【8話】ランディ覚醒
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ラン…………ランデ………………ヴェル・ランデイヤ……やっと見つけました……不思議な世界に囚われているのですね……
さあ、目覚めなさい……貴方は永い時を在る、私の中でも、たった三人しかいない最高位のクレリック
なのですから……
さあ、目覚めなさい…………目覚めなさい……愛しい信徒よ…………貴方に大いなる祝福を………………
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僕はなんでこんな大事な事に気づかなかったんだ…………僕はこの五年間、巻き添え召還されていない!
転生のせいだと言えばそれまでだが、カーズやガル達は?
すでに別の異世界に飛んでいる可能性が高いよな…………
もし別世界に飛ばれていたら、それこそ絶望的じゃないか……
あっ言い忘れていたけど、僕と仲間は『自由の暗黒女神カレアス』の力を少しだけ貰っているんだ。
その副作用で、同じ世界に何年も居られない体質になってしまった。
なら、カーズやガルはもう…………
絶望の闇に囚われた僕の前に、文字が浮かんできた。
「あ…………あ…………こ……れ……は…………」
僕は驚きと歓喜のあまり、声がうまく出せなかった。
前世のクレリック呪文の選択画面が、僕の前に浮かんでいたからだ。
僕は、空間に浮かんでいる文字を見る。
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第1レベル呪文 ー32回
ライトヒール※≡軽傷を治す(要接触)
ブレス(祝福)≡攻防命中率5%上昇
クリエイトウォーター≡LV×10㍑の水を作り出す
コーズフィアー※≡触れた人に恐怖を与える
リカバー(修復)≡LV×5㎏の壊れた物を修復
ホーリーウォーター≡LV×5㍑の聖水を作る
ライト※≡24時間灯りを灯す
マジックストーン≡LV×0.5個
レベルサーチ≡5段階で強さを計る
ピュリファイフード&ウォーター≡食料、水を清める
※……リバース呪文可
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うん……まだ第1レベル呪文だけだが、復活の兆しが出て来た。
しかも、32回も使える。
これは転生前の使用回数と一緒だ。
ここで、僕の前世の事を、少しだけ説明しようか。
僕の前世の名前は『ヴェル・ランデイヤ』日本と一緒で『ヴェル』が家名で『ランデイヤ』が名前だ。
自他ともに認める最高位のクレリックで、仲間の、トレジャーハンターの『ガル』、マジックユーザーの『カーズ』、ファイターの『アーサー』とパーティを組み、永遠の命まで手にしたんだ。
しかし、体を若く保っても精神が老いるのは止められなかった。
その対策に百年に一度、相性の完璧に合致する生物と融合する事で、心も若く保つ事に成功したんだ。
た・だ・し、今回の融合で、日本人の僕が選ばれ融合したんだけど、何故か融合のベースが僕になってしまった。
でも、仲間はベースが変わっても気にしなかった……いや嘘をつきました。
仲間はある一点を、かなり気にしていたっけ。
アーサー「イリオモテヤマネコのソテーは?」
カーズ「朱鷺の唐揚げは?」
ガル「オオサンショウウオのムニエルは?」
どうやら、僕の第5レベル呪文『クリエイトフードフリー』で、過去に食べた食事を再現出来るから、その料理が、再現出来るか心配だったらしい……
そんなの食べたら、動物愛護団体に捕まるわっ!
融合前の僕は何を食べてたの?
再現出来ないと言ったら、3人はしばらく、塩揉みした青菜みたいにしょんぼりしていた。
まったくもう…………おっと話が逸れたね。
そんな訳で、新たなランディとなった僕は、旅先で色々な女性を助けて仲間にしていたんだ。
そして、この世界の神様の怒りに触れて、転生させられて、今に至ります。
僕らは、呪文の取得と詠唱の短縮化のために、『空間タブレット方式』と言う方法を使っている。
視界の左端に浮かんでる文字をクリックするだけで、呪文の選択が出来るんだ。
今すぐ、便利に使える呪文は少ないが、満遍なく3回覚えておこう…………ん? 呪文の選択画面に備考欄が有るぞ……クリック、クリック。
『今のあなたに、生前のランデイヤの力が徐々に上乗せされていきます。現在は5%の上乗せ、年を重ねる毎に、10%・15%・20%・25%・30%・40%・50%・60%・70%・80%・90%・100%になるでしょう』
まじで? それなら僕は回復魔法と回復呪文を使えるミラクルクレリックじゃないか……。
それに前世の力を上乗せって……僕はひぃふうみぃ…………17歳には人間2人分のパワーを手にするのか……それでもアーサーには遠く及ばないが、以前より強くなって復活出来るぞっ。
それに、説明文付きだなんて、便利過ぎだよ空間タブレット!
力が上乗せなら、今の修行は無駄にならない。
今僕が考えられる事は、カーズに何か予測不能な事態が起きたかもしれない事。
それを踏まえて、一番楽観的な場合は、カーズが自分達を封印して僕に探させる場合……それなら第7レベル呪文の『人物捜索LVⅡ』を使えば見つかる。
カーズが別世界に囚われているなら、第9レベル呪文を覚えて探すまでだ。
今の僕じゃ気の遠くなる年月に感じるが、待っててね、みんな。
この時、僕の胸がチクリとした。
ん? 今胸が痛んだよな…………ふむ……何ともないか……気のせいだったかな。
うん、この悩みは今考えても解決しない……とりあえず、第7レベル呪文を使えるようになるまで、考えない事にしよう……封印……封印っと……よし!
ようし、これから毎日訓練を頑張れるぞ。
やっぱり僕の回復呪文はいい。
この世界の回復魔法と違って、瞬時に回復できる。
しかも、リバース呪文を使うことで、ダメージを与えることが出来る。
第1レベルで、リバース可能な呪文は3つ……
ライトヒールがライトダメージ、接触した相手に軽いダメージを与える。
コーズフィアーがリムーブフィアー、対象の恐怖を取り除く。
ライトがダークネス、場所又は対象に暗闇を作り出す。
非常に便利なんだぜっ!
……これは、後で解ったんだけど、僕をボッコボコにしやかったガキンチョは、マツヤ准男爵の三男でダナム・マツヤだ。
しかも地位以上の庇護を受けている様だ。
結果、僕とダナムの喧嘩は、少々問題になったが、子供同士の喧嘩と言うことで、ロイエンが詫びを入れてお咎めなし、って話しになった。
悪いのどう見てもアイツだよ? しかも後半僕は殴られっぱなしだったし……おかしくね?
理由はアイツがギフト持ちで将来有望だからって話だ……なんでも上位の貴族にコネを持ってるらしい……マジでムカつくわ。
いつかきっと仕返ししてやる。
こう見えても僕って根に持つタイプなんだよね……
僕が前世を通り越して、日本人だった頃……
ファミレスで、僕がトイレに行ったスキに、一切れ残っていたステーキを勝手に下げやがって……
今でも覚えているぞ! スズキタロウ!
と、これくらい根に持つ男なのだ。
そう言えば、ただでさえ僕になついていたアリサだったが、あの一件で、更になついてしまった。
う~んまいった。
それ以降、うちの家はマツヤ准男爵家と絡む事は無かった……そう表面上では……
僕は6歳になった。
※ランディ 6歳
※ギフト 暗黒女神の愛
※魔法の種別 回復系
※使用可能魔法『ヒーリング』『エクスヒーリング』『グランヒーリング』『アルテミットヒーリング』
※魔力総量 2801
※クレリック呪文 第1レベル 35回
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「………………プリウス伯爵………………です。………………はい、……………………どうでしょうか?」
「解った……しかし、目立った行動は出来ない…………次にダーナス家が大きな借金をした時、その手を打つとしよう……」
「それで充分です。何せ、あやつは馬鹿ですからな……近い内に墓穴を掘るでしょう」
「うむ、でな……今夜は二人用意したんだが…………がんばれるか?」
「はい、プリウス伯爵……お任せください」
プリウス伯爵は、タイム・マツヤ准男爵が四人中3人もギフト持ちを産んだ事に目を付け、奴隷を使い実験をしようとしていた。
その見返りとして、タイム・マツヤの『ロイエンルーガ・ダーナス』を陥れる手筈を整えたのだった。
補足事項、ランディはこの世界の住人ではありません。