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INFINITY STORY'S ONLINE  作者: 藤花 藤花
第1章 始まりの町と復讐鬼の軍勢
29/78

第28話 一方、幼馴染達は…

 ━Side マーレ ━


 シュンから救援を求めるメールが届いた。


「アースこれって……」

「ああシュンからの救援メールだ」


 正直まさかシュンから救援メールが届くとは思わなかった。

 リアル昨日の時点でシュンはフィールドでまともに戦える状態ではなかったはずだ。

 少なくとも森や山で戦うことは出来ないと断言できる。だからてっきり町にいると思っていたのに……。


「どうする?」

「どうするってもちろん助けに行くに決まってるでしょう?」


 そう当然助けに行く。今からでは間に合わないかもしれないけど見捨てるなんて選択肢は私にはない。


「助けに行くのは俺も同意見だ。だけどどこに行くんだ?」

「あっ!」


 そうだ。シュンのメールでは森にいることはわかるけど、どこの森にいるのかがわからない。


「ど、どうしよう?」

「どうしようって言ってもな。山ならよかったんだがいるのは森だろう?場所を特定するには正直範囲が広すぎる」


 森は北、東、南と広範囲に広がっている。


「神殿に行くか? 下手したら既に死に戻っているかもしれない」

「でもシュンなら死に戻って町に帰ってきたなら連絡してくるはずよ。それがないってことは……」

「まだ戦っているか、逃げているか、隠れているか。どっちにしろ連絡できる状態じゃないか」


 どっちにしろこの情報だけじゃ特定できない。

 そうして私とアースが頭を突き合わせて、どうにかシュンの居場所を特定しようと考えていると、会議を終えたヒルド達トップクランのマスター達がこちらに向かってやってきていた。


「マーレどうかしたの?」


 私たちが真剣に考え込んでいたからだろう。

 心配そうな顔をしてヒルドが私に尋ねてくる。

 そうね……この後の防衛戦のためにもシュンのことは相談しておかないと。

 アースと視線を合わせる。アースが頷いたのを見て、私はヒルドにシュンのことを相談することにした。


「実は……幼馴染から救援メールが来たんです」

「救援? なに? その子、勝手に突っ込んで行ったりでもしたの?」


 私の一言に勘違いしたヒルドの眉が寄る。

 ヒルドのその様子に私は慌ててその勘違いを否定する。


「違うわ。たまたま森にいて巻き込まれたの」

「なんだ。それで救援? でもそれならもう死に戻ってるんじゃないかしら?」


 やっぱりそう思うか。


「それがまだ死に戻りの連絡がないの」

「えっ? じゃあまだ戦ってるってこと? その幼馴染相当強いの? さっきにゃん娘に聞いたんだけど偵察班が強さ確認のために少し戦ったら、戦闘特化のプレイヤーが一体倒すのにかなり苦労したらしいわよ? 何人かは死に戻ったらしいし。そんなの相手にしてまだ生き残っているなんて……」


 ヒルドからもたらされた情報に目を丸くする。


「にゃ? 幼馴染ってもしかして例の情報の彼にゃ?」


 ヒルドにシュンのことを相談していると私たちの話が聞こえたのだろう。近くでアーサーと話をしていたにゃん娘が私たちの話に興味を示しアーサーとの話を中断して私たちに話しかけて来た。

 放置されることになったアーサーも興味があったのだろう。特に何も言うことなくこちらに顔を向けている。


「そうよ。例の話を見つけた幼馴染」

「おおにゃ! 例の話はかなり役立ったにゃ! 私も力を貸すにゃ!」

「ありがとう! 救援メールが来たの。森のどこかにいることしかわからなくて」

「救援にゃ? それに森? それだと流石に範囲が広すぎるにゃ。町の防衛もあるにゃから長時間町を離れるのは無理にゃよ? せめてどこにいるかわかればなんとかなるにゃ。他になにか情報ないかにゃ?」


 私の例の彼だという話を聞いて更に興味が出たのだろう。追加情報を求めてくるにゃん娘。

 ……多分ここで借りを返そうとかなにかいい情報を、とか考えたのだろうけどまあそれで力を貸してもらえるならありがたい。

 なにか他に情報がないかアースと共に頭をひねる。なにかリアルで言ってたっけ?

 そんな私たちの様子をしばらく眺めていたにゃん娘だったが、突然頭についている猫耳がピンと伸びた。


「ちょっと待つにゃ! クラメンからにゃ!」


 なにか重要な速報が入ったのかな?慌てたように私たちに背を向け、クラメンからの連絡を受けるにゃん娘。

 それを見て一度考えることを辞めてにゃん娘の様子を伺う。


「どうしたにゃ? えっ? 掲示板? それがなん……わかった! わかったにゃ! ともかく落ち着くにゃ! 掲示板を見ればいいんにゃね? それにゃあ一度切るにゃ!」


 クラメンからの連絡を終えたにゃん娘が再びこちらを向く。


「にゃんかクラメンが急いで掲示板を見ろって言ってるにゃ」

「掲示板?」


 なんで急にそんなことを? 掲示板で何か重要な情報が出ているんだろうか。


「ともかく確認するにゃ。マーレ達は……」

「私も一緒に確認するわ」

「当然僕たちもね?」


 にゃん娘の様子にまだ周りにいたクラマスやトップクランのメンバー達もなにか起こったと判断したのだろう。私も含め全員で掲示板を確認することになった。

 いくつかの雑談スレなどのスレッドが並ぶ中一つだけなんのタイトルもないスレッドが置かれている。


「このノータイトルのスレッドにゃ」


 スレッドをタップし開く。ライブ中継?そこには恐らく本人視点のものと俯瞰視点の映像が並んでいる。

 そしてそれを見た私はあまりのことに口を開けて絶句した。

 

 そこは暗い森の中だった。暗視のスキル持ち以外は明かりなしには動くこともできないくらい真っ暗な森。

 映像では暗視持ち以外でも見られるように補正が掛かっているようで暗視持ちでもない私でも苦も無く見ることができる。

 だが問題はそこではなく。


「何やってるのシュン!?」


 そう、そこに映っていたのは私の幼馴染で、たった今どうやって助けに行こうかと話していた張本人であるシュンだった。

 あまりに斜め上な展開に頭の中が混乱する。

 だってそうでしょ? なにがどうなれば救援を要請してきた相手がライブ配信するなんてことになるのよ!

 掲示板を確認していた他の人も頭に疑問符を浮かべ隣の人と囁き合っている。

 だけどそんな私達の疑問はその映像に対する驚愕と感嘆で一瞬にして塗りつぶされた。

 

 そこに映っていたのはゴブリンだった。今まで見てきたものではない。恐らく今回の騒動の原因となるゴブリン。本来のゴブリンよりも明らかに大きく黒い靄のようなものを纏っている。そんなゴブリン達が無数にいる。本人視点のものを見れば恐らく見渡す限りゴブリン、ゴブリン、ゴブリン。

 俯瞰視点でも映像の範囲にはゴブリンだけ。

 逃げ道はなく、大半のプレイヤーは諦めて死に戻りするだろう。

 完全に囲まれている。

 そんな絶望の中シュンとシュンと共にいる少女は戦っていた。

 お互いに背中を預け、死角をなくし、襲い来るゴブリン達を切り捨てる。


 その光景に誰も言葉を発さない。なぜなら全員が見惚れていたからだ。

 互いを信じ、前だけを見てお互いを助け合いながら強大な相手に立ち向かうその姿はまるでお伽噺のようだった。 

 真っ白な刀と紅色の刀が閃く、その光景は幻想的でゴブリン達に振るわれるその技は美しさすら感じさせる。

 

「マーレ。これが幼馴染の彼にゃ?」


 誰もが言葉をなくし、映像に見入っている中にゃん娘が言葉を発する。

 それでもその目は映像に釘付けで一瞬たりとも見逃すまいと目を見開いていた。


「そうよ」

「これ救援いるかにゃ?」

「……」


 にゃん娘の問に返す答えを私は持っていない。少なくとも昨日まではまともに戦えるような状態ではなかったはずなのに。

 それがたった1日で……


「確かこの彼はモーションアシストをオフにしているって話だったはずにゃ」


 そのにゃん娘の言葉に周囲にいたプレイヤー全員が驚愕の視線をこちらに顔を向ける。


「そんな彼がモーションアシストがある私達を遥かに上回る動きをしてるにゃ。一体何がどうなればこんなことができるにゃ!?」


 話していて徐々に興奮してきたのだろう。言葉が徐々に強くなる。その気持ちはよくわかる。

 だけど……


「わたしにもわからないわ」


 これしか返せない。というか私もシュンに聞きたい。


「……これは本人に聞くしかないにゃね……」


 ぜひそうして欲しい。それはともかく、


「ともかくこれで生存は確認できたにゃ」

「そうね。あとはどこにいるか」


 この映像に映っているのゴブリンと木だけ。これだけじゃ場所の特定まではできない。

 この数のゴブリン。早く助けないと。焦れば焦るほど思考が空回りする。

 そうして私たちは再び悩み始めた。早く防衛体制も整えなきゃいけないし時間がない!

 そんな時だった。


「すみません。こちらが来訪者の代表の方が集まっている場所ですか?」


 そこにいたのは着物を着た、とても美しい女性だった。

 その姿を見て私はふとリアルでシュンが話していたことを思い出す。もしかしてこの人は…… 


「相談したいことがあります」


 私はこれでシュンを救うことができると、そう確信することができた。


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