【6話】ランディ戦闘訓練開始
僕が五歳になった丁度その頃、使用人が二人増えたんだ。
僕は教えてもらっていないが、実際は元々いた使用人が帰って来たって事だ。
この国の准男爵家は国から二人の使用人が与えられる。
二人の賃金は国から支払われる。
二人はダーナス家が六年前に大きな借金をしたために、一時的に凍結状態になって国に出向していた。
簡単に言うと長期の出稼ぎみたいな物だ。
そして、借金が完済になって、ダーナス家に戻れる事になった。
この事実を僕が知ったのは、だいぶ先の話だ。
二人の内、一人は執事のシープレス、雑務が得意な初老の男性。
もう一人は傭兵のセナリース、セナリースは実力的には、伯爵家の傭兵になっていてもおかしくないほど、腕のたつ傭兵なんだけど、かなり言葉遣いが悪く、あらゆる貴族に疎まれてきた。
しかし、貴族の礼儀など気にしない脳筋ロイエンとは、ウマが合うらしく、ロイエンが准男爵になってから、ずっとダーナス家に雇われている。
僕は、セナリースが来たタイミングで、戦闘訓練を始める事になった。
初めは、剣の恐さを知ってもらうため、短剣だが本物の剣を使い軽い素振りをする事になった。
ところが僕が短剣を振りかぶった瞬間、盛大に嘔吐して、意識を失った。
「うおっ!? ボン? 大丈夫かボン! おお~い、旦那ぁ! 突然ボンが吐いてぶっ倒れたぞぉ!」
気がついたら、僕はベッドに寝かされていた。
……そうか、僕は転生しても肉体は、前世同様『クレリック』なんだと実感した。
前世の僕は、クレリック呪文を使う契約として、数多の神々の中から『自由の暗黒女神カレアス』を選んでいたらしい。
クレリックとしての縛りは『食べる又は工作目的以外での刃物使用不可』
カレアスの信徒としての縛りは『食べる目的以外で、同族の未成年の殺害を禁じる』だった。
今回は、クレリックとしての掟に抵触したっぽい……はぁ、転生してもいろいろ誓約が残ってるなぁ……
アバン○トラッシュ、使いたかったなぁ……
ここで、僕は一つ大事な事を失念していた……クレリックの掟に抵触していた事実から、クレリック呪文の使える可能性が残っている事に……
翌日、僕はめげずに木刀を持って、訓練に挑んだ。
木刀を振りかぶっても大丈夫だったので安心安心。
しかし、昨日の件で、ロイエンが心配しまくりだったよ……おかげてロイエンまで訓練に参加する事になってしまった。
この親バカがっ……
なんて思っていたら、ロイエンがこんな事を言ってきた。
「ランディ、走り込みと素振りばかりじゃつまらんだろ? その木刀でパパに打ち込みをやってみるか?」
「パパ……良いの? 怪我しない?」
(やったぁストレス解消にロイエンを使える!)
「パパはこう見えても、凄く強いんだぞ……本気で打ち込みなさい」
そうですか……この身体はまだまだ未成熟だけど本気で行きます……ん?
木刀を構えたその時、ロイエンに打ち込みたくなるようなスキを見つけましたよ……んふっ、スキ有り!
ヒュッ……カン!
「うお!?」
ロイエンは驚いていたが、あっさりと受け止められた。
あれぇ、結構なスキを見つけたつもりだったんだけどなぁ……おっ? スキ見っけ。
ヒュンッ……カンッ!
「あぶなっ!」
……
…………
暫く、ロイエン相手に打ち込んだ……
しかし、僕の本気で打ち込んだ攻撃は、尽く受け止められてしまった。
弱くなったなぁ……
この様子を見たセナリースが、呆れ半分でロイエンを貶す。
「よう、旦那ぁ……暫く見ないうちに、とんでもなく弱くなったなぁ……はぁ情けない……しかたねぇ、 おいボン! 打ち込みは強えやつとやった方がいいぞ。残念だが、旦那は弱くなったみてぇだ……おれが受けてやるからな」
ロイエンの木刀を奪い取り、振り回す。
「さあ、来な……だが生半可な攻撃じゃ掠りもしないからな」
次はセナリースか……おっ左脇付近にスキ見っけ。
「えいっ!」
ヒュッ……カン!
「なにぃぃぃぃ!?」
あっ今度は右足……ヒュッ……
「うわっ…………うおっ!?…………ぬぁぁ……何で?…………おお! ……まずっ!…………」
結局一撃も当てることが出来なかった。
この二人、強い……いや、僕が弱いんだ……凹むなぁ……
木刀だから、棍とそんなに変わらないかなぁと思っていたら意外に使い難い。
そのうち、ロイエンに頼んで、棍にしてもらおう……と考えながら、帰宅した。
庭先のロイエンルーガとセナリースは、二人で顔を見合わせた。
「なぁ、旦那ぁ……ボンの打撃……速いワケじゃねぇよな?」
「ああ、お前も感じたか……確かに遅い……いや五歳にしては頑張ってる……だが所詮子供の剣速……よそ見しながらでも、余裕で対処出来るはず……はずなんだけどなぁ」
「だけどよぉ、おれと旦那は避ける事も出来ずに、木刀で受ける事を強要された……あんな遅いのに何で避けづらいんだ?」
「「???」」
暫く二人で考え込んでいた。
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アリサは『超』が付くぐらい、僕になついている。
同い年とは言え、全ての事柄で僕の方が抜きん出ている。(まぁ当たり前だけどな)
そのせいか、アリサは僕を万能な兄という位置付けで見ているのかもしれない。
というわけで、アリサは僕が出掛けようとすると、『アリサもいくぅ』か『ランディいっちゃダメぇ』とか言う。
そんな台詞は、もっと色気のある女性にして欲しい物だ。
そう、せめてレジーナくらいじゃないとね……
そんな、アリサも自分であそびに出掛ける時は、一人で出掛ける事も有る。
特に、近所の女子(もちろん子供)に誘われた時は、独りでほいほい出掛ける。
まるで『ランディには女の子を紹介なんてさせないよ』と言ってるみたいである。
そんなで僕が独りになる時に、レジーナの瞳が『キュピーン!』と輝く。
「おぼっちゃま……お願いします」
と……
そう……僕は未だに、授乳プレイを強要されていた。
そんなに、僕の舌技が気に入ったんですか? レジーナさん……一度封印した『ビッチ』の呼称を復活させる必要が有りそうですね。
でも、楽しいから授乳プレイはしている。
さらにレジーナは、五年たった今でも、母乳が出る……驚きだ……女体の神秘と言うものだろうか……
そんなある日、アリサが近所の子達と遊びに出掛けている時に事件は起こった。