表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/195

【7話】ランディ喧嘩で負ける

 ランディは広大な農地が、存在する『メルック領』の『ルカツ村』で生まれた。


 そのルカツ村を『フォルトン子爵』が統治し、四分割した農地を『パラシュ准男爵』『マツヤ准男爵』 『ラーマ准男爵』 そして、ランディの父親『ダーナス准男爵』が管理している。


 そのうちの一家、マツヤ准男爵家は、現在嬉しい悲鳴を上げていた。


 マツヤ准男爵の当主『タイム・マツヤ』は、四人の子宝に恵まれた。


 上から十歳・九歳・七歳・六歳、何れも男子で、『嬉しい悲鳴』とはその子供たちの潜在能力にあった。


 子供たちの内、なんと長男・三男・四男の三人がギフト持ちだった。

 ギフトを持たない次男は、攻撃魔法と肉体強化魔法をもつ『ハイブリット種』で、僅か六歳にして攻撃魔法を発現させているほどの天才だった。


 その事により、四人とも全てが、王国の誇る『高等学院』に推薦入学が内定する事になった。


『嬉しい悲鳴』の『悲鳴』とは、四人の子供達の素質が有りすぎて、将来は都市又は王都勤めになるだろう……なので、地主と大して変わらない『准男爵』を継ぐ子が、いない事だった。



 △▲△▲△▲△▲△▲



 ある日、タイム・マツヤの三男、ダナム・マツヤ(七歳)は、従者を振り切って、独りで村の中を歩いていた。


 彼は『龍神の加護』を持っている『ギフト持ち』だった。

 その『龍神の加護』正体は『筋力二倍』と言った能力で、さらに彼は肉体強化魔法の素質を持ち、既に一段階目の肉体強化魔法が使えるのだった。


 数値に例えて言うなら、ダナムと同世代の子供の筋力を10から20とするならば、ダナムの筋力は27の二倍で54、さらに一段階目の肉体強化魔法と併用すれば、69まで跳ね上がる事になる。


 その力は、一般の成人男性と変わらないレベルであった。


 そんな力を有したダナムは、甘やかされて育ってしまった。

 家庭教師でさえ、ダナムには『様』の敬称を付けて呼んでいるのだ。


 ダナムは増長した……そして、色々な我が儘がまかり通ってしまう……だが、そんなダナムにも叶えられない望みもある。


 その一つが、外への独り歩きだった。

 ダナムには、何処へ行くにも最低一人のお伴が付いた。

 そんな毎日に嫌気が差したある日、ダナムはお伴を振り切って、独りになる事に成功した。


 こうして、ダナムのルカツ村の散策が始まった。


 ダナムは独りを満喫していた。

 その歩みは自然と速くなり、ダーナス准男爵家の管理する農地まで来ていた。


 ダーナスは、そこで見かけた子供の集団に、興味を持った。


 △▲△▲△▲△▲△▲


 ダナム視点


 十歳くらいの年長の男が、四歳から七歳くらいのガキ供をしきって威張ってやがる……

 俺様は、あの男が何故か気に入らない……理由は実力も無さそうなのに威張ってるやつが気に入らんからだ……


 少し、弄ってやるか……俺様は集団に向かってあるいた。


「おい! その程度で何威張ってんの? バカじゃないのか?」


 すると、生意気な男は言い返してきた。

「なんだ、お前は? お前なんて呼んでねぇよっ!あっち行けよ!」

 そうして、俺様を押そうとした。


 こいつ……俺様に向かって『お前』とか言ってやがる……家族以外は俺様のことを『ダナム様』って呼ぶのにこいつは……本気でムカついたぞ。


 俺様を押そうとした手を掴んで引っ張り、足を軽く蹴った。


 すると、男は盛大に転んだ。


 こいつ、弱えぇ……ん? そう言えばみんな俺様が特別だって言っていたな……じゃぁ、あれで普通なのか。


 転んだ男は、怒りを顕にして、怒鳴る。

「ガキだと思って手加減してやったのに……本気出すぞっ」


 ガキにガキ扱いされた……マジでムカつく……

「俺のことはダナム様って呼べ……」


 そうして、手加減しながら一方的になぶってやった。

 気がつくと、鼻と口から血を出して泣いてやがる……泣く暇が有ったら謝れよな……


 すると、今度は五歳くらいの女のガキが、生意気な口を言いやがった。

「何だお前は……」


「私はアリサ、お兄ちゃんはやりすぎだよ? もっと手加減出来ないの? 」


 こいつも生意気だな……ちゃんと手加減してやったぞ……こいつはちょっと脅かすだけにしてやろう。


「お前も、生意気だ」

 俺様は、女の頭を掴んで、力を入れた。


「うっ、ああああ……」


 こいつ、泣かないな……手加減しすぎたか?

 もう少し力を入れるか……ギリギリッ……


「あ"あ"あ"あ"あ"っ……」

アリサは痛すぎて、泣く事さえ出来ないでいた。


バシッ!

「痛っ」

 突然、俺様は誰かに殴られた。

 今のは本気でムカついたぞ!

「誰だっ!」


 すると、痛めつけても、泣かなかった女のガキが、泣き出した。

「ランディ……ぐすっ……うえっ、うわぁぁぁぁぁん!!」

 やっと泣いたか……この男も泣かせてやる!


「アリサに謝れ……」

 こいつ、年下の癖に生意気過ぎるぞ!

 この俺様を殴っておいて『謝れ』とか意味が解らない。

 こいつには手加減はいらないな。


 俺様は、思いきりランディと言うガキを殴った。


 しかし、俺様は空振りして、代わりにランディって言うガキに、顔を殴られた。


 五歳の頃から、家庭教師と訓練してる俺様が?!

 何度も何度も殴るが、その度に殴り返される。


 もう、こいつはどうなってもいいや……俺様は、肉体強化魔法を使った。


 速さと力が上がった俺様は。攻撃を当てやすくなった。


 やっと俺様の攻撃が、当たりくそガキが吹き飛んだ。

 まぁ、本気を出してるからな……



 しかし、くそガキはムクリと起き上がり、『アリサに謝れ……』と言ってきた。


 それからは、何度も何度もくそガキを殴った、本気で殴っているのに、あいつは何で起き上がれるんだ?


 気がついたら、たくさんの大人に取り押さえられていた。


 畜生! 覚えてろよ? ランディ! 俺様は、お前の名前、覚えたからなっ!


 俺様は、無意識に『くそガキ』から『ランディ』に呼び名が変わっていた。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 僕はアリサを虐めていた歳上の子供にボコボコされてしまった。


 肉体はまだ五歳とはいえ、子供に負けたのは正直ショックだ……しかし、それよりアリサを虐めていた子供に、詫びを入れさせられなかった事が悔しい……

 ごめんなアリサ……


 不覚にも、僕は情けなくて、悔しすぎて、泣いてしまった。



 僕は無力だな……『ヒーリング』しか使えない無力な子供に成り下がってしまった。

 僕は初めて『泣き寝入り』と言う物を体験してしまった。




 その夜、クラリスとロイエンが、僕の事で口喧嘩していたのを知らないでいた。


本日もう一本行きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ