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【65話】テスター・バスター

今回は、テスター・バスターさんのお話です。


 俺はテスター・バスター、レアギフト『竜神の愛』を授かった、王宮騎士になる男だ。


 俺はレアギフトを授かっただけでなく、体も周りの生徒達よりかなり大きく、鍛えたら鍛えただけ強くなってしまう。


 だが、増長なんかしない。

 何故なら『竜神の加護』を持った教官たちは、みんな俺より力があったからだ。


 鍛えに鍛えて高等学院の三年になった頃には、素の力は教官達と変わらなくなった。

 だが、戦闘教官たちは肉体強化魔法が高レベルで扱える。


 俺も肉体強化魔法を高レベルで駆使できるように、力より速度を重視した訓練をするようになった。

 肉体強化魔法は基礎がしっかり出来ていないと、肉体に掛かる負担が大きいのだ。


 去年の八武祭では、三年生で異例のレギュラーメンバーに選ばれ、大活躍するはずだった。


 しかし、本気で闘ったら、相手の選手は死んでしまった。


 そのせいか、あの出来事以降、身体が思うように動かなくなり、結果は八武祭は3位で終わってしまった。


 時間とともに心は回復していったが、力を込めて戦う時は、つい手足を狙ってしまうし、速度が乗らなくなってしまった。


 だから、おれは速度強化の訓練をやり続けた。

 そして、副作用なしに肉体強化のLV5まで使えるようになった時、今年の八武祭が開催された。


 そう、人を殺めるほど力を入れないでも、八武祭を優勝に持って行ける力が欲しかった。

 打倒サウスコート学院だ!


 八武祭初日、全く無警戒だったウエストコート学院が、あのサウスコート学院を大苦戦させていた。


 そして試合終盤、多数のファイヤーボールを受けて涼しい顔をしている男を見て、鼓動の高鳴りを感じた。


 それからずっと、ウエストコートのランディを見ていた。


 うちの先輩たちは、気づいてないようだが、ランディの動きがぎこちない……まるで周りに気を使って本来の力を出してないのかと思った。


 ウエストコート学院の電撃魔法は、反則だ。

 しかも、サウスコート学院みたいに両手魔法まで使いやがる。

 さらに、一人一人の動きが良い。


 これなら、サウスコート学院が苦戦するのも頷ける。


 そして、今日の午前の試合でウエストコート学院の対戦相手が、使われなくなって久しいルールを使ってきた。


 決闘なんてルールがあるのか。

 俺向きのルールだな。


 教官たちが急いで調べたら、ウエストコート学院の監督は、スクット・リッツ教官と言う名前の元王宮騎士で、大の戦闘好きだから、決闘を申し込んでも断らないだろうとまで調べて来てくれた。


 午前のやつらは、2対2の星取合戦だったが、1対1の勝ち抜き戦もあると言う。


 これだ! これなら『両手魔法』や『電撃魔法』なんて関係ない。


 さっそく、ブダイダ監督に進言しよう。


 ……

 …………



「我らイーストコート高等学院は、ウエストコート高等学院に『1対1』の決闘を申し込む」


「その決闘、受けた!」


 俺の言葉に、スクット・リッツ監督が即答してくれた。

 良し! この試合勝った。


 ……

 …………



「こちらは、一番手ゴルドル、二番手ファフナー、三番手キビール、四番手ボルテニス、最後にテスターだいいな?」


「はい!」

「はいっ!」

「はい!!」

「はい」

「はいっっ」


「今までの試合を見ていると、要注意なのはモンテラード……一人だが、ロマリナとラディスも弱くない、無理はしなくていいから確実に相手の体力を奪っていけ。 最後は個人なら八武祭ナンバーワンのテスターがいる。だが…………いや、みんな頑張れ!」


「はい!」

「はい!」

「はい!」

「はい!」

「……はい!」


 おれは、監督が言い淀んだ事が気になった。


「監督、なにか不安な事でもあるのでしょうか?」


「テスターか……お前ならばいいか。実はもう一人注意しなければならない選手がいるんだ。 ……が、何をどう注意していいのかアドバイス出来ないやつなんだ」


「監督、それは?」


「ランディ……ランディ・ダーナスと言う三年の選手だ。 魔法使い枠の選手だが、動きが読めんのだ。 だが三年だし、あの小柄な体格で強すぎる事はないはずなんだが……どうも不安でな。 テスターよ、そのランディが出るようなら、じっくり観察して見ろ。 近くで見ると何か分かるかもしれない」


「はい、分かりました!」


 あの監督が、直感的にランディを警戒してる……

 それなら、間近でランディを見るぞ。



 驚いたことに、ランディは初戦で出てきた。

 そして、この試合も装備は俺と同じハンマーだ。


 まあ、俺は大型ハンマーで、ランディは中型ハンマーなんだが。


 だが持ち方が変だ、ハンマーの柄の根元と先を持っている。

 あんな持ち方で、どうやって闘うんだ?


 こちらの一人目は『傭兵コース』ナンバーワンのゴルドル先輩だ。

 ギフトは持っていないが、巧いと思わせる剣技の持ち主だ。


「ゴルドル! やっぱり相手は、朝の試合で無茶をやったみたいだ」

「ゴルドル! 堅実に倒していけっ」



 ゴルドルさん並みに巧いと思った、カティス・ノートンは五人の中にいなかった。


 みんなは、午前中に無茶な肉体強化魔法を使ったせいだと思っているようだが、実のところはどうなのだろうか。


「1戦目……決闘開始!!」


 ランディはゴルドルさんの攻撃をスルリと避け、ハンマーの柄で頭を突いて、バランスを崩したところで、頭を踏み抜いた。


 実力差がない限り、あんな芸当が出来る訳がない。

 それともゴルドルさんは油断したのか。


 ゴルドルさんは気絶したようだ。



「ゴルドル!?」

「ゴルドルッ!」


「勝者、ウエストコート高等学院……ランディ・ダーナス。 続いて2戦目準備、前へ!」


 同年代のファフナーが困惑混じりの顔で、ランディの前に行った。


「ゴルドル先輩、油断するなよなぁ」


 本当にゴルドルさんは油断しただけなのか?


「2戦目、決闘開始!」


「肉体強化『2』」


 おいファフナー『LV2の肉体強化』なんて、お前も油断してるだろ。



「ファフナー! 油断するな!! 相手はおかしい!」


 俺の叫びが、伝わってくれるといいのだが。


 ランディは、またも柄を使って攻撃している。

 これがあいつの戦い方か……しかも速い。


「なっ!? 今回も逆さだと? ばかな、速いっ」


 ランディの連続攻撃に、ファフナーは防御するのが、やっとみたいだ。

 しかし、この連続攻撃は単調だから、ファフナーはなんとか防いでいる……と思ったら足にハンマーを落とした。


「ぐぎゃあ!」


 頭に一撃、そして柄を持ちかえ、ハンマーをゆっくりと振りぬいた。


 ドンッ! ………………ドシャァァ。


 なんて力だ……かなり吹っ飛んだな。

 ランディは追い討ちを仕掛けた時、ファフナーは負けを認めた。


「ま、参った!」



「し、勝者、ウエストコート高等学院……ランディ・ダーナス。 続いて3戦目準備、前へ!」


 次はキビールさんだ。


「回復魔法と肉体強化魔法のハイブリットに、竜神の加護持ちか……珍しい組み合わせだな。 騙されたぜ」


 キビールさん、にランディの強さは、ギフトとは違う、うまく説明出来ない強さがある……けど、かける言葉が見つからない。


「キビール! 全開で行けっ。 こいつの攻撃は間近で見ると、避けにくいと見た」


「キビールさん、相手は一人目に力を入れてきたみたいっす」


「3戦目、決闘開始!」


「肉体強化!」


 ……

 …………


「バカな……くっ、くそっ、あり得ない……あり得なぁい!」


 な、なんて事だ、ランディはキビールさんを相手に実戦訓練をしていた。

 しかも、キビールさんは気づいてないみたいだけど、あまやかさず、大切に指導している……そんな気がした。


 ギリ……


 自然と腕に力が入る。

 俺を相手にしても、同じ事が出来るのだろうか。


 キビールさんが、殻に被われて負けた。



「勝者、ウ、ウエストコート高等学院……ランディ・ダーナス。 つ、続いて4戦目準備、前へ!」


「ボルテニスさん、速度で翻弄しましょう」

 とりあえず、ランディに勝てそうな速度勝負に持ち込むしかないよな。


「ボル、俺の仇をとってくれ!」


 ゴルドルさんも気がついて、応援する。


「ああ、分かった」


「四戦目、決闘開始!」


「強化!!」


 ボルテニスさんは、肉体強化魔法の掛け声をほとんど省略出来る……凄いな。


 ……

 …………


 でも凄いのは、ランディの方だった。


 ボルテニスさんの攻撃を、鎚で盾の代わりにして受け止めている。

 そして、ボルテニスさんが一方的に攻めようとすると、柄を使った巧い攻撃で邪魔をする。


 聞いたことがある『攻防一致』って戦い方だ。

 このお陰で、ランディは自分より速い相手にも、きちんと対処できるんだ。


 今、分かった。

 ランディに勝つには、少しの力や速度の差は、戦闘技術で帳消しにされてしまう。


 圧倒的な速度又は力で振り切るしかない。

 そう俺のギフトならそれが可能だ。



 ボルテニスさんにまで、指導の戦いをしている。

 そして、肉体強化の持続時間が切れた時、先輩は負けた。


 3戦目と違って、静まり返った会場……ごく1部、めちゃくちゃうるさい観戦者がいるが。


 当たり前のように、佇んでるウエストコート側の選手たち。


 そうか、こいつは化物だったのか。


 これなら同じ化物同士、遠慮は要らないよな?

 俺の殺る気にどこまで応えてくれるかな?

 そして、お前はどれほどの化物なのかな?


 ゆっくりと歩き、ランディに語りかける。


「ランディ・ダーナス…… 俺はテスター・バスターだ。 お前になら本気を出して、いいんだよな?」



リッツ教官「仲間? 仲間がきたぁぁぁぁぁ!」

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