【71話】激動
お待たせしました。
12歳になって、前世の力を半分ほど使えるようになった。
そして、今の素の力をプラスする。
結果、かなり強くなっているのだ。
僕は相変わらずリッツ教官と3日に1回、定期的に戦ってる。
リッツ教官はいつも通り、超スピードで無駄の少ない剣檄を繰り出している。
しかし、腕の振る速度や、無駄を省いだけで勝てるなら、剣術など存在しない。
脚の運び方、呼吸のタイミング、瞬きのパターン、そして、次に繋げる2手先を読んだ攻防。
因みに、ガルの視力だと瞳孔の開き具合を見て、初動のタイミングを計るらしいが、人間技じゃないから気にしない。
最高時の半分も力が使えれば、肉体強化を使わないリッツ教官は、強敵だけど負ける要素がない!
劣勢になったリッツ教官は、嬉しそうに叫ぶ。
「これが、13歳の小僧の戦いか? あり得ん! 速度以外は全て負けてるじゃないか!」
そう言えば、年齢を1つ偽って入学したもんな。
たまに忘れそうになるからね、教えてくれてありがたい。
今日も3戦して3勝に終わった……って言うか、4年生になってから、1度も負けてないんだよなあ。
なのに、リッツ教官は肉体強化魔法を1対1の時は決して使わない。
何かしらの、こだわりがあるんだろう。
あまり先輩扱いをしていないが、ラディスとダナムも急激に強くなっている。
この2人は、ザコ教官とモブ教官に勝てるようになった。
特にダナムは、テスター・バスターの戦いをみてから『俺様は間違っていない、力こそ正義だ』と言って修行に励んでいた。
そのダナムは5回に1回、学院生最強のラディスに勝てることから、5年生No.2は不動のものになっている。
そして、八武祭有望枠の末席として、アリサが参加している。
参加初日は、ダナムに『弱者の来るところじゃない、帰れ!』なんて言われていたが、アリサの特殊な戦闘スタイルを見て、意見を変えた。
同じ補欠組の戦闘要員と、互角の戦いを練習試合で見せたからだ。
アリサは12歳だが、成長が早い。
胸は残念なままだが、空き時間で脚の置き方と、腕の振り方を2つだけ教えて繰り返させた。
お陰で、ギフトなしの同級生と遜色ない戦いを維持できる。
そして、アリサは肉体強化魔法のLV8まで強化することが出来る。
当然、未熟なアリサの肉体はついて行けず、壊れるのだが、回復魔法を使って、再生し続ける。
さらに1400近い魔力総量で、魔法を使い続ける事が出来た。
そんな姿を見たダナムは、こんな事を言った。
「お前は、その技を使っても俺様より弱い。だが、これからは俺様を『ダナム』と呼べ、敬語はいらない」
ってね。
すでに、僕の幼なじみとして有名なアリサだが、攻撃魔法を両手でキャンセル出来るなんて、バレたらどうなることやら。
両手魔法の育成も、即席にしては順調だ。
4年生は、ソイフォン、ジエホウの他にホイチャオが新たに両手魔法が使えるようになった。
ただ、静止している時だけなので、模擬戦闘では活躍出来てない。
3年生も2人ほど、もう少しで両手魔法が使えそうな生徒がいると聞いた。
今年よりも来年の八武祭が楽しみだ。
おっといかん、今年の八武祭も始まっていないのに、来年の八武祭を見据えてると、予想外の突発事故なんかに見舞われそうだ。
月日が経ち、神速の実験をしたくなったので、生徒の中でわりと信用できるアリサ、ダナム、ラディス、カティスを呼んで、訓練してみた。
10日ほど試して分かったんだけど、僕は通常1日に1度、約5秒の神速が使える。
しかし、それ以上使おうとすると、不発しない代わりに、魔力をごっそりと持っていかれて神速が発動する。
僕の魔力は、非常時の予備タンクだと思う事にした。
最近、アホ侯爵が頻繁にやって来て迷惑なの。
どっかの、侯爵さまや伯爵さまがやって来ては、僕をダシに自慢する。
ある日、釣った魚に餌をやらない筈の、アホ侯爵が土産物を持ってきてくれた。
間違いなく、どこかで良い思いをたくさんしたのだろう。
本能的に土産物には手を付けずに、ハゲジィに渡しておいた。
……
…………
八武祭開催の半月前、レギュラーメンバーが発表された。
「それじゃあ、八武祭で戦う通常メンバーを発表する。5年から言うぞ。ラディス・ノートン、ダナム・マツヤ、ファルト・シュバイク、ミルクティア・カフラティ。 4年は、ランディ・ダーナス、カティス・ノートン、ソイフォン、ジエホウだ」
今回は上級生中心になってしまった。
「交代要員は、3年のアリサとチィトゥだ」
チィトゥ、ソイフォン、ジエホウの3人が両手魔法で攻撃とキャンセルが出来る。
内緒だが、アリサも両手魔法で回復魔法と攻撃魔法のキャンセルも出来るから、交代要員は対サウスコートシフトなのは間違いないな。
いかん、大人げないけど楽しくなってきた。
カティスも、モブ教官とザコ教官に勝てるようになったし。
リッツ教官の教え方は凄い。
ただその楽しい時間は短かった。
またしてもアホ侯爵がやって来て、俺とハゲジィだけ2日早く、今回の八武祭開催地『コケッコウ領』に出発する事になった。
まあ、いち早く八武祭に到着する貴族たちに、見せ物にする気だろうな。
そして出発当日、表門の前で出発の準備をしていると、外から馬で駆けてくる人物を見つけた。
その人物をじっくり見ると、僕の知っている顔だった。
バカな……何でここに!?
その人が近くまで来ると、僕を見つけて、驚きと嬉しさの混じった表情をしたが、すぐに影をさした顔になる。
「ボン……ク、クラリスがもう、もたない…………ボンにとって大事な時期なのは解る。 だけどクラリスの最期を看取ってくれねぇか?」
ドクン! 僕の鼓動は大きく動いた。
【次回は、リッツ教官との最大級のバトルがはじまるかも……】
リッツ教官「やった! 俺の時代がキター!!」
【最期の闘いでも?】
リッツ教官「え? いや……そんなのいやあぁぁぁ!!!」




