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Day Reload  作者: 太陽と月
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第3話『何度目かの今日』

 ♪♪♪♪♪…


 今日もまた目覚ましの音で目を覚ます。


「はぁ…、もう朝なのか…。」


 もう朝なのかと言いつつも寝ている時の記憶はもちろんない。夢も見たり見なかったり、内容もすぐ忘れてしまうほどだ。ただ、朝起きて6:30なのだと認識したときにはつい「もう」なんて言葉を使ってしまう。まだ動きたくないからスマホのゲームアプリを起動しログインボーナスを回収していく。代り映えしない画面を虚ろな目で見ながら、ふと曜日ダンジョンが視界に写った。


「そうか、今日は水曜日…。ん?水曜日?」


 何か違和感を感じた。自分の住んでいる部屋なのだから、毎日当たり前のように見ているし、このスマホも自分の所有物なのだから毎日見ていて当然だ。だが、なぜかこの光景を見た気がする。いや、自分でも何を感じているのかさっぱりわからない。


 ただ、なぜか同じ景色を見た気がした。それもつい最近同じ光景を見た気がしたのだ。繰り返しているとでもいうのだろうか?そんな非現実的なことが起こりうるのだろうか。とうとう疲れてしまったのかなと思いつつ、感じた違和感に自分の知識や常識をぶつけて正当化し無かったことにした。


 自分が好きなアニメは大方日常系のゆったりしたものではなく、異能の力が混在する世界で主人公が徐々に精神面的に強くなっていく成長ものの話だ。だから自分も時々そういった世界を妄想する。妄想しすぎてしまったせいで無意識の間にそういう不思議な現象を望んでいたのだろう。自分で自分のことがかわいそうになってくる。なんだかんだゲームをしていれば時間もぎりぎりだ。準備を始めて今日も仕事に向かう。


 毎日をそうやって繰り返す。毎日といっても平日だけだが。繰り返して、繰り返して、また繰り返す。変わらない毎日を。何も感じない日々を。幼いころに戻れたら、せめて大学生や高校生のころに戻れたらと。過去にばかり未練が残り、そうやって今日を過ごしていく。


 仕事が終わり、帰宅後のことだった。帰りに引っ付いてしまったのか、子蜘蛛が裾についていた。いつもだったら虫がついていたら振り払ってすぐつぶしてしまうが、その時はとどまった。今期で見ているアニメの主人公はどんな生き物にも優しく接していた。そんな主人公にあこがれがあった。見かけで判断せず、自分のエゴを押し付けず、見返りを求めない。主人公が他者に優しくした分だけ優しさが巡ってくる。自分にないものだったからまぶしく見えた。ちょっとだけ真似してみようと思った僕は、その子蜘蛛を外に逃がしてあげた。子蜘蛛はすぐに見えなくなった。この子はこの先も生きていけるのだろうか。少なくとも今日この部屋で死ぬことはなかった。それがこの子にとって良かったことになるのかどうかはわからない。ただ、ごめんね。僕は今のことで、自分がいいことをしたと思いたかった。人間よりはるかに小さい体で同じ世界にいるのにその子は僕よりも生きる為の努力をしている。そんな存在に対して自分のほうが勝っているのだと愉悦を感じたかった。


「日記に残してみようかな。」


 ただの気まぐれだった。三日坊主ではなかったが、いつの間にか続かなくなった日記。日記帳を探していたら仕事のカバンの中から見つかった。いつの間に混ざってしまっていたのだろうか。よく見ると何か月も前のプリントも入っていた。カバンの中を探りながら整理をした。結構いらないものが残っていたカバンの中身は数分前と比べると少しだけすっきりしているのかもしれない。


「そうだった、日記をつけようとしていたんだっけ。」


 よくやってしまうが、何かをしようとしたときに他の事が頭をよぎるとそっちに意識が集中してしまう。掃除も気が済み日記をつけることを思い出した僕はそっと日記帳を開いた。日付は3か月前で止まっていた。


「過去の僕は何をしていたのだろう。」


 入社してからの日記はどれもつまらなさそうだ。自分で書いたはずなのにどこか他人事のように感じた僕は気持ちを切り替えて今日の日付と曜日を新しいページに記した。日記に書いたことで僕の記憶は形として残った。つまらない日々の中にもエゴではあるがこんな気分にも浸れるのだと思うとちょっと気分が良くなった。


 今日はこのまま寝よう。明日の準備だけ済ませて床に就いた。明日…か…。


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