表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

97/195

【88話】ムアミレプ王国の怪 前編

遅れました。


 この世界には、現在の技術では解明できない『オーパーツ』が存在する。


 判別器や測定器等が代表的なそれだ。


 その『オーパーツ』は世界各地にあり『遺跡』と呼ばれる場所から少数発掘される。


 少数の理由は、固い岩盤よりも強度のある匣が原因である。


『オーパーツ』を手に入れるには、匣を時間をかけ、少しずつに削って発掘するしか方法がない。


 世界中に散らばる遺跡の中で、稀に生きた遺跡が点在する。


 生きた遺跡とは『ガーディアン』が機動している遺跡の事で、どんな攻撃も寄せ付けない無敵の防御を誇っていた。


 50年前まで男尊女卑の習慣があった、ムアミレプ王国では『ガーディアン』を素通りできる『オーパーツ』を発掘して、生きた遺跡からも『オーパーツ』が発掘出来るようになった。



 そんなある日の事。


「アンジェラ女王、申し訳ございません、もう逃げ道が……」


『ガーディアン』に襲われ、逃げ惑う女王の一団が

 遺跡の奥へ奥へと進んでいった。


 アンジェラ女王は、視察、激励のため、生きた遺跡に従者を連れて見学をしていたのだった。

 ところが、安全であるはずの視察は『通行器』の想定外な故障により、遺跡内部で突然『ガーディアン』に襲われてしまったのだ。


 護衛の半数を犠牲にして逃げ込んだ先は、行き止まりの大部屋だった。


「何故じゃ、何故こうなったのじゃ。誰か妾を助けるのじゃ」


「ははっ! この私、ネオハイムがこの命を持って御守りいたします! はぁぁっ! 肉体強化ぁ!!」


 竜神の加護を持つネオハイムが部屋の入り口で、間もなくやって来るであろう『ガーディアン』を迎え打つ準備をした。


 この時、従者の一人が叫んだ。


「アンジェラ女王! この壁に埋まっているのは『通行器』です! アンジェラ女王」


「ムース!? よく見つけました。急いで取り出しすのじゃ!」


 この中にいる大半の者は忘れていた。

 半分露出しているとはいえ『オーパーツ』を取り出すには長い時間を要する事を。


 ネオハイムがガーディアンと戦闘に入った。


 一見、互角以上の戦いをしてるネオハイムだが、決して破壊される事のないガーディアンとの戦いは、絶望的な戦いとも言える。


「ムース、未だなのですか? 急ぐのじゃ」


「はい、しかし……しかし……」


 当然のことだが『通行器』の周りは殆ど削れずにいて、ムースは半泣きになっていた。



 しばらく女王の声を聞きながら、壁に向かっていたムースだったが、偶然『通行器』が壁に埋もれたまま、作動した。


 くしくも、ネオハイムが力尽きて倒れた瞬間だった。


「ネオハイム! 誰か、ネオハイムに回復を」


「はっ、エクスヒーリング」


 従者の一人が、回復魔法を使いネオハイムをある程度回復させたが『ガーディアン』から逃げるために、既に魔法を多用したせいで、気絶してしまう。


 ネオハイムを倒した『ガーディアン』の動きが停止した事で、一部の従者が『助かった』と出口に向かって走り出す。


「ま、待てっ 」


 別の従者が引き留めようとしたが、間に合わなかった。


 部屋を出た通路では『通行器』の効果はなく、脱出を試みた者は、無惨にも殺されてしまった。


 壁に埋まったまま、発動した『通行器』の効果範囲はこの部屋の出口から数歩進んだところまでだった。



 それから、しばらく時間が経った後、ムースから絶望的な話がでた。


「申し訳ございません。この『通行器』を取り出すには最低でも、3日はかかります。そして『通行器』の魔力は持って2日……」


 ネオハイムは、HPの半分を失い、回復魔法使いは枯渇で倒れたなか、非戦闘員の多い一団は、悲鳴や泣き声が木霊(こだま)していた。



 ◇◆◇◆◇



「この辺りがアルカディア王国の国境か、しばらくこの国とは、さよならか。で、こっから先は何て国だっけ? ダナム、テスター」


 並んで馬に乗っている仲間に声をかけた。


「ランディ、もう少し勉強した方がいいんじゃないか?」


「ランディは強いから問題ない。ここは、ムアミレプ王国だ。超が付くほど稀少なアイテムが遺跡から出土するって話だ」


 そう、ダナムとテスターには、呼び方を徹底させた。


『敬語なんて使ったら、馬小屋で世話係りをやらすからな』ってね。

 男爵になったからって、僕は僕だ。


 仲の良い相手に、敬語は要らない。


「しかし、ここからは10人で護衛のするのか」


「特務隊とランディがいるから13人だけどな」


「この規模の食料を運ぶんなら、兵士200人は要るよな。なんて無茶なんだ、あの国王は」


 テスター、ダナム、僕の順番で話ながら、国境を越えていた。


 そう、ここまでは護衛が13人じゃなかったんだ。



 途中40人近い盗賊が襲ってきたんだけど、それにタイミングを合わせたかのように、グランデール伯爵率いる、傭兵軍団が約3倍の兵力で殲滅。


 盗賊達の『聞いてない!』の悲鳴が気になったけど、演習中の黒尾騎士団等と合流したりして、ずっと大所帯だった。


 だけどここからは、少人数であの大荷物を運ぶんだ。


 ちょっと緊張が走る。



 数日ほど、ムアミレプ国内を進んでいると、ほぼ正面から青い顔をした中年男性が1人、こっちにやって来た。


「おい! そこの商隊の頭はどこかっ? 大事な話がある!」


 テスターとダナムがこっちを見る。

 面倒な予感がするが、仕方ない。


「僕ですが」


 必死な男が、頭を呼んで、僕が出てきたらどんな表情をするか。


「おまえ、ふざけ…………いや、すまない。急ぎの用が有るんだ。丈夫な馬を1頭売ってくれないか?」


 僕を見て、怒ろうとしたけど、周りを確認して、瞬時に僕が代表だって理解したのだろう。

 息を切らせているのに、状況判断がいい。


「ここの馬は、売り物ではありません。可能であれば事情を話して貰えませんか? 力になれるかもしれません」



 ……

 …………



 この男から話を聞いた。


 近くの大きな街に『通行器』っていうアイテムを取りに行く途中、乗っていた馬に怪我をさせたため、走って街に移動していたらしい。


 今ごろは、恐らく死んでいるであろう女王様の遺体を、出来るだけ新鮮な状態で確保して、埋葬したいと聞いた。


 それよりも、気になったのはガーディアンだ。


 物理攻撃も魔法攻撃も効かないなんて『ガーゴイル』や『ストラム兵』を連想させる。

 ウズウズしてきた。


「ちょっと質問します。その街の方向と距離は?」


 少し考えた後、答えてくれた。

 たぶんだけと、ざっくりと計算していたんだろう。


「あの方向で、馬を使って2日かかる」

 男は指を差して教えてくれた。



「なるほど、因みに遺跡は?」


「それは、此方の方角で、馬なら半日くらいだが……」


 僕はダナムとテスターに伝言をする。


「ダナム、テスター暫くここで休憩だ、伝達が終わったら『ロシ』と『アン』を連れて来て」


『ロシ』と『アン』はたくさんいる馬の中で、特に食い意地の凄まじい馬で、僕の呪文で出した人参が大好物なんだ。


 もう1頭食い意地の凄い『サト』がいるんだけど、今回出番はない。



 僕の様子を見て、希望の光が見えたように喜ぶ。


「馬を売ってくれるのか?」


 僕は、そのまま自分で馬に乗り、手を出す。

「馬は売りません。だけど乗っていきますか?」


「いいのか? 商隊はどうするんだ?」


「他の仲間には、暫く待機と言ってあります。テスター、ダナム準備は良いかい?」


「ああ、こいつらの『おやつ』も持ったぞ」


 ダナムのは人参がたくさん入っている、大袋を見せる。


「『ロシ』『アン』頑張ってくれるか?」


『ヒヒン!』って鳴き声は、任せろと言ってるように思える。


「よし、出発!!」


 颯爽と駆け出すと、僕の後ろに乗せた人が、慌てている。


「ちがっ、ちょっと方向が違う。そっちは街じゃない。 そっちは遺跡ガブ」


 どうやら舌を噛んだみたいだ。


 さあ、不思議なモンスターに会いに出発だ。



余談『無惨な盗賊団』


とある盗賊団は、1つ依頼を受けていた。

それは『護衛のいない輸送隊から、荷馬車を3つほど、奪ってこい』だった。


斥候の情報通り、護衛の兵士は10人程度だった。


「俺たちゃ盗賊だ。人数をかき集めて奪えるだけ奪ってやろうぜ」


「でも、依頼じゃ殺すなと……」


「バカいえ、他の知らない盗賊に皆殺しされたって不思議じゃない。幸いにも誰も見ていないしな。いいか? 仲間を全員呼んでこいよ」


……

…………


「助けてくれぇ」

「うぎゃあ!」

「奇襲だあ! 」

「おい、あの旗はまさか『プリウス伯爵』!?」

「逃げろ、逃げろぉ!」


……

…………


残党

「何故だ、なぜこうなった? 」

「情報がデマカセだったんじゃ」

「そ、そんなバカな……」



「盗賊を発見、位置から確認するに、ライトグラム男爵の輸送隊を襲うと思われます」

「よし、殲滅するぞ。黒尾騎士団突撃ぃ!!」

「ふふっ、偶然を装い合流をしようと思ったが、思わぬ収穫があったな。」

「そうですね。師団長、もしかしたらアレがふるまわれるかもしれません」

「あいつらが、忘れられないと言った例の食材か」

「そうです『キチンラーメン』です。食べてみたいですね」




黒尾騎士団の中で、例のインスタント食品は、名前を若干間違えて、広まっていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ