古河公方への使者
1478年 1月
正月も明けた頃、古河御所にて新年の挨拶がてら使者として派遣した斎藤真氏の話を古河公方である足利成氏は主殿の上座に座り、不機嫌そうに聞いている。
「……故に、公方様に置かれましては一旦、政知殿と和議を結ばれ…」
「その話は既に聞いたわ!! 余が気に入らんのは政知を鎌倉に入れ、その上我が嫡男をさしおき奴の子を養子として跡を継がせるという事だ!!」
成氏は手に持った扇子が折れそうなぐらい手に力を入れ怒りを露わにしているが、その怒りを向けられている真氏は涼しい顔をしており、それが更に怒りを買っている状態だ。
「恐れながら、政知殿の嫡男茶々丸殿はまもなく10歳になる若輩、また素行も悪いと聞き及んでおり、養子として迎え入れても素行が悪い事を口実に数年後、廃嫡する事もできますし、家督を継ぐ前に流行り病で急死される事もございます。 素行が悪く家臣の評判も悪ければ流行り病に罹り急死されても家臣や国人領主も何の疑問も抱かないかと。 場合によっては素行の悪さ故、家臣や領民に誅殺される事もございますれば…」
涼しい顔をして物騒な事を言う真氏に、一瞬顔を顰めた 成氏は少し思案した後、口を開く。
「そなたの言う通り素行を口実に廃嫡しても、流行り病で急死しても、家臣や領民に誅殺されようと、政知は黙ってはおるまい! むしろそれを口実に我らを卑怯と罵り兵を挙げ合戦となろう」
「それはございません」
「なぜそう言い切れる! むしろ其方の主である宗麟もその機に乗じて攻込むつもりでは無いのか? それに衰えたとはいえ関東管領上杉顕定も大義名分を得て兵を挙げる事は必定! 違うか?」
「確かに上杉顕定は兵を挙げるかもしれませんがそれは鳳凰院家が対処し関東から追い出します。 それにわが主である宗麟様は政知殿を鎌倉に動座させ公方を名乗らせる条件に、現在政知殿の所領となっている伊豆を譲り受けます。 ゆえに政知殿は所領を持たぬ公方となり、更に周囲は宗麟様に従う者に囲まれた状態となります。 そのような者に誰が従いますか?」
「だがその所領を持たぬ政知を旗印にし其方の主が古河を攻めぬ保証は無いであろう?」
「確かにその疑念はごもっとも、しかし考えても見てくだされ、政知殿は齢43になろうかというのにお子は茶々丸殿のみ、幕臣でも無いわが主がそんな者を担いでも何の役にも立ちますまい。 それにわが主は上野、越後を手中に収めようと考えており、公方様と事を構えるなど考えてもおりません。 むしろ公方様に上野、越後を攻めている最中に背後を突かれないか心配しているぐらいです」
「ふむ、上野に越後か、では宗麟の敵は顕定という事だな?」
「左様でございます。 先の合戦では両上杉家に騙された公方様とも致し方なく刃を交えましたがわが主からしたらそれも望まぬことでございました」
「だが、今は宗麟の家臣となった豊嶋が下総を狙っておろう?」
「確かに、しかしそれは正当な千葉家の血筋である千葉実胤、自胤兄弟がおり、下総には奸臣の子である孝胤が千葉を名乗り居座っております。 ゆえに正当な主の元に戻そうとしている次第、公方様に刃を向けているのではございません」
「だが孝胤は余に従っており千葉の名跡を認めておる。 そなたの話では余に従う者を認めず攻めるという事は余と争うという事と変わらぬであろう?」
「確かに仰せの通り、故に主は此度の件を受け入れて頂けるのであれば下総には今後一切手を出さず、孝胤殿を千葉氏の当主と認め、千葉実胤、自胤兄弟には何処か適当な地を与え下総を諦めさせるとの事、所詮は自力で下総を取り戻す事も出来ない者故」
「そなたの話は分かった、もう下がれ、追って余がどうするか宗麟に使者を遣わす」
そう言い、真氏が立ち上がる前に成氏は小姓を引き連れ部屋を出て行った。
残された成氏の家臣達も席を立ち、真氏もそれに倣い主殿から出て案内の者に先導され主殿を後にする。
「命じられた事はやった。 後は古河公方次第か…、さてどうなるやら…。」
御所を出て江古田館に戻る道すがらそう呟き空を眺める。
真氏の独り言は雲一つない澄み渡った青い空に吸い込まれて行く。
「道灌殿の方はどうなっているのであろう? 某が古河公方をその気にさせても堀越公方が頷かねば無駄足なんだがな…」
改稿すると言いつつの更新申し訳ございません。
後2話で完結とさせて頂きます。
改稿版は「滅亡回避で天下統一!! 名門だけど滅び歴史に埋もれた豊嶋家の嫡男に転生したのでチートを駆使して生き残ります。」
を9/1~投稿開始致します。
これ改稿とは言わない!! と言われそうですが改稿と言い張ります!!




