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【閑話④】人外四人衆の三人

 そこにはラリアットをかました張本人『ガル』と側には『アーサー』『カーズ』のランディの人外仲間がいた。


「名を名乗るほどでは無いんですが、この男には聞きたい事があるんです。 邪魔させて貰いますよ」


「どうしても、こいつを殺りたかったら、こいつの子供達が成人するまで待ちな。 こいつには親の義務っつうのをやって貰うからな」


「バトル不足 なら 俺 相手する 代金 要らない」


 三人の登場に喜んだのはミルゼクトだった。


「ゴフー。 私は幸運だ……一を捨てて三を得る!」


「ケヒャ! 待て、この俺様を転がしたやつは俺様が殺る!」


「ああ、いいぜ。『俺様』かぶりをしてるから『ワタクシ』と言えるようになるまで、徹底的に調教してやるぞ」


 ガルも自分の事を『俺様』と言うので、気に入らない人間が『俺様』の単語を使うのは嫌な様だ。



「じゃ 俺 『ゴフ助』 貰う」


「速度対決に力対決、なら貴方とは虚弱対決と行きましょうか? キンジ!! 早く来いっ!」


 カーズはルフベルトと直接戦う気はない様で、後から走ってきているキンジと戦わせる気らしい。


「くっ、私は戦わんぞ! ミルゼクト様、キチガクト様、こやつらの始末をお願いします」


「ゴフー。 弱者ならガクトに任せた。俺はその大男と遊ぶ。 ゴフフフ」


「ケヒャヒャ。 弱らせてからゆっくりと切り刻んでやんよ! ケヒャャ!」


 キチガクトは猛烈な速度でガルに肉薄して、手足を切りつけに来た。


「なに? 速い!」


 ブン! ブォン! ガン! ガキィン! ブォン! ガン!


 キチガクトの高速六連撃にガルは、身をかわすのが三回、短剣で防ぐのが一回しかできなかった。


「ケヒャ? 半分よけただと? それに手応えが、おかしい」


 ガルは自身が持っている防御用マジックアイテム『プロテクションリング+5』を四つも装備しているため、肉体には傷一つ付いていない。


 人外四人衆と一部(キンジたち)に言われているが、アーサーを除く三人は、生身での防御力は人間の限界を少々超えた程度なので、マジックアイテムや防具を装備するなどをして、身を守っている。


「俺様に傷をつけたいなら、もっと腰の入った一撃を入れないと、この防御は破れないぜ? ケヒャ?」


「ケヒャャャャャ!! 頭に来た! お前の首を一発で撥ね飛ばしてやる!」


 ガルの本人を真似た物言いは、キチガクトを本気で怒らせる事になった。

 一方、アーサーとミルゼクトは……



「ゴフゥ…… バカな、バカな」


 ミルゼクトの攻撃は当初、アーサーの持つ鉄棒で軽くあしらわれていたが『つまらん』とため息をアーサーに吐かれ、一般人の腕と同じくらいの太さの木を拾って、ミルゼクトの攻撃を、打ち払っていた。

 これは、相当な実力差がないと不可能な芸当である。

 何故なら、普通に戦えば木の方が折れてしまうからだ。


 ミルゼクトも実力差に気づいた様で、焦るように攻撃を繰り返している。


「幻滅 飽きた ゴフ助 力だけ」


「ゼーハー、ゼーハー、アーサーさんに力だけって言われてると可愛そうになりますね?」


 モンスターパワーを有しているアーサーにキンジが突っ込みを入れる。


「息を切らせながら、突っ込みを入れるとは見直しましたよ、さあキンジはあの男と戦いなさい」


 カーズはキンジを休ませる事はしない様だ。



 一方キチガクトは……


「ケヒャヒャ。 死ねっ『瞬動』」


 本気を出したキチガクトは、その場から消えるように移動してガルの背後に回り、ガルの首を刈りとるように、剣を振り抜いた。


「ケヒャャャ! 殺ったぁ!! なに!?」


「いやまいった、俺様完全に速度負けしてるわ。 しかも髪の毛が、二センチも切られた。やるじゃねぇか……えっと、誰だっけ?」


 ガルは間一髪で身を屈めて、キチガクトの首刈りを避けたのだった。


「ケヒャ。 俺様ほどじゃないが、凄い反応速度だ……が、いつまで続くかな? ケヒャヒャ!瞬動! ……ゲビャン」


 キチガクトの瞬間移動した先にガルの蹴りが入った。


「弱点見っけ。 お前の自分の速度を御しきれてねぇだろ?」


「ケヒャ! 只の偶然だ。 瞬動! ……ゲビャン」


 今度は剣の横で後頭部を叩かれた。


「やっぱなぁ。 お前、動く前に移動先を決めてから動いてるだろ? しかも移動先の途中変更は出来ない」


 ガルの読み通り、キチガクトは自分の『瞬動』を完全には制御出来ず、あらかじめ移動場所を決めてから動いていたのだった。



「ケヒャ! だからって何故俺様の移動先が分かる? 瞬動! ゲビャッ!」


 今度はキチガクトの心臓に、ガルの短剣が深々と刺さっていた。


「手品も三度も見れば充分だ……だが、なかなか面白かったぞ…………あっ『ワタクシ』って言わせるの忘れてた」



 一方、アーサーとミルゼクトは…

「お前 期待 ハズレ 死ぬ前 特技 見せろ 相手 する」


 ミルゼクトは大剣を棄てて、アーサーに抱きついた。


「瞬剛! ゴフー。 全身の骨をバキバキにへし折ってやる……」


 アーサーの背骨を折ろうとしたミルゼクトだが、少し経つと、ミルゼクトの顔からは異様なほど大量の汗が噴き出していた。


「いっ……いぎゃぁぁぁぁ!!」


 ミルゼクトの両腕は変な方向に曲がっていた。


「アーサーが本気を出しません様に……」


 カーズは手を合わせて祈っていた。

 アーサーが本気でキレると、満足するまで敵味方問わず暴れまくるので、ランディのいない二対一だと分が悪いからだ。


 今までアーサーが暴れた時は、ランディ、カーズ、ガルの三人がかりで押さえ込んでいた。


 アーサーに掴まれたミルゼクトは真上に投げられた。


「ゴフゥゥゥゥゥゥ…………ゴギャ!」


「あと 九回 投げる」


 こうしてミルゼクトの悲鳴は九回続いた。

 だが最後の投擲で落下の瞬間、アーサーのパンチでミルゼクトの頭部が弾けた。


「ふん 汚い 花火」


「どっかの、誰かの真似をしてねぇか?」


「さて、キンジに倒されたバカ貴族の後始末をしましょうか」


「おれの活躍は説明無し? おれ、頑張ったんですけど? カッコよかったっすよね?」


「…………」

「…………」

「…………」

 

「報われないッス」


 ◇◆◇◆◇◆


「第5レベル呪文……ドッペルゲンガー」


「キター! カーズさんのトンデモ呪文コーナー! カーズさんのこの呪文って他人にも出来るんですか?」


「キンジ、これを自分に使う方が特殊な使い方なんだよ。 基本マジックユーザーのドッペルゲンガーは敵に使うんだよ」

 

「へっ? 何でですか?」


「ドッペルゲンガーは分身……同じ存在を赦せないんだよ。 だから私が自分の分身を造る場合は制限をかける、私に対する殺意が芽生えた時点で呪文の効果を消すってね」


「カーズ 分身 造る ついでに 記憶 追加 出来る」


「このルフベルトの分身には、私たちを友人といった記憶と、キチガクト、ミルゼクトが無差別殺人をして逃亡した記憶、さらに若い女性に踏まれる事が大好きだった記憶も追加した」


「カーズさん、めっちゃひどいッス。 何でも有りッスか?」


「記憶の追加にも限界はあるし、性格は変えられない。 大した事じゃないさ。 それに通常ならドッペルゲンガーの生き残る確率は30%です」


「えっ?」

キンジはカーズの言葉の意味が分からなかった。


「答 簡単 ドッペルゲンガー 弱い」


「ドッペルゲンガーが目を覚ましましたよ」


 そう言って、目覚めたドッペルゲンガーに大型のナイフ『ダガー』を渡す。

 ドッペルゲンガーはキョロキョロと辺りを見回して、気絶しているルフベルトを見つけるとニヤリと顔を歪ませて、ダガーを貰った事に感謝をする。


「友よ、ありがとう。 これなら、簡単に自分を排除出来る」


 ドッペルゲンガーは何度も何度もルフベルトを刺した。


「これで私は一人になった。 友よ、ついでに言うなら、逃げたミルゼクト様とキチガクト様も捕らえてくれれば私の仕事は楽だったのに」


「ルフベルト、 私達はただの旅人です。 そんな者達があの二人を押さえ込んだと聞いたら、問題になるでしょう?」


「そうだな。 では私は忙しい、これで失礼するよ、友よ」


「ちょっと待った」


「なんだ? 友よ」



 ◆◇◆◇◆◇



 カーズはルフベルトとの交渉で、キウイを育てていた農家の身柄を預かった。


「ありがとうございます。 しかし女房も助けて頂けるので?」


 カーズ達は、先に四兄妹を助けに行った、香織、マーニャ、リリス、ひなた、カミーラと合流するために移動していた。


 しかし……


 ……

 …………


「マナ、マナァァァァ!」

 自分の妻が死んでいるのを見て叫ぶ。

 四兄妹の母であるマナは、過労が原因で昨日、死亡していた。


「カーズさぁん、なんとか出来ないっすか?」


「怪我ならともかく、過労となるとアーサーの『レイズデッド』では蘇生は難しいですね」


 ランディの世界の常識では、死者の蘇生はありふれた事なのだが、対象は『怪我』が原因の死であることが通常で『病死』『老衰』『毒死』『餓死』などの死には、基本対応していない。

 さらに『自殺』 等の『生』をあきらめて死亡した場合も蘇生は難しい。


「ねえ、アレを使っていい?」

 亡骸にすがるように泣いている男を、見つめていた香織はガルとカーズに、有ることを聞いていた。


「いいよ、もうそれは香織の呪文だ。 兄さんがいないここでは、香織の判断で使うといいよ」


「だってさ。 俺様も同じ意見だ、ちゃっちゃと始めようぜ」


 香織はあるマジックアイテムを取り出した。


「発動! ミセリコルデ。 顕現せよ! スペルストッカー」


 香織の周囲に六つの小箱が出現した。

 小箱にはそれぞれ、『1』から『6』までの数字が刻まれている。


「ボックス『4』解放! 」

 

 香織が顕現させた『スペルストッカー』には、ランディの呪文が一箱につき、一つの呪文がストックされていた。


 そして、解放した呪文はランディの第4レベル呪文、レイズデッドLVⅠだった。


 しかも、ランディのレイズデッドは、通常のレイズデッドと違い、死因を問わず蘇生できる。


 さらに、レイズデッドLVⅠの蘇生率は50%なのだが、ランディの呪文は95%で蘇生してしまう。


 結果、四兄妹の母であるマナは復活を遂げた。


「マ、マナ!? マナァァァァ!」



 ◇◆◇◆◇◆


 四兄妹の両親を助けたカーズ達は、報酬としてキウイを手に入れた時の出来事を詳しく聞いた。


「どうも、あの話を聞く限り、兄さんが介入している可能性があるね」


「ならば ランディ 成人 転生 したか?」


「だとすると、ランディは能力を保持したまま、記憶喪失になっているかもしれんな」


「しかも、転生した時期は少なくとも四年は経過してますね……ちょっと解らなくなってきました」


 カーズ達は、キウイの貰った時期から逆算してみたようだ。


「よし! ランディの手がかりを掴んだところで、『シャイニングロード』をかまそうぜ! 」


「次も 食べ物 なら カーズ 疑う」



 こうしてカーズ達は、ランディを探しに旅立っていった。



次回からランディの、学院生活三年目がスタートします。

ここまで目を通して下さった方々に、感謝を。

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