【85話】重なる再会(准男爵→男爵)
タイトルがしっくり来ません。
素敵なタイトル募集中です。
准男爵から、男爵に爵位が上がり、給料も上がった。
しかも、時間の空いてる時は、特務隊と王宮騎士団に交互に出入りしているから、臨時収入もバカに出来ない額を貰っている。
男爵は国から支給される従者を、4名まで預かることが出来る。
准男爵は2名で、ロイエンとクラリスを雇っていたのだが、従者を2名追加するため、第2王子に呼ばれていた。
「王子としての、久しぶりの仕事は雑用だったが、頑張ったぞ」
「ありがとうございます。サンジェルマン王子」
(ただ、名簿を持って来るだけだろう?)
「本当は、オヤジがやりたかったんだけど、立場上、叶わなくてな……そこで俺の出番だ」
「ご苦労様です。サンジェルマン王子」
(あんたも、立場上よろしくないだろ? 王子様だよな? もっと下の人物を用意しろよ)
「で、これが名簿だ。読んで従者を決めたら、燃やせよ」
「はい…………ん! こ、これは」
名簿には、8人の名前と基本職が書かれていたんだけど知った名前が2つもあった。
『シープレス……事務職』
『ダナム・マツヤ……准騎士』
『准騎士』ってのは、所謂『見習い騎士』って意味だ。
他の国では分からないが、この国ではそうなっている。
ここで王子の『頑張ったぞ』の意味が解った。
改めて自分の待遇が、手厚くされてると実感してしまった。
「王子、ありがとうございます。この2人にします」
「まあ、読み通りなんだが、1人は手続き上、少しだけ時間がかかる。もう1人は明日か明後日にはランディの邸宅に着くだろう」
「本当に、ありがとうございます。お礼は『ダークスピア』の時にでも」
「ん? ああ、そうか。期待して待ってるぞ」
◇◆◇◆◇
翌日、新人王宮騎士たちが『地獄』と呼ばれる長い研修を終えて、本隊と合流した。
心身共に鍛えられている『王宮騎士』だが、新人でかつ若い者は、どうしても増長してしまう?
今回、僕が新人王宮騎士の指導員になって『増長』の期間を短くしようって、話しになった。
新人王宮騎士って言っても、年齢は若くても17歳以上だから、そんな中で、年齢より成長してるとは言っても、13歳の僕が偉そうにやって来たらどうなるんだろう。
なんか、楽しみだ。
……
…………
「と、言うわけで、君達の指導をする、戦闘面での指導をする、ランディ・ライトグラムだ」
「……」
「!!」
「!?」
驚きすぎて言葉にならないみたいだ。
「ら、ランディ!? ランディじゃないかっ!」
ん? 僕を呼ぶその声は?
見ると、八武祭の時に戦った中で、一番強かったあの『テスター・バスター』がいた。
あれ? テスターって今16歳じゃなかったか?
計算間違えた?
「えっとテスター? 何でこんなところに?」
「それは、俺のセリフだ。去年の八武祭に参加してなかったから、心配したんだぞ! そしたら貴族の真似事か? 腕がなまってたら承知しないぞ!」
ああ、懐かしいな。
身体も一回り大きくなって、モンスターパワーに拍車がかかってそうだ。
「じゃあ、テスター、戦ってみる?」
指導員の特権を生かして、テスターとバトルしてみよう。
その時。
「ちょっと待った! 指導員さんよぉ、テスター君にずいぶんと馴れ馴れしくして、問題あるだろ!」
「モデムーラさん、俺は構わないです」
「テスター君は、もっと威張って良いんですよ? 何せあの『地獄の研修』をたった数ヶ月で修了させて、この私を負かした天才なんですから」
うん『モデムん』のお陰で、理解できた。
テスターは、1年半以上も費やすはずの研修を、あっさりと終わらせたんだな。
「指導員さんよぉ、テスター君はさ、最年少で王宮騎士になったにもかかわらず、この中で一番強い。私の予想だと『十傑』になるまで10年かからないだろう。そんなテスター君に、顔見知りだからって気安く呼び捨てとか、おかしいだろ? しかも『戦う』だなんて、10年早いよ?」
う~ん、王宮騎士ってバカでもなれるのかな?
話の流れで、テスターと戦えるレベルなのは、解るはずだよね?
それに、王宮騎士の指導員が弱いわけないだろ。
きっと、脳筋タイプなんだ。
「きっと、何処かの伯爵の坊っちゃんだろうが、この伝統ある『ロイヤルフォート』で、爵位なんかは意味がない」
えっとぉ、 情報によると新人王宮騎士たちは、初めてこの中に入るって聞いていたんですが『ロイヤルフォート』を語っていいんですかね。
「よし、君みたいに自分の立場が解ってない人がいると、この先困るよね? 私と戦って、君がどんな立場にいるか教えてあげよう」
うわぁ、僕のセリフを完全に取られましたよ。
で、このモデムんと戦うはめになった。
今回は素手同士の戦いになった。
準備中、僕を警戒してた新人王宮騎士の1人を捕まえて『地獄の研修』を聞いてみたら、けっこうハードな中身だった。
ならば、研修を終えたモデムんは強いのだろう。
安心して戦える。
「さあ、3分で力の違いを解らせてあげよう」
モデムんは、力いっぱいな感じで殴ってきた。
まあ、かなり威力があると予想した。
その拳を半身をずらして、避けながら腕を掴んで背負い投げをする。
ドンッ!
「かはっ」
下に叩きつけるように投げたから、良い音がした。
「しまった、油断した。次は本気で行く! はぁぁぁ!!」
モデムんは力いっぱいな感じで殴ってきた。
肉体強化を使ってさらに威力があると予想した。
その拳を半身をずらして、避けながら腕を掴んで背負い投げをする。
ドンッ!
今度は、床に激突した瞬間に、思いきり体を蹴り飛ばす。
「ゴベラッ!」
モデムんは意識を手離した。
あっしまった、思った以上に良いポイントに蹴りが入った。
まだ、遊び足りないな……あっ、そうだ。
僕はモデムんを優しくおこす。
「はっ、私はいったい……」
「モデムんさん、ありがとうございます。最初は僕に花を持たせてくれたんですね」
「え? あ、あぁ」
「それでは、3本勝負の2戦目をしましょう」
「え? 3本? あっ、た、たんま、ぐきゃぁぁぁ」
……
…………
「モデムんさん、おきてください。さあ、9本勝負の5戦目です。モデムんさんがその気になれば楽勝ですよね。バトルスタート!」
「待った、待って、待ってくだ」
「モデムんさん、冗談がうまいですね、はい! はいっ、はいっ!」
「バブ! ゴブッ ヒデブッ! いやぁぁぁ……」
………………
「モデムんさん、寝たふりはやめてください。さあ、21本勝負の11戦目です。モデムんさんが本気を出せば逆転できますよ。ファイッ(ファイト)!!」
「ま、参った、降参だ」
「そら耳ですかね? 『地獄の研修』から生還した人の吐く言葉じゃないですよっ」
「ぐぼっ、ぎゃぁぁぁぁ………………『地獄の研修』に帰りたいっ!」
このまま暫く、20本先取するまで戦闘を続けた。
「え、えげつねえ」
「ひ、酷い」
「ランディ、やり過ぎなんだが、スカッとするのは気のせいか?」
「モデムーラさんは、強いんだけど空気とか読めませんから」
こうして僕は、指導員として、みんなに認めて貰う事が出来た。
家に到着すると、庭先でロイエンとダナムが戦っていた。
何で?
『殺しあい』ではなさそうだから、見学する事にした。
結果はロイエンの辛勝だった。
今のダナムはパワーもテクニックも中々の物だったが、経験が足りなかった。
そんな感じの戦いだった。
「ダナム、久しぶりだな。 エクスヒーリング。大丈夫か? ずいぶんと強くなってるなぁ」
「ランディ……ふんっ、この程度でお前に近づいたとは思ってない。ランディの親父にも負けたしな」
「ところで、なんで戦いになったの? みんなバトルマニアなの? ヒーリング。父さんもオッケーね」
ダナムと話すついでに、ロイエンにも回復魔法を使う。
「うう、我が子よ。そこの新人従者が『エクスヒーリング』で、俺がただの『ヒーリング』なんて……しくしく」
ロイエンが、思ったより面倒くさかった。
ダナムと、ご飯を食べながら話す事にした。
色々聞きたいからな。
「ダナム、何で『ウエストコート』から『中央』に?」
一部を除いて、高等学院の卒業生は、其々の『領内』の騎士になるのが通例だ。
ましてや、ダナムはエリートコースだったはず。
卒業すれば、見習い期間無しで騎士になれた筈なんだが。
「ああ、ちょっとな、家と喧嘩した」
「家と? マツヤ准男爵家と?」
すると、ダナムは頭を下げた。
「ランディすまん!」
どうやらダナムは、ロイエンを疎外させた原因が自分の父親だと知ってしまった様だ。
しかし、力が全てのダナムが、それで家を出るなんてあるのだろうか。
「今の親父は、男爵になってる。ランディの親父を追放した件が納得いかなくて、親父を擁護するやつらと喧嘩したんだ。結局兄貴達に止められて、ボコボコになったけどな」
力で負けたんなら、マツヤ家に付くだろう?
話がまだ見えてこない。
「喧嘩してわかったんだが、1対1で戦えば、親父や兄貴達よりも、俺の方が強いって解ったんだ。それで中央に就職して、現地に派遣されてみたら、ランディの親父が居るじゃないか。試しに戦ってみたら、負けてしまった。ランディの親父は強いな。俺の考えは間違っていなかった。間違っているのは俺の親父だった」
あのぅ、考え方が間違ってませんか?
強さで、善悪きめてませんか?
でも、ロイエンを陥れた事に『納得いかない』って言葉が出た事を評価しよう。
うん、ダナムは成長している。
成長しているよね?
「俺の親父に、報復するなら構わないぞ、なんなら手引きくらいするからな」
「残念だけど、今はやり返さないよ」
そう、今はね……
その後は、執事のシープレスが来て、ウエストコート公爵と再会して、たくさんの出会いがあった。
そんなある日、ロベルト王子の家庭教師終了後、王様に呼ばれて、特務隊が出入りしている部屋に出向いた。
「ランディ・ライトグラムです!」
「よし、入れ」
あれ?
この声は『ダークソード』のアルテリオンか?
部屋に入ると、『ダークナイフ』のガルサンダーと『ダークスピア』のサンジェルマン王子もいて、特務隊の幹部が3人もいた。
だけど、雷撃のガルとアルテリオンは退室してしまった。
気配は残ってるから、声を大にして呼べば聞こえる位置にいるのだろう。
王様の前に行くと、いきなり頭を下げてきた。
「すまない、ランディにはこの国から出ていって貰う事になった。 本当にすまない」
ウエストコート公爵「再会メンバーの中で私だけ、おざなりなんだが?」
テスター「内政編トップを1人締めしてなにを言ってるんですか」
ダナム「そうだ、そうだ!」
レジーナ&エリザ「私の出番は? 私、ヒロインなのに」




