決意
止まった軍用車両の周りに人だかりが出来ていた。兵士達は車から荷物を降ろして運んだり、どこかと連絡を取ったりしている。そして、大尉の口にした連合軍の加勢と敵精鋭部隊『塹壕猟兵』の接近の情報が動揺と人を集めていた。
「塹壕猟兵か。塹壕突破に優れてるってのはわかる。敵の規模とかは?」
周りに動揺が起こる中、極めて冷静に亜梨冴が尋ねる。
「現段階の情報だと規模は中隊、重歩兵と装甲車。それと蛇型のロボがいるらしい。」
「最悪だな。」
大尉から情報を聞いた彼女は素直に短く感想を零した。重歩兵とは身体に機械の装甲を付けた歩兵で大型の武器を持ち、小口径の弾丸では倒す事ができない。それを知る亜梨冴だからこそ、今言える感想はそれだけだった。
「蛇型ロボってのも気になるんだが……」
彼女は疑問を尋ねる。ただ、返答の予想はついていた。
「人よりデカイ蛇型のロボット…………としか言えないな。遠くから撮った写真でしか見た事が無いからな。予想では、硬い装甲を持ち、火器があるとすれば、口の中って所だ。」
「それで、敵はいつ頃来るんですか?」
近くで話を聞いていた日向が質問する。亜梨冴が彼女の方を見ると慈緒理と、昼寝中に起こされたばかりの様子の結月も合流していた。
「なんの都合か………3日後だ」
大尉が皮肉そうに答える。
「連合軍が先だといいんだけどな」
亜梨冴がそう言ったが、希望は薄く、ほとんど祈りに近かった。
「タイミングで戦況が変わる。つまり、兵隊さん達が来たのはここの防衛に参加する為……」
結月が顎に手を当てて言った。
「その通り。察しが良いねお嬢ちゃん。」
1人の兵士が軽い口調で答える。
「そういう訳だ。今、伝令がここの街の責任者に話を付けている。悪いが、ここに居るほぼ全員に協力してもらう事になりそうだ。」
大尉はそう言い残して大型の無線機を持った兵士の所へ向かった。
「これから、戦いになるんだよね……」
日向が、不安そうに呟いた。誰に向ける事となく、完全な独り言でもなかった。
「うん。だから……2人は逃げなよ。」
突然、結月が慈緒理と日向に向かってはっきりと言った。
「え……どうして……」
日向は彼女の言葉の真意が分からずにいた。なぜ逃げるように言ったのか。なぜ「2人」と言ったのか。それは、慈緒理も同様だった。
「そうよ。なんで逃げるの?なんで私達2人なの?」
慈緒理が日向と同じ疑問を口にする。
「亜梨冴は意地でも残るだろうから、1人置いて行く訳にはいかない。それで、戦闘に参加した事のある私が残る。危ないから、2人は逃げて」
結月は、覚悟が決まっているようだった。
「それはできないわ。友達を置いて逃げるなんて。だから…」
「ここに残って戦う。それで勝つ。そうでしょ?」
慈緒理が言い切る前に、日向が宣言する。彼女の言葉に、慈緒理が頷く。
「どうにも納得いかないけど、全員残るって訳だな」
黙って聞いていた亜梨冴やれやれと頭を掻く。
「勝手にアタシが残る事で話進んでるし、3人だけ逃がそうと思っても残るとか言い出すし。ま、それでいいってんならアタシは構わないけどね。塹壕猟兵だか知らないけど、追い返してやろうぜ」
好戦的な笑みを浮かべ、右手を前に差し出す。結月が何かに気づいたように手を重ねる。
「こういうの、漫画とかでしか見たことなかったけど」
「うん。やってみたかったのよね」
慈緒理が更に手を重ねる。
「目指せ、絶対勝利!」
最後に日向が手を重ね、彼女の声に合わせて4人が一斉に手を上に上げる。
「………まだあと3日あるんだけどね。」
「おいおい……それ言ったらダメだろ………」
結月が見事なまでに場を濁し、4人の間に笑いが起こった。
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