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Teens and Guns  作者: 夜狐
14/16

準備

「おはよう。今日も早いね。たまには休んだら?」

「ああ。やりたくてやってんだよ。

あれから、ジャンクシティ総出で塹壕猟兵への対策を練っていた。今日は最終日で、早朝から作業をしていた亜梨冴に結月が話しかけた。亜梨冴は持っていたスコップを地面に挿し、側に置いた水筒の水を飲んだ。

「様になってるね、その姿。軍隊でも穴は掘ったの?」

「まあな。」

「随分深くなったね。」

「だろ?まあ今は最後の仕上げだけどな。」

結月は彼女の掘った穴を覗き込む。その穴は深く広く、落ちれば復帰は容易では無い。

「都合よく落ちてくれよな。」

亜梨冴は穴の側のビニールシートを引き寄せた。その上に少しづつ土をかけ、地面と同化させる。結月も手伝い、短時間で落とし穴を隠す事が出来た。

「完成。………明日だね。」

作業を終えた結月が、静かに言った。

「…………そうだな、明日だ。……………相手は人だ。……………………大丈夫だよな。」

「私はね。あの2人も、覚悟は決まってるって。」

彼女の言うあの二人とは、勿論日向と慈緒理の事だ。塹壕猟兵は大型の機械と歩兵、つまり生きた人間の事だ。そして撃破するには殺す、最低でも怪我を負わせる必要がある。それは兵士であっても苦悩、葛藤、躊躇う行為だ。その行為に2人が耐えられるのか。亜梨冴の不安はそれだった。

「ならよかった。明日、頑張ってくれよな。」

「まだ気が早いよ。あ、そろそろ持ち場に行くね。」

振り返って手を振りながら結月は自分の持ち場へと向かった。


「隊長!落とし穴3、完了しました。」

「おお、ご苦労だったな。狙撃地点も機銃座も、もう少しで完成だ。」

亜梨冴は隊長に経過を報告した。2人のいる場所は、街の端にある小さな建物だ。壁には土嚢が積まれ、その隙間から重機関銃が銃身を覗かせている。

「落とし穴3…………」

隊長は机の上の地図に印をつけた。街全体を写した地図には、至る所に罠や攻撃場所が書かれている。敵陣方向の門を開き、待ち伏せする作戦だ。

「発注したRPGがもうすぐ届く筈だ。それと一緒に増援も来るから、備えは万全だろう。」

「対戦車ロケットですか……これなら、重装歩兵も倒せますね。……………………それにしても、塹壕猟兵の情報源はどこから?」

今になれば少し疑問が残る所だ。どうして敵の進行、装備、そして到着時間がわかるのか。亜梨冴はその疑問を訪ねた。

「安心してくれ。連合軍からの情報だ。旅客機を改造した偵察機から、目視で見つけたそうだよ。進路と位置から、襲撃場所を割り出したらしい。」

彼は答えながら、部下の持ってきた箱を開る。中には、機関銃の弾が入っていた。

「じゃあその段階で攻撃…………ともいきませんね。」

発言の途中で取り消した。

「ああ。連中にとってこんな所大事じゃないからだろう。首都奪還を目指してる部隊を回せば、塹壕猟兵など一捻りだろうがね。」

2人は苦笑した。こんな所に連合軍が増援を送る事自体幸運なのだ。

「あ、おはようございます。亜梨冴も、おはう。」

2人のいる部屋に慈緒理が入って来た。髪を短くまとめ、動きやすそうな服装をしている。

「おはよ。無線機の使い方は教わったか?」

「うん。軍隊の人にね。でも、何で私が伝令係に?」

彼女は、伝令係に任命されていた。無線機での通信だけでなく、口頭での連絡や弾薬の補給などで戦場を走り回る事にもなっている。

「士気を高める為だってよ。若い娘に連絡された方がいいだろうって。」

「ですよね、隊長。」と亜梨冴が隊長に目をやる。図星を突かれた彼は、「まあ、そうだな。」と曖昧に返した。

「そ、そんな理由で……」

「おう。まあ、慈緒理はその、かわいい方なんじゃないか?」

慈緒理の顔は、真っ赤になっていた。


「あ〜疲れた〜」

日向がその場に腰を下ろす。地面にはビニールシートが引かれ、軽食も置かれている。

「お疲れ様。少し休憩しようか。」

結月も座り、側にあったお菓子を日向に渡す。場所は、亜梨冴達のいた司令部より少し前、「左翼陣地」と呼ばれる場所だ。遠足気分で風に当たる2人。しかし、目の前には土嚢、周りの地面も少し掘り下げられ、景色は戦場そのものだった。

「この次が最後。マシンガン持ってきて終わりだよ。」

「やった!終わったら着替えてこよー。汗と土で汚れちゃったよ。」

「だね。その前に、作業終わったら隊長に報告しないとだけど。」

2人にくじ引きで割り当てられた任務は、機関銃での待ち伏せだ。敵の装甲は硬いがあくまで歩兵、近距離から大口径で攻撃すれば撃破可能だと言う。一旦後方に戻った彼女らは軽機関銃を2人掛かりで運んだ。

「重い〜」

「これでも、軽い方なんだってね。」

息を切らし、励まし合いながら機関銃を運ぶ。2人は更にベルト状に繋がった弾薬をマフラーのように首に巻いて運んだ。やっとの思いで運んだそれを地面に置き、日向が弾薬を地面に落とし、水を切るように両手を振った。

「重かった〜それに変な匂いがした………」

「これで……こうかな。あ、こうか。」

すっかり疲れた様子の彼女と違い、結月はテキパキと銃を設置する。二脚を広げ、動作を確認する。

「よし、設置完了。これで終わりだよ。」

「やったー!!」

日向がさっきの疲労が嘘のように飛び上がって喜んだ。


その日の夜、1日の作業を終えた彼女らは、宿で明日に備えていた。

「明日だね。」

夜の静寂の中、日向が誰にとなく言った。

「ああ、明日だ。緊張する事は無いよ。いつも通りに戦えばいい。」

3日後、2日後、明日、この短い日々を何度となく数えた。そして、ついにカウントはゼロになる。

「大丈夫よね……明日………」

慈緒理が不安そうに言った。無理もなかった。

「大丈夫だよ。しっかり寝て、ご飯食べれば、大丈夫。」

彼女を安心させようとした結月。しかし、彼女自身不安に駆られていた。だが、その不安に飲まれないように、その発言は自分に向けたものでもあった。

「んじゃ、もう寝るぜ。おやすみ。」

亜梨冴が寝返りを打ち、それから静かになった。

「おやすみ。」

それぞれ寝る前の言葉を交わし、瞼を閉じた。明日の戦いなど知らない様に、月が白く輝いていた。

ありがとうございました。完結まで行きたい。いや、完結させる。

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