたということだが…。

 まあ結果としては俺が神殿で聞いた内容については向こうも知ることができたそうだ。

 この町の図書館はあまり大きなものではなかったらしいが、それでも創世神話にこの町の周辺の情報(モンスターや採取できるアイテムについてなど)が記載されたものくらいは置かれており、もっと早く行けば良かったと、にゃん娘さんの嘆きの言葉も一緒に書かれていた。

 それなら俺からの情報はいらなかったかな?と思ったが、創世神話関連は絵本として置かれていたらしく真偽のほどが定かでなかったためそれをこれから調べようと思っていたらしい。

 俺からの情報はその裏付けになったということで丁度良かったようだ。

 

 俺はメールを下へスクロールする。メールの後半には彼女たちが調べた、この町周辺のモンスター情報に地理情報の詳細などが一緒に記載されていた。

 俺がラーナさんから聞いた、街道の先に町があることや、東の森の先にある港町についても記載されている。

 俺がにゃん娘さんと話してからまだあまり時間が経っていない。それなのに精霊関係の対処に並行してこれだけの情報を調べ上げるなんて…。

 トップクランの名は伊達ではない。

 彼女のクランが何人いるか俺は知らない。

 だけど苦労して調べた情報を俺との約束以上にこうして流してくれている、にゃん娘さん達には感謝だな。

 特に周辺のモンスターについての詳細情報についてはありがたい。

 この後ガンテツさんの元で約束の試作武器を見て、ユウゴの大盾を買ったら、港町に向かうつもりだったからな。

 そう実は今日、ログインした時にガンテツさんからメールが届いていた。

 内容は想像通り刀の試作が幾つか出来上がったということ。

 その為俺は今ガンテツさんの工房がある場所に向かって歩いているわけだ。

 

 そして俺がにゃん娘さんからのメールを読み終わりお礼を返したところで、教えてもらったガンテツさんの工房に辿り着いた。

 教えられた場所に建っていたのは何の変哲もない2階建ての木造一軒家だった。


「ここ…だよな?」


 俺はガンテツさんのメールに書かれた、工房の場所を再度見直す。

 だが何度見直しても間違っていない。

 

 うだうだとここで考えていても仕方ないか…。

 俺は目の前の家の扉をそっと開いて中を覗き込んだ。

 中にはたくさんの武器が並んでいた。

 剣に始まり、槍、槌、杖、盾、リアルに存在する古今東西様々な武器にこれまた古今東西の重鎧から軽鎧といった防具。

 ちょっとした博物館が作れそうなラインナップだ。

 だがこれなら間違いなく工房…そうでなくても武器屋ではあるだろう。


 その中の様子を確認して、俺は安心して中に入ることにした。これならまず間違いないと思う。

 中に入って俺達は置いてある武器を眺めながら奥へと進む。

 それにしても本当にたくさんの武器が置いてある。剣だけでも短剣、長剣、大剣に細剣、そしてこれはファルシオンか?剣以外にも珍しいところで大鎌なんてものまである。

 …それにしてもさりげなく置いてある包丁は武器なのだろうか?料理人の定番武器?

 そんなことを考えながら奥に進むとカウンターらしき場所に突き当たる。

 そしてカウンターには眼鏡をかけた小柄な少女が縫い物をしながら座っていた。ハーフリングなのかな?

 俺達が近づくと彼女は直ぐに俺達に気が付いたようで顔を上げる。

 

「いらっしゃいませ!ガンテツとシャーリーの工房へようこそ!」


 顔を上げた少女は笑顔を浮かべて歓迎の言葉を口にする。

その笑顔は朗らかでほわほわとした落ち着く空気を放っている。

 そして俺達のことが彼女の視界に入ったところで、彼女の動きが止まった。


「すみません。ガンテツさんと約束をしていたシュンと言います。ガンテツさんは…」

「あ、あなたが鬼殺しのシュンさんですね!動画見ました!かっこよかったです!」


 俺はその彼女の様子を疑問に思いながらも彼女に要件を伝えようとした。

 が、次の瞬間、彼女は瞳を輝かせて俺の手を取りながら立ち上がる。

 というか鬼殺しってもしかして俺の事か?


「あの…?」

「あっ、失礼しました!つい興奮してしまって…。おじいちゃんから話は聞いています。」

「おじいちゃん?」


 ってことはこの人…


「はい。ガンテツは私の祖父です!」


 やっぱりそうか。でも似てないなぁ…。いやまあキャラメイクで弄ってたらわからないけども。


「本当にすみません。顔を見た時あっ!動画で見た人だって思ったらつい興奮してしまって…。」

「まあそれはいいですけど…」

「私はシャーリーと言います。シャーリーと呼び捨てで読んでください!裁縫をやっているのでそういった関係でお困りの際にはぜひ私まで!それでおじいちゃんですよね?でしたら奥の工房に居ますから、こっちへどうぞ!」


 彼女はそう言って俺達を奥の工房へ案内してくれる。

 それにしてもさりげなく、自分を売り込んできたな?まあ今は師匠がくれたものがあるから必要ないけど、今後必要になったら頼んでみよう。


 俺はシャーリーに案内されて、カウンターの奥にあった扉を潜り中に入る。

 そしてそこには大きな音を立てながら真剣な表情で槌を鉄の塊に打ち付けているガンテツさんの姿があった。

 

「それでは私はこれで。」


 俺達を工房まで案内してくれたシャーリーは店番があるためか直ぐに店舗部へ戻っていく。

 

「ガンテツさん?」


 ガンテツさんに声を掛けるが反応がない。

 すさまじい集中力だな…。

 俺達は彼の作業が終わるまで、しばらく彼の作業を眺めていることにした。


 槌が音を立てて打ち付けられる度、ただの鉄の塊が形を変えていく。

 長く鋭く、誰かを護り、誰かを殺す武器の形へと。

 彼が武器に槌を打ち付ける様子はまるで、自身の魂を文字通り注ぎ込んでいるようで、その様はきっと多くの者を魅了する。

 …やっぱりいいな。こういう光景を見るのは…


 全力で何かに打ち込む誰かの姿。

 俺が好きな物語で英雄と呼ばれる主人公たちはみんなそうだ。

 己の全てを掛けて自身と誰かの為に何かを成す。成して魅せる。その在り方はどうしたって俺を魅了して止まない。


 しばらくして鉄の塊が短刀のような形になったところで横に置いてあった液体の入った入れ物にそれを入れる。

 入れた瞬間、蒸気が上がり熱気が俺の居るところまで届く。

 今まで何度も驚かされたがこのゲームの再現度は本当に高いな。

 

 そこでひと段落着いたのか、ガンテツさんは短刀を片付けて立ち上がり振り返る。

 そして後ろにいた俺達に気が付いて少し驚いた後に破顔した。


「なんじゃもう来ておったのか!」

「はい。先日ぶりです。」

「どうやら待たせてしまったようじゃな?」

「いえ。それほど待ってはいません。それに良いものを見せて貰いました。」


 俺は笑いながら視線を炉の方へ向ける。

 俺のその仕草で何のことを言っているのか気が付いたのか彼は照れたように頭を掻いて、誤魔化す様に話を逸らした。


「そ、それにしても何やら仲間が増えたかのう?」

「はい。この子狐がユキホ。男の子がユウゴです。」


 ユキホとユウゴがぺこりと頭を下げる。


「そうかそうか。よろしくお願いするぞ!…それでシュン坊。」


 俺はガンテツさんの視線に頷く。

 さっきからずっとワクワクしてたんだろうなぁ。

 

 ガンテツさんは近くにあった大きな机にインベントリから試作品の刀を取り出していく。

 俺達の刀と同じ長さ大きさのものに太刀、脇差に大太刀まであり、文字通り一揃え用意したようだ。

 

「触っても?」

「うむ!」


 俺とサクヤは良さげなものをそれぞれ手に取ってみる。

 始まりの刀と違いずっしりと手に重さが伝わる。


「どうじゃ?」


 ガンテツさんが問いかけてくる。


「少し振ってみてもいいですか?」

「もちろんじゃ!」


 ガンテツさんから許可を貰い、その場でサクヤと共に少し刀を振ってみる。

 因みに工房内はかなりの広さがあったため刀を振るのに特に支障はない。

 暫く幾つかの刀を振ってはしっくりこずに持ち換えるのを繰り返す。だがなかなかこれといううものがない。

 サクヤの方も同じようで難しい顔をして、刀を持ち換えては試すを繰り返している。


「どうやらしっくり来ぬようじゃな?」


 一通り試したところで俺達の様子からガンテツさんも俺達がしっくり来ていないことが分かったようだ。

 

「すみません…。」

「謝ることはない。わしが坊たちが満足できるものを作れなかっただけなのじゃから。だとしたら…」


 ガンテツさんは顎に手をあてて考え込んでいる。


「俺達の刀はかなり軽めみたいですから、それでしっくりこないのかもしれません。」


 俺は考え込むガンテツさんにそう言って腰の刀を鞘ごと抜いて渡す。

 そして俺の刀を手に持ったガンテツさんはその軽さに目を見開いて驚きを露にした。

 

「なんと!これほどの軽さか!」


 彼は刀を持って軽くダンベルを上げ下げするようにして重さを確かめている。


「持ってみた感じ、試作品の刀は全部この刀よりも重さが上でした。」

「なるほどのう。確かにこれほどに軽い刀を使っていてはわしの作った刀では違和感があるかもしれないのう…」


 俺の刀は恐らくガンテツさんの作った刀の半分くらいの重さだろう。

 本来ならある程度の重さがなければ逆に斬るのが難しくなるのだろうが、俺の場合あまり重いとそもそも持てないからな。

 重さを確かめ終わったガンテツさんは俺に刀を返却する。


「ともかくわしが想像しているよりも遥かに軽い刀を使っていることはわかった。これじゃと恐らく鉄では難しいじゃろうな。」


 どうしたものかと、ガンテツさんは腕を組んで考え始めた。

 確か…


「この辺だと鉄か銅が取れるんでしたっけ?」

「そうじゃ。今のところこの二つ以外はわしは知らん。」


 にゃん娘さん情報でもこの二つ以外はまだ見つかっていないようだったよな…。


「う~む。まあ悩んでいてもしょうがない。わしは他に軽くて頑丈そうな鉱物がないか探しながら、強度を保ったままもう少し軽くできないか試してみることにしよう。じゃからもう少し時間をくれ。」

「わかりました。」


 ちょっと楽しみにしてたんだけどしょうがないか。俺達ってかなり特殊だしな。


「出来たらまた連絡をいれよう。」

「お願いします。お手数を掛けてすみません。」

「な~に、職人としては楽しい時間じゃよ!」

「そう言ってもらえると助かります。俺も何か良さそうなものを見つけたら持ってきますね?」

「頼むの?」


 そして俺達は最後にユウゴの大盾を買って店を後にした。今回は店に置いてあったものを買ったが、ガンテツさんは次までにユウゴの大盾と大剣も用意してくれるらしい。

 

 さて、この後は港町に向かって出発だ。

 

 ここまでお読み頂きありがとうございます^ ^

 次回投稿日は10/22(金)16時になります!

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば、ユウゴの大剣と盾の講習や修行はどうなってるのかな。 修行しないと強くならないという話だったのに、放置してるよね。
[気になる点] 10/25が金曜日になるのは2030年までないということは……?! [一言] 頑張ってください。
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