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INFINITY STORY'S ONLINE  作者: 藤花 藤花
第1章 始まりの町と復讐鬼の軍勢
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第20話 今日はおしまい、葵と情報交換

 ログアウトして真っ暗な自分の部屋で目を覚ました。ヘッドギアを外し、時計を確認すると20時。かなり遅くまでプレイしてしまった。なんだかんだとかなりこのゲームに嵌っているな、俺。

 まあそれはそれとして……


「ふぅ~。今回は疲れたな」


 今の心境はこれに尽きる。肉体的には疲れていないのだが精神的には半端なく疲れている。だけどきっとこのゲームをやっていなければ経験できなかったことを経験できてるな。

 そんなことを考えていると、下の階からいい匂いがしてきた。葵が夕食の用意をしてくれているんだろう。

 この匂いはカレーかな? 


 一つ伸びをしてリビングに向かい入ったところで予想通りキッチンで葵が料理をしているのが視界に入った。

 

「あっ春樹! 思ったより遅かったわね! 私もさっきゲームをやめてきたところだから待たせたかと思ったわよ。今夕食用意しているから席に座って少し待っててね!」


 ドアが開く音で俺が入ってきたことに気が付いたのだろう。俺の方を振り返りながらそう言って視線をダイニングのテーブルに移しながらそう促してくる。


「なにか手伝うか?」

「うーん? じゃあ食器を出してくれる? 私じゃ棚の位置が少し高くて……」

「わかった」


 葵を手伝い夕食の準備をして一緒に食卓に着いた。ちなみにうちの食器棚はそんなに高いわけではない。単に葵の背が低いだけだ。大体150㎝くらいか? サクヤよりは高いがそれでも平均よりは大分下だろう。

 ……思えばどことなくサクヤと似ているな? サクヤのお願いを無下にできないのってもしかして葵と似てたからか? 


「それじゃあ春樹、食べましょう? いただきます」

「そうだな。いただきます」


 手を合わせて食べ始める。……やっぱり葵は料理がうまいな。

 カレーを食べながら話すのはやはりゲームの話だ。葵からいろいろと情報を聞く。


「春樹はこの後もまだゲームをやるの?」

「いや、今日はもう疲れたから終わりにするつもりだよ」

「そうなのね。私はこの後もまだやるつもりよ。今は北門側の奥の森に入ってるの。そっち側は街道が通っていて街道を中心に森が広がっている形ね。レベル上げと街道があるなら次の町にも行けるだろうからその調査も兼ねてって感じ」

「βの時はそっちに行かなかったのか?」

「βの時は始まりの町以外には行けなかったのよね。だから始まりの町の先の情報はないの」

「へぇ~」

「おそらく街道ではボスが出るって予想されているから慎重に進めてるわ」

「たった一日でそこまで進むんだな。他の方面はどうなんだ?」

「西の山は鉱石が欲しいプレイヤーが沢山行ってる。東の森は調薬・錬金に使える素材とか裁縫なんかに使える素材が豊富よ。木工素材に関しては森ならどこにでもあるから言うまでもないわね?」


 こういうところはゲーム的だな。生産プレイヤーが困らないように一通りの素材アイテムが周辺に揃ってる。


「最後の南は?」

「湖があるらしいわ」

「……」

 

 ……えっ? それだけ? 


「ほかの方面になにかしら素材があるから南にもなにかあると思って、何人かのプレイヤーが行ってきたみたいなんだけどね。結果は綺麗な湖があるくらいだったって話なのよ」

「湖なら釣りとかはどうなんだ?」

「特になにも釣れなかったみたいよ? 北から東にかけて森の中に川があってそっちでは魚が釣れるみたいなんだけど……。検証班の考えではゲームが進行するかしてなにか特殊なクエストが発生するんじゃないかって話だったわ」

「なるほどな~。町の人は何か知らないのか?」

「湖があることくらいしか知らないみたいよ? ……そうだった。春樹に一つ謝らないといけないんだけど春樹が門番と話して宿の紹介をして貰った話を情報屋にうっかり話しちゃったの。ごめんなさい」

「うん? それくらい別にいいが……。それなにか重要な事か?」


 ただ門番と話をしただけだぞ? 


「え~とシュンはこのゲームしか知らないからピンと来ないかもしれないけど今までのVRゲームのNPCはこんな自然な反応を返してこないの」

「それは陸から聞いたな」

「だから今までのVRゲームでは基本的にプレイヤーの間で話が完結してたのよ」

「うん?」

「つまりNPCと会話をして情報を得るんじゃなくて自分たちで現地に行って検証するのが当たり前だったの。NPCは買い物の時かクエストを受けるときに話しかけるくらい。それも定型文を話すだけだし……」

「クエストを探すときはどうするんだ?」

「クエストはI(インフィニティ)S(ストーリーズ)O(オンライン)にある冒険者ギルドみたいな場所で受けられるようになってるのよ。昔のTVゲームでは町の住人を虱潰しにしてクエストを探す、みたいなこともあったみたいだけどVRでそれをやると大変だからそういった要素は廃れて久しいのよ」

「それで門番の話に繋がるわけか……」

「そういうこと。情報屋はこれについても春樹に報酬を払うって言ってたわ」


 ……昼に門番の話をした時に妙に驚いていると思ったが、こういうことだったのか。


「まあそんなわけで町の人からいろいろ情報を得られることがわかったから、試しに町の人に虱潰しに南の森について話を聞きに行った訳よ」

「そうだったのか。なら結果がこれで残念だったな」

「いいえ? 他にもいくつか有用な情報が入ったらしくて喜んでたわよ?」


 ならよかった。それにしても……


「葵たちって今までのゲームの固定観念があるからか見逃しが多くないか?」

「うぐっ! い、いいの! 今はその部分を補ってくれる人がいるから!」

「……それってもしかしなくても俺のことか?」

「ダメ?」

「まあそれくらい構わないけどな」


 このゲームを貰った恩もあるし、別に葵に秘密にすることもない。やっぱり俺って葵に甘いのかもな。


「話を戻すが、じゃあ南の森にはなにもないってことか?」

「今のところの結論はそうね。モンスターもゴブリンと小動物くらいらしいし」

「ゴブリン?」


 サクヤのこともあって思わずゴブリンに反応してしまった。


「ええ。なぜかゴブリンだけは全ての方面にいるみたいなのよ」

「へえ? 草原の奴らより強いのか?」

「いいえ? 他に北はイノシシとかの獣系、東は蜘蛛とか蜂みたいな昆虫系、西はコウモリとかトカゲみたいな坑道系? のモンスターがいるみたいなんだけどどの方面も必ずゴブリンがいるのよね」


 ふーん。なんか不思議だな? なにかあるんだろうか? 


「ゴブリンは草原を抜けたプレイヤーならはっきり言って雑魚だし経験値も悪いからほとんどのプレイヤーは無視してるんだけど一部のプレイヤーはゴブリンをいじめ殺してたりするから気分悪いのよね~」

「ふ~ん? おれもサクヤがいるのもあってそういうのはかなり抵抗があるな」


 そもそもそういういじめ行為自体が嫌いだ。


「サクヤ? って確か春樹が召喚契約したゴブリンだっけ?」 

「ああ。ちょっと葵に似ていてかわいいんだ」


 思わずサクヤのことを思い出して少し和む。ゴブリンのことを聞いて少し気分がささくれていたから丁度いい。

 そんなことを考えながらふと葵を見る。……葵と2人で並んだら姉妹に見えるかもしれんな。


「えっ!? 私あんなに不細工な顔してないわよ!」


 2人が並んだところを想像して和んでいると、俺の言葉を聞いた葵が大きな声で文句を言ってきた。

 あれ? 葵にサクヤの容姿のこと言ってなかったっけ? 

 ……言ってなかった気がする。


「あー。すまん。言ってなかったか。契約した時の影響でサクヤの見た目は小さな角が生えただけのかわいい女の子みたいな容姿に変わってるんだ」

「えっ?」


 頬を膨らませて怒りを露にする葵を落ち着かせるべく急いでサクヤのことを詳しく教える。

 あのゴブリンに似てるって意味だと思ったらそりゃ怒るわな。

 サクヤの容姿を詳しく説明すれば葵も俺との認識違いに気づいたようで怒りを納めてくれた。

 こいつは怒らせると長いからな。

 最後までサクヤの容姿についての話を聞いたところで葵は額に手を当てて何やら考え込む仕草を取った。

 

「ちょっとまって。120㎝くらいの小さな角が生えた黒髪の女の子でサクヤ?」


 額に手を当てながら何かを思い出す様にうんうんと唸っている葵。

 ……怒りが解けたみたいなのは嬉しいんだがどうしたんだ? 


「そう! そうよ! 確か掲示板でその女の子のことが話題に出てたわ!」

「掲示板?」


 掲示板って学校とかにある? それともネットの方か? 使ったことはないがあるのは知ってる。

 そんなよくわかっていない俺の様子に葵も気が付いたようで心得ていると言わんばかりに説明してくれた。


「大抵のゲームには他のプレイヤーと情報を共有したり、雑談をしたりする、そのゲーム専用の運営が管理してる掲示板って言うのがあるの。このゲームは時間加速があるから、現実の方で書き込むことはできないんだけどゲームの中でメニューを開くとリアルタイムで書き込みができるわ。運営が管理していて過度な誹謗中傷は書き込めないから、ネットの掲示板よりも使いやすいわよ?」


 そんなのがあるのか。……そういえばメニュー画面を開いたときにあった気がするな。


「そこにサクヤのことが書かれていたのか?」

「そうよ! レベル上げの休憩の時に見かけただけだから思い出すのに時間が掛かったわ。その時は書かれた内容とゴブリンが一致しなかったから気にしなかったけどまさか春樹のことだったなんて……」


 まさかそんなところで話題になっているとは……。確かにサクヤは可愛らしいが。


「いい機会だから、春樹もあとで掲示板を見てみたらどう? なにかいい情報が載ってるかもしれないし。見方なら教えてあげるから」


 俺がサクヤのことで少し悩まし気な顔をしていることに気づき苦笑しながら葵はそう言ってカレーを口に運んだ。


「そうだな。そうするか。すまんが葵、見方を教えてくれ」

「了解よ。お礼は今度サクヤちゃんに会わせてくれたらいいわ」

「わかった。必ず会わせるよ」

「楽しみにしてるわ。じゃあ食べ終わったことだし掲示板の見方を教えたら私は帰るわね。洗い物は任せていい?」

「洗い物はいいが、別に泊まって行ってもいいぞ? 明日の朝も朝食、作ってくれるんだろう?」

「ええ。まだ夏休みの課題残ってるからね。でもこの調子でいけば夏休みが始まる前には終わりそうよ。ありがとね春樹!」

「どういたしまして!」

「それじゃあ掲示板の見方ね? まず……」


 そうして俺に掲示板の見方を教えて葵は風呂に入ってから部屋に戻ると言って出て行った。いつの間に風呂を沸かしてたんだよ……。葵の奴泊まって行く気満々じゃないか。

 ちなみに着替えなどは陸と共によく泊まりに来る関係上いくつか常備されている。

 葵が出ていくのを見送り葵が風呂を出るまでのんびりと洗い物をして葵が部屋に戻ったところで俺も風呂に入り自室に戻った。

 

 葵に掲示板の見方を教わったし、少し見てから寝るとするかな……。

 

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[一言] 見つけて一気に読みました。 これからも、頑張ってください。 ブックマークしました。
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