第5話『僕の知らない、今日』
♪♪♪♪♪…
今日もまた目覚ましの音で目を覚ます。
「はぁ…、もう朝なのか…。」
水曜日が一番もどかしい。週の真ん中まで来たからあと半分だ、とも思うし、まだ半分も残っているのかとも思う。たまに平日に祝日がかぶり休みになることがあるが、その時の一週間は逆に気持ちが悪い。いつもより休みが長い分、もっと休みたいと感じてしまい、もう終わってしまったのかと寂しくなる。そんな気分を引きずりながら勤務日を過ごすため、毎日が水曜日のようにもどかしくなる。気分を紛らわせるため、というほどでもないが日課になってしまったゲームアプリのログインボーナス回収を始める。なぜもう面白くもなんともないものを続けているのか。結局友人と協力プレイすることを目的として始めたため、ソロプレイは下手で、インフレにもついていけず惰性で続けているに過ぎなかった。
ゲームをしているとふと視界に日記帳が見えた。床に置かれていた。普段から整理整頓をしているので、せめて机の上にはおいているはずなのだ。幼いころに鼻炎持ちになって以来、掃除をしやすいように部屋にはあまり多くのものを置かず、整理整頓を常にすることを習慣にしていたので日記帳が床に置かれていることが、僕にとっては違和感しかなかった。だから僕はスマホをいじるのを中断し日記帳を手に取り机の上に置こうとした。すると机の上もずいぶん荒れていることに気づいた。ノートが何冊も積まれ何枚かの切れ端が散乱している。そのうちの一枚に
「まずは日記を確認してほしい。全てのきっかけは34ページの僕だ。少しでいいから思い出せれるなら思い出してくれ。そして出来得る限りの今日を残してほしい。僕が明日に進むことができるように、誰よりも僕が祈っている。2018年11月14日(水) 62ページの僕より」
紙の端に62という数字もついている。よくわからない話だが、僕はその紙の願い通りに日記帳を確認してみた。よく見れば結構使われているように感じる。ほかのノートは日記帳とは全然違う形で、本当に講義とかで使うようなノートだった。切れ端にはすべてのきっかけは34ページとあった。日記をつけていたのは3か月も前だからそんなに明瞭には覚えていないが、日記にわざわざページ数なんて記していただろうか。そんなことを考えながら34ページに近い方である表からページをめくるとすべてのページの右下にほとんど殴り書きで数字が記されていた。122ページまでは何かしら書かれているが123ページから200ページまではページ番号だけが書かれていた。この日記帳は200ページもあったのかと思いながら所定の34ページを開いてみた。
「久しぶりに日記を見つけたから、中身を読んでいたら見覚えのない記録が残っていた。いたずらにしては内容は割とどうでもいいことで目的がわからない。だが僕の筆跡に間違いないと思う。日付だけ、おかしいんだよ。本当に、日付だけ。それ以外は全部普通なんだけど、こと日付に関しては不自然な間違いをしている。だから試しに今日を残す。今日は2018年の11月14日(水)で間違いない。テレビもスマホもネットも確認したから間違いない。もう一度書く。今日は2018年の11月14日(水)。一ページ前の日記はこの日の出来事では無い。」
よく意味が分からなかった。そもそも経緯がわからない。だから僕は1ページ前の日記も読んでみようと思った。内容は、気分で蜘蛛を助けて少しイキッているというもので、特に変なところもないのに、そこには「知らない僕」とか「おまえは誰だ」のような内容に似つかわしくないタイトルまみれになっていた。そのうちの一つのタイトルの近くに二重線が書かれている日付を見つけた。日付は2018年の11月14日(水)だった。34ページをもう一度見てみた。34ページの日付も同じだった。ふと先ほどの紙切れも見た。紙切れの日付も同じだ。
嫌な予感がした。もし、今ふとよぎった想像、いや、単なる妄想であってほしいが、それが現実に起こっているかもしれないと思った僕はとっさにスマホを手に取り日付を見返した。きっと見間違いだと信じたかった。だって紙に書いているし間違っている可能性は機械より高いはずだ。人間の筆跡だし、というより読んでいて薄々気づいてはいたがすべて僕の筆跡だったし。スマホには今日、一番見たくない数字の並びが映っていた。テレビも急いでつけたがそこにも同じ今日が映っていた。怖い、何が起こっているのか理解できないこの状況が何よりも怖かった。だから知りたくなった。何が起こっているのか。この日記帳の意味することは何か。一番最初に目に入った紙切れから順番に一枚ずつ、計4枚の紙切れを確認していった。
「62の日記を見た僕は必ずこれを残さなくてはいけないと感じた。僕はまず日記の中から特に重要なことを成し遂げてくれた僕たちの記録を机に並べた。ノートの実験をしてくれたのは47から51の僕だ。ぜひそれも確認してほしい。65の僕より」
「見やすいように65の補足をしておく。
1. この現象をDay Reloadと仮称しておく (40)
2. 自分が行ったことは記録に残るようにページ番号を残す。 (47)
3. 勇気があり記録を残すことができるなら試してほしい。 (50)
4. だがこの日記帳だけは絶対に捨てたらいけない。 (51)
最低限の説明だから必ず47から51の僕の日記を読んでほしい。68の僕より」
「せっかく僕が残したらしい記録を94の僕が台無しにしたみたいだった。なんとか復元できていると信じて、65と68に倣ってこれを残しておく。94について関係する紙切れがこれだけなら47から51を確認した後で95に記しを残してほしい。94の望みを叶えれたと信じたい。どうか僕が最初の95であってくれ。95の僕より」
理解がまだ追い付いていない。でもなぜか他人事のように思えなかった。面倒なはずなのにわざわざ全て手書きで残されている。とりあえずよく書かれている47から51のノートの実験とやらを最初に見てみようと思った。
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