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INFINITY STORY'S ONLINE  作者: 藤花 藤花
第1章 始まりの町と復讐鬼の軍勢
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第4話 完敗からの始まりと最初の出会い

~~始まりの町 アルヒ 北門前 始まりの草原~~


「人、多いな……」


 俺は思わずそう口にしていた。目の前に広がる草原はかなり広大なはずなのに今はあまりの人の多さに狭く感じてしまう。


「まあしょうがないよ! 今日はリリース初日だからね? ほら、隅の方はあまり人がいないからそっちに行こう?」


 そう言って微妙な顔をしていた俺の肩を叩きながらマーレが慰めてくれる。その言葉に気を取り直した俺はマーレの言葉に頷いた。


「そうだな……そうしようか。アースもいいか?」

「おう、かまわないぞ! こんなに人がいたら落ち着かないからな! ああそれとパーティ申請を出すから受諾してくれ! これをやっとかないと経験値と素材が手に入らなくなるからな!」


 そしてすぐに俺の目の前に≪プレイヤー:アースからパーティ申請が届いています。受諾いたしますか?≫と書かれたコンソールが浮かび上がってきた。それに「はい」と答えて、直ぐに善は急げと人の少ない、隅の方に移動を開始する。そして周囲の人影が少なくなってきたところで俺は口を開いた。


「この辺でいいか?」

「……うん、いいと思う!」

「大丈夫だと思うぜ?」


 2人からお墨付きをもらったところでモンスターを探すため周囲を見渡した。


「居た……」


 と、丁度周囲を見渡したところで運良く数メートル先の草むらから小さな影が飛び出して来た。


「ウサギか!」

「スモールラビットだな! 初戦にはまあいいんじゃないか?」

「そうね! シュン試しにやってみたら?」

「やってみる」


 2人に背中を押され、刀を抜きスモールラビットに近づく。少し近づくとスモールラビットもこちらに気が付いたのか身を低くしながらキーキー鳴き声を上げてこちらを威嚇してきた。

 慎重に近づいていき、残り1メートル程の距離まで近づいたところでスモールラビットの姿が消えた。



「え? っぐほ!」


 一瞬身体に警鐘が鳴った、気がする。その瞬間、腹部に衝撃が走り後ろに吹き飛ばされる。息が詰まり、呼吸ができなくなる。


「~ッイ!げほっ!」


 鳩尾を殴り飛ばされたような痛み。イッタァ~!これが感覚補正なしの効果か!

 再び身体に警鐘。その感覚に従い咄嗟に身体を転がしてその場所から離れる。

 その瞬間今まで自分が居た場所からダンッ!という鈍い音が耳に響いてきた。

 目を向けるとスタンピングでもしたのだろうか?足の辺りの地面が抉れている。だがこの見た目は愛玩動物にしか見えない40センチメートル程の生物は考え事をする暇を与える気はないらしい。

 即座にこちらに向き直ると再び膝をついている俺に向かって突進してきた。


「ま、ずいっ!」


 躱せない!先ほどの衝撃を思い出し思わず目をつぶる。

 ……?数秒ほどたったが衝撃が来ない。恐る恐る閉じていた目を開けると目の前にはいつの間にかアースとマーレの2人が立っており、ウサギを一刀のもとに切り伏せていた。


「ふぅ~。シュン! 大丈夫か?」

「ダメージ受けたならこれ飲んで!」


 あっという間のことだった。俺が思わず息を飲んでいると何でもないようにアースが俺の安否を確認し、マーレはHP回復ポーションと書かれた小瓶を俺に渡してくる。2人共つぇ~。

 それはともかく俺は何とか立ち上がりマーレからポーションを受け取りながら、2人にお礼を言った。


「ありがとう。助かった!」

「おう!」「どういたしまして!


 ポーションを飲むと、2/3程減っていた体力が回復する。というか一撃でこんなに食らったのか…。

 自分のあまりの弱さに思わず気落ちし、2人にウサギの強さを確認してしまう。


「ウサギって確か下から2番目に弱かったよな?」

「まあ、な? だがウサギはAGIが比較的高めだったはずだからな! シュンならどうにかできるかもとも思ったが……まあ初心者じゃしょうがないと思うぞ?」

「そうね、シュンはVR自体初めてなんだからしょうがないわよ! 次はゴブリンを探しましょう?」


 俺の肩に手を置いて、慰めの言葉を口にしながら今度はゴブリンを探し始める2人。お手数おかけします。

 こうして俺の初戦は惨敗で終わった。自分で言うのもなんだが先が思いやられるよな…。

 テンションを下げながら2人とゴブリンを探す。

 すると少し離れたところにある少し背の高い草が揺れ動くのが見えた。

 その草の動きは2人にも見えていたようで俺の方に顔を向ける。


「シュン、気づいたか?」

「もちろん!」

「そうか、草の揺れ方からするに多分ゴブリンだ! どうする? とりあえずひとりでやってみるか?」

「そうする! やばそうなら助けてくれ!」

「「まかせろ(まかせて)!」」


 そんな2人の様子に勇気をもらい草陰に近づくとそこには醜悪な顔と緑色の肌の小人が草でできた服を身に着け、その辺で拾ったのであろう小枝を持って立っていた。


「多分、というか間違いなくゴブリンだな」


 その姿を見て思わずそう呟くと、その言葉が聞こえたのかゴブリンもこちらに気づき小枝をこちらに向けながらどこか怯えたような顔をしながらも威嚇してきた。

 こいつにも勝てなかったら俺このゲームで勝てる相手がいなくなるな……。


「ぎゃぎゃぎゃー!」


 刀を抜き構える。今度は剣道でいう中段で構えた。

 その瞬間ゴブリンが小枝を俺に向かって振り下ろしてきた。


「おっと」


 うん。さすがは最弱と言われるモンスター。振り下ろしの速度はお世辞にも早いとは言えず余裕をもって避けることができた。

 そしてたったそれだけの動作であるはずなのにゴブリンは体勢を崩していた。というか転んでいた…。俺でも何の問題もなく対応できそうだ。

 なんとなくそんな姿を見ていると…


「なんかこんなに弱いと逆に倒すのが申し訳なくなるな……」


 と、思わずそんな風に思ってしまった。まあでも……


「あまり時間を掛けてもしょうがないな……。それでもとりあえず『識別』!」


 レベル上げも兼ねてスキル:識別を使用しゴブリンの情報を見てみることにした。


■《魔物》通称:ゴブリン ♀ Rank:1■

種族:堕鬼 Lv.1

ステータス

HP:13/15

装備

≪武器≫

【その辺の小枝】

≪防具≫

【ボロの草服】【ボロの腰草】

≪アクセサリー≫

【なし】


 なんというか本当に弱いな?それにゴブリン ♀って…。こいつら雌雄があるのか?それにHP減ってる?もしかして今こけたのが原因か?どんだけ弱いんだよ。


「まあいいや。とりあえず倒そう」


 のんびりとそんなことを考えている間にゴブリンも態勢を立て直しているしな。でもなんか倒しづらいなあ……。


「ぐぎゃっ!」


 再度ゴブリンが小枝を振り下ろしてくる。それを思わず俺はその腕をつかんで止めた。その瞬間……


〔怖い〕


「えっ?」


 流れ込んでくる


〔怖い怖い怖い怖い怖い助けて怖い怖い怖い助けて怖い!〕


 強い、強い死への、恐怖…!


 思わず俺は掴んでいたゴブリンの腕を放り出すように放していた。

 ゴブリンが尻もちをつくのを尻目に俺は息を荒げながら急いでゴブリンと距離をとる。


「い、今のは!?」


 その感情は俺の十数年の生の中で一度だって感じたことがないものだった。だがそれも当然だろう。

 現代の死と比較的縁遠い平和な国で生きる人間に死の恐怖なんてものに対する馴染みがあるわけがない。

 そしてそんな俺の狼狽した様子が遠目にでもわかったのだろう。幼馴染たちが慌てたように俺のもとに駆け寄ってきていた。


「シュンどうした!」

「シュン大丈夫!?」


 俺以上に慌てている…。そんな2人の様子を見て何となくほっとした俺はさっき受けた衝撃から深呼吸を一つしてどうにか立ち直る。


「ふぅ…。アース…マーレ…大丈夫だ」


 俺の落ち着いた様子に気が付いたのだろう。2人ともほっとしたような顔を俺に向けてきた。


「「よかった」」

「心配させてごめんな?」


 そう言うと2人とも笑いながら頭を振って…


「ううん、いいよ!」

「気にすんな!」


 と、答えてくれた。


「それでシュンは結局どうしたの?」


 そうマーレが疑問符を浮かべながら聞いてきた。


「待て、マーレ。とりあえずあのゴブリンを倒しちまおう。話はそれからでもいいだろ?」

「それもそうね!」


 そう言って尻もちを突いたままのゴブリンに腰の剣を抜きながら近づいていくアース。

 その時見てしまった。近づいてくるアースに目を向けるゴブリンの顔。その恐怖に染まった表情を…。

 先ほどの現象がフラッシュバックする。

 その瞬間、


「アース待ってくれ!」


 俺は思わずアースを呼び止めていた。

 不思議そうな顔をしてアースが振り返る。


「シュン? どうしたんだ?」

「シュン?」

「すまん2人ともちょっとやってみたいことがあって……」


 俺はゆっくりゴブリンに近づき目の前で片膝をついて視線を合わせた。


「なあ、お前俺と一緒に行かないか?」


 そう言ってゴブリンに手を伸ばした。

 ゴブリンは俺の差し出した手を見て、目を大きく見開く。

 …後から思い返しても俺がなぜこのような行動に出たのかわからなかった。落ち着いたようで実際には落ち着けていなかっただけなのかもしれない。

 だがこの時の俺は【契約】の成功率だとかそういったものを全部無視してただこうしたいと思ったんだ……。


 アースとマーレは俺たちの様子を見て状況がわかっていないにも関わらず顔を見合わせただけで静観の構えを取ってくれていた。


 俺はゴブリンを見つめる。するとゴブリンもこちらの目を見つめ返してきた。……ゴブリンの目って赤いんだな。

 俺は思わず笑みをこぼした。それを見たゴブリンが導かれるように俺が差し出した手に自分の手を重ねた。

 契約アーツに意識を向けると自然と使い方がわかる。


 召喚術≪アーツ≫:【契約】を発動する。


 その瞬間俺とゴブリンを中心に魔法陣が広がった。大きさで言えば直径2メートル程だろうか?

 だが安定していないのか魔法陣が明滅する。

 (! なんでだ?)

 まだ魔法陣は消えていない。だがもしこのままにすれば魔法陣は消え、契約は失敗するだろう。そうなれば俺はともかくゴブリンは無事では済まないと感じた。

 必死に原因を考える。

 (なんでだ? なんで?)

 魔法陣を見る。力が感じられず、とても弱弱しい光。

 (力が足りていない? 力? そうか! 力か!)

 その考えに至った瞬間俺は魔力を魔法陣に注ぎこもうと地面に書かれた魔法陣に手を当てた。

 (魔力が注ぎ込めない? いや違う。俺の体から出てきていないのか? なら!)

 この時、俺はなぜソレイユが魔力操作のスキルをすすめてきたのかを心の底から理解した。

 魔力操作スキルを意識する。……わかる。魔力の使い方が。その在り方が!

 体から魔力があふれる。

 (これではダメだ……。この魔力を魔法陣に向かって……!)

 魔法陣に魔力を全力で注ぎこむ!魔法陣が歪な光を放ち始める。

 (歪な光? 全体に魔力が届いていないのか! つまり!)

 全力で、だが丁寧に魔力を流し魔法陣を満たしていく!


 すると徐々に魔法陣の光が強くそれでいて神秘的なものに変わっていく。そして次の瞬間魔法陣の光は役目を終えたとでも言うようにはじけた。

 

 あまりの眩しさに目を瞑る。

 

 気が付くと魔法陣は消え、目の前にいたはずのゴブリンは姿を消し、地面についていた左手には鬼の横顔のような紋章が浮かび上がっていた。


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