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Teens and Guns  作者: 夜狐
12/16

再会

結局、敵襲も異変も無くただ単に退屈な時間を過ごしただけだった。交代の人が来る頃には、退屈故の疲労感が蓄積していた。

「あーやっと終わったー。」

亜梨冴が大きく伸びをする。日向も真似するように身体を伸ばした。時刻は午後3時頃。次の当番は夜7時からだ。それまでの自由時間、亜梨冴と日向はジャンクシティの店を回る事にした。

「10分前には、戻って来るようにね。」

「おいおい……先生じゃないんだからさ……」

慈緒理の少し真面目すぎる正確に苦笑しながら、2人はどこに行くかの相談をしていた。結月は先に宿に戻って昼寝をしているらしいので、慈緒理も彼女の元へ向かおうと思った。そこで、途中に古本屋があった事を思い出して、立ち寄る事にした。

端材で出来た壁がコの字に店を囲い、ダンボールの上に本が並べてある。一応ジャンル分けされているようだが、統一感は無かった。

「こんなに売られてるなんて…」

慈緒理が感動して思わず声を出した。この生活が始まってから、好きな本を選べる機会なんてそうそう無かった。

「気に入ったのはあるかい?」

初老の店員の男が話しかけてくる。白髪の混じった優しそうな印象だ。しかし、彼の腰にはホルスターで拳銃が装着されていた。

「今の時代、本でも読んで、別の生活を想像しないと疲れちゃうよな。鉄ぐつと銃ばかりの世界だからな。」

「そうですね。でも、疲れるからというより、私は好きで読んでるんですよね。それに本は色々な役に立ちますしね。」

「だな。推理小説は悪い奴の見抜き方、冒険ドキュメンタリーは生き残りの知恵を教えてくれる。…………アレはなんだ?」

街の端の方にある静かな店内で、会話していた。しかし、男が街の中心部を向いて疑問を口にした。慈緒理もその方向を向いた。そしてその只事ではない雰囲気を感じ取った。

そこにいたのは、揃いの軍服を着た兵士達だった。トラック2台とジープ2台がジャンクシティの中心部に止められ、20人程の兵士達がその側に立っていた。慈緒理はその集団に駆け寄る1人の人物を目にした。

それは、彼らと同じ軍服を羽織りながら走る亜梨冴だった。彼女は思い出した。亜梨冴の目的を。砲撃で逸れた仲間との合流、それが彼女の目的だった。

亜梨冴は兵士達の1人、隊長と思われる男に駆け寄った。

「大尉!ただ今帰還致しました!」

背筋を伸ばし、敬礼する彼女。普段の言動からは想像がつかなかったが、いざ目の当たりにするとかなり様になっている。

「亜梨冴上等兵か。よくぞ戻った。」

大尉と握手を交わし、再開を喜ぶ。

「…………何人か顔ぶれが変わってますが………」

彼女は何かを察し、しかしそれを隠す様に隊員達の顔を見回した。

「君の後輩にあたる連中だよ。…………」

大尉は、その先を濁した。亜梨冴は彼の意図を読み取り、

「…………何人やられましたか…?」

静かに質問した。

「星野は退役、宮島は怪我で後方に。古山と加藤は…………殉死だ。」

「それは…………残念です。…………黙祷を捧げても……。」

亜梨冴は、戦友の訃報に目を伏せた。そして帽子を取り、胸の前で手を合わせる。時間にして数10秒、彼女は顔を上げた。

「もういいのかい?」

「これ以上やると泣いてしまいそうで。彼らも涙は望んでいないし、あの世で話のネタにされるのも嫌ですから。」

亜梨冴は寂しそうに笑った。

「亜梨冴!」

2人の元に日向が駆け寄る。

「亜梨冴、軍隊に戻るの……?」

彼女は、亜梨冴の軍服を掴んで、か細い声で言った。

「ああ。そうだよ。」

頷き、肯定する彼女。わかってはいた。そして、その時があっけなく来てしまった。死別する訳ではない。しかし親しくなった友人との別れは嫌だった。だが、そんな子供の様な理由で彼女を引き留める事も出来ない。日向にはただ名前を呼び、意思を確認するしか出来なかった。

「…………この子は?」

「アタシの友人です。この子の他にもあと2人いて、あの日から世話になってました。」

大尉に聞かれ、彼女はこれまでの経緯を話した。

「なるほど………。亜梨冴上等兵、君はどうしたい?」

一通り亜梨冴が説明をして、大尉が口を開いた。

「どうって………」

その質問の意味が、彼女はわからなかった。

「軍隊に戻るのか、彼女達と暮らすか。好きな方を選んでいいぞ。」

人差し指と中指を立てながら、彼女に選択肢を与えた。

「アタシは軍隊に戻ります。妹との約束ですから。」

亜梨冴は、強く、決意する様に言った。彼女自体決め兼ねていて、その迷いを断ち切るために。元はと言えば、偶然会っただけの事ではないか。少し歩く道を変えれば無かった出会いだ。それを惜しんで妹との約束を破るなどあり得ないことだ。それに、自分は戦える人間なのだ。防衛、解放、復讐、殲滅。目的は何でも良い。戦える人間が戦わずしてどうするのか。

「そうか………彼女達と残りたくはないのかい?」

「その気持ちはあります。しかし…………」

言葉の途中で大尉は後ろにいた部下に声を掛けた。その部下が駆け出し、何かを取って戻って来た。疑問符を浮かべる彼女に、大尉の部下が布袋を渡した。

「これは…………」

「退職金だ。これまでの軍務のな。換金所で交換すれば、妹さんと親を探す路銀になるだろう。」

「大尉、いいのですか?」

袋の感触を確かめる彼女。

「ああ。これまでご苦労だった。軍務に入った理由は悪く言えば金目当てだろ?これで軍務に就く理由は無くなったな。それと、最後に命令をいいかな?」

「はい。何なりと。」

亜梨冴が背筋を正す。

「これより最重要命令だ。貴官は己の友人、及び大切な人を守るのだ!なんとしてもこの命令を尊守せよ!これが、銃を持つ人間の正しき在り方だ!」

力強く声を張る大尉。そして、

「了解!!」

亜梨冴も、声を張ってそれに答えた。

「これなら、君が言っていた『戦える人間』の役割も果たせるだろう。」


形式上「退役」となった彼女だが、戦友として隊員達と暫く話をしていた。後輩の失敗談を笑ったり、自身の失敗談を出されて笑われたり、和気藹々とした時間を過ごした。するとそこに、

「諸君、良い知らせと悪い知らせがある。」

洋画のテンプレートの様なセリフを大尉が口にする。隊員達が唾を飲み、彼の言葉の続きを待つ。

「まず良い知らせだが、3日後に連合軍が到着する。」

「っ!!」

連合軍、その言葉を何度待った事か。亜梨冴の所属していた部隊は所詮武器を持った集団に過ぎなかった。軍隊というのは、ただの飾りの様な名前だった。そして連合軍とは、各国政府によって指揮される、正規の軍隊なのだ。

「それで、悪い知らせとは?」

感情を消し、亜梨冴が尋ねる。

「敵精鋭部隊、『塹壕猟兵』が接近中だ。」

その重い声、そして『塹壕猟兵』の響きが、その場にいる皆の胸に刺さった。

ありがとうございます。えっと、暇つぶしにはなりましたよね?

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