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【74話】再会

学園編最後です。

 僕とセナリースは、両親に会うため、馬に乗りひたすら進み続けた。


 森を抜けると、赤い土と小さな岩が点在した荒野だった。


「こんな、荒れ地に人がすめるの?」


 クラリスどころか、ロイエンも無事か不安になってきた。


「ああ、2日も進むと、ここよりましな場所に着く。水場はあるから、予定通り開墾が出来れば、5年で小さな村が出来るってよ」



 胸がざわつく。

 今までも、クラリスの事が心配だったが、今の比ではない。

 もしかしたら、今までは小説を読んで『ああ、この人どうなるんだろう、心配だな』程度だったのかもしれない。


 それほどここは終わりかけた世界を連想させた。


「お馬さん、もう少しだけ頑張ってくれ」


 僕は馬を優しく撫でた。


 ……

 …………


 ついにロイエンの住む、集落についた。

 今、集落って単語を使ったが、家は全くと言っていいほど集まっていない。

 肉眼で三軒見えるだけだ。


 それに、人もたった1人しか見かけなかった。

 しかも、その1人は『嫁さんに捨てられた素格闘家』って表現が似合うような人生を諦めた感じの人だった。


 見かけた家って言うより、小屋だな。

 その小屋に到着して、馬から降りると丁度、出入口から、懐かしい男の姿が見えた。


 あっロイエンだ、3年と何ヶ月ぶりになるかな。

 ロイエンも、苦労が滲み出たようにやつれている。


 そのロイエンが、僕に気づく。


「あ……ラ、ランディか。 何年ぶりだ? 大きくなったな」


「父さん、ただいま」


 僕は、自然にロイエンと抱き合った。


「予定より早まったけど、強くなって帰って来たよ」


「ん、いってる意味がイマイチ解らんのだが。 いや……それより、すまない」


 ロイエンが僕に頭を下げて謝った。


「どうしたんですか? 父さん」


「ランディが頑張っているのに、父さんはクラ……母さんを守れなかった。 本当にすまない」



 ちょっと、クラリスは生きてるの?

 まだ、もう少しは持つって話じゃないの?


「えっ? 母さんは、もう……し、死んだの?」


「いや、まだ生きてるが、数日も持たないかも知れない。 昨日から食事すらとれないくらい弱って……」


 なんだ、良かった間に合った。

「父さん、安心して下さいそのために僕が来たんですから」


「ランディよ、クラリスの病気は回復魔法じゃ治らないんだよ」


 ロイエンは、僕をなだめるように扱う。


 気持ちは解る。

 お母さんの病気のために頑張って、薬を買って飲ませたら、全く効きませんでした。

 って、想像すると子供から泣くほど落ち込むだろう。


 だけど、僕が来たからにはシリアス展開なんて、させませんよ。


「とにかく、母さんに会わせて下さい」



 家の中に入ると、すぐにクラリスが見えた。


 ズキン!

 胸が痛くなるほどクラリスは痩せて、衰弱していた。


 過労と、栄養失調、精神的ストレスで、何らかの病気も併発してるかも知れない。


「母さん、ただいま………………まだ喋らないでいいよ。ゆっくり休んでて、いま楽にしてあげるから」


 僕を見たクラリスが、何かを話そうと口を開いたが、声にならなかった。



「第4レベル呪文……シリアスキュア。第1レベル呪文……ライトヒール」


 冷静になって考えると『シリアスキュア』はやり過ぎだった。

 あれは、通常の病気では治らない、マヒ、石化や魔法の病気を治す呪文だからね。


 クラリスがムクッと起き上がる。


「ぎゃああっ!」

「うおおっ!?」


 クラリスが起き上がった事に、変な声をあげる2人。


「えっ? なんで? 体が軽いし、力が入る?」


 僕のヒール系の呪文は怪我を治すのだけど、余剰分は体力の回復をする。

 まあ、身体の基礎ができていないと、一時的なものだけど、今がチャンスだな。


「今だ、第2レベル呪文……クリエイトフード! 第3レベル呪文……クリエイトアイテム!」


 3人の視線を気にせず、食料と大瓶を出す。


「第1レベル呪文……クリエイトウォーター!」

 今回の水分は、炭酸がほとんど抜けたコーラ。


 冷静に考えたら、砂糖水で良かったんだけど、僕にだって失敗はある。


 クラリスに早く治って欲しくて、調子に乗りました。


「ランディ、なんなんだ? その聞いたこともない魔法は」


「学校での修行の成果です(大嘘)。それよりお母さんに、食事を食べさせましょう。病気は完全に治しましたが、体力は一時的です。 元気な今のうちに早く!」


 ……

 …………

 今度は、僕とロイエンが調子に乗りすぎて、クラリスが倒れている。

 原因は満腹だ。


「ボンと旦那がバカなせいで、クラリスはまた寝てるな」


 ぐうの音もでま……

「ぐぅ」


 ロイエンの口から出たよ。


「ぷぷっ、あなた、お腹がパンパンなのに笑わせないで、アハハッ……あっ」


 急にクラリスがかたまった。


「ランディに『お帰り』を、言ってなかったわ。ランディお帰りなさい。 それと、いつまでここにいられるの? 長く休んでると、学校の授業について行けなくなるわよ?」


 そうだ、ロイエンとクラリスにも、退学したって事を説明をしないとね。


 ……

 …………


 高等学院で大活躍してきた事、その学院を退学した事、メッサー侯爵を怒らせた事。

 もしかすると、メッサー侯爵が報復攻撃をしてくる可能性がある事。


 正直に話したら、ロイエンとクラリスが落ち込んでしまった。


 気にしなくていいのに 。



「……と言うわけで、堂々と逃げましょう」


 あきれる、ロイエン、クラリス、セナリース。


「なぁランディ、逃げると言っても、行くとこなんか無いんだぞ?」


「そうよ、ランディ。世の中、簡単に逃げるっていっても色々、必要な物が要るのよ」


「はっはっはっ、いくら名門の教育機関でも、そんなことは教えてくれなかったか」



 どのみち、子供達を放置してるし、だメッサー侯爵も、どう動くか分からない。


 こんな所に長居するのは危険だ。


「父さん、母さん、セナリース。そうは、言ってもここは危険になるかも知れません。 一応、お金もそこそこあるから、旅行気分で出掛けましょう。もう僕がすごいのは、解りましたよね?」



「そうね、確かに私も元気になったわ」


「高等学院ってすげー場所だな、あんな未知の魔法があったとは」


「それに、オレなんか相手にならないほど強くなってるしな」


「えっ? それ、ホントか? じゃあ俺も相手にならないのか。 まだ12歳だぞ?」


「あなた、落ち込んでないで、ランディのために出発の準備をしましょ」


「クラリス、もう動いて……病み上がりだろ? 横になっていなさい」


「あらあなた、大丈夫ですよ。こんなに元気なのは何時以来かしら」


 はしゃぐクラリス。


「母さん、実は本当に回復するのは、明日からなんです。だから今夜は、たくさん寝て下さい。明日になって筋肉痛が出れば、回復完了です」


「そうだ、ランディの言う通りだクラリス」


「父さんも、休んで下さい。 かなり(やつ)れていますから、ガッツリ寝て下さい」


 ロイエンだって痩せてるし、目の下にある隈がすごいんだから、とっとと寝ろ。


「ボン、オレはどうする?」


「セナリースは、僕に教えて欲しいことがあるんで、お願いね。 その後は、明日のために休んで貰います」



 ……

 …………

 みんなを休ませて、誰もいない夜空を見上げる。



 本当は、高等学院を卒業してから、じっくり金持ちになって、ゆっくりと過ごすはずだったんだけど、そうも言ってられないな。


 だメッサー侯爵が、僕の知るダメ貴族と同類なら、ここから移動するだけじゃ安心出来ない。


 僕はもうちょっとだけ、頑張る事にした。


 しょうがないなあ……気合い入れるか。


「このランデイヤ……いや、ランディ・ダーナス。次は商売で遊んでやるぞぉぉ!!」



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ランディには、前世から継承している弱点がいくつかある。


 その一つに、ランディに好意をよせる気配には、鈍感であるといった、欠点があった。


 そして、ランディが空に向かって叫んだ台詞を『ランディに好意を持っている』誰かが聞いたとしても、ランディは気づかないだろう。



次回閑話がはいりますが、2話を予定しています。

理不尽な戦いが、あるので苦手な方は飛ばして下さい。


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