雨に打たれて。6
溢れ続ける涙は止まらなくて、大粒になって布団に染み込んでいく。
僕はその場を動けなかった。
少なくとも、その罪を背負わせてしまった僕が柚木さんの涙を拭いてあげる資格はなく、止める方法など思いつくこともなく、ただ待つしかなかった。
落ち着き始めたのはそれから三十分後のことだった。
「体調は大丈夫?」
と改めて訊くと、平気です、と小さな声で答えてくれた。
その言葉を信用していなわけではないけれど、念の為にと体温を測ってみれば平熱を浮かび上がらせた。
体調になんの問題もなかったのは良かったが、今になって完全に失念していたことを思い出す。話し合いよりも優先しなければならない大切なことがあった。
「遅くなっちゃったけど、家に連絡したほうがいい。家族の人が心配してるだろうし」
連絡を入れられない状況だったとしても、事情を知らない親御さんは何か事件に巻き込まれたんじゃないか、と考えているのかもしれない。
最悪、警察沙汰になっているのかもと。
「朝、目を覚ました時に、メールしました」
心配するまでもなく、柚木さんは僕よりもしっかりとしていた。
その後、僕は柚木さんを玄関まで送ることになった。
洗濯機に放置していた柚木さんの服は、僕が目を覚ます前に母親が用意してくれたらしく、僕が部屋に入る前に着替えを終えていた。
階段を下りる柚木さんの足取りは重そうだった。
体温に異常がなかったのはこの目で確認したが、体力はまだ元には戻っていなかったらしい。本人も自覚しているはずなのに、問題ないです、と言うように平静を装っていた。
それを見せつけられては放ってはおけなく、断る柚木さんを強引に自転車の後ろに乗せた。




