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INFINITY STORY'S ONLINE  作者: 藤花 藤花
第1章 始まりの町と復讐鬼の軍勢
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第19話 地獄の修練と成長

 修行開始から半日。12時間経った。道場の庭に続く開け放たれた引き戸の向こうは既に夜の帳が降り始め怪しくも美しく整えられた庭を照らし出している。

 道場の中も既に真っ暗で普通なら明かりがないままでは動き回ることは難しいだろう。


「「はぁっ、はぁっ、はぁっ!」」


 そんな中俺とサクヤは道場の床の上で大の字の状態でぶっ倒れていた。

 修行を開始してから12時間休憩なしのぶっ続けだ。もう立っていられん! 


「2人共? このくらいで情けないですよ? ……とはいえもう良い時間ですね。ひとまず終わりにしましょうか」


 そんな俺達をにこにこしながら眺めてそんなことを言っているのは扱き上げた張本人であるシズカ師匠である。

 ひとまずって……! もう1歩も動けそうにないんですが! 


「「あ、ありがとうございました!」」


 とはいえ既に彼女に反論する気力など磨り潰されている俺たちはぶっ倒れたまま何とか彼女に挨拶を返した。そうして息を整えながらステータス、特にスキルを確認する。

 これを見て貰えばおそらく俺たちがどれほど扱かれたかがわかると思う。


名前:シュン  所持金:800 G

種族:幼竜人 Lv.1

職業:召喚術士 Lv.1


ステータス

HP:8/60→63↑  MP:2/60  KP:3/40→42↑  EP:5/100


STR:18→19↑ VIT:20→21↑ INT:5 MND:30 DEX:12 AGI:10→15↑

●AP(AbilityPoint):0


▼JobSkill:召喚術 Lv.2

≪所持アーツ≫

【召喚】 熟練度:35↑

【魔石召喚】 熟練度:0

【契約】 熟練度:10

【強化】 熟練度:10 

●JSP(JobSkillPoint):2


▼Skill:≪神通流派刀術Lv.5↑≫ ≪魔力操作Lv.5↑≫ ≪危機察知Lv.8↑≫ ≪識別Lv.1≫ ≪感応Lv.8↑≫ ≪料理Lv.1≫ ≪身体強化Lv.5≫≪NEW≫ ≪気配察知Lv.3≫≪NEW≫ ≪隠密Lv.3≫≪NEW≫ ≪気配操作Lv.3≫≪NEW≫ ≪気力操作Lv.3≫≪NEW≫ ≪生命力操作Lv.3≫≪NEW≫ ≪足運びLv.5≫≪NEW≫ ≪呼吸Lv.5≫≪NEW≫ ≪集中Lv.5≫≪NEW≫ ≪見切りLv.5≫≪NEW≫ ≪身軽Lv.5≫≪NEW≫ ≪剛力Lv.1≫≪NEW≫ ≪剛体Lv.1≫≪NEW≫ ≪身体制御Lv.3≫≪NEW≫ ≪精神制御Lv.3≫≪NEW≫ ≪魔力視Lv.1≫≪NEW≫ ≪暗視Lv.1≫≪NEW≫ ≪マナ操作Lv.1≫≪NEW≫ 

●SP(SkillPoint):60↑



■《魔物》名前:サクヤ ♀ Rank:1■

種族:小鬼人 Lv.1

職業:刀士

ステータス

HP:3/45→60↑  MP:1/10  KP:2/30→40↑  EP:8/100


STR:20→25↑ VIT:15→20↑ INT:10 MND:10 DEX:20 AGI:15→18↑


▼Skill:≪神通流派刀術Lv.5↑≫ ≪身体強化Lv.7↑≫ ≪料理Lv.1≫ ≪気配察知Lv.3≫≪NEW≫ ≪気力操作Lv.4≫≪NEW≫ ≪生命力操作Lv.4≫≪NEW≫ ≪足運びLv.5≫≪NEW≫ ≪呼吸Lv.5≫≪NEW≫ ≪集中Lv.3≫≪NEW≫ ≪見切りLv.1≫≪NEW≫ ≪身軽Lv.3≫≪NEW≫ ≪剛力Lv.5≫≪NEW≫ ≪剛体Lv.5≫≪NEW≫ ≪身体制御Lv.5≫≪NEW≫ ≪精神制御Lv.1≫≪NEW≫ ≪暗視Lv.1≫≪NEW≫  

 

 これである。12時間は長くはあるが修行と言うのならかなり短時間のはずだ。普通の修行は何か月、何年という期間を使って技を覚える。それがゲームとはいえこんな短時間で俺とサクヤがこれだけのスキルを覚え、レベルを上げたのだ。柔らかく言っても地獄だった。それは俺の危機察知と感応のスキルレベルの上がり方を見てもわかると思う。

 

 内容的にはひたすら師匠と2対1で模擬戦をするだけだ。戦いながら師匠から動き方の指摘なんかを受けて自身の動きを修正しながら延々と戦い続ける。

 が、それだけならばここまでレベルは上がらないしスキルをポイントを使わず習得できたりしない。

 このゲームでのポイント非使用でのスキル習得はかなり難易度が高いため相当だと言える。

 とはいえ理由は難しいことじゃない。ただ彼女が本気で俺達を殺しに来ていたというだけだ。

 俺たちが死に物狂いで対応しなければ間違いなく俺たちは生きてここにはいない。

 彼女曰く「来訪者は殺しても復活するから遠慮なくぎりぎりを攻められますね!」だそうだ。鬼かっ! 


 ちなみに習得したスキルを簡単に紹介すると……


AS(アクティブスキル):身体強化≫ 

・KPを消費して身体能力を上げる。Skill≪気力操作≫があると任意で強化箇所を操作できる。消費KP:1/秒・CT:0秒 

SW(ショートワード):肉体こそ最強の剣であり、盾だ! そうだろう? 】

≪AS:気配察知≫

・気配を探ることができるようになる。

【SW:かくれんぼで俺から逃げられるものなし。お前はそこだ!】

≪AS:隠密≫ 

・息を殺し、気配を消すことができるようになる。動かないでいたり、専用の道具を使用することで効力が上がる。

【SW:かくれんぼで私を見つけられるものなし。私はここよ? 】

≪AS:気配操作≫

・自身の気配を操作できる。

【SW:そこにいるのにそこにいない。まるで幽鬼の如く。】


この4つはシズカさんの見えない斬撃に対処しているうちに覚えたスキルだ。見えないシズカさんの動きを察知して、反撃するためにはこの4つは必須だった。

 隠密とかどうやってと思うかもだが俺とサクヤ、2人いる関係上できる死角に出来る限り静かに回り込んだりしているうちに習得していた。気配操作も同じくだ。


≪AS:気力操作≫ 

・気力を上手に扱えるようになる。

【SW:気力とは心だ。強靭な心は強靭な肉体に宿る。】

≪AS:生命力操作≫ 

・生命力を扱えるようになる。

【SW:生命の力、その輝きは諸刃の剣だ。命と共にありたいならば努々忘れることのないように。】


 身体強化と神通流アーツ:陽命を使いこなすうえで必須だと言われて覚えたスキルだ。気力とか生命力とか全くと言って良いほどよくわからなかったんだが……死ぬ寸前まで追い込まれながら自身の生命を、心を感じろなどと言われながら文字通り死ぬ気で覚えた。

 まさかゲームで死ぬ瀬戸際に力を……みたいなことをさせられるとは思わなかった。

 ……ゲームだから死ぬ寸前もなにもないんだけど正直俺はこのゲームをゲームだと思えていない。あまり良くないことなのかもしれないけど、問題が出るまではこのままでもいいかと思っている。


PS(パッシブスキル):足運び≫ 

・移動や戦闘中の足の動きが良くなる。

【SW:どこにでも行ける。どこまでも行ける。世界の果て、武の果てまでも。】

≪PS:呼吸≫

・呼吸を効率よく行え、様々な効力を齎すようになる。

【SW:呼吸、それは命を輝かせる命の証の一つ。】

≪AS:集中≫ 

・集中力を上げることができる。相手の動きが遅く見えるようになる。

【SW:集中しろ。さすれば追えない動きはない。】

≪AS:見切り≫ 

・相手の動きの先がわかるようになる。

【SW:視線、呼吸、気配……すべてを見て、未来を視ろ!】

≪PS:身軽≫

・身体が身軽になる。AGIが上昇する(SkillLv.? ×1)。

【SW:身体が軽い。まるで羽のようだ!】

≪PS:剛力≫ 

・力が強くなる。STRが上昇する(SkillLv.? ×1)。

【SW:力が漲る。この力ですべてを砕かん!】

≪PS:剛体≫ 

・身体が頑丈になる。VITが上昇する(SkillLv.? ×1)。

【SW:痛くない。この肉体打ち砕けるものなどこの世になし!】

≪PS:身体制御≫

・自身の肉体を効率よく使えるようになる。

【SW:力の入れ方、バランスの取り方、動き方……己の肉体の何もかもがこの手の中に。】

≪PS:精神制御≫ 

・常に平静を保つことができる。

【SW:私は揺るがない。だって心が揺らぐことがないのだから。】


 これらのスキルも神通流を扱う上で重要だと戦いながら指摘を受けて修正を繰り返しているうちに修得していた。

 この間も全く手加減されていなかったからかなり大変だったが既に死ぬ寸前まで追い込まれたりしていたのも精神的にはほんの少し余裕を持てたこともあって時間はかかれどなんとかなった。

 ……今考えると最初にきついことをさせることで後を楽にしたのだと思う。そうでもしなければそもそも全部覚える前に心が折れていた可能性は考えない。

 剛体を覚えるときなんて文字通り死なない程度に滅多打ちにされたからな……。

 それともう一つ発見があった。パッシブスキルなんだがこれらのスキルは意識して使うことで更に効果をあげられることがわかった。現実でも腕力がある人間は無意識化でも力が強いが意識して力を籠めると更に大きな力が使える。それを再現してるのだろう。

 このゲームはスキル一つとっても考えなしに使っていては使い熟せないようになっていて改めてとんでもないと感じるな。


≪AS:暗視≫

・暗闇の中でも視界が通るようになる。

【SW:もう夜のトイレも怖くない!】


 まんまである。薄暗くなってからも目を凝らしているうちに習得した。これで夜でもレベル上げが出来そうだ。


≪AS:魔力視≫ 

・魔力を瞳に集めることで見えないものが見えるようになる。

【SW:私にも新世界が見える!】

 ≪AS:マナ操作≫

・自然界に存在するマナを操作できる。

【SW:世界の法則。見えない神秘。どこにでもあって、どこにもない。】


 多分俺が習得したスキルの中で一番の謎スキルだと思う。神通流アーツ:月結を使うのに必要になる。魔力操作を既に覚えていたこともあってかなり楽に覚えられた。

 再びソレイユ様に感謝することになるとは思わなかったよ。

 魔力視は魔力を目に集めて何かしらの目に見えないエネルギーを視認できるようにするスキルみたいだ。わかりやすいもので言えば魔力だな。このスキルを使うと今まで見えなかった空気中に漂ういろんなものが見えて正直目が痛い。

 どんなに頑張ってもそこから変わらなかったから多分レベルが上がらないと制御できないんだと思う。

 

 そして最後のマナ操作。魔力視を覚えたことで見えるようになったものの一つ。これに関してはシズカさんがある程度教えてくれた。……俺達をぼこぼこにしながらだけど。

 なんでもマナって言うのは世界に漂う自然のエネルギーらしい。自然って言うのは文字通り自然。大地、空気、火山、海、太陽の光、夜の闇。全ての自然に宿っていてこの世界を満たしている。

 というよりこのマナがあるから自然があると言ってもいいらしい。

 ここまででわかったかもしれないが簡単に言えばマナというのは火のマナ、水のマナみたいな感じでこの世界の自然を構成するエネルギーだ。

 マナの種類は神々の数だけあり、無・光・闇・火・水・風・土と存在している。

 そしてこの世界には精霊と言われる存在がおりそれぞれの属性のマナを世界中に届けている存在なんだとか。そのため精霊は神の御使いの一つとして認識されている。

 余談だが他にも神龍、神獣、聖獣等と言われる存在が神の御使いとして存在するらしい。

 詳しくは神殿でこの世界の創世神話を聞くように言われたためまた聞きに行こうと思う。

 ともかくこのマナと魔力を結合させることでファイアーボールみたいな属性魔術を魔術師達は使ってるんだとか。

 まあこのことは知らなくても魔術は使えるため今の世の大半の魔術師はこのことを知らないとか。

 知っているのは賢者や魔女、魔導士と言われる存在かシズカさんみたいな一部の古戦術を継承している者くらいらしい。

 ……思った以上にとんでもない情報だったことにびっくりだ。他の人に話してもいいか聞いたら口の堅い相手だけにするように言われた。別に厳密に秘密にしているわけではないがそれで半端な研究者とか魔術師に付き纏われたりするのはうっとおしいとのこと。そうかそういう心配があるのか……。


 閑話休題


 そんなわけで魔術ではない月結はこのマナ操作がなければ使えないため今回覚えることになったというわけだ。


 ……ホントよくこんなに覚えられたよ。


「それにしてもシュンさんもサクヤさんもなかなか覚えが良いですね。来訪者とその関係者は成長が早いと聞いていますが、シュンさん達は聞いていた以上に成長が早く感じます」


 俺がステータスを確認して、この12時間を振り返っていると師匠がそんなことを言っていた。

 ……もしかして神様の称号が原因かな? たしかスキルの成長速度が上がるものがあったはず。


「……まあいいです。それでは2人共動けるようになったのならこちらへ。一度食事にしましょう」


 どうやら師匠は俺たちへの疑問を棚上げしたようだ。

 気を取り直したように微笑んで俺たちについてくるように手招きした。


「食事が終わったら、シュンさん達はどうするつもりですか?」


 そういえばそろそろログアウトしないとまずいな。


「食事が終わったら一度眠らせてもらってもいいですか?」

「来訪者の眠りですね? どれくらいで目覚めるか聞いても?」

「そうですね……」


 ログアウトしてリアルで葵と食事を取って風呂に入ってとしたらもう寝る時間だな……。となると、、、


「すみません。今度の眠りは長くなりそうで、明後日の朝くらいに目が覚めると思います」


 そう答えるとサクヤと師匠に2人は揃って目を見開いた。


「そんなにですか……」

「主様、お身体は大丈夫なので?」


 なんか妙に心配されてるな。いや普通は人が丸一日以上寝続けるなんて聞いたら心配するか……。


「サクヤ、身体は大丈夫だよ。それより俺が寝ている間サクヤはどうする? 一度送還するか?」


 ログアウト中サクヤを召喚しておけば熟練度が上がるか確かめたいけどさすがにそのためだけに暇をさせるのはかわいそうだからな。

 サクヤは俺の問を聞いて自分のことについて考え始めた。


「そうですね……」

「それでしたらシュンさんがいない間は私の家のお手伝いをしてくれませんか?」


 どうしようかとサクヤが悩んでいると師匠がそんな提案をしてきた。

 それを聞いてサクヤは悩んで俯いていた顔を上げる。


「手伝いですか?」

「ええ。修行の続きに関してはシュンさんが戻ってきてからですが、その間何もしないのもつらいでしょう? なら私の家の家事を手伝っていただけたらと思って」


 確かにそれなら時間も潰せるか。


「それにあなたは料理スキルを持っているでしょう? わたしは料理もできますからついでに教えてあげますよ?」


 師匠のその言葉が決め手になったのだろう。すぐにサクヤは師匠に


「よろしくお願いします」


 と、頭を下げていた。


「俺からもよろしくお願いいたします」

「こちらこそよろしくお願いしますね? さて食堂はここです。もう用意は済んでいますから食事にしましょう」


 そうして入った部屋はやはり和室でそこには箱膳……というんだったか? が並んでいてその上には純和食とでも言うべきものが配膳されていた。てか米ってこの辺にもあるんだな……。


「この料理の食材は遠方にある故郷から取り寄せているのでこの辺りでは珍しいでしょう。お口に合えばよいのですが」


 まじか。ってことは下手したらここでしか食べられない可能性があるな。……何となく幼馴染2人が騒ぐ様子が目に浮かんでしまった。


「いえ、自分の故郷にも同じ様なものがあります。とてもおいしそうです」

「まあ。そうなのですね。そう言ってもらえると作った甲斐がありました。たくさん食べてください」


 そうして3人で膳に着き、食事をした。サクヤなんかは「主様の故郷の味……。絶対に覚えます!」とじっくり味わいながら食べていた。


 食事が終わったら寝床に案内してもらい、今日もサクヤと共に布団に入って、ログアウトした。


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[一言] あれ?情報屋に売った情報料はどうしたんだろう…?
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