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INFINITY STORY'S ONLINE  作者: 藤花 藤花
第1章 始まりの町と復讐鬼の軍勢
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第17話 現実での一時①

 目を開けるとそこには見慣れた自室の天井があった。


「戻って来たか」


 起き上がりながら少し固まった身体を解す。枕元に置いてある時計を確認すると13時を少し過ぎた時間を示している。


「こっちでは大体3時間くらいか。向こうでは昼から夜までで大体9時間たってたはずだから……3倍の時間加速は伊達じゃないな……」


 伸びをしながら立ち上がる。少し遅くなってしまったが昼食を食べてこようかな? 

 自室の扉を開け、下の階のリビングに向かう。我が家はそこそこの大きさの二階建ての一軒家で食事はいつも階下にあるリビングでとっている。

 リビングの扉を開けると併設されたキッチンからいい匂いが漂ってきた。

 キッチンの方を見ると見慣れた黒髪の少女が鼻歌を歌いながら料理を作っていた。

 

「葵?」

「あ、春樹! やっと来たわね! 昼食まだでしょ? 作ったから一緒に食べましょ?」


 そう言いながら作った料理をダイニングの机に運んでくる。ペペロンチーノか……。うまそうだな、じゃなくて! 


「いやその前になんでいるんだよ? お前もゲームをやってたんじゃないのか?」


 ちなみに彼女は良くうちで料理をする関係上家の鍵を渡してあるのでどうやって入ったかは聞くまでもない。


「そうだけど、食事はこっちでもちゃんと取らないといけないから、今は仲間みんなで昼休憩中よ。向こうで食べたってこっちでお腹が膨れるわけじゃないんだからね? それなりに充足感はあるけど……。それでどうせだから春樹とも一緒に食べたいなぁと思って! 報告もあるし……」


 確かに向こうで食事を取ったにもかかわらず普通に空腹感があるな。なんというか本当に凄い技術だな。


「そうか……。まあ正直昼食は助かる。ありがとな?」

「いえいえ。お礼はあっちでの話でいいわよ?」


 笑いながらペペロンチーノを俺の前に置いてそう嘯く彼女には頭が上がらないな。

 苦笑しながら席に着くと彼女も俺の正面の席に座った。同時にフォークを手に取り食事を始めながら向こうでの話を始めた。


「まずは私から。検証班と情報屋に持ち込んだ情報はかなりの額になったわよ」


 別れ際に言ってたあれか……。


「いくらになったんだ?」

「なんと200万G」

「は?」


 今なんと? 


「だから200万Gよ」

「ゲームが始まったばかりでそんなに金を持っていることにもびっくりだが一体なにがあったんだ?」


 あの話のどこにそこまで評価される要因があったんだ? 


「春樹はわかってないみたいだけど……あの情報は地雷スキルや死にスキルと言われている価値がないと言われているスキルを文字通り価値あるものにしてくれるものよ? 一つ無価値だと思われていたスキルに価値が出ただけでも戦闘、生産その他に多大な影響が出る。例えば春樹の感応だってきちんと使えればテイマーにとってはそれだけでかなり価値のあるものになるのよ? 組み合わせによってはプレイスタイルそのものにも影響が出るんだから。使えるスキル一つで増える戦略やスタイルの数は複数。可能性は無限大よ!」


 なるほど。確かに感応は戦闘でも危機察知との組み合わせではかなり有用なスキルだった。こういう組み合わせで更に高い効果を発揮するものがあるんだから、スキル一つ使えるようになるだけでどれほどの可能性が生まれるかわからない。200万は妥当ってところ……


「スキル一つの未知な情報だけでも何万、何十万って額が動くのよ? これが複数のスキルに影響が出るどころか複数の地雷スキルを良スキルに変える可能性を秘めた情報なんて本来なら200万じゃはっきり言って足りないくらいよ? まあ情報を売ったところは最大手の情報兼検証クランだからこそリリース初日で200万も出せたんだけどね。あっ足りないのは向こうもわかってるからなにかほしい情報があったら言ってくれだって!」


 ……俺の認識はまだ甘かったらしい。


「まあ困ったら相談に行けばいいと思うわよ? 知識の泉ってクランなんだけど行く前に私に連絡くれれば案内するわ」

「わかった。その時は頼むな?」

「うん! それじゃあ今度はシュンの番よ?」


 あの後の話か……。う~ん、正直なにが重要な話かわからないし、最初から順番に話していくか。


「そうだな……2人と別れた後……」


 門番の人に宿を紹介してもらったところから、宿、ギルド、師匠の試し、そしてサクヤのこと。

 思い返すとかなり濃いな。葵は俺の話を時々相槌を打ったり、質問をはさみながらも聞いてくれた。そして最後の葵の感想が、


「もうなんていうか春樹だけ別のゲームをやってるわね」


 だった。


「そんなにか?」

「そんなによ! ゴブリンのことも驚いたけどその流派? なんて聞いたこともないし、門番のことに紹介制の宿のことまで……。すでに感応スキルの戦闘で使える応用まで編み出しちゃってるし……。春樹のプレイ動画を見るの今から楽しみよ」


 そういえば動画を撮ってたっけな。忘れてた。


「なんなら今から見るか?」

「ううん。休み明けに陸と一緒に学校でまとめて見せて!」

「わかった」


 葵がそう言うならそうするか。


「あっ、それと夕飯も作るから今日はこのままここでゲームやってもいい?」


 うん? 別にそれぐらいならいいが。


「それだったら泊まりに来てるときに使ってる部屋を使ってもいいぞ」

「ありがとう! それじゃ食べ終わったし食器片づけちゃうわね」


 食器を片付けようとする彼女を止める。


「ああ、片付けなら俺がやるから葵はゲームやってもいいぞ」

「そう?」

「ああ。これくらいはやらないとな」


 こういうところで少しは返さないと流石に申し訳ないからな。すでに頭が上がらないし。


「それじゃあお言葉に甘えて。後よろしくね!」


 足早に部屋を出ていく背中を見送り食器を洗い場に持っていき綺麗にする。

 料理に使った道具は既に綺麗にされていたので俺が洗うのは使った食器くらいだった。


「葵もこういうところはマメだな」


 苦笑して洗った食器を片付けて部屋に戻る。前にコーヒーを入れて1時間くらい本を読もう。向こうでは3時間くらいは経ったか? だとするとまだ夜中だろうからな。少し時間を潰そう。


「夜が明けていたら、師匠のところに行こうかな」


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