第41話 新たな仲間
徐々に光が収束していく。突然のことに思わず目を閉じてしまったためどうなったかがわからない。
あまりの眩しさに目がちかちかするな…。
徐々に視力が元に戻ってくる。
「キュウ?」
キュウ?
俺は視力が戻って来た目を鳴き声のした方に向けた。
そこにいたのは白い二つの尾を持つ狐だった。
大きさは俺の膝下くらいの大きさだ。
赤と青の毛が混ざっており、その二つの色がそれぞれの尾の先と左右の足、それと白い身体を模様のように彩っている。
モデルは…北極キツネだろうか?だけど耳が大きい…もしかしたらフェネック辺りも混ざっているのかもしれない。
ふわふわしていてとても触り心地が良さそうだ。
まあそれはともかく…
「先生?」
「あ、あはは。ちょ~っとだけ気合を入れすぎたかもしれない。」
この子が来たのは確実に先生の魔力が原因だろう。責める気はないがこんなことなら油揚げでも用意しておきたかった。
やっぱり信用させるならまずは好物だろう。
材料がどこにあるかもわからないけど…リアルでは肉食に近い雑食らしいし、肉でもいいかな?インベントリにウサギ肉ならあるし。
「それよりも、ほらっ!あの子狐、君の事待ってるみたいだよ?」
俺は視線を子狐に戻す。子狐は首を傾げて俺の方を見ていた。
「ああいうまだ幼い子や、力が弱い子は比較的契約に納得してもらいやすいんだ。そんなわけで…はいこれ。」
俺は反射的に先生が差し出して来たものを受け取る。これは…
「油揚げだよ。僕ら狐の大好物!たくさんあるから僕のを分けてあげよう!」
持ってんの、この人!?
…この世界の狐ってやっぱり油揚げ好きなんだ?たくさん常備しているくらいだし。
「ありがとうございます、先生。」
「気にしなくていいよ!そんなことよりほら早く!」
先生に促されて俺は子狐に近づく。
子狐は先ほどまでと変わらず俺のことをじっと見つめていた。
その純粋で円らな瞳に少し気圧される。
ど、どうすれば…
俺は対応に迷いながらも子狐にそっと近づき目の前に貰った油揚げを差し出してみた。
「…食べるか?」
スンスンと子狐は油揚げの匂いを嗅ぐ。そして直ぐに油揚げに食らいついた。
流石大好物。幼いこともあるかもだが、警戒の欠片もなく食らいついた!
思ったよりも警戒心がなかったこともあり、試しに油揚げを食べている、子狐の背中をそっと撫でてみる。
子狐も特に嫌がる素振りは見せない
…凄く柔らかくてもふもふしている。これは癖になりそうだ。
しばらくして子狐が油揚げを食べ終った。そして俺のことを一瞬見上げた後「キュン!」と一声鳴いて俺の手に顔を擦りつけて来た。
これはいけるかな?
「俺と契約してくれないか?」
子狐にそう問いかけてみるが俺の声に反応はするが、顔を擦りつける行為をやめない。
そんな俺の様子を見た先生が後ろから助言の言葉をくれる。
「幼い子や契約して直ぐの子はこちらの言葉がわからない場合が多いよ。」
「そうなんですか?」
「まあまだ子供だからね!だからサクヤちゃんみたいなのはなかなか珍しいんだよ?」
う~む。召喚術って奥が深いな。
「リンクが出来れば割と直ぐにある程度の意志疎通ができるようになるから今は勘で頑張って!契約自体の補助はするから!」
勘…。もうちょっと具体的なアドバイスが欲しいけどまずはやってみるしかないか…。
見る限り懐いてくれてるし…
「わかりました。契約、やってみます。」
「よし!それじゃあ僕は補助をするね。」
「お願いします。強化は…」
「やってもいいけど君の魔力の範囲でね?」
素材はないから自分の魔力を使うしかない。ならサクヤの時みたいに限界までだな。
俺は子狐に向き合い契約の術式を発動する。
サクヤの時みたいに魔法陣に魔力を丁寧に注ぐ。そして前回は無意識にやっていた強化を意識する。これは契約時だけみたいだが、ただ意識するだけでよかった。
あとは願いによって方向性が定まる。
魔法陣に光が満ち、弾ける。
光が収まった頃にはサクヤの時のように子狐の姿は俺の前から無くなっていた。
〔二尾白狐との召喚契約に成功しました。名前を決めてください。〕
〔特定の条件を満たしました。契約した二尾白狐が強化されました。〕
〔召喚術のレベルが上がりました。JSPを2ポイント獲得いたしました。〕
JobSkill:召喚術 Lv.4↑
≪所持アーツ≫
【召喚】 熟練度:85↑(現在の同時召喚可能数:1/3)
【魔石召喚】 熟練度:10
【契約】 熟練度:19(現在の同時契約可能数:2/3)
【強化】 熟練度:19
●JSP(JobSkillPoint):8↑
■《魔獣:幼体》名前:名無し ♀ Rank:1■
種族:二尾白狐 Lv.1
ステータス
HP:20/20 MP:105/105 KP:40/40 EP:100/100
STR:10 VIT:10 INT:35 MND:35 DEX:5 AGI:20
Skill:≪火魔法Lv.1≫≪氷魔法Lv.1≫≪光魔法Lv.1≫≪魔力操作Lv.1≫≪幻影Lv.1≫
《備考》
【熟練の召喚の技を持った高位の狐の補助の元、未熟な召喚術士により召喚された二つの尾を持つ白狐。その為他の同種族の個体よりも能力が高め。更に術士の限界まで魔力を使用して契約されたことにより能力が強化されている。白狐は一部では神の使いと言われ神聖視されることもある。】
あの子狐、二尾白狐っていうのか。能力は完全に後衛寄りだな。
魔法っていうのは多分さっき先生の話に出てたものだ。
「あっ!モンスターは基本的に覚えるのは魔法だよ!魔術は元は人が作ったものだからね!」
俺が子狐のスキルを見ていると先生が横から補足してくれる。
そうなのか?でも…
「それだと魔法があまり知られていないっていうのはおかしくないですか?」
モンスターが覚えるなら最低でもテイマー辺りなら知っているはずだよな?
「うん?ああそれはね?正確にはモンスターの魔法は魔術と同じものだと思われているからなんだ。」
「同じ…ですか?」
でもこの二つは違うものだよな?
「知識が失伝した結果、魔法=魔術になってるんだよね。だから正確には魔法の名前以外は知らないものが殆どということさ。」
そういうことか。魔術と魔法が混ざって認識されるようになって余計に魔法の詳しい情報がなくなっていったのか…。
「それにしても氷と光の魔法とは運がいいね!狐系のモンスターは大抵火魔法と魔力操作に幻影は持ってるから、氷と光を持っているのはなかなか運がいいよ!」
多分氷は先生が補助してくれたから、光は俺の強化の結果かな?
身体が小さいこともあって俺やサクヤの補助ができる力が手に入ることを願ったからな。
「それじゃあ一度召喚して名付けをしようか!ほら!召喚してして!」
先生に促されて俺は子狐を召喚する。俺の前に現れた子狐は先ほどと特に見た目は変わっていない。
だが先ほどよりも俺に懐いてくれているようで俺の足に頭を擦りつけてキュンキュンと鳴いて甘えて来た。
俺はそんな子狐の頭を撫でて、名付けをする。
「そうだな。お前の名前は…ユキホだ。」
ユキホ、雪穂だ。狐は豊穣の使い。俺の国での豊穣の証はやはり稲穂だろう。そして実は稲穂は多年草で冬でも芽吹く。美しく儚い雪とその中に力強く芽吹く稲穂をイメージしてこの名前を付けた。
俺が名前を付けるとユキホは先ほど以上にキュンキュンと喜び身体を擦りつけてくる。
俺はそんなユキホを抱き上げてこちらの様子を見守っていたサクヤに近づいた。
「ほらユキホ。彼女はサクヤだ。お前の先輩になるから良く言うことを聞くんだぞ?で、サクヤ。この子はユキホだ。先輩として可愛いがってやってくれ。」
俺が紹介すると先生が言った通り契約したことで言葉がある程度わかるようになったのか俺の腕から離れサクヤの元に飛び込む。
そんなユキホをサクヤも抱き留め二人はお互いに挨拶を交わし始めた。まあ挨拶と言ってもユキホはキュンキュン鳴きながら時々サクヤの顔を舐めるだけだが。
ともあれ仲良く出来そうで良かった。
しばらく二人の様子を眺めていたら後ろから様子を見ていた先生が声を掛けてきた。
「うん。問題はなさそうだね?」
「はい!先生。ご教授ありがとうございました。」
「いやいや気にしないでくれ給え!私としてもなかなか初々しいものを見られて楽しかったよ!」
う、初々しいって…
俺は先生の言葉に思わず照れると同時に深く感謝する。
流石は熟達の召喚術使い!…と俺が先生の先達としての懐の深さに感動していたところで、
「お礼は、またここにきて僕にあの魔魂石を使った召喚を見せてくれればいいから!あっ、それとここには一度来られればあとはいつ来ても見つけられるからね!」
最後の先生の言葉がそんな俺の感動をスッと鎮火した。
見せに来るのは構わないが、もう少し自分の知的好奇心を隠して、先ほどの先達としての鷹揚な態度を保っていて欲しかった…!
先生…せめてもう少しこの感動に浸らせて欲しかったです。
最後の最後でなんとなく微妙な気分になりながら、俺はユキホを抱いたサクヤと共に先生にお礼を言って、先生の元を辞去するのだった。




