つくもの ~流行の神様転生で神様になった俺の話~
久々に書きました。
まあ今回は、4000字制限で頑張ってみました。
時刻的には、正午あたりになるのだろうか。
ジリジリと照り付けてくる、真夏の太陽が今はとても煩わしい。
なぜかと言うと、物凄く熱いのだ。
でも、今は動けない、それはそうだ。
今私は一人で動けない状態なのだから。
「はあっ… ありえないな…」
そう、小さく呟く。
別にケガをしており、動けない訳では無い。
さらに付け加えるなら、拘束されている訳でもない。
この状況を説明するには、少し前に遡る必要がある。
この語り部こと、私だが、名前は高木 幼一、
そして、30歳独身の冴えない何処にでも居そうなただのサラリーマン
だったのだ。
なぜ、過去形なのかは私の愚痴を聞いてくれれば分かる。
気が付けばどこに居るのか分からないほどの真っ白な空間に私は”居た”。
なぜこのような場所に居るのかは、前後の記憶は靄が掛かったかの様で酷く曖昧なのだ。
そして、気になるのは、目の前に不思議な光を放つ光の玉が浮いている事だ。
「気が付いたのか? 主よ」
唐突に響いて来た声に動揺し、間抜けな声で返答してしまう。
「へっ? だれ?」
周りを見回すが誰も居そうに無い。
「目の前の光の玉が我だ おぬし等で理解するならば、神と呼ばれる存在じゃ」
目の前の光の玉がセリフと合わせて点滅する。
えっ? 神様? なぜ?
「もしかして、私は… っ」
この先の言葉を私は紡げなかった、言ってしまうと自らで認めてしまう事になるからだ。
そう、私が何かしらの要因で死亡した事を自覚してしまうからだ。
まだやりたい事は沢山あったのだ、認めてやるもんか。
「色々考えておるようだが、時間が無い
完結に言う、お主には付喪神として転生してもらう」
やっぱりか… 流行の神様転生とは何というテンプレ。
ん? 神? いや、付喪神か。
「それは…」
何かを言う前に目の前の”神”に言葉を遮られた。
「これは既に決まってる事なのだ
一つだけお主にいう事がある、”力”は本当に必要になった時だけ使え」
神と言う絶対的な存在は言う事だけ言うと、私の意識はスイッチを切るように闇の中へ沈んでいった。
話は冒頭に戻る。
正直何をすれば良いのか不明だけど。
どうやら私は自転車の付喪神となったようだ。
それも新しい幼児用の補助輪の付きの可愛らしい奴。
「はあっ… ありえねえ 夢なら覚めてくれ」
すでに何度目になるか分からない溜息を吐く。
自転車なのだ、それ故に、自らで動く事は叶わないようだ。
唯一の救いだろうか、目は見るし、音は聞こえる、暑さを感じることが出来る、さらに触感まである。
だが、動く事だけが出来ないもどかしさ。
目と言うか視界だけはある程度動かせるけどね。
手が前輪周り、足が後輪周り、サドル辺りが背中、頭が前かご付近と言った感じ。
人間だと、四つん這いに近いイメージだ。
「これから、どうした物だろうか… でも、自転車だし」
やれやれ、どうしたものかと悩んでいると、
この私こと、自転車の持ち主だろう梅田家の玄関より人が出てきた様子。
30代前後の優しそうな男に、同じく、女性が出てきた。
どうやら、雰囲気を見る限り夫婦らしい。
最後に文字通り飛び出てきたのは4歳ぐらいの女の子だった。
これが彼女と私の出会いだった。
会話を聞く限り、私の持ち主は梅田 小桃と言うらしい。
それぞれ、父親は梅田 翔、母親は梅田 美沙と名前が判明した。
どうやら家族で近くの公園までピクニックに行くようだ。
わざわざこんな真夏の暑い時期に行くなんて正気の沙汰とは思えないが、これも年のせいなのだろうか?
「モモちゃん 行くわよー」
お母さんが小桃ちゃんに声を掛ける。
「待ってー 私、自転車に乗っていくーっ」
そして、私に幼女… 小桃ちゃんが小走りに寄ってくる。
どうやら、私に文字通り乗って移動するようだ。
変に緊張してしまう、下手に感覚があるので、乱暴に扱われるかもと言う恐怖があるからだ。
だが、現実は予想と反して、優しい感じの扱いでハンドルを握り、私に跨り乗ってくれる。
絵面的には問題ないはずなのに、文字にすると色々とアウトな場面ですね…。
私、実は世間様で言う、ロリコンに当たる人間なんですが、流石に小桃ちゃんは幼すぎますが、
それでも幼女と直に触れ合えるという、この奇跡に感謝です。
「よろしくねっ 自転車さんっ」
あの神様に感謝していると、可愛らしい幼女ボイスでお願いされました。
小桃ちゃんは物を大切に扱ってくれる子のようです。
「あっ 背中にお尻の感触が… んっ… くすぐったい…」
ついつい言葉を発してしまいましたが、どうやら誰にも気が付かれなかった様子です。
小桃ちゃんは漕ぐのに必死で聞こえていなかったようで安心しました。
喋る自転車なんか処分されるか、見世物にされるのがオチですから。
「うぉっ… ぉっぉっ…」
小さめのですが、変な声が漏れてしまいました。
漕がれると言う人生で初めての感覚に戸惑いました。
まるで、風に煽られ、前に無理やり前に進んでいるかのような感覚ですよ。
公園に到着したようで、小桃ちゃんは私から降りて、お母さんと一緒に遊具へ遊びに行きました。
小走りに走ったおかげか、幼女のパンチラを拝めたのはとても有り難かったです。
あのピクニックからしばらく経ちました。
家の前にある、自動車の駐車スペース脇に置かれているので雨風が辛いです。
一応、雨避けにサンルーフはあるのですが、それでも濡れますし、夏なので熱いですよ、本当に。
下手に感覚があるおかげで、肉体的に結構苦痛ですし、それに基本孤独ですし、話せないので、精神的にも辛いです。
あの、私をこの自転車にした、神様を恨みますよ、本当に。
何が付喪神ですがね?
なので、物に愛着がある年ごろと言うか、話しかかてくれる小桃ちゃんは私の天使のような存在ですよ。
「あーっ 暇だー…」
出来る事は周りの風景観察ぐらいしか出来ず、それもここ数日で飽きましたよ。
目の前の道路を通りががる人や、車の数えるのは気が変になりそうだったので早々に止めましたけど。
歌でも歌おうかなーとボンヤリと考えていると、家からお父さんと、小桃ちゃんが出てくると、私の方へやって来ました。
「小桃ー 自転車がそこそこ汚れているし、一緒に洗ってあげようか」
お父さんは、自分の車を洗うようです。
確かに泥とかで汚れてる気がするから本当にうれしい。
不快感があっても自分じゃ洗えないから。
「うんっ 自転車さんっ キレイキレイにしてあげるからね~」
「このスポンジで洗ってあげようね」
お父さんが、小桃ちゃんに泡の付いたスポンジを渡す。
「ごしー ごしー きれいになーれー♪」
ロリコンの私には天国のような状況です。
幼女が私の体を洗ってくれてるという何とも素敵な状況です。
自作のお掃除歌を歌いながら楽しそうに私を磨いてくれる小桃ちゃん。
比喩では無く、体の色々な所を幼女に洗われた私、もう、お婿に行けません。
まあ、冗談ですが。
しばらく小桃ちゃんに洗われ、新品と同じぐらい綺麗になった私。
「よしっ 綺麗になったね」
ポンポンと小桃ちゃんの頭を撫でるお父さん。
見ていてほっこりしますね。
最近ではこのスローライフぽい生活が意外に気に入りました。
まあ、元に戻りたい気持ちはありますが。
「へへへっ キレイになったら気持ちいでしょ 自転車さん」
素直に返事をする所でしたが、寸前の所で声を押しとどめ、心の中で感謝します。
洗ってくれて、ありがとうね。
言葉をちゃんと伝えれれば良いけど、それは出来なくてごめんね。
改めて心の中で謝る。
私の洗車からしばらくたったある日の事。
お母さんと一緒に小桃ちゃんは私に跨りながらお出かけです。
んっしょんしょといった感じで必死に私を漕いでお母さんを追いかける、小桃ちゃん。
お母さんも自転車に乗っているので、今日は少し遠い場所までのお出かけなのでしょうか?
交差点に差し掛かり、信号待ちをする二人。
「モモ、信号が赤だからちゃんと待ちなさいね」
「わかってるーっ」
当たり前と言った様子で頬をぷくーと膨らませる小桃ちゃん。
まさにその時でした。
強めの風が吹いたのです。
そのいたずらな風のおかげで小桃ちゃんの帽子がふわりと空を舞いました。
「あっ… 帽子が…」
小桃ちゃんはそう呟くと素早く私を降りると、帽子の元へ走って行きました。
そう、車道へ。
さらに悪戯な運命の歯車は止まりません。
ちょうど脇見運転をしていた車が小桃ちゃんに気が付かず、そのままのスピードで迫ってきました。
異変にいち早く気が付いたお母さんが叫び声を上げます。
「モモ、危ないー」
小桃ちゃんはお母さんの叫び声でハッなったようですが、既に時遅しの模様。
ここで、動かなくて、何時動んだよ!
私にも何か出来ることがあるだろっ
もう、嫌なんだ! 何も出来ない あの時、動ければと言う後悔はっ
「君を死なせてたまるものかー」
そう、自然と私は叫びつつ、小桃ちゃんを守る為、車へ。
もう既に私は一度死んだ身、死への恐怖など無いとは言えないけど、
後悔はしたくない。
母親を事故で、それも、私を庇って無くした後悔ような。
激しい衝突音と視界が激しく回転し、意識が途切れるその瞬間、車が少し逸れ、小桃ちゃんに衝突していないのを確認すると私の意識は落ちた。
次に気が付くと私は病院の安置室に居たようだ。
話によると、私は車に轢かれ、瀕死の状態でこの病院に到着したようで、到着後に息を引き取ったらしい。
医者はあり得ない”奇跡”だと言っていたが、生き返ったようだ。
しばらくの検査入院後に無事に退院出来た。
病院に居る間に考えてみたが、転生とかは全て夢だったのでは無いかと今は思っている。
家に帰ろうと思ったがなぜかあまり知らない場所へ来ていた。
嫌、知っている場所だ。
小桃ちゃんの家の近所だ。
「まさか、実在していたなんてな…」
そう思っていると、幸せそうな3人の家族が通りがかった。
子供は傷だらけでボロボロだが所々修理した後が見受けられる自転車に乗っている。
去り際にふと聞こえた。
「神様、ありがとう」
ほぼ、一日で物語の大体の形が出来ました。




