第45話 3人目!更なる仲間!
~~始まりの町 アルヒ 南の森入口~~
「それじゃあシュン君!私たちは湖に行くにゃからここでお別れにゃ!」
「シュン!サクヤちゃん!ユキホちゃん!またね!今度は私たちが何か面白い情報持ってくるから!」
「この森に他に何の用があるのか知らないが気をつけろよ!今度またどっかにレベル上げにでも行こうぜ!」
「三人ともまたな!なにもないと思うけど三人も気を付けて!」
南の森の入り口に移動したところで三人と別れ、三人が森の中に入っていくのを見送る。
三人の姿が完全に見えなくなったところで俺達は先生の元に移動を開始した。先生と約束してたからな。
とはいえもはやこの森で迷うこともなく先生の家に辿り着いた。
「先生!シュンです!約束通り来ましたよ!」
家の前で先生に声を掛ける。なんか小さい頃にアースとマーレの家に二人を遊びに誘いに行った時の事を思い出すな…。
声を掛けてすぐ家から先生が出てくる。
「来たね?待っていたよ!それじゃあ早速召喚していこうじゃないか!」
家から出て来た先生は既にテンションMAX!と言った感じだった。
この人…もしや俺が来るのを待ち構えていたな?
とはいえ召喚するのには俺も異存はない。
前回ユキホを召喚した場所に立ち鬼王の魔魂石を取り出す。
サクヤはユキホを抱いて前回同様離れた場所で待機している。
そして今回は先生もサクヤの隣で待機している。
「今回は君一人で頑張ってね!いざってときは助けるから!」
そう言って先生は俺に向かって手を振る。これも前回言われていたことだから問題ない。
だがとてもいい笑顔で俺に向かってサムズアップする先生の様子に俺は思わずイラっとした。
先生から視線を外し、深呼吸をしてささくれだった気持ちを落ち着ける。
「スゥ~、ハァ~」
息を吐きだし、気持ちを落ち着けたところで石を構える。そして先生に教わった通りに召喚術を発動した。
光り輝く召喚陣。そして何事もなく召喚には成功した。
現れたのは褐色の肌に赤い髪に瞳を持つ、小さな角を生やしたサクヤよりも少し大きいくらいの身長を持つ少年だった。
サクヤが小学校低学年くらいならこの子は高学年くらいだろうか?
背中には身長と同じくらいの長さの幅太な大剣。
上半身は裸でその均整の取れた筋肉を惜しげもなく晒している。
サクヤは角の生えた人という感じだったが今回召喚した少年は鬼が人っぽくなったという感じだな。
とはいえ問題はそこではない。ユキホの時は最初だけは多少警戒されていたが全体的に友好的で契約にもそれほど苦労しなかった。
だけど今回召喚したこの少年は…
「ふむ。やはり元は邪気すら纏うほどに堕ちた鬼の魂が宿った魔石。君やシズカ君により浄化され、慰められたと言っても本来の鬼としての気性は強く残っているか…。」
少年の様子を見てポツリと先生が呟く。
その言葉の通り、召喚された少年は俺に対して闘争心を剥き出しにして背中の大剣に手を添えていた。
「シュン君!そういう子は戦って納得させるしかないよ!その子みたいなタイプは君個人の実力を示さないと恐らく納得しない…。だから一人で頑張って!魔魂石は魂は継承していても記憶は殆ど残っていないから鬼王とは別人だと思った方がいい!」
だからそういう重要な情報は召喚する前に言って置いて欲しい!
そうしている間にも少年は背中の大剣を抜き放ち、俺に向かって構えている。
少年のその様子に俺も素早く腰の刀に手を添える。俺が身構えた瞬間、それを待っていたかのように少年が突っ込んできた。
その光景が数日前の光景に重なる。
先生は彼にはオラグランデの記憶はないと言った。
…だけどその光景は俺にどこかオラグランデと戦った時の光景を思い起こさせた。
魂は受け継がれている、か…。
スピードはそれほど速くない。その為俺は余裕をもって刀を抜き大剣を流水で受け流す。結果、大剣は地面に打ち付けられ、地面を抉る。
力が強いな…。恐らくステータスのSTR値が高いんだろう。
■《魔物》ウォーオウガ Rank:2■
種族:小戦鬼 Lv.1
ステータス
HP:???/???
【復讐の王の魂が宿った魔石によって召喚された鬼。未熟な召喚者が召喚したため使用された魔石のRankに比べ弱体化している。その分、大きな可能性を残している。】
事実だけど未熟な召喚者に少しへこむ…。
まあそれはともかく識別してみたが殆どわかることがないな。
俺がそんなことをしている間にも彼の攻撃は続いている。
先ほどから彼には大きく重いであろう筈の大剣を片手で保持し、振り回して見せている。その膂力はかなりのものだ。
一度両手で大剣を振り下ろした時など地面に小さなクレーターができた。
「うがああ!」
簡単に自身の攻撃を躱し、受け流す俺に焦れたのか攻撃が更に大振りになった。
「そこだっ!」
俺は大振りになったことで隙ができた少年の腹に蹴りを入れる。
その衝撃に少年は後ろに倒れ込む。だが特にケガを負うこともなかったようだ。VIT値も高めだな。
特に痛苦を負うこともなかった少年はすぐにでも立ち上がろうと上半身を起き上がらせようとした。
だから俺は少年が起き上がる前にその眼前に刀を突き付ける。
「「………」」
しばし…少年と睨み合う。そしてふっとお互いの視線が緩んだ。
もう少年から戦意は感じない。俺は突き付けていた刀を鞘に戻した。
少年は立ち上がりじっと俺を見つめる。そして俺に向かって恭しく膝を突いた。
…少しサクヤの名付けの時を思い出すな。
「契約を…」
俺は少年を見つめる。
「契約を、お願いします。」
サクヤと比べて少しだけ、たどたどしい話し方。
俺は無言で頷いて、契約のアーツを発動させた。
オラグランデは復讐者であり、破壊者だった。
ならこの子には…
契約に成功し、契約の光が無くなった頃俺の前に少年の姿は消えていた。
俺は少年を再度召喚し、名付けをする。名前はもう決まっている。
■《魔物》名前:ユウゴ ♂ Rank:2■
種族:小護鬼 Lv.1
職業:護剣士
ステータス
HP:260/260 MP:10/10 KP:90/90 EP:100/100
STR:65 VIT:65 INT:10 MND:10 DEX:15 AGI:30
▼Skill:≪大剣術Lv.1≫ ≪大盾術Lv.1≫ ≪身体強化Lv.1≫ ≪剛力Lv.1≫ ≪剛体Lv.1≫
【復讐の王の魂が宿った魔石によって召喚された鬼。未熟な召喚者が召喚したため使用された魔石のRankに比べ弱体化している。契約者の願いにより種族と職業が変化している。今はまだ小さな護りの力だがこれからの未来に大きな可能性を残している。】
ユウゴ、友護だ。復讐の破壊者の魂から生まれた友を護り救う者。大盾術は恐らく俺の思いから生えたものだろう。
完全にタンクと言われるステータスになったが俺達のパーティバランスとしては悪くない。
俺もサクヤも回避盾みたいな役割しかできないからな。
遊撃のサクヤと俺、後衛で支援役のユキホ、タンク役のユウゴ。
これでパーティとしては4人。確かプレイヤーのパーティ上限が6人だから後二人か。
そこで俺はユウゴがじっと俺に視線を注いでいることに気が付いた。
「…どうした?ユウゴ。名前、気に入らなかったか?」
ユウゴに尋ねるも彼は首を横に振る。
「…不思議、です。」
「ん?」
不思議?
「あなたに、召喚されてからも、戦っているときも、ずっと…」
根気強く俺はその言葉の先を待つ。
「ずっと、前から、あなたを知っている気がした…。」
思わず俺は目を見開く。
ユウゴはそんな俺に向かって深く頭を下げた。
「これから、よろしくお願いします、主。」
俺は思わず破顔して彼の頭をわしわしと乱暴に撫でる。
ユウゴはそんな俺の行動に目を回しながらも、大人しく頭を撫でられていた。
なんとなくだけど…これで、やっとあいつの心を救えたような気がした。
「上手く契約できたみたいだね?おめでとう!」
俺がユウゴの頭を撫でてスキンシップを図っていると、いつの間にか先生とサクヤ達が近くに来ていた。
「はい。無事に終わりました。ありがとうございます!」
「いやいや!気にしないでくれ給え!これで君の契約モンスターは3人だね?バランスも良いし君はやはり中々運が良いよ。でも契約しているモンスターが増えると取得できる経験値が徐々に減っていくから気をつけ給え。」
そうなのか…。薄々感じてはいたが契約は慎重にしないとだな。
「大体どれくらい減るんですか?」
「そうだね…。君と共に契約モンスターも戦闘に参加しているならば、召喚術士以外の職の者が同じ人数で戦闘した時に得られる一人頭の経験値の大体一割減と言ったところかな?」
一割減か。中々重いな。
「というのも技能なんかに関しては関係ないんだけど、モンスターを倒すことで得られる経験値というものは倒した時にその時戦った者に与えられるんだ。普通だったらそのまま参加した者がそれぞれ分割して得られるんだけど…。召喚術士の場合は術士を通して繋げたリンクから契約モンスターに送られる。その時に理由はわからないけど経験値が少しだけ削られるみたいなんだよねぇ。」
先生でも理由がわからないのか…。
「で、数が増えると戦闘に出さずに待機させておく子も増えてくる。そうすると戦闘に参加していない子にも少しだけ経験値が送られるんだ。」
つまり俺と召喚モンスター5人でモンスターを倒しても、契約モンスターが多いと、そのまま6分割にならない上に1割程経験値が減るってことか。
「君が成長していけば、その辺りも良くなってくるけど始めのうちは契約モンスターは戦闘に出せる数までで止めておいた方がいいと思うよ。」
…もしかして契約できる数に縛りがあるのってこれが原因なんだろうか?
「まあ今は余り意識しなくてもいいよ!そもそも契約できないしね!それよりも君、精霊と契約したろう?」
俺は先生の言葉に驚いてやましいことがあるわけでもないのに、意味もなくビクッとしてしまう。なんでわかったんだ?
「いつから気づいてたんですか?」
「家に来た時からだよ。でもあの時は最優先事項があったからね!」
最優先事項…。鬼王の魔魂石を使った召喚か。先生らしい。
「とはいえ指摘はしたけど精霊との契約はデメリットはほぼ無いから気にせずどんどんやってしまっても大丈夫だよ!今話した経験値が精霊魔法を使ったからって減ることもないからね!…ただ精霊同士で性格が合わないものもいるからそういう精霊同士は会わせないように気を付けて!」
俺にそう忠告した先生の顔は先ほどまでのハイテンションはどこへやら、何かを思い出したかのように疲れたものになっていた。
昔、精霊関係で何かあったんだろうか?
「まあ僕からは以上だよ!他に何かあるかい?」
他には…俺からは特にないな?
「何もないなら今日はお開きだ!良ければお茶でも飲んでいくかい?」
俺は先生のお誘いに乗って先生の元でまったりお茶を飲んでから町へと帰還するのだった。




