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Teens and Guns  作者: 夜狐
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決戦・前編

午前10時、慈緒理達が配置についてから1時間が経過した。装備も罠も、やれるだけの準備はした。塹壕猟兵か連合軍が、後は待つだけだ。

「…………異常なし。まだ平気だね。」

結月が双眼鏡を顔から離す。設置した軽機関銃の側に日向と一緒に伏せている。

「このまま来なければいいのに…………」

誰にとなく日向が零す。

「来ても大丈夫だよ。みんなでやっつけて、家に帰ろう。」

彼女の、そして自分自身の不安を払うように言った。その直後、無線機から声が聞こえた。

「敵が接近。攻撃、用意。」

冷静な、男性の声だった。見張りからの無線だ。日向が慌てて銃のグリップを握る。結月は瓦礫から眼だけ出すようにして前方を睨む。

「来たよ。」

短く、日向にだけ聞こえるように呟いた。

塹壕猟兵は15人の歩兵と、蛇型の巨大なロボットで構成されていた。装甲車もいるとの事だったが、車輪ではジャンクシティ付近の瓦礫を突破できず、歩いて接近したのだろう。歩兵はタンカラーの装甲を纏い、盾や大型の自動小銃を装備している。また、数人の背中にはロケットランチャーと思われる筒も目視できる。蛇型ロボを中心に適度に散開して前進する。警戒はしているが、罠を見破られた訳ではなさそうだ。

「来やがったか。」

無線の報告を聞いて亜梨冴と慈緒理、そして大尉のいる司令部にも緊張が走る。司令部は建物の中で、壁には銃口を出す穴がいくつか開けてあり、大口径の機関銃も固定されている。

「装甲車がいないだけマシだったな。」

「前向きね。」

「前向きじゃないとやれないからな。」

普段通りに会話をしながら、亜梨冴は機関銃の発射準備をする。

「第1撃対物ライフル、発射!」

大尉が無線で力強く命令する。

2発の発砲音が、開戦の号砲となった。


「敵襲!!2人やられた!」

見事に弾丸が歩兵の顔を撃ち抜いた。顔の装甲はそこまで頑丈では無かったのだ。彼らは中央に蛇型を残し、散開して瓦礫の後ろに隠れた。しかし

「っ!?くそっ!落とし穴か!」

地面を覆っていたシートが重さに耐えきれずに落下、落とし穴が発動する。深く掘られた穴は、重装備の兵士では登る事が出来ない。

一方で蛇型が鎌首を持ち上げ、口内の銃火器で掃射をする。幸い、位置を捕捉されていないので被害は無かった。

「日向の所、すぐ前に敵いるらしいの。やれそう?」

銃声の中、無線機に慈緒理の声が通る。

「りょーかいっ!」

それを聞いた日向達が頭を出さぬよう注意して機関銃を横に移動し、瓦礫の裏から様子を伺う。30メートルほど先に、敵兵の姿を捉えた。動きを軽くするためか、側面までの装甲は無かった。さらに対物ライフルを警戒して、今はその側面を覗かせている。

「もらった!」

すぐに引き金を引き、反動に肩を痛めつつも弾丸を送り込む。無防備な側面に被弾し倒れ込む所が見えた。

「1人撃破!日向の手柄だよ。」

「やったよ!倒した!でも肩痛いし耳も痛い!」

結月が無線で報告する。横から日向が興奮して何か叫んでいる。ショックよりも、喜びの方が多い様子だった。


「よしっ。」

報告を聞いて、慈緒理がガッツポーズをする。「まだ早いだろ」と亜梨冴が横で苦笑していた。

「5番、6番、13番、砲撃開始。」

牽制射撃が続く中、後方からポスン、と気の抜ける音がして迫撃砲が発射される。あらかじめ落とし穴の位置に飛ぶよう、照準に印をつけておいたのだ。砲弾狙い通りに落下し、落とし穴を敵の墓穴へと変えた。

「うわ……落とし穴片付けやりたくねぇ…」

砲弾の威力を知っている亜梨冴は、直撃を受けた敵を想像し、顔をしかめた。

「4番さん、前に敵がいます。」

見張りからの無線連絡を聞いた慈緒理が支指示を伝え、機銃の掃射音が始まる。

「敵撃破!次の指示を!」

そしてすぐに嬉しそうな男の声が聞こえた。

「蛇が前に出たな……」

「ええ。攻撃しますか?」

「…………やめておけ。装甲に自信があるから前に出たのだろう。こちらの位置を知らせるだけだ。」

大尉と亜梨冴は覗き穴から蛇型を睨んでいた。数発ずつ建物に撃ち込みながら前進する蛇型。その後ろから、歩兵も前進しているようだ。無線と銃声が暫く続いた。


戦線は、少しずつ詰められていた。歩兵の数は残り7人。しかし、あれから成果は出せていない。砲撃は可能だが、居場所を悟られ、対戦車ロケットを撃ち込まれる危険性が高い。

「…………静かになりましたね…………」

亜梨冴が敵陣を覗いたまま呟く。

「ああ。…………第1撤退命令だ。」

「はい。…………第1撤退命令、出ました。指定の場所まで下がって下さい。」

あれ程鳴っていた銃声が一気に止んだ。蛇型も、今は沈黙を続けている。慈緒理は撤退命令を伝えた。

「日向、撤退だって。」

「りょーかい。じゃ、すぐに行こ。」

無線機から耳を離した結月。彼女はだいぶ大きなそれを背中に背負い、日向と2人掛かりで機関銃を持ち上げた。

「走るよ!」

結月が先導し、建物などの遮蔽物を使って蛇行しながら後退する。進行方向からは、味方の支援射撃が行われている。

「重い〜…」

「ほら、頑張って。もう少し………」

日向を励ます彼女の言葉が遮られた。後方、支援射撃の行われていた場所が突如爆発したのだ。

「結月?ねえ、結月!どうしたの!?」

「うん…………」

その衝撃に彼女は呆然としていた。ここにきて、戦場の現実が彼女に襲いかかった。後ろから、日向が必死に声をかけ、どうにか再び走り出した。


「あの人達…………死んじゃったのかな…………」

退避場所まで到着した2人。結月は、煙の上がる自陣を見つめていた。

「…………じゃあさ、仇を討とう。あの人達の代わりに、あいつらをやっつけよ。」

結月の肩を掴み、日向が彼女の瞳を見つめる。仇を討つ、この言葉は彼らの死を肯定した事になる。しかし、悲しむ暇がない事は日向もわかっていた。悲しむくらいなら銃を取るべきだと。結月が戦意を失えば、自分1人でやる事になり、それが嫌だというエゴイズムも少しはあった。そんなの、今はどうでもいい。理由はなんでもいい。今すべきは、友人を鼓舞し、共に武器を手に取る事。普段の彼女から想像できない真剣な眼差しで、結月を見つめる。

「……………………そうだね。やってやろう。もう大丈夫。」

彼女も辛いはずだ。無理に自分を鼓舞しているだろう。なら、自分だけが泣いていて、戦意を捨てていてどうする。犠牲になった彼らもそんなの望んでいないだろう。死んでまで助けられたのだ。当然、お礼と復讐を果たさねばならない。

「あいつらに仕返し、してやろう。」

強くい、決意の眼差しで日向に答える。

次回で最終回です。最後までお楽しみください。

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