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1話 ハーレムに巻き込まれて

ぼーっと考えついたものなので、1話が短く、のんびり更新です。

よろしくお願いします。


「伝票お預かりいたします。……4名様合わせまして、2,120円のお支払いです」


 さっさとお金出して帰ってくれよー。

 どうせいつも通り部屋汚くして帰ってんだろ、毎回やんわり注意してんのにな。

 そんな内心を綺麗に隠して(……いるはず)笑顔で接客をしている、私の名前は「由乃(よしの) (みどり)」。

 田舎のネットカフェでアルバイトをしている24歳だ。

 そろそろこの歳でフリーターということに危機感を覚えて、今年こそ正社員として就職したいと思いつつ、なかなか重い腰が上がらない女である。

 見た目は、ちょっとつり気味の目を除けば多分普通だと思う。

 髪染めるのは面倒だから、黒いまま。切るのも同じ理由で腰まで伸ばして、大体ひとつに結んでいる。

 制服も黒とか紺色ばっかだから、全体的に地味だ。

 化粧もほとんどしてない。これもまた面倒だから。

 こんな面倒臭がりの権化みたいな私が就職とか出来るんだろうかと、自分でもちょっと疑問だ。



 さて、田舎のネットカフェで働いていると言ったけど、現在絶賛お仕事中だ。

 とは言っても、お客様はほとんどいない。

 特に今は深夜で、雨風も強い。客足なんか伸びるわけもない。

 うちは隣にカラオケがあって、そこの部屋が空くまでの時間潰しに来る人が、客のほとんどだ。

 なので、長時間利用する人も少ない。

 今私が接客している4人組が帰れば、めでたく利用人数0になる。

 ……ここ絶対そのうち潰れると思う。



 ため息を噛み殺しながら、財布からお金を取り出そうとしている男を見る。

 この4人組は割とよく来る客で、女3人に男1人。ハーレムである。

 美男美女揃いだが、生憎私は美醜に特にこだわりはないので興味はない。

 にも関わらず、男の横にべたべたくっついている女たちは私が男から伝票受け取ったり、何か聞かれて答えるたびに睨んでくる。

 ともすれば男に聞こえない大きさで舌打ちされたりもする。

 愛されてるネー。

 男はそれに気づいていないのか、興味がないのか、爽やかな笑顔でお金を差し出して来るから余計に嫌だ。

 こいつらは極力目を合わせないようにさっさと捌くに限る。



 あーあ、ほんとやだ。

 うちはセルフサービスなので、食器やらコミックやらは返却してもらうようにしてるのだけど、こいつらが返却した試しがない。

 回収しやすいようにか、テーブルの隅にまとめてグラスとか置いてあるけど、そうじゃないから!

 優しさがズレすぎてるから! 人の話聞けよ!

 返却してねって入室の時優しく言ってんのに、良いのは返事だけかよ!

 部屋の利用規約にも書いてあるのに、それも分かんないのか!

 日本語聞くのも読むのも分かんないって、お前らどこの出身だよ!



 思わず口も悪くなろうというものだ。

 一応微笑んでからお金を受け取り、顔を見ないようにおつりを渡すと、男は女3人に引っ張られたり押されたりしながら出入り口に向かって行った。

 ほんとならこの時間にはもう1人スタッフがいるのだけど、さっきも言ったように雨風が強くて、バイク通勤の同僚から「ごめん! 少し遅れます!」と連絡があったので、今は私1人だ。

 1人の時に清掃行くのだるいなあ、カウンター呼ばれると面倒なんだよなあと思いつつ、笑顔でお客様を見送っていると。


「きゃっ」

「な、なに?」

「え?」

「うわあ!」


 そんな悲鳴と同時に、4人組の足元が光り出した。

 は? と一瞬思考停止したが、よくよく見るとそれは、ファンタジーでは有名な「魔法陣」というやつに見える。

 ま、マジかよ、魔法陣かよ、モノホンかよ。

 思考が現実に追いつかず、どうでもいいことを考えてしまう。

 4人組が驚いている間に、魔法陣の光は段々強くなって彼らを包み始めた。

 これがかの有名な「異世界召喚」とかいうやつか!?

 とか思ってちょっと不謹慎だけどわくわくしながら見ていた。



 が、ここで予想外のことが起きた。

 魔法陣の光が、彼らだけでなく店内全体(・・・・)を包み込み始めたのだ。

 ま、待って、私も入ってない?

 ちょっと! 冗談じゃない!

 こういうのは他人が頑張るのを見るのが楽しいのであって、私は絶対巻き込まれたくない!

 おいハーレム組とっとと店から出ろ!

 異世界行くならお前たちだけにしてくれ、私は嫌だ行きたくないヤダーーーッ!!



 慌ててカウンターから離れようとしたが、時すでに遅し。

 白っぽく光ってた魔法陣が金色に変わった、と思った直後、私の意識は途切れてしまった。




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