巣くうは狂気か恋情か
短篇企画第3弾
こちらも前作同様に以前制作したのが偶然見つかったので編集したものになっています。
自分が好きなヤンデレを詰めてみました。
同日投稿のもう一つ作品があるのでそちらもぜひご覧ください。
恋は人を狂わせる。
こんなことを言ったのは誰だったか。
確かに的を得ている。
歴史を見てみると惚れた女性にうつつを抜かし過ぎたが為に破滅してしまっ人など五万といる。
今の時代にも、恋人、好きな人、愛人などなどに貢いで身を滅ぼす人も数多くいる。
また愛ゆえに狂気に陥ってしまった人もいる。
******
まだ、朝も早く街もまだ完全には起きておらず、白い霧に覆われていた。
「おはようございます。健二さん。今日も早いですね。」
そう俺に声をかけて教室に入ってきたのは、長谷川唯。
このクラスのルーム長にして、スクールカーストの頂点に位置する、俺のような底辺のものからしたら、まさに雲の上の存在。
又、日本人特有の黒い髪は何処までも黒く、所謂烏色をしており、さらさらとその髪一本一本が遠目でも艶めいているのがわかる。
そして、高いルックスを持ち、他クラス、他学年からもよく告白をされ、街でよくスカウトをされているのを目撃されている。
容姿だけではなく、学力までも高く、某有名予備校の実施している全校統一試験では上位にランクインするほどの学力を有しいる。
まさに、才色兼備、みんなのあこがれの存在。
彼女の周りには所謂、リア充たちが集まり、見たらすぐその学校で逆らってはいけない存在。
そんな高根の花がなぜ俺と一緒にいるのかと言うと、
「今日もこんな早くから文化祭の準備ですか?」
「ま、まあね。それくらいしか俺に出来ることはないから。長谷川さんも?」
「多分健二さんが早く来て仕事をしていると思ってきてみたんです。ふふっ。正解でしたわね。」
そう、顔をほころばせながら笑う姿に思わず、顔に熱を帯びてしまう。
長谷川さんにその気がない、常に分け隔てなく接するので、俺に対して恋愛感情など持ち合わせていないはずである。
そうわかっていながらも、やはり、顔に熱を帯びてしまう。
そうこうなったのもすべてはあの文化祭の役員を決めるとき・・・・
・・・・・
「これから文化祭の役員を決めます。男女それぞれ一名ずつ選出します。」
その言葉にクラスにいる全員がやりたくないと言った雰囲気を醸し出す。
それもそのはず、文化祭の役員なんてただただ面倒なだけで、貴重な青春の一ページを文化祭の役員なんかで終わらすなんてもったいないと皆が思っているからだ。
俺も、めんどいのは御免だと思い、机に突っ伏し、話し合いに参加しない意を言外に示した。
そんな中、一人手を上げる者がいる。
「はい。じゃあ女子の方は私がやります。」
「じゃあ、俺もやろうかな。」
「お、俺も!」
「俺もやる!」
長谷川さんだった。
あの才色兼備の長谷川が女子の方の役員を務めると決まると単純な男子たちは手のひらをひっくり返したかのように次々に立候補する。
それもそのはず、あの長谷川さんと一緒に役員を務めるとなると、一緒に夜遅くまで仕事をするかも知れないわけで、そのままひょっとすると恋人同士になれたり、と淡い夢を膨らませている。
「え、えっと。じゃあどうせ男子みんな、立候補してるだろうし、男子皆立って!じゃんけんするよ!」
司会役の子もこうなることをあらかた予想していたようで、苦笑しながらも、男子全員を立たせじゃんけんをさせようとする。
冗談じゃない、ただ平穏に学校生活を送りたいのに、もしじゃんけんで生き残って役員にでもなってみろ、男子からの嫉妬・憎悪・嫌悪・敵意諸々の視線にさらされ、下手したら校舎裏でボコボコにされてしまうかもしれない。
そう思い、無干渉を貫いているとふと声がかかる。
「お、おい、健二もやろうぜ。」
「断る!」
そう、はっきりと断るだが。
「おい、おい、やろうぜ、なあ、なあ、なあって。」
「ああ。わかったよ!」
あまりにも鬱陶しいクラスメイトに俺も方が折れてそのじゃんけんに渋々参加する。
「じゃあ、行くよじゃーんけーん。『ポン』」
「よろしくお願いしますね。『健二くん』」
「う、うん。よろしくお願いします。長谷川さん。」
まさか、最後まで勝ってしまった。
前には、満面の笑みを向けてくる長谷川さん、後ろからは嫉妬に狂った視線で、視線だけで人が殺せるほどその視線で人が殺せるほど殺気だっていた。
ああ、世界はなんて残酷なんだ。
ただ、これから先これ以上に残酷なコトが待ち受けている事を、この時の俺はまだ知る由もなかった。
・・・・・
あれ以来一緒に文化祭の仕事をすることになり、距離が縮まった気がするが、それと同時に男子からの嫉妬もまして胃が痛い日々を過ごすことになる。
また長谷川と一緒にいることが増えたことにより、ほかの女子とも交流が増えることになった。
それも合いまって、余計に男子から嫉妬を受けることになっていてさらに胃に負担かけていることになる。
「やあ健二くん。朝から大変だね。」
「うぉ!びっくりした。カレンさんいきなり後にのしかかるのやめてもらえます?」
挨拶声と共に俺の背中にのしかかっているのは工藤カレンさん。
彼女は長谷川さんと親しくなってから仲良くなった女性だ。
ドイツ人と日本人のハーフであり、かなりの美人。
綺麗にまっすぐ伸びたブロントの髪は腰まで長く後ろで束ねてあり、身長はそこまで高くないももの、いやあまり高くないからこそ彼女のその豊満な胸はもり強調される。
彼女も長谷川さん同様よく告白されるが未だに誰一人として成功していない。
「なんでどいてほしいのかなぉ?」
「い、いやその、あたってるからです」
「んー、何がー?」
そう言うとカレンは妖艶に笑う。
カレンはいつもこんな感じで俺で遊ぶ。
返答に困っていると救いでのが差し伸べられる。
「やめなさいカレン。健二くんが困ってるわ。」
「はーい。」
長谷川さんから辞めるように言われると間延びのした返事で俺から離れていく。
「ありがとう長谷川さん。助かったよ。」
「大丈夫ですよ、いつもの事じゃないですか。さあ、仕事を始めましょう。」
「あー、カレンも手伝う。」
長谷川さんの号令で俺も仕事を初めて、カレンも手伝ってくれる。
最近になってカレンも仕事を手伝ってくれるようになった。
流石に文化祭が近くなり、2人では人手が足りなかったので助かっている。
1人加わり、3人で文化祭当日までの残り少ない日々を忙しく過ごす。
そして迎える文化祭当日。
///
頑張って仕事をしたかいもあって文化祭は大成功で俺たちのクラスが最優秀をとることが出来た。
「やったね健二くん。最優秀賞だよ!」
「本当頑張ったかいがあったよ。カレンさんも役員じゃないのにわざわざ手伝ってもらってありがとう。ほんとに助かったよ。」
「いいの。いいの。」
使った資材を倉庫に戻すためカレンさんと手分けをして運ぶ。
流石に量が多いのか、女子のカレンには重すぎたようで時々ふらついている。
「大丈夫?少し持とうかカレンさん。」
「大丈夫大丈夫これくらい。どうてことって、キャッ!」
カレンはなにかにつまづいた様で前に倒れる。
両手は塞がっているのでそのまま床に激突してしまう。
流石にまずいと思い、手に持ってるものを話が、カレンの腕を掴み、そのまま引っ張る。
「ふぅ。危なかってカレンさん。やっぱり少し持つよ。」
そういいカレンさんの腕を話、カレンさんの落とした荷物を少し自分が持つ。
「?大丈夫カレンさん?どこかうった?」
「ーッ!だ、大丈夫大丈夫!ありがとう。助かったよ。」
顔を赤くしてぼーっと立っていたので、心配になり声をかけると、慌てて荷物を手に取り足早に教室へと向かった。
・・・・・・
「皆様のおかげで無事文化祭も終わり、最優秀賞をとることが出来ました!」
『いえーい!』
長谷川さんが挨拶をするとクラスのほとんど全員が拳を空に突き出し叫ぶ。
「このあと校庭で後夜祭が行われます。節度を守ってめいいっぱい騒ぎましょう!」
『おーう!』
そんなクラスの輪から1歩引いて俺はそれを傍観していた。
後夜祭ってもリア充のイベントだし、俺は関係ないと思い、見つからずにそそくさと帰る準備をする。
「け、健二。このあとちょっといい?」
「カレンさん?いいけど、どうしたの?」
静かに帰ろうとしていたところにカレンから声がかかる。
若干のめんどくささも感じたが、もしかするとなにか重要なことなのではないかと思い、カレンに連れられ夕日の差し込む教室から出て、後者の人目のつかない所へ連れられる。
「こ、こんなところまで来てどうしたのカレンさん?」
「じ、実は健二に言いたいことがあるんだ。」
カレンの真剣な眼差しに背筋が伸びる。
どんな言葉が出てくるのか気になっていると。
「じ、実は私、あなたの事が好きです!付き合ってください!」
「---はい?」
カレンの口から飛び出してきたのは全く予想していなかった、告白だった。
「今なんて?」
「貴方が好きです。付き合ってください。」
思いがけない言葉に思わず聞き返してしまう。
それもそのはずカレンが俺に対して告白など天地がひっくり返ってもありえないと思っていたから。
どこでフラグを立てたし。
「えーっと。なんでって聞いていい?」
「わ、私の事、助けてくれたじゃん?それでかっこいいなーって思って。下心丸出しで私に接してこないし。話してて面白くて、楽しいなーって思ってたら好きになってた。」
顔を赤く染め、俯きながらもしっかりと聞こえる声でそういう。
そう言われると、かなり恥ずかしいものがある。
「け、健二は私のこと嫌い?」
「嫌いじゃないよ。むしろ好きだよ。でも俺なんかでいいのかなって思って。」
カレンの潤んだ瞳でそう言われると誤魔化すことも出来ず、ホントのことを言う。
「私は貴方がいいの!」
「で、でも。」
「あー!私は健二が好き!健二も私のとこ好き!これでいいじゃん。他人なんか気にせずにさ。」
うだうだ言ってる俺に笑顔を向けてくる。
女の子にここまで言わせてるんだ、俺だって覚悟を決める。
「わかった。俺とお付き合いしてください。」
「それはこっちのセリフよ。私で良ければお付き合いしてください。」
互いが互いに告白をする。
シュールな光景にどちらかとなく笑いがこみ上げる。
「よろしく。カレンさん。」
「呼び捨てでいいよ。てか呼び捨てで呼んで健二。」
「わかったよカレン。」
「うんよろしく。」
見つめ合う俺達は吸い込まれるように口を合わせる。
カレンにしか目がいってなかった俺はその時物陰からこちらを物凄い殺気で見る者の存在に気づいていなかった。
その者の目はどす黒く濁っていた。
・・・・・・
カレンからの告白のあと、後夜祭を出ないわけにも行かず、校庭に向かう。
流石にカレンと腕を組んだり、一緒に来たりするとあれなので別々に来ることになった。
まあ本当は、冷静になって恥ずかしくて顔を見れなくなったからなんだけどね。
「あら健二さんこちらにいらっしてたのですね。探しましたよ。」
「ごめんなさい長谷川さん。」
キャンプファイヤーをしているところに向かうとそこには長谷川さんがいた。
ただ、俺を見る目がどことなく暗い気がした。
「...ちょっといいですか。健二さん。」
「?いいですよ。」
暗いトーンで言われたので不思議に思いながらも長谷川さんについて行く。
「ここならいいでしょう。」
連れて来られたのはさっきの校舎裏だった。
「さっきここでカレンに告白されてましたよね?」
「あ、ああうん。」
長谷川さんが知っていることに驚きも、長谷川さんなら隠さないでいいだろうと思い肯定する。
「...やっぱり。」
「は、長谷川さん?」
暗い雰囲気を漂わせる長谷川さん。
「実は私も健二さんに言わなければ行けないことがあります。」
「なにかな?長谷川さん」
心配になりながらもその内容が気になり聞く。
「実は私も健二さんが好きです。それはもうとてつもなく好きです。いつもあなたを見ていました。あの女よりもあなたのことが好き、大好きなんです。」
「は、長谷川さん、どうしたの!」
暗い目をしながらにじり寄ってくる長谷川さんに言いようのない恐怖を感じ後ずさってしまう。
「健二さん。あなたは私とあと女どっちを選ぶんです?」
「それは...」
初めて恐怖を長谷川さんに感じ言葉を濁してしまう。
ただそれがまずかった。
「...あと女なんですね。わかりました。」
「長谷川さん?」
すると長谷川さんはピタッと止まり俯く。
「なら健二さん。...ここで死んでください。」
「え?」
すると今まで見たことのないスピードでこっちに向かってくる。
早すぎたのといきなりだったことで反応できない俺にドスッという鈍い音のあとに腹部に激しい熱と痛みを感じた。
「グッ!!は、長谷川さん。ど、どうして。」
俺に刃物が刺さっていることに気づいたのはそのすぐあとだった。
それに気づくとあとは早い。
痛みでたっていることも出来ずに、その場に倒れ込んでしまいます。
長谷川さんは包丁をまだ持ってたみたいで。スルッと俺の体から抜ける。
地面に俺が倒れると、地面に血の海が広がる。
なぜ、なぜ長谷川さんが?
理解できないとこに混乱しながら長谷川さんを見る。
「ヒッ!」
その目は黒く濁っており。光すら感じられておらず、いつも笑顔であった顔には一切の表情がなかった。
「健二さんが悪いんですよ。私の元に来ないから。他の女のところにいくならいっそそのこの手で。」
すると一切の表情が無かった顔に、笑みが現れた。
ただ、その表情はいつもの笑みではなく、どこか狂気に満ちた笑みだった。
「、は、はせ、がわさん。」
「ふ、ふふ。苦しいですか健二さん。大丈夫ですよ。あと少しで逝けますから。」
掠れる声で長谷川さんを呼ぶと、またその手に持った包丁を振り上げ、俺の腹部めがけてふりをした。
「―――――!」
痛みでもう声がでない。
「あと少しで、健二さんがやっと私だけの存在に。この日をずっと、ずっと待ってたんですよ健二さん。」
長谷川さんは一人愉悦に浸っている。
「カ、カレン。」
消えゆく意識と感覚のかな、つい先ほどここで告白をし、告白をされ、恋人になってくれた愛しき人の名前を呼ぶ。
「・・・・・まだあの女の事を考えるのですか。いけないですね健二さん。そんないけない健二さんにはこうです。」
俺がカレンの名前を呼ぶと、長谷川さんはまた包丁を俺に突き刺そうと振り上げる。
「健二ー。どこにいるの?健二ー。」
すると、遠くの方でカレンの呼ぶ声が聞こえる。
「ッチ。意外に早いですね。まあもうこれで終わりですけど。せっかくです私から健二さんを奪ったあいつに、健二さんが私に殺される所を見てもらいますか。」
振り上げた包丁をそのまま俺に向けたままカレンを待つ。
カレンは近くにいたらしく、すぐに俺たちのところにくる。
「健二ーいる。・・・・・・・・え。ゆ、唯なにしてるの。その手に持ってるのはなに、なんなの。なんで健二がそんな傷だらけなの!答えて唯!!!」
死に懸けの俺と、今まさに俺を殺さんとする長谷川さんを見たカレンは、唯に詰め寄る。
いままで聞いたことのない怒声、怒りをあらわにしている。
「なに、ってかんたんですよ!」
「や、やめー。」
カレンの怒声に動じず、振り上げた包丁をまっすぐ俺に突き刺す。
カレンは必死の形相でその包丁を止めよとするが遅い。
カレンよりも先に、俺に包丁が刺さる。
「―――ッ!」
「健二!ねえ健二!返事して健二!唯なんでこんなことした!!!答えろ!!!!」
三度目の刺さる包丁についに俺の体は反射するように自分の意識に反してのけ反る。
もう声も出すことも、手足を動かすこともできずに沈む意識、閉じてゆく視界の中、長谷川さんに激しく詰め寄るカレンの姿をみる。
カレンの罵声が何を言ってるのかもうすでに聴き取れなくなっていき、視界が暗転する直前、長谷川さんのニタッと笑う顔が見えた。
やはりそこには今までの優しさは感じられず、愛に狂いに狂った不気味な笑顔があった。
暗転した視界で、まだ少し働く思考で考える。
どうしてこうなってしまったのか。
俺が長谷川さんの好意に気づかなかったから?
俺が長谷川さんの狂気の気づかなかったから?
俺がカレンの好意に答えたから?
なぜ、なぜ、なぜ、
こうなってしまったのかのなぜをずっと考える。
最後に消えてゆく思考の中で思う。
彼女の心に巣くうっていたのはいったいなんだったのだろうか。
ただの狂気だったのか。
それとも恋情だったのか。
あれは恋情故の狂気だったのか、それとも狂気故の恋情だったのか。
ああ、カレンどうか元気でいてくれ、俺は君をあいして―――。
ここで俺の意識は意識を永遠に手放した。
いかがでしたでしょうか。
ヤンデレっていいですよね!
前書きにも記載しましたが同日にもう一作品投稿してますのでそちらもぜひご覧ください。
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