第37話 鍛治士ガンテツ
「ガンテツさん?」
一体何の用だ?
「ふむ。それほど大した用ではないのじゃがな?」
そう言うとチラリとにゃん娘たちを見る。
その視線の意味をきちんと察したのだろうにゃん娘達は先に帰ると言って俺とフレンド登録をしてから師匠に案内されて道場を出ていった。
最後に全員が何かあったら連絡をくれと言っていたのだが一体何を期待しているんだ?
にゃん娘達を見送り俺はガンテツと向き合う。
「それで何の用で?」
「うむ。実はじゃなお主と召喚モンスター…サクヤと言ったかの?二人の得物を儂に作らせてもらえんかと思ったんじゃ。」
俺とサクヤの得物ってことは…
「刀をですか?」
「そうじゃ。お主たちの得物はまだ初期のものであろう?」
「そうですが…。でもなぜ?」
「実はのう…」
理由を聞くとそれは彼にとってはとても切実なものだった。
なんでも彼はリアルでも刀鍛冶だったそうだ。刀は現在でも一種の美術品として価値があり、一部の好事家の間ではとても高値で取引されている。まあ彼が言うには高値でも売れるがそれだけでは足りず、刀以外にも包丁なんかも作っていたらしいが。まあそれはともかく彼は刀鍛冶としてはそれなりに有名な鍛冶屋だったらしい。そうだった、だ。
彼としてはもっと刀を作り続けたかったが寄る年波には勝てず筋力も衰えてきたことで満足に打てなくなり引退。
だが刀への未練は消えず腐っていたところに彼の孫娘がこのゲームをくれたのだという。
彼はこのゲームをやって感動した。現実では衰えた身体はきちんと動き今まで以上に力が入る。
様々な鉱物に刀以外の武器も作れる。あまりの喜びにしばらく一心不乱に鍛冶をしているとふと気が付いた。刀を依頼してくるプレイヤーがいないことに。
後からマーレに聞いたことだが、以前刀は使える相手を選ぶと言ったがその使えるプレイヤーも使えるだけではっきり言って普通に剣を使った方が楽で強いんだそうだ。
リアルで刀を使ったことがある人も結局のところ実戦の中で使った経験があるわけではないため、いざ実戦となったらとりあえず使える程度にしか使えない。結局刀を使うプレイヤーはいなくなり、結果刀の作成をお願いしてくるプレイヤーもいなくなったわけだ。
閑話休題
剣やらバトルハンマーやら今まで作ったことがないものが作れることは楽しい。
だがガンテツとしてはやはり刀が作りたいのだ。それも今まで作ってきた美術品だったり、居合をする人間が藁を斬るためのものではない。実戦の中で使われる本物を。
「そういうわけでの。あの映像を見た時、儂は感動したんじゃ。刀を使いこなし強大な鬼を相手に戦うお主の姿に…」
そうストレートに言われると照れるな…。
「刀の費用はいらん。素材に関しては持ってきてもらう必要があるかもしれんが買えるものであれば儂が自分で用意する。考えてみてくれんだろうか?」
ガンテツの視線はとても強い。それほどまでに刀を作ることに飢えてるんだろう。
…俺としても作ってもらえるならありがたい話だな。リアルでもやってたなら腕はいいだろうし俺には職人との伝手でもない。だけど…
「その話、こちらからもお願いしたいです。ですが費用は払いますよ。」
「そうか!じゃが費用は本当に気にしなくてもいいんじゃよ?」
「いえ。仕事には対価が必要です。」
さっき大金も手に入ったしな。
「そこまで言うなら貰っておこうかの。じゃが払えないときは言うんじゃよ?儂としては出来る限り刀を作るチャンスは見逃したくない。」
「わかりました。」
俺とガンテツは握手をして合意する。これで職人への伝手ができたな。ありがたい。
「では早速作ってこよう。まずはいろいろな重さと種類の刀を作るから、それを試しに振ってみて使いやすそうなものを探して欲しい。」
「いいんですか?」
「うむ。費用は最後に請求するからとりあえず今は良い。」
「わかりました。できれば今使ってる刀も使い続けたいので一緒に腰に差しておけるものがいいです。」
「わかった。サクヤ嬢ちゃんのもそれでいいか?」
「とりあえずはそれでいいです。」
「よし。では早速作ってこようかの。一応ゲーム内で3日時間をくれ。」
そう言ってガンテツはうきうきした顔をして帰って行った。
後には俺とサクヤそれにいつの間にか戻って来ていた師匠だけが残される。
そういえば師匠に聞いておきたいことがあったんだ。
「師匠。先日の戦いで俺が最後に使った技なのですが…」
「無の型 鬼斬の事ですね?」
やっぱりわかってるよな。
「はい。あれはなんなのですか?」
「あれは神通流の奥義の一つ。神通流は神に通ず。神に通ずということはこの世の全てに通ずるのです。」
つまり神通流の奥義は身も蓋もないことをいえば鬼斬みたいな特定種族への特攻技ということになるのか?
「あれは神通流をある程度極めたうえで特定の種族と戦い続けることで得られます。あの時は量、質共にかなりのものでしたからね。その技が開花したのも納得です。」
これは他の奥義を手に入れるのはかなり大変だな…。あの時みたいなレベルの数、質の相手とまた戦うのはもう勘弁してほしい。
「まあ奥義に関してはそう簡単に習得できる物ではないですから考える必要はありません。それよりも今屋敷の入り口で領主の使いからこれを預かりました。」
領主の使い?
そう言って師匠が俺に綺麗な便箋に狼の横顔と剣が描かれた封蝋がされた手紙を渡して来た。
裏にはアルヒ町 領主 ロイデンス・フォン・アルヒと書かれている。
「なんで領主から?」
「恐らく先日の鬼退治の件ではないでしょうか?」
確かマーレが各門のところに領主に仕える騎士が来てたって話してたな。
「ともかく中身を確認してみます。」
俺はサクヤにも見えるように屈んで手紙を開ける。師匠も内容を見るために覗き込んできた。
なになに…
【来訪者 シュン殿
先日のゴブリンの軍勢の侵攻に際し、原因たる鬼を討ったことに対して褒美を取らせる。
ついては貴殿の時間が許すときに我が領主の館へと来られよ。
アルヒ町 領主 ロイデンス・フォン・アルヒ】
「やはり先日の事のようですね。」
「みたいです。とりあえず今からサクヤと一緒に行ってみます。」
「わかりました。もしかの領主が何か言ってきたら私に言いなさい。力になりますからね?」
「…ありがとうございます。」
なんだろう?なにか無茶を言う人だったりするのだろうか?不安になってきた。
「ああそんなに不安がる必要はありませんよ?この町の領主は穏やかな良い方です。今のは念のためにですから。」
それならよかった。思わずホッと息を吐いてサクヤの頭を撫でる。
…なんかサクヤの頭って丁度いい位置にあって撫でやすいんだよな。
それになんか撫でてると和む。サクヤも撫でると気持ちよさそうな顔をするし。なんか少し犬みたいだな?
…次に契約するのは犬とかどうだろう?この辺だとウルフか?いやその前にまずは魔石召喚を試すか?あ~もうやりたいことが多すぎる!師匠から貰った手紙もある。俺の予想通りなら召喚術士関係だと思うんだよな…。
あ~もうやりたいことが多過ぎる!とはいえまずは領主の館だな。
そうして俺はサクヤと共に屋敷を出た。褒美が気になるけどまずは粗相がないようにしておかないと…。




