表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

8話 ピッとして鑑定


 ぐっすりがっつり寝て次の朝。

 や、朝なのか夜なのかわかんないけどね。

 ダンジョンの中じゃ空なんて見えないし。

 こんな状況なのにしっかり寝れた私は相当図太いなと自分でも思う。


 とにかく起きよう、喉も渇いたし。

 あ、そういえば昨日アズロさんにトイレの使い方はちゃんと教えといたからね!

 もしやと思って聞いといて良かったわほんと。

 残念ながら小の方の使い方は私詳しくないので、座る方を教えた。

 ここ回せば水が流してくれるからーって教えた時のアズロさんの顔はかなり面白かった。

 ……あ、水で思い出した。

 昨日、アズロさんの怪我をすっかり治しちゃった水。

 あれどういうことなんだろう。

 今日はその辺も調べたいなー。



 シアターから出てカウンター前に向かうと、そこでアズロさんが筋トレしてた。

 おお、朝からご苦労さんだなあ。

「おはようございます、アズロさん」

「ああ、おはよう」

 無愛想ながらもしっかり挨拶を返してくれた。

 汗かいてるみたいだったからタオルを引っ張り出して来て渡す。

「これ使ってください」

「すまない、ありがとう」

 拭いてる間に水を汲んで来た。

 怪我治したくらいだし、今飲んでも悪いようにはならんでしょ。

「どうぞ、水です」

「いただく…………む」


 ひとくち飲んで黙ってしまったのでそわそわしてしまう。

 わ、私も飲んだけど不味くはないよ? 不調もないよ?

「……どうかしました?」

 恐る恐る聞くと、アズロさんは険しい顔で私を見た。

「……これは、ポーションか?」

 ポーション? ポーションってあのポーション?

 はて、うちの水はそんなんじゃないただの水のはずなんだけどな。

 ……あ、でも、もしポーションだとしたら昨日のも説明ついちゃう?

「えーと、普通の水だと思うんですけど……なんか変なところありましたか?」

「いや……トレーニングの疲れが一瞬で消えたので、もしやと」

 それ確定じゃないですかね〜!?

 な、なんで店内のものこんなに変貌しちゃってんの? 怖いんだけど!

 あはーとごまかし笑いしてちょっと待っててくださいね、と言い含めてからバックヤードに飛び込んだ。

 教えて助けてグーグレ先生!


 さて、何て検索したもんかな。

 うーん「店内 変化」とでも打ってみる?

 試しにそれで検索してみると、関係ないものばかりがヒットしてしまった。

 ちょっと曖昧すぎたかな……。

 直球で「水 ポーション」とかでどうだ!

 ……んー、これもダメか、ってあら?

 上から5つ目くらいの検索結果に目が止まった。


【見た目のよく似た水とポーション、見分けるためなら鑑定!】


 ほお、鑑定ときたか。

 それが出来れば、店内の物がどうなってるか分かりやすくていいなあ。

 簡単に出来たりすんのかな? クリック。


【バーコードリーダーを用いましょう】


 バーコード……リーダー……。

 バーコードリーダーって、あれだよね、バーコード読むやつだよね。ピッてするやつ。

 …………うん、物は試しだ。


 表に戻ると、アズロさんは律儀にその場で待っていた。

 ま、待たせてごめんよ……。

「えーと、ちょっとさっきの水鑑定してみますね」

「……鑑定?」

 なんかびっくりした顔のアズロさんをよそに、もう一回水を汲んでカウンターに行く。

 バーコードリーダーはあるけど、バーコードがないわ。

 えー、適当にピッてすればいいの? えい。


 ピッ!

【上級ポーション:回復(大)、解毒効果有】


 わー上級ポーションだー! しかも解毒まで出来ちゃうんだー!


 ほんとにポーションだった……アズロさんはおかしくなかった……おかしいのはこの店だ……。

 愕然としてたらアズロさんがカウンターの向かい側に近づいてきた。

「あ、あはは、これポーションだったみたいです」

「やはりそうか……となると、昨日これで私を治療してくれたのか」

「いやあ、治療ってほどのことはしてないんですけど。私もこれがポーションだなんて知らなかったし、気にしないでください」

 今にも土下座でもしそうな勢いだったから、慌ててぶんぶん手を振る。

 しかもこれ、よく考えたらどこから引いてる水なのか分かんないしね……ダンジョンからだとしたら怖すぎる。

 それでも何とかお礼をしたいらしいアズロさんは、しばらく黙って考え込んでいたけどふと顔を上げた。

「……この店の店員は、ミドリだけなのか」

「え?えーと、そうですね」

 ほんとはもっといたんだけど、こっちに来てしまったのは私だけだ。

 何を突然と見上げると、とても真剣な顔をしたアズロさんと目が合った。

「……私は行く宛がない。ミドリさえ良ければ、ここで雇ってもらえないだろうか」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ