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6話 男前はカレーが好き


 いい加減腹減ったわーと思って冷凍庫を覗いた。

 んんーハンバーグカレーでも食べようかな。疲れたしがっつり食べたい。

 さっきの血の匂いがまだ残ってるから、カレーの匂いで打ち消してやるのだ。

 冷凍ハンバーグとレトルトカレーを沸かしっぱなしの鍋にぶち込んで、タイマーをセット。よし。

 あーてかご飯も炊かなきゃ冷凍減ってきてるなー。

 ……あ、そっか、あの男前も食べるかね。

 何食べるか聞いてからの方がいいよなーなんて思っていると、表からガシャンという音がした。

 あっこれ鎧の音では? 起きた?


 そろーっと顔を覗かせると、やっぱり男前は起きていた。

 上半身を起こしてきょろきょろしている。

 そして顔を抑えてハッとしたあと、自分の体、特に脚を見てびっくりしている。

 まあ、あんないったそうな傷が治ってたらびっくりしますよねー……。

 いつまでも覗いている訳にもいかないので、こっそり出てってカウンター越しに声をかけることにした。


「あの、大丈夫?」

「!?」

 即座に飛び退って距離を取られてしまった。

 お前を助けたの私だぞと思ったけど、うん、怪しいよね。

 一応怖がらせない、というか変に思われないように微笑んでみせた。

「水飲みたいって言ってたから、飲ませたけど、まだいる?」

「…………」

 おう、警戒されておる。うーん、どうしたもんかな。

 こんな時は自己紹介だな。

「えー、私は由乃 緑です。この店の店員です」

 というか私しかいないんだから、店員というより店長か? いやだなあ……。

 なんて思っていると、男前が口を開いた。

「……助けてくれたんだな。すまない」

 そう言って軽く頭を下げられた。

 すまないっていうのは、助けたことと態度についてだったらしく、顔を上げた時には訝しげな表情ではなくなっていた。

「私は…………アズロだ。姓は、ない」

 名前言うのにえらく言い淀んでいた。

 まだ打ち解けてはいないのかなー、まあ仕方ないかあ。

「アズロさんですね。私の名前は緑の方なので、どっちでも好きなように呼んでください」

 男前改め、アズロさんは虚をつかれたような顔をしていた。

 な、なんだよー、変な名前とか言うなよ、気に入ってんだからな。

 けどアズロさんは馬鹿にするでもなく、むしろさっきより打ち解けた空気を出していた。

「……ミドリ、と、呼ばせてもらおう」

 おう、名前で来るか。距離詰めてくるな。

 まあ嫌われるよりは断然良いわな、と頷いたところで、豪快な腹の虫が鳴いた。

 私じゃないぞ、アズロさんだぞ。

「あー、今ご飯作ってるんで、良かったら食べます?」

 気にしてないよーという感じで微笑んで尋ねたら、ちょっと顔赤くしながら頷かれた。



 アズロさんに冷凍庫見せたんだけど、どれも見たことないみたいで首傾げてたから私と同じハンバーグカレーにした。

 もしカレーダメそうなら言ってね、と伝えて渡したら恐る恐るひとくち食べて、その後がっつがつ食べてた。

 イケる口で良かったわー。

 現在私たちはこの店で1番広い部屋、シアターブースにいる。

 ソファあるし、広いし換気扇あるしちょうどいいかなあって。

 一応男の人と一緒なんで、念のためだけど扉を開けてそこの近くに座って食べてる。

 自意識過剰とか言うなよ、お互いのためなんだからさ。


「……聞きたいことがあるんだが、いいか?」

 半分くらい食べたところで、アズロさんが声をかけてきた。

 うん、来るだろうなとは思ってたよ。

 どうぞ、と促したらアズロさんはしばらく考えてこう言った。

「……ミドリは、人間か?」

 そ、そうくるかー。

 色々聞きたかったけどこんがらがって、最終的にそこに落ち着いたのかなー。

 恐る恐る、でも興味は隠さずにアズロさんがこっちを見つめてくるので苦笑する。

「人間ですよ。一般人です」

「……そうか」

「あと、この場所なんですけど」

 もうちょっと聞きたい、みたいな顔してたからこっちから説明すると、心なしか嬉しそうにしている。

 アズロさんって口下手なのかもしれない。

 

 説明するとは言ったけど、さすがに禁書があるよ! とか、レジの中にお金がいっぱいあるよ! とかは教えてない。

 慎重になりすぎて悪いってことはないからね。

 パソコンのこともあんまり詳しくは説明できないから、ダンジョンの中をそこそこ自由に行き来できるよとだけ。

 ……まあ、それでもおかしいんだけどね。

 アズロさんは驚いた顔してたけど、疑うこと無く信じてくれた。

 実際に自分がそれで助かったので疑う余地なかったみたい。


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