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頭がズキズキと痛んだ。
涼也は自分が死んだものだと思ったが、この痛みで自分が死んだわけじゃないのだと知って、何とも悪運が強いんだと思って目を開けた。
「……。」
目を開けると見知らぬ天井が見え、ここが病院だと知る。
そして、カタリという物音がして、雪美かなと思ってそちらの方に顔を向けると、自分と同じ顔、しかし、覚えている顔よりもずっと幼い片割れがそこにいた。
「京也?」
「涼華、よかった。」
形のいい唇から漏れた言葉に「はぁ?」と言いながら涼也は怪訝な顔をする。
「涼華?」
黙り込む涼也に京也は心配そうにのぞき込む。
「もしかして、頭まだ痛い?」
「いや……。」
「そうなの?」
「ああ。」
京也は色々考えてもしかして、と言いながら言葉を紡ぐ。
「もしかして、前後の記憶がないの?」
「まあ…。」
現状が見えない涼也は京也の言葉に頷く。
「それは仕方ないね。涼華さ、階段から落ちたんだよ、しかも、三日も目を覚まさないから皆心配したんだからな。」
「えっと、悪かった。」
取り敢えず謝る涼也に京也は困ったように笑った。
「母さんたちに知らせてくるから、誰も見てないからって無茶は駄目だからね。」
「ああ……。」
心配そうにしながらも病室から出ていく京也に涼也は混乱する。
「な、何が起こっているんだ?」
夢なのか、とそう呟き頬を抓ってみるが、地味に痛かった。
そして、ふとようやく自分が来ているパジャマがやけに可愛らしい色合いである事に気づき、怪訝な顔をして。
ふっと、呼ばれた名前と、嫌な予感がして、恐る恐る下半身を見れば、なかった。
「――っ!」
声のない悲鳴を上げ、涼也は自分が女の子になった事を受け入れられないでいた。
そして、混乱の渦の真っただ中にいる涼也の横に一冊の本があるのだが、彼はその事に気づいてはいなかった。
こうして、涼也の知る歴史の一つが変わったがその事に彼、否、彼女が今の時点で気づくはずもなかった。