第22話 不穏の影
「ふあ~良く寝た」
現在朝の7時。ゲームで疲れていたからかぐっすりと眠れた。おかげで気分は爽快だ。
朝食を取るために下の階へ行きリビングに入ると葵の姿はなく手紙が一枚置いてあった。
どうやらすでにログインしているみたいだ。一体何時に寝て起きているのか……。これが生粋というやつか。
手紙に苦笑し、俺は一人朝食を食べ、自室へ戻りヘッドギアを装着。
「さて今日も行きますか!」
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ログインすると昨日最後に見た、部屋で目が覚めた。まあ当然だけど。
起き上がり周囲を見るがサクヤも含めて誰もいない。
部屋を出ると恐らく朝食を作っているのだろう匂いとかすかに料理をしている音がする。
「それにしても向こうで食事を食べたのにこっちでも食べるのはやっぱり不思議な気分だな」
かすかに音がしている部屋に入るとそこでは割烹着を着た師匠とサクヤが仲良く朝食を作っていた。
「おはようございます。師匠、サクヤ」
「主様! おはようございます!」
「シュンさん。おはようございます。食事はもうできていますよ?」
挨拶をするとすぐに俺が起きてきたことに気が付き挨拶を返してくれる。
「ようやくシュンさんも起きましたし、食事を取ったら今日も修行です。頑張ってくださいね?」
笑顔が怖いです師匠……。
その後は急かされるように食事を取らされ、俺とサクヤは道場へと連れていかれた。
「さてそれでは先日の続きをやりましょう。といってもやることは同じです。2人とも構えてください」
「「はい。師匠」」
俺とサクヤは刀を抜き構える。それにしても俺にとっては昨日のことでも2人にとっては一昨日の話になるのか。
「今回は先日使えるようになった技をある程度使いこなせるようになってもらいます」
そうか。先日取ったスキルでアーツが使えるようになっていたっけ。
「私との模擬戦では積極的に技を使い、神通流の技を自分のものにしてください。では……行きますよ?」
「「はい!」」
言い終わった瞬間、俺の目の前には既に師匠の姿があった。……相変わらず挙動が見えない。集中スキルでほんの少しだけど遅く見えているはずなのに!
俺は咄嗟に神通流のアーツ、[流水]でもって師匠の刀を受け流そうとした。
が、師匠の刀に当たった俺の刀は全く師匠の刀を受け流せずそのまま俺は1メートル程吹き飛ばされた。
「遅い! それではゴブリンの攻撃すら受け流せませんよ!」
……正直咄嗟に流水を出せただけでも恩の字だったと思う。
そんなことを思っている間にも師匠が俺を吹き飛ばすために刀を振りぬいたところを狙ってサクヤが師匠に肉薄する。
「神通流、火の型・一番 烈火!」
斬り下ろし、斬り上げ、袈裟斬りの3連撃が師匠を襲う。
サクヤが刀を振り下ろした時点ですでにサクヤに向き直っていた彼女は動揺のカケラも見せず静かな目で刀の切っ先を振り下ろされた刀に向けて動かす。
「神通流、水の型・一番 流水」
その動きはまさしく流れる水だった。流麗な動きでサクヤの刀を一部の遅滞もなく受け流していく。師匠の動きどころかまるでサクヤの刀すらも水になってしまったように師匠の身体の横を流れていく。
刀同士で触れているはずなのになぜか刀が擦れる音すらもしない。
「神通流、風の型・一番 風抜」
刀を流され、バランスを崩したサクヤに向かって、受け流した動きそのままに刀を鞘に戻し、抜き打ちを放つ。
流されたことに動揺したサクヤは声を上げることもできずにかろうじて盾にした刀と共に吹き飛ばされた。
「先日も言ったでしょう? 心が乱れれば刃も鈍る。己を制し常に平静に、心に芯を」
師匠の声はそれだけで魔法のように俺達の心に沁み込んでくる。
そうだ、揺らぐな。呼吸を一つ、乱れた心と身体を制御する。
受け流しの水は精緻な身体制御と精神制御が特に必要になる。心が乱れれば身体も乱れ、身体が乱れれば心も乱れる。
先ほどよりも思考がクリアになり、集中力が増したように感じる。
「神通流、風の型・一番 風抜」
刀を鞘に戻し、身体強化を掛けながら一息で師匠に近づき抜き放つ。
「神通流、土の型・一番 堅土」
それをやはり全く動揺せず、彼女はなんと刀の柄で受け止めた。
受け止めているのに完全に衝撃が流されているのか俺にもまったく衝撃が伝わってこない。
「言ったはずです。身体強化は消耗が激しい。特に今のあなた達には。必要な力を必要なだけ必要な場所に滞りなく」
受け止められて一瞬身体が泳いだ瞬間、下から彼女の足刀が迫る。
「神通流、土の型・一番 堅土! グゥッ!」
堅土は瞬間的に身体強化の強度を上げて衝撃を受け止める技。
特に強化の精度が大切で全身をただ強化するのではなく必要な所に必要な強化を必要なだけする。それは他のアーツにも言えることだ。
そしてその極地が師匠。今俺たちは最高のお手本を見せられながら身体で体感しているんだ。
とはいえまだ俺はその域からは遥かに遠いところにいるわけで……
かろうじて師匠の足刀を受け止めるも衝撃を受け止めきれずその衝撃に動きが止まる。
動きが止まった瞬間静かだった彼女の雰囲気が火を帯びる。
「神通流、火の型・一番 烈火」
サクヤが放ったものとは比べ物にならない速さと苛烈さ。足刀で硬直した身体を無理やり動かし、一撃目の斬り下ろしを再度堅土で受け止め、二撃目を流水で以て躱す。
そして三撃目が放たれたところでサクヤが俺と師匠の間に入り三撃目を受け止めた。
受け止められたタイミングで仕切り直すためか特に追撃もなく師匠は一度後ろに下がった。
「ふむ。とりあえずは及第点です。そろそろ陽の型と月の型も使っていきましょう」
その言葉を聞いて更に気合を入れる。この二つは制御が難しく集中を乱せば逆に自分が追い込まれる。特に陽の型は文字通り命に係わる。
サクヤに関しては月の型は種族特性上ほぼ使えないため二つ同時に使う俺の方が難易度が高い。
さあこれからが本番だ! サクヤと視線を交わし、ほぼ同時に師匠に向かって駆け出す。
師匠はそんな俺達に一瞬笑みを浮かべたと思ったら、すぐに表情を戻し、俺達を迎え撃った。
━Side シュン Out━
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シュンとサクヤがシズカに扱かれているのと同時刻
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━Side ? ? ? ━
はらがへった。きょうもなにもみつけられない。きのうもそのまえもなにもたべられなかった。もっとまえはなにかにかじられていたがきのみがあった。
このへいげんにおれたちがかてるいきものはいない。
きがたくさんあるところにいけばきのみがあるが、そこはおれたちをたべるものがおおい。
まあなんにんかのなかまはきのみをもとめて、きがあるところにいってしまったが。
くさばかりのここならすこしはあんぜんだ。おかげでおれはながいきできてる。
いままでであったおれのなかまはほとんどころされてしまった。
だがさいきんであったこいつはいいやつだ。それにあたまもいい。
……なにやらくさばかりあるばしょがさわがしい。さいきんいっしょにいるこいつとようすをみにいく。
そういえばこいつはめすだった。いずれはおれのつがいにしよう。
せのたかいくさのかげからようすをうかがう。くさばかりのここににんげんがあふれていた。
にんげんがあふれてすこしたった。あいかわらずにんげんがおおい。
このにんげんたちはおれたちをつぎつぎところしていった。くうわけでもなんでもなくただころす。
さいきんはおれたちをわらいながらいたぶってころす。
いやだ……。あんなふうにしにたくない。めすのなかまもしなせたくない。
ひっしにみをかくし、めすのなかまとかくれにげる。しんぞうのおとがうるさい。
にんげんのわらいごえがきこえる。
「ハハハハハ! こいつら弱いくせに数だけはいるな」
「いいじゃないっすか! ちょうどいいサンドバッグたくさんいて!」
「まあな! よえぇから甚振ってやるといいストレス発散になるぜ!」
「スね! おっ! また気配察知に反応あり! 今度は二体いますぜ?」
にんげんがちかづいてくる。めすとひっしに、にんげんからとおざかるように……にげる、にげる!
ころびそうになっているめすのてをつかみ、ひっしにはしった。
だがおれたちのあしではにげられない。すぐにおいつかれて……!
「ぐぎゃ!」
なんだ? きづくとおれのからだはじめんによこたわっていた。
「おいおいこいつめすごぶりんだってよ! はじめてみたぜ!」
「レアなんすかね? ゴブリンのレアなんて誰得なんだって話っすけど!」
「ぎゃはは! 違いねえ!」
かおをあげる。そこにはぼろぼろになり、むしのいきになっためすがいた。
そのしゅんかんいままでかんじたことのないかんじょうが、からだのそこからわきだした。なんだこれは?
「おっ! 蹴っ飛ばしたほうも気が付いてる!」
「ホントっすね! じゃあこいつは俺がもらうっすね!」
「おう! こっちはおれがもらったからな!」
にんげんがちかづいてくる。そうしたらいままでまいにちのようにかんじていたものがきょうふがかまくびをもたげてくる。
にんげんにうでをつかまれる。だけど!
「ぐぎゃあ!」
「うお! なんすか突然暴れだしたっすよ!」
「おいおいなにやってんだ?」
ひっしにあばれてめすにてをのばす。
「ん? なんだこいつ? 一丁前にこいつを守ろうとしてんのか?」
「これでっすか? ぜんぜん痛くないっすけど?」
「じゃね? 泣かせるじゃねぇかwおいそいつ俺の前に投げろ!」
「なにするんっすか?」
「なあにどうせメスゴブリンの方はもうすぐ死ぬんだ。なら死に目を見せてやろうと思ってな!」
「ひでぇw! でもいいっすね、それ!」
にんげんにめすのまえにほうりだされ、ふみつけられる。
「ほうら! これがお前の彼女の最後だぜ?」
やめろ、……やめろ。あばれるもにんげんはびくともしない。
にんげんのもつものがめすにふりおろされた。めすがひかりになってきえた。
ああ……ああ……
「おっ? おとなしくなったな?」
「じゃあ今度こそおれがやりますからね!」
にんげんがおれをみてはらをけりとばした。
「ぐぎゃあ!」
ふきとばされ、きのたくさんあるところにつっこんだ。
いたい、いたい……!
「ゴール!」
「おいおい! どこ飛ばしてんだ!」
はらとせなかのいたみにたえる。けりとばしたにんげんがちかづいてきた。
死
にんげんのこえがきこえる。
「あれ~? 飛ばし過ぎたっすかね? どこら辺に突っ込んだすか?」
「もう死んだんじゃね?」
「所詮ゴブリンだしな! 気配察知は?」
「レベル低くて死にかけてると見つけづらいんすよ」
「まあいいだろ? ほかに生きの良いの探しに行こうぜ!」
「まあそうっすね! 行くっす!」
にんげんがはなれていく。いたみがすぎさってからおれはぼろぼろになったからだをおこした。
めすがころされたばしょをみる。
ああ……ああ……ああああぁぁ!
怒、怨、憎。
おれのなかになにかがうまれた。くろいくろいなにか。
■一定の条件を達成 特殊変異を開始します■
━Side ? ? ? Out━




