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【閑話③】気になる果物

たいへんお待たせしました。

 ~これは、ランディの仲間の物語~


 カーズの第7レベル呪文、シャイニングロードにより行き先が決まった一行は、ズンズン進むカーズを、追いかけるように旅立っていた。

 シャイニングロードとは、術者のカーズにとって都合の良い、光る道が見える……と言った不思議な呪文だ。


 次に到着したのは、小規模のキウイ畑であった。


「なあ、カーズ。 あんまり言いたくないんだが、ランディより食べ物なのか?」


「違う! このキウイには兄さんの手がかりがあるはずなんだ! 決して私は食いしん坊とかじゃない!」



「この キウイ 栽培法 間違え 甘味 足りない」


 既に、相場通りの通貨を払って数十個のキウイを買って食べていた。

 アーサーは皮ごと丸かじりして、カーズとガルは半分に切ってからスプーンを使いくり貫く様に食べていた。


「このすっぱさ、小学校の給食で出たキウイに似てる」


「そお? 私が居たとこの学食はすごく甘かったよ? でもお兄ちゃんが出したキウイが今まで最高に美味しかったけどね」


「主殿の『クリエイトフードフリー』は反則なのじゃ」


「だから、今回のキウイはランディに関係ないだろ? やっぱりカーズの趣味じゃん」


「なっ、違っ……シャイニングロードに聞いて下さい」


「カーズが狼狽えてるなんて、レアね」


「追熟 すれば 少し 改善 後は 肥料」


 とりあえずみんなは、カーズの顔を立てて、キウイの生産農家を、探し出し事情を聞いた。



 生産農家を見つけ調べると、父、母、娘が二人、息子が二人の六人家族で、父親がとある国でキウイに出合い、苗木を譲って貰っていた。


 しかし、借金してまで育てたキウイは、あまり美味しくなく、現物で納税をしたが、その貴族を怒らせてしまったと言っていた。


 そしてある日、父と母は借金を残したまま行方不明になってしまったと、残された四人の子供達は親の借金のため、奴隷寸前だった。


「この珍しい果物『キウリ』が、予定の価格で全部売れないと、奴隷送りになってしまうのヨ」


「男の借金奴隷は、犯罪奴隷や戦争奴隷より待遇は良いけどッス、ラミス、ルミスの事を考えると可哀想でッス……」


「アチシは、凄く美人だから貴族の慰み者になることは間違いニャいと思うニャ」


「妹達の事を思うと不憫ナリ……誰かこの『キウリ』を全て買ってくれる人はいないものナリか」


 と四兄妹はチラリとカーズ達を見る。

 四兄妹は、カーズ達を金持ちと見て、同情を買う作戦に出たようだ。


「あの程度の果物に、この値段で買う奴はいないだろ?せめて追熟してから売れよ」

 ガルは厳しい突っ込みをいれる。


「しかし、値段設定を見るとそちらで言う『キウリ』の元は、かなり甘い果物と見ました。 ですが、助ける義理は無いけどね。みなさん、近くで家を建てて、明日に備えて休みましょう」


 ザックリ四兄妹を切り捨てようとしたカーズの意思を、次の出来事が変えることになる。




 葉っぱをむしって食べていたアーサーが、キウイの品種を言ってしまったからだ。

 その品種は、日本の農家が長い年月を掛け、試行錯誤を繰り返して産み出した物なのだから。


「アーサー、果実を食べた時に気づけよ」


「それはおかしいですね。 只の転生者では品種改良済みのキウイを産み出すのは不可能ですよ? 特殊能力持ち? ねえ君達、私はどうしてもあなた方の父親に、会わなくてはいけなくなりました。 行方不明になった状況を、できる限り詳しく教えなさい」


 カーズの放った威圧は、四人の兄妹を素直に喋らせ、キンジの脚をガクガクと震わせる事に成功した。



 ◇◆◇◆◇◆


 ◇下級貴族の屋敷◇


 ここに、心の歪んだ貴族の集まりがあった。


 一人目はこの屋敷の主、ルフベルト・ゲッスー男爵。

 近年、父親の急死により男爵家を受け継いだ男だ。


 二人目はシュバルハイゼン伯爵の長男、ミルゼクト・シュバルハイゼン。

 彼は、力のある生意気な人間をいたぶり、殺すのが趣味の三十代後半の男性。


 三人目はシュバルハイゼン伯爵の次男、キチガクト・シュバルハイゼン。

 彼は、無抵抗の弱者をゆっくり惨殺するのが趣味の三十代前半の男性。


 ルフベルトは、伯爵家の力を利用して、ある家族を陥れて非合法奴隷を手に入れようとしていた。


 既に家族の両親を行方不明扱いにして、犯罪奴隷用の鉱山に送り込んだ。

 後は、借金が返済出来ない事を理由に攫い、正規の奴隷として身柄を預かると見せかけて、行方不明にしてしまう計画を練っていた。


 そしてそれを容易に可能にしてしまうのが、伯爵家の権力であった。



「ケヒャヒャ。 こんな回りくどい事をしなくても、何時でもゴミを始末できる世の中にしたいもんだ。 ケヒャヒャヒャ」


「ゴフー。 ガクトよこの国は奴隷にも、生きる権利があるから不便だな。 だが、我が家の力なら事故死に見せかけるのは容易(たやす)い。ゴフー」


「ケヒャヒャ。 ゼクト兄。それすらやり過ぎれば目を付けられる」


「ゴフー。 早く戦争が始まらないものか……敵国相手なら、殺りたい放題なのに。 ゴフー」


「ケヒャヒャ。 ゼクト兄、戦争じゃゆっくりじっくり痛めつける事が出来ない……つまらないじゃないか。 ケヒャヒャ」


「ゴフー。 ガクトの言う通りだな……ゴフー。待てなくなってきた、ルフベルト! 早く玩具を用意しろ」


「ははぁぁ! 馬車で三日の距離に、犯罪奴隷用の鉱山が有ります。 そこで好みの()をお探し下さい」


 ミルゼクトは満足そうに頷くと、キチガクトが不満気に話す。


「ケヒャヒャ。俺様の玩具も、直ぐに用意できるんだろうな? 」


「鉱山でミルゼクト様の用が済む頃には、準備が整うかと」


「ケヒャヒャヒャヒャ。 仕方ないなぁ、ゼクト兄についていくか……我慢できなかったらついでに、ケヒャヒャヒャヒャァ!」


 キチガクトは殺人衝動に我慢できなくなったら、誰でもいいから殺してしまおうと考えていた。

 どうせ、犯罪奴隷なんぞ簡単に揉み消せると思って。


 伯爵家の当主でもないのに、奴隷とはいえ、簡単に殺人の証拠を隠蔽できるのには、理由があった。

 彼ら兄弟は、軍の内部でも特殊な部隊に所属していて、非常時の役割は大きい。


 兄のミルゼクトはギフト『竜神の愛』の所持者で、

 独自の技『瞬剛』を使い、厚い鎧に身をまとった騎士相手ですら一撃で倒すことも珍しくない。


 弟のキチガクトはギフト『人神の愛』の所持者で、独自の技『瞬動』使い、瞬時に相手の背後に回り込んで、首を刈るとることも容易に出来る。


 彼ら兄弟は歪んだ性癖さえ無ければ、多くの人をまとめ、それなりの地位に就いていたことだろう。


 彼は、ルフベルトの案内により、犯罪奴隷が労働している鉱山に向かって出発した。



 ◇◆◇◆◇◆



 ◇炭鉱付近の詰所◇


「ゴフー。 たしか四人までは自由にして良いと言ったな。 ゴフー」


「ケヒャヒャ。 ゼクト兄、ゴミを一人として数えるのはやめようぜ? あと一つ俺様にもゴミをくれよ」


「ゴフー。 考えておく……こいつと、こいつと、あとこいつだ」


「ははぁ、直ちに用意いたします!」


 ……

 …………


 ある場所に、四人の犯罪奴隷が集められルフベルトが話をしている。


 ルフベルト「お前らに特別な仕事を与える。 そこに居るミルゼクト様と戦って貰う。 頑張ればミルゼクト様に雇って貰える可能性もある。ミルゼクト様に気に入られるように頑張るんだな」



 ルフベルトは視線をある方向に向ける。

 その視線の先には、木を金属で補強した盾と、片手剣が置いてある。


 犯罪奴隷A「男爵様よう、もし間違ってその人に大きな怪我をさせちまったらどうすんだよ?」



 ミルゼクトが骨のありそうな犯罪奴隷を選んだだけあって、犯罪奴隷の生きは良いようである。


「万が一、そのような事があっても私が回復魔法を使えるから問題ない。 さらにそれほどの事が出来るなら、私が頼まずとも騎士の籍が手に入るぞ」


「私は犯罪奴隷じゃないんです! ただ借金をしただけで……」


「なら、これが終わったら、再調査をさせましょう。 なので今は頑張って戦いなさい」

(お前を陥れたのは私ですけどね……まさかミルゼクト様に玩具として選ばれるとは……)



 ミルゼクトは全員が武装したのを確認してから口角を上げた。


「ゴフー。では十分間戦って生き残っていたら望みの褒美をやろう」


 ミルゼクトは大剣をゆっくりと振り回すようにして攻撃をした。


「へっ、鈍いな……なっ!? ガボッ!」


 なまじ盾の扱いが巧く、盾の一番強度のある場所で受けたため、盾は壊れず衝撃がもろに人体に達し、左腕と左あばら骨を骨折してしまった。


「ゲッ、ギフト持ちかよ……オメェラ! 一斉にかかれ!!」


 ……

 …………


「ゴフー。 骨がある奴をゆっくりいたぶるのは、気持ちの良いものだな。 ゴフー ……あと一人……」


「ケヒャヒャ。 ゼクト兄、最後のゴミは俺様に、やらしてくれよぅ? 聞いたら俺様の専用の玩具は二人だけなんだってよ、なあ良いだろう?」


 既に四人の内三人は、肉の塊に成り下がっていた。


「ゴフー、ではアレに決めさせよう……攻撃してくれば、私の玩具。 逃走すればガクトの玩具な。ゴフー」


「ケヒャヒャ。 流石ゼクト兄、話がわかるぜ。 おいそこのゴミ! 戦うなら一撃入れただけで助けてやる。 逃げるなら二百メートル逃げきれたら助けてやる。 さぁ選びな、ケヒャヒャヒャヒャヒャヒャ?」


 最後の生き残った男は、キウイを育てていた家族の父親であった。

 彼は、キチガクトの言葉を聞いた瞬間に走って逃げた。


「ケヒャヒャ。 俺様頂きいぃ!! 」


 深呼吸二回分の時間を置いてから、走り出すキチガクト。

 ものの数秒で距離を詰めて、剣を振り上げた。


「ゲビャァァァ!」


 キチガクトは突如何者かにラリアットを喰らい、後ろ向きに二回転した。


「何奴?」

「誰だ!」



 そこにはラリアットをかました張本人『ガル』と側には『アーサー』『カーズ』のランディの人外仲間がいた。



長くなりましたので、切りました。

次回は土曜日に更新します。

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