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INFINITY STORY'S ONLINE  作者: 藤花 藤花
第1章 始まりの町と復讐鬼の軍勢

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第30話 復讐の終わり

 身体を再生したオウガの元へと正面から飛び込む。

 再生したばかりで周囲を見渡していた奴も正面から走り寄ってくる俺のことに気が付いた。

 奴と俺の視線が交差する。その瞬間奴は歓喜の表情を浮かべながら獰猛に笑った。

 走り寄ってくる男が先ほどまで自身と戦っていた人間だと気が付いたのだろう

 そして奴は今度こそ俺を屠ってやろうと自身の持つ大剣を俺に向かって振り下ろした。

 

 (速い!)

 

 先ほど戦っていた時よりも更に上がったスピード。恐らく師匠にやられたことと町の方へ行ったゴブリンがプレイヤーに倒されているからだろう。

 後方から歌が聞こえる。魂を静め、慰める祈りの歌。

 師匠とサクヤの方をちらりと見る。2人が舞っている。自身の持つ刀を抜き、時に合わせ、時に離れ、クルクルと回りながら円を描くように舞っている。

 足がステップを踏むたびに仄かな光の粒が舞い上がる。きっとあの光の粒が癒され溶けた心の欠片。


『輝きしその魂は 今は暗き陰りの果てに

 遠く遠く 旅路の果てに 今あなたは何を思うのでしょうか』


 上がったスピード。だが俺は先ほどと同じように奴の大剣を受け流してみせる。

 既に俺の集中は極まっている。心が完全に定まったから。

 もう俺にただ速いだけの攻撃は通らない。

 流された大剣が俺の横を通り過ぎる。先ほど戦っていた時と同じ光景。

 だがここから先の景色は奴が視たことのない景色だ。

 俺の肉体に光が宿る。それは命の光。身体の中を俺の生命力が循環し俺の身体の中を駆け巡る。

 

「神通流:陽の型・一番 陽命」


 それに合わせて更に一瞬だけ身体強化。俺は自身に更なる強化を施す。

 

 奴には何が起こったかわからなかったかもしれない。さっきまでとはまるで次元が違う加速。その勢いのまま白き刃を振るう。


『どうしてあなたは怒るのでしょうか?

 どうしてあなたは憎むのでしょうか?』

 

 まさに一閃。白い閃光のような軌跡を描いて奴の身体を切り裂く。

 奴はその痛みに雄たけびを上げ、だがすぐさま再生する。……だけど少しだけ再生速度が遅くなってる?


『叶わない祈りに泣いているから

 叶わない願いに悲しんでいるから』

 

 ケガを負ったのにステータスが変わらない。先ほどまでと変わらない速度で大剣を、拳を、脚を振るう。

 そのすべてを打ち落とす!


『だからその苦しみを悲しみをほんの少しだけ私に預けて』


 奴が吠える。まるで何かの痛みに耐えるように。奴の周りを覆っていた邪気がまた少し晴れる。


『私もあなたの痛みの傍に居ましょう。あなたのその心が救われるまで』


 俺は上がった身体能力を生かして奴の攻撃をいなす。流す。受け止める。俺の身体を流れる命の輝きが更に強くなる。俺の集中力が極まったその先へ……輝きが増していく! 俺の心が更に深く深く沈んでいく。先ほど戦っていた時よりも更にその先へ。


『その痛みが晴れるならあなたの咎を許しましょう』

 

 奴と何度もぶつかった。幾度も刃を交えた。その間ずっと奴の心は俺に響き続けている。

 俺をここまで引き上げたのは間違いなく奴だ。


『その悲しみが癒えるならあなたに罰を与えましょう』


 再び俺の刀と奴の大剣が交わる。何度も見た。誰かが目の前で誰かにその刃を振り下ろす。手を伸ばしても、伸ばしても届かない。

 自身の弱さに絶望した。自身を取り巻く世界に絶望した。その果てに強さを求めた。

 もう何も失わない強さ。こんなにも尊い思いのはずなのになぜこんなにも狂ってしまったのだろう?


『咎の焔に焼かれる貴方を救えるように』


 奴の攻撃を受け流しながら俺は魔力を操る。イメージするのは奴の悲しみを癒し送る聖なる焔。

 師匠とサクヤの舞と強く深い思いが俺に力を与える。

 

『その喪失をあなたの心が認められるその日まで』

 

 俺は感応スキルで自身の心を送り続け、奴と心を交わす。

 俺とオウガは笑う。長き時を過ごした友のように。絶対に認められない宿敵と出会ったように。

 師匠はこの鬼を哀れだといった。だが刃を交わし続けた俺は奴のことをそんな風には思えなかった。

 確かに奴の境遇は哀れなのかもしれない。だけど奴は今ここにこうして立って俺と刃を交わしてる。

 世界を、人を憎みそれらを討ち滅ぼす力を願ってここにいる。ここまで戦い続けたこいつに、最弱からここまでの存在になったこいつに俺が送ることができる心は一つだけだろう。

 哀れみ慰める癒しの歌は彼女たちが送ればいい。俺が送る、たった一つ。それは……


【敬意】


 きっと奴にはこれがいい。敬意をもってこの最弱から這い上がった鬼を同じ弱者だった俺が討つ。

 これしかない。これできっと十分だ。

 

『あなたを守り支えましょう。あなたの痛みが癒えるその日まで』


 舞と歌が進むにつれて奴の周囲の邪気がどんどん薄くなっていく。彼女たちの舞に合わせて浮かぶ光の粒は溢れるように強く輝き昇っていく。

 溢れる輝きは俺と奴の周囲を舞っていく。

 全てではないとはいえ力の元たる黒い靄、邪気を浄化されてもやつの動きは衰えない。

 それどころか奴の剣は俺に呼応するように強く鋭くなっていく。

 だけど……

 

「今度こそ終わらせる」


『あなたの願いの旅路の果ては』


 俺の真白の刀に焔が灯る。白と紅に染まるその焔は奴を倒し、癒す祈りの焔。


「神通流:月の型・一番 月結」

 

『あなたの祈りの旅路の果ては確かに此処に。』


 もう奴の周囲にあった黒い靄はどこにもない。暴れ続けるこの悲しく哀れな、それゆえに強きこの鬼を討つために俺は自身の生命力に魔力、気力の殆ど全てを燃やす。

 その瞬間俺の身体からあふれる命の輝きが更に力強さを増した。

 刀に灯った焔もその輝きに押されるように静かに輝きを増す。

 その光は太陽の輝きに照らされた月のようで。


『あなたの祈りのその先が』


 流石の奴も俺が放つその輝きに気圧される。それでもなお奴は俺を屠らんと手に持つ大剣を振るう。

 

 敬意をもってこの強き鬼を斬る。

 俺の心の水底に光が差す。さっき一度感じたものより強く優しい光。

 スキルがそんな俺の思いに応えるように俺の中に一つの技が生まれた。きっとこれが俺の意志。俺の願い。


『あなたの願いのその先が』


 奴の大剣を躱す。俺の横を大剣が通り過ぎる。その先はがら空きの奴の懐。俺は刀を鞘にしまった。

 俺の行為に奴の瞳が見開かれる。

 これが正真正銘最後の一撃。


「神通流:無の型 鬼斬」


 音はなかった。俺は振り抜いた刀をそのままに奴と背中合わせに残心している。

 ゆっくりと奴の首が地面に落ちた。身体が後ろに倒れていく。

 今度は回復する兆しはない。

 身体が倒れる直前、首だけを残して身体がポリゴンの塊となり爆散する。

 それはまるでこの哀れな鬼を旅路の果てに連れていくようで。

 最後に残った顔を見ればその表情はどこか満足げなものだった。

 次の瞬間にはその首もポリゴン片になり爆散して消えていく。

 後には何も残らない。それがどこかもの悲しい。

 

『あなたの旅路のその果てが幸福でありますように。』


 師匠とサクヤの舞の最後の言葉に俺も祈るように空を仰ぐ。いつの間にか夜は明けて森の中に朝日が差し込んできていた。目の前には大きな湖が朝日を浴びて美しく煌めいている。

 どうやらこの広場は湖の前にあったものだったらしい。

 朝日の中、数多のゴブリン達の心が師匠たちの舞により浄化され、光の中、心の欠片が空に昇っていく。

 俺は目を細めてその美しい光景を見る。

 俺にはその光がまるで奴を優しく抱き、連れていく導きのように見えた。


「じゃあな。【オラグランデ】……」


 これが俺から奴への最後の手向けだ。


これにて一章の山場は終わりです!

いかがでしたでしょうか?


 面白い!先が気になる!と思って頂けたらブックマークや評価、感想、レビュー等よろしくお願いします^ ^


 勿論無くても読んで頂けるだけで作者は幸せなので今後ともよろしくお願いします♪

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 掲示板回みたいです! [一言] すごく面白いです。最近の推し小説です。 いい締めくくりでした。次話楽しみにしてます。
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